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最終章 その瞳を溶かすのは私だけ
3.戻ってきた記憶
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落ち着かないまま、眠りにつく。
『絵本の王子様みたい』
幼い私が花冠をのせる男の子は、プラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳をしていた。
『僕が怖くないの?』
『なんで?
お日様でキラキラして、凄く綺麗だよ!』
男の子の水色の瞳が、これ以上ないほど大きく見開かれる。
次の瞬間、とても幸せそうに笑った。
『大きくなったらあーやを、僕のお嫁さんにしてあげる』
『ほんとに!?』
彼を前にして私は、満面の笑みで本当に嬉しそうににこにことしていた。
『ここに指環を嵌めるのは、僕のお嫁さんって印だよ』
男の子が、花で作った指環を私の左手薬指に嵌める。
『あーやは玲くんのお嫁さん?』
『そうだよ。
……そうだ、いまからふたりだけで結婚式をしよう』
彼の手が私のあたまへ花冠をのせる。
幼い誓いの言葉が交わされ、彼の顔が近づいてきて唇が……。
「……!」
そこで、目が覚めた。
隣ではジャンが、気持ちよさそうにいびきをかいている。
「夢……」
でもあれはきっと、私がなくした記憶。
そして相手は玲、だ。
これを知っていたから母たちは、私塗料がすでに結婚式を挙げている、なんて言っていたのだ。
「それがなんで、あんなことになったんだろう」
私は玲に罵られ、あたまをぶつけて記憶を失った。
どうしてそうなったのかわかったら、素直になれそうな気がする。
「知りたい……」
もう一度、目を閉じる。
神様どうか、教えてください……。
『あーや、玲くんのお嫁さんになったの!』
無邪気に大人たちへと私が宣言をする。
『あら、そうなの』
『お似合いね』
大人たちは子供の微笑ましい戯れ言だと、笑いながら流していた。
『玲くん、だーい好き』
玲と手を繋いでにこにこしている私は、気付いてなかったのだ。
彼が酷く恥ずかしがっていることに。
『あーやのブース!』
ふたりで庭に遊びに出た途端、玲から罵られた。
あんなに私をマイプリンセスとか言って可愛がっていた彼の変貌に、私は戸惑っていた。
『あーやはブスじゃないもん。
玲くんのばか』
私がぼろぼろと涙をこぼれ落としはじめ、カッと彼の頬が赤くなる。
『ブス、地味、根暗。
あーやなんて大っ嫌いだ!』
玲の手が私を押す。
後ろに倒れながら、しまった、と後悔でいっぱいの玲の顔が見えた。
『あーや!』
最後に見えたのは、泣きだしそうな玲の顔。
ああ、そうか、玲は……。
あたまをぶつけた衝撃でまた目が覚める。
あのとき、玲は大人に囃したてられ、ただ単に照れていたのだ。
照れて逆ギレして、心にもないことを言った。
それが真相だろう。
でも、玲に嫌われたのがショックだった私は、自分の中から玲を消した。
それだけならまだしも、自分は彼の言うとおりの人間だと思い込んで。
「馬鹿だ、私は」
きっとあの日から、玲はなにも変わっていない。
父の会社を人質にするようなことを言うのも、それしか私を縛り付ける方法を知らないから。
「玲も、馬鹿だ」
もう一度会って、ちゃんと話したい。
私にそんなこと、許されるのかな。
ジャンを起こさないようにそっとベッドを出た。
もらった指環をテーブルの上に置く。
「……ごめんなさい」
音を立てないように部屋を抜け出す。
まだ夜が明けきってない街の中は、しん、と静まりかえっていた。
「どっち、だっけ」
玲のホテルに向かって歩きだす。
やはり、ジャンと結婚なんてできない。
幼きあの日から、私が好きなのは玲だけだ。
三十分ほどかけて着いた、ホテルの前で足が震える。
玲は私の話などいまさら聞いてくれるだろうか。
不安、だけれど、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。
プライベート用エレベーターに乗り込んだけれど、誰にも止められなかった。
上昇するにつれ、どくん、どくん、と心臓の音が大きくなる。
きっと玲はまだ、仕事前のはず。
「し、失礼、します……」
開けたドアの中は音がしない。
まだ寝室だろうかと入っていったリビングのソファーで、玲は寝ていた。
「なんで、こんなところで、寝てるんだろう……」
着替えていないのかスーツのまま、しかも眼鏡もかけたままで、玲は静かに寝息を立てている。
「……あーや?」
不意に、玲の目が開いた。
視線があった瞬間、手を引かれる。
「帰ってきてくれた……!」
バランスを崩し、玲の上に倒れ込んだ。
玲の、匂いがする。
と、思ったあたりで記憶は途絶えている。
『絵本の王子様みたい』
幼い私が花冠をのせる男の子は、プラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳をしていた。
『僕が怖くないの?』
『なんで?
