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第5章 彼氏(仮)と過ごすクリスマス
5-5 邪魔、ですか?
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「こんにちはー」
「はーい」
セバスチャンを抱いて、松岡くんを玄関までお出迎え。
「本日もよろしくお願いいたします」
「お願いします」
やっぱり、コート姿の松岡くんは格好いい。
「……今日はえらく、気合い入ってるな」
途端にぼふっと、あたまのてっぺんから煙が出る。
昨日ついでに、服を買ってきた。
ディープグリーンのハイネックニットワンピにワンポイントでネックレス、それにストールなんて羽織って、女っぽさを演出してみた。
……なーんて。
お店でちょっといいかな、なんて見ていたところへ店員にいろいろ勧められ、逃げるタイミングを失ってお買い上げしたんだけど。
でも松岡くんが褒めてくれるんなら、買ってよかった。
「すぐにお茶の準備をいたしますので」
「お願い」
暇なのでセバスチャンの前で大好きなおもちゃなど振ってみる。
けど、松岡くんがきた=おやつの時間だと認識しているのか、松岡くんの方ばかり気にしている。
「にゃっ」
トレイを手にこちらへやってくる松岡くんの足下に、セバスチャンがまとわりつく。
「はい、おやつですね。
でも紅夏のお茶が先ですよ」
苦笑いでトレイをちゃぶ台の上に置き、彼はてきぱきとお茶の準備をはじめた。
でも今日はサンドイッチとスコーン、それにキッシュと、メインといえるケーキがない。
「本日は夜、ケーキを召し上がりますから、アフタヌーンティは省略させていただきました。
けれどそれでは紅夏のお腹が空いてしまいますので、代わりにキッシュを」
「……ありがとう」
松岡くんってほんと、いろいろ考えてくれるんだなー。
「本日のお茶はクリスマスブレンドでございます」
今日のお茶は林檎をメインに果物の香りがして、なんだか幸せな気分に浸れそう。
「セバスチャンもおやつですね」
松岡くんがポケットからおやつを出した途端、セバスチャンの目の色が変わる。
「にゃー、にゃー」
「はいはい、少々お待ちください」
相変わらず、執事モードのときは猫相手でも敬語なのがおかしい。
松岡くんがパッケージの封を切ると、セバスチャンが飛びついた。
「あれ?」
松岡くんが手にしているおやつが、いつもとパッケージの色が違うのに気づいた。
通常はオレンジとか水色のパッケージに白で字が入っているのだけれど、それは文字が金色だ。
「ああ、今日は高級な方をご用意しました。
クリスマスですからね、特別です」
――例によって松岡くんは猫に甘い。
今日は追われている仕事もないし、ぼーっと松岡くんが仕事をしているのを見ていた。
そういえば、いままでずっと仕事のフリをして閉じ籠もったりしていたから、こうやって松岡くんの仕事ぶりを見るのは初めてだ。
「お風呂の掃除をするときも執事服のままなんだね」
さすがに上着は脱いだが、あとは裾まくり袖まくりで浴槽を磨いていく。
彼が来てくれるようになってからは、水垢なんてついたことがない。
「アイロンかけるの、上手だね。
私がかけたら皺を伸ばしているのか作っているのかわかんないのに」
松岡くんの手にかかればアイロンは滑るように動き、皺は瞬く間に伸びていく。
私もあれくらい上手にかけられたらきっと、気持ちいいんだろうなー。
「時計の電池も替えてくれるの?
うわっ、さすがだね!
