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最終章 結婚は突然に
5. 一緒に、鐘を鳴らしたい
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次のお休み、ドライブに行こうと連れ出された。
海辺の道を走り、道の駅に寄ったり、ご当地の炙り海鮮丼を食べたりする。
夕方に着いたのは岬の公園だった。
いつものように自分のペースでどんどん歩いていく樹馬さんを追う。
あれは、好きな人と一緒にいる自分に耐えられなくて、ついつい歩くのが速くなってしまうらしい。
辿り着いた岬の突端には、鐘が設置してあった。
「この鐘を一緒に鳴らしたふたりは、一生添い遂げるという言い伝えがあるらしい」
樹馬さんは私の目の前に跪き、取りだした指環のケースをぱかりと開けた。
「花重、俺と一緒にこの鐘を鳴らしてほしい」
レンズの向こうの瞳が真摯に私を見つめている。
胸が熱いものでいっぱい溢れ、視界が滲んでいた。
「……はい」
抑えきれない感情で、私の声は震えていた。
私が返事をした途端に、樹馬さんの目が眩しそうに細められる。
そのまま立ち上がって私の左手薬指に指環を嵌めてくれた。
「鳴らそうか」
「はい」
夕日が沈む中、ふたりで紐を掴み勢いよく引っ張ると、カランカランとまるで私たちを祝福するような明るい音が岬に響いていった。
「花重を愛してる。
これからもよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします」
そっと樹馬さんの手が私の涙を拭う。
ゆっくりと顔が近づいてきて目を閉じた。
「おめでとう!」
「お幸せに!!」
「よかったねー!」
いつの間にか集まっていたギャラリーたちに、キスもそこそこにその場を後にした。
夜は近くのホテルを取っていてくれた。
しかも、スイートルームで華やかに花まで飾ってある。
夕食も豪華で、デザートには花火まで弾けていた。
「気に入ったか」
「はい」
この間の隠し事はきっと、これを計画していたんだと気づいた。
「一回、プロポーズに失敗したし、それにその後、なし崩しに結婚することになっただろ。
だからちゃんと、やり直したくて」
あのとき、ちゃんと樹馬さんの話も聞かずに家を出たことを少しだけ後悔した。
でもあの頃はまだ、樹馬さんの照れ体質なんて知らなかったので仕方ないといえば仕方ない。
「ありがとうございます」
ちゅっとキスしたら、樹馬さんの眼鏡のかかる耳が赤くなった。
「満足したんだったら、いい」
キスしながら樹馬さんが私を押し倒していく。
下から樹馬さんを見上げながら、ひとつだけ気になっていたことを思い出した。
「そういえばなんであの日、突然メモなんて置いたんですか」
「その、ずっと花重が気になっていたが、なかなか誘えなくて。
そしたらあの日、社食で、花重が可愛いとか話している奴がいて。
焦ってメモを貼り付けていた」
「……ぷっ」
照れ屋の樹馬さんらしい理由についつい吹き出していた。
「笑うなよ」
「だって」
私の口を塞ぐように樹馬さんの唇が重なる。
「花重」
樹馬さんの声は甘く熱を孕み、私をチョコレートのようにとろとろに溶かしていく。
「留奈みたいな可愛い子供が欲しい」
私もあんな、理想の家族になれるんだろうか。
――ううん、きっと樹馬さんとだったら大丈夫。
「私も欲しいです」
熱い、熱い瞳で樹馬さんは私を見ている。
そっとその手が私の頬に触れ、また唇が重なった。
そのまま彼の熱に、私は甘く甘く溶かされる。
【終】
海辺の道を走り、道の駅に寄ったり、ご当地の炙り海鮮丼を食べたりする。
夕方に着いたのは岬の公園だった。
いつものように自分のペースでどんどん歩いていく樹馬さんを追う。
あれは、好きな人と一緒にいる自分に耐えられなくて、ついつい歩くのが速くなってしまうらしい。
辿り着いた岬の突端には、鐘が設置してあった。
「この鐘を一緒に鳴らしたふたりは、一生添い遂げるという言い伝えがあるらしい」
樹馬さんは私の目の前に跪き、取りだした指環のケースをぱかりと開けた。
「花重、俺と一緒にこの鐘を鳴らしてほしい」
レンズの向こうの瞳が真摯に私を見つめている。
胸が熱いものでいっぱい溢れ、視界が滲んでいた。
「……はい」
抑えきれない感情で、私の声は震えていた。
私が返事をした途端に、樹馬さんの目が眩しそうに細められる。
そのまま立ち上がって私の左手薬指に指環を嵌めてくれた。
「鳴らそうか」
「はい」
夕日が沈む中、ふたりで紐を掴み勢いよく引っ張ると、カランカランとまるで私たちを祝福するような明るい音が岬に響いていった。
「花重を愛してる。
これからもよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします」
そっと樹馬さんの手が私の涙を拭う。
ゆっくりと顔が近づいてきて目を閉じた。
「おめでとう!」
「お幸せに!!」
「よかったねー!」
いつの間にか集まっていたギャラリーたちに、キスもそこそこにその場を後にした。
夜は近くのホテルを取っていてくれた。
しかも、スイートルームで華やかに花まで飾ってある。
夕食も豪華で、デザートには花火まで弾けていた。
「気に入ったか」
「はい」
この間の隠し事はきっと、これを計画していたんだと気づいた。
「一回、プロポーズに失敗したし、それにその後、なし崩しに結婚することになっただろ。
だからちゃんと、やり直したくて」
あのとき、ちゃんと樹馬さんの話も聞かずに家を出たことを少しだけ後悔した。
でもあの頃はまだ、樹馬さんの照れ体質なんて知らなかったので仕方ないといえば仕方ない。
「ありがとうございます」
ちゅっとキスしたら、樹馬さんの眼鏡のかかる耳が赤くなった。
「満足したんだったら、いい」
キスしながら樹馬さんが私を押し倒していく。
下から樹馬さんを見上げながら、ひとつだけ気になっていたことを思い出した。
「そういえばなんであの日、突然メモなんて置いたんですか」
「その、ずっと花重が気になっていたが、なかなか誘えなくて。
そしたらあの日、社食で、花重が可愛いとか話している奴がいて。
焦ってメモを貼り付けていた」
「……ぷっ」
照れ屋の樹馬さんらしい理由についつい吹き出していた。
「笑うなよ」
「だって」
私の口を塞ぐように樹馬さんの唇が重なる。
「花重」
樹馬さんの声は甘く熱を孕み、私をチョコレートのようにとろとろに溶かしていく。
「留奈みたいな可愛い子供が欲しい」
私もあんな、理想の家族になれるんだろうか。
――ううん、きっと樹馬さんとだったら大丈夫。
「私も欲しいです」
熱い、熱い瞳で樹馬さんは私を見ている。
そっとその手が私の頬に触れ、また唇が重なった。
そのまま彼の熱に、私は甘く甘く溶かされる。
【終】
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