お日様でキラキラして、凄く綺麗だよ!』
男の子の水色の瞳が、これ以上ないほど大きく見開かれる。
次の瞬間、とても幸せそうに笑った。
『大きくなったらあーやを、僕のお嫁さんにしてあげる』
『ほんとに!?』
彼を前にして私は、満面の笑みで本当に嬉しそうににこにことしていた。
『ここに指環を嵌めるのは、僕のお嫁さんって印だよ』
男の子が、花で作った指環を私の左手薬指に嵌める。
『あーやは玲くんのお嫁さん?』
『そうだよ。
……そうだ、いまからふたりだけで結婚式をしよう』
彼の手が私のあたまへ花冠をのせる。
幼い誓いの言葉が交わされ、彼の顔が近づいてきて唇が……。
「……!」
そこで、目が覚めた。
隣ではジャンが、気持ちよさそうにいびきをかいている。
「夢……」
でもあれはきっと、私がなくした記憶。
そして相手は玲、だ。
これを知っていたから母たちは、私塗料がすでに結婚式を挙げている、なんて言っていたのだ。
「それがなんで、あんなことになったんだろう」
私は玲に罵られ、あたまをぶつけて記憶を失った。
どうしてそうなったのかわかったら、素直になれそうな気がする。
「知りたい……」
もう一度、目を閉じる。
神様どうか、教えてください……。
『あーや、玲くんのお嫁さんになったの!』
無邪気に大人たちへと私が宣言をする。
『あら、そうなの』
『お似合いね』
大人たちは子供の微笑ましい戯れ言だと、笑いながら流していた。
『玲くん、だーい好き』
玲と手を繋いでにこにこしている私は、気付いてなかったのだ。
彼が酷く恥ずかしがっていることに。
『あーやのブース!』
ふたりで庭に遊びに出た途端、玲から罵られた。
あんなに私をマイプリンセスとか言って可愛がっていた彼の変貌に、私は戸惑っていた。
『あーやはブスじゃないもん。
玲くんのばか』
私がぼろぼろと涙をこぼれ落としはじめ、カッと彼の頬が赤くなる。
『ブス、地味、根暗。
あーやなんて大っ嫌いだ!』
玲の手が私を押す。
後ろに倒れながら、しまった、と後悔でいっぱいの玲の顔が見えた。
『あーや!』
最後に見えたのは、泣きだしそうな玲の顔。
ああ、そうか、玲は……。
あたまをぶつけた衝撃でまた目が覚める。
あのとき、玲は大人に囃したてられ、ただ単に照れていたのだ。
照れて逆ギレして、心にもないことを言った。
それが真相だろう。
でも、玲に嫌われたのがショックだった私は、自分の中から玲を消した。
それだけならまだしも、自分は彼の言うとおりの人間だと思い込んで。
「馬鹿だ、私は」
きっとあの日から、玲はなにも変わっていない。
父の会社を人質にするようなことを言うのも、それしか私を縛り付ける方法を知らないから。
「玲も、馬鹿だ」
もう一度会って、ちゃんと話したい。
私にそんなこと、許されるのかな。
ジャンを起こさないようにそっとベッドを出た。
もらった指環をテーブルの上に置く。
「……ごめんなさい」
音を立てないように部屋を抜け出す。
まだ夜が明けきってない街の中は、しん、と静まりかえっていた。
「どっち、だっけ」
玲のホテルに向かって歩きだす。
やはり、ジャンと結婚なんてできない。
幼きあの日から、私が好きなのは玲だけだ。
三十分ほどかけて着いた、ホテルの前で足が震える。
玲は私の話などいまさら聞いてくれるだろうか。
不安、だけれど、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。
プライベート用エレベーターに乗り込んだけれど、誰にも止められなかった。
上昇するにつれ、どくん、どくん、と心臓の音が大きくなる。
きっと玲はまだ、仕事前のはず。
「し、失礼、します……」
開けたドアの中は音がしない。
まだ寝室だろうかと入っていったリビングのソファーで、玲は寝ていた。
「なんで、こんなところで、寝てるんだろう……」
着替えていないのかスーツのまま、しかも眼鏡もかけたままで、玲は静かに寝息を立てている。
「……あーや?」
不意に、玲の目が開いた。
視線があった瞬間、手を引かれる。
「帰ってきてくれた……!」
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玲の、匂いがする。
と、思ったあたりで記憶は途絶えている。
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