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第9話 幸せになるのを許してほしい
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「なつ……古海さん」
「はい」
有史さんから声をかけられ、顔を上げた。
「ごめんね、どうしても夏音って呼んじゃう」
困ったように彼が笑う。
「いえ、いいですよ。
それでなんでしょうか」
「あ、うん。
これなんだけど……」
有史さんが差し出すタブレットを、私はのぞき込んだ。
あれから有史さんは会社で、偽装結婚だったことも含めて私たちの離婚を発表した。
そのほうが私がやりやすいだろ、って。
そういう気遣いが嬉しい。
スタッフの反応は「だろうな」だった。
それほどまでに有史さんの深里さん一筋は有名だったようだ。
みんな納得してくれたし、私の結婚を祝福してくれた。
――末石専務ただひとりを除いて。
「じゃあ、これはそういうことで」
「うん、そっちのほうがいいと思うよ」
「わかりました」
私が頷き、有史さんは社長室へ戻っていく。
これが普通の関係だとわかっていたが、どこか淋しかった。
「はい」
有史さんから声をかけられ、顔を上げた。
「ごめんね、どうしても夏音って呼んじゃう」
困ったように彼が笑う。
「いえ、いいですよ。
それでなんでしょうか」
「あ、うん。
これなんだけど……」
有史さんが差し出すタブレットを、私はのぞき込んだ。
あれから有史さんは会社で、偽装結婚だったことも含めて私たちの離婚を発表した。
そのほうが私がやりやすいだろ、って。
そういう気遣いが嬉しい。
スタッフの反応は「だろうな」だった。
それほどまでに有史さんの深里さん一筋は有名だったようだ。
みんな納得してくれたし、私の結婚を祝福してくれた。
――末石専務ただひとりを除いて。
「じゃあ、これはそういうことで」
「うん、そっちのほうがいいと思うよ」
「わかりました」
私が頷き、有史さんは社長室へ戻っていく。
これが普通の関係だとわかっていたが、どこか淋しかった。
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