そこ、私でも手が届かないのに」
茶の間にかかっている時計を少しの背伸びだけで外し、松岡くんは電池を替えてくれた。
どおりで、あとで替えなきゃとか、あとで補充しなきゃとか思っていたことが、いつの間にか解消されているはずだ。
「ねえねえ……」
「……紅夏」
夢中になって私が話していたら、松岡くんがはぁっと短くため気を落とした。
「暇なんですか」
「あー、……うん。
一応、年内のお仕事は終わったから、今日は暇」
はぁっ、なぜかまた、松岡くんの口からため息が落ちる。
「座っていてもらえますか」
「あ、うん」
半ば無理矢理、肩を押さえられてこたつの前に座る。
「少し待っていてください」
「うん」
台所へ行ってやかんにジャーッと水を入れ、ガスコンロへ置く。
すぐにボッと火がついた。
松岡くんは紅茶を入れるのにポットのお湯を使わない。
絶対沸かしたて。
「どうぞ」
「……ありがと」
少しして、松岡くんはお茶を出してくれた。
「申し訳ありませんが、それを飲んで少々おとなしくしていてもらえませんか」
松岡くんの顔は綺麗な笑顔だったけど、はっきりと【迷惑だ】って書いてある。
「……はい。
すみませんでした」
うん、自分でもちょっと、ハイテンションになってまとわりつきすぎだったと思う。
反省、反省。
「はーい」
セバスチャンを抱いて、松岡くんを玄関までお出迎え。
「本日もよろしくお願いいたします」
「お願いします」
やっぱり、コート姿の松岡くんは格好いい。
「……今日はえらく、気合い入ってるな」
途端にぼふっと、あたまのてっぺんから煙が出る。
昨日ついでに、服を買ってきた。
ディープグリーンのハイネックニットワンピにワンポイントでネックレス、それにストールなんて羽織って、女っぽさを演出してみた。
……なーんて。
お店でちょっといいかな、なんて見ていたところへ店員にいろいろ勧められ、逃げるタイミングを失ってお買い上げしたんだけど。
でも松岡くんが褒めてくれるんなら、買ってよかった。
「すぐにお茶の準備をいたしますので」
「お願い」
暇なのでセバスチャンの前で大好きなおもちゃなど振ってみる。
けど、松岡くんがきた=おやつの時間だと認識しているのか、松岡くんの方ばかり気にしている。
「にゃっ」
トレイを手にこちらへやってくる松岡くんの足下に、セバスチャンがまとわりつく。
「はい、おやつですね。
でも紅夏のお茶が先ですよ」
苦笑いでトレイをちゃぶ台の上に置き、彼はてきぱきとお茶の準備をはじめた。
でも今日はサンドイッチとスコーン、それにキッシュと、メインといえるケーキがない。
「本日は夜、ケーキを召し上がりますから、アフタヌーンティは省略させていただきました。
けれどそれでは紅夏のお腹が空いてしまいますので、代わりにキッシュを」
「……ありがとう」
松岡くんってほんと、いろいろ考えてくれるんだなー。
「本日のお茶はクリスマスブレンドでございます」
今日のお茶は林檎をメインに果物の香りがして、なんだか幸せな気分に浸れそう。
「セバスチャンもおやつですね」
松岡くんがポケットからおやつを出した途端、セバスチャンの目の色が変わる。
「にゃー、にゃー」
「はいはい、少々お待ちください」
相変わらず、執事モードのときは猫相手でも敬語なのがおかしい。
松岡くんがパッケージの封を切ると、セバスチャンが飛びついた。
「あれ?」
松岡くんが手にしているおやつが、いつもとパッケージの色が違うのに気づいた。
通常はオレンジとか水色のパッケージに白で字が入っているのだけれど、それは文字が金色だ。
「ああ、今日は高級な方をご用意しました。
クリスマスですからね、特別です」
――例によって松岡くんは猫に甘い。
今日は追われている仕事もないし、ぼーっと松岡くんが仕事をしているのを見ていた。
そういえば、いままでずっと仕事のフリをして閉じ籠もったりしていたから、こうやって松岡くんの仕事ぶりを見るのは初めてだ。
「お風呂の掃除をするときも執事服のままなんだね」
さすがに上着は脱いだが、あとは裾まくり袖まくりで浴槽を磨いていく。
彼が来てくれるようになってからは、水垢なんてついたことがない。
「アイロンかけるの、上手だね。
私がかけたら皺を伸ばしているのか作っているのかわかんないのに」
松岡くんの手にかかればアイロンは滑るように動き、皺は瞬く間に伸びていく。
私もあれくらい上手にかけられたらきっと、気持ちいいんだろうなー。
「時計の電池も替えてくれるの?
うわっ、さすがだね!
そこ、私でも手が届かないのに」
茶の間にかかっている時計を少しの背伸びだけで外し、松岡くんは電池を替えてくれた。
どおりで、あとで替えなきゃとか、あとで補充しなきゃとか思っていたことが、いつの間にか解消されているはずだ。
「ねえねえ……」
「……紅夏」
夢中になって私が話していたら、松岡くんがはぁっと短くため気を落とした。
「暇なんですか」
「あー、……うん。
一応、年内のお仕事は終わったから、今日は暇」
はぁっ、なぜかまた、松岡くんの口からため息が落ちる。
「座っていてもらえますか」
「あ、うん」
半ば無理矢理、肩を押さえられてこたつの前に座る。
「少し待っていてください」
「うん」
台所へ行ってやかんにジャーッと水を入れ、ガスコンロへ置く。
すぐにボッと火がついた。
松岡くんは紅茶を入れるのにポットのお湯を使わない。
絶対沸かしたて。
「どうぞ」
「……ありがと」
少しして、松岡くんはお茶を出してくれた。
「申し訳ありませんが、それを飲んで少々おとなしくしていてもらえませんか」
松岡くんの顔は綺麗な笑顔だったけど、はっきりと【迷惑だ】って書いてある。
「……はい。
すみませんでした」
うん、自分でもちょっと、ハイテンションになってまとわりつきすぎだったと思う。
反省、反省。
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