家政夫執事と恋愛レッスン!?~初恋は脅迫状とともに~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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最終章 執事服の王子様

13-8 そしていつか

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 あ、後日譚なんだけど。

 蒼海文芸大賞に出したあれ。
 一次は突破したものの、二次で落選。

「結局、その程度のものだったんだよ」

 いまだに右手薬指は上手く動かないが、執筆は再開した。

「俺は面白かったけどな」

 克成がお茶を淹れてくれる。
 きっともう、コーヒーは飲めない。

 あれがもし、祐護さんの力で受賞していたらと思うと――ぞっとする。

 あんな、幼稚な小説。

 いま読み返すとわかる、いかにあれがダメな小説だったのか。
 あれが受賞作となれば、炎上間違いなし、だ。

「また次、頑張るよ。
きっと前よりいいの書けるし。
……それよりも。
こっちが大事ー!」

 ゆっくり、だけどTLノベルの仕事依頼も受けている。
 だって――たくさんの、ファンレターをいただいたから。


 あの事件のあと、私の本の売り上げは伸びた。
 祐護さんの思惑通りだとなると、腹立たしいけど。

 おかげでファンレターの中には嫌がらせの手紙もあったけど。
 でも大多数は励ましの手紙だった。

 頑張って、負けないで、作品を待っている。

「俺も、待ってるから」

 さらに克成が後押ししてくれた。

 だから私は、――またTLノベルを書いている。
 いまはまだ、これでいいんだと思う。
 無理して焦って、ほかのジャンルに手を出さなくても。

 いまは待ってくれている読者のために小説を書く。

 そしていつか。

 ――今度は、私と克成の物語を、書く。


【終】
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