孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第二章 可哀想だと自覚した

2-4

「それで。
いくつか確認します」

姿勢を正し、砺波さんが私に向き直る。
私が高志から借金を背負わされた経緯と、さらになぜか彼との生活についてまで聞かれた。

「うん。
だいたい海星から聞いた話とこっちで裏を取ったとおりだね」

「裏を取った……?」

とはどういうことなんだろう。
借金の肩代わりをしてもらう代わりに海星本部長の出す条件を呑むと決めてまだ、一日も経っていない。

「懇意にしている探偵事務所があるんだ。
とても優秀でね。
花音の元カレも探してもらった」

「と、いうわけ」

海星本部長が説明してくれ、砺波さんが頷く。
懇意にしている探偵事務所って、そんなに頻繁にお世話になることがあるんだろうか。
謎だ。

「うん、じゃあこのままいけると思うよ」

「よろしく頼む」

海星本部長と砺波さんは確認しあっているが、本当に大丈夫なんだろうか。

「それにしても遅いな」

砺波さんが腕時計で時間を確認する。

「まだ行かないだのなんだのごねてるんだろ。
来なけりゃ来ないで、速攻警察に駆け込むだけだけどな」

海星本部長が呆れたように肩を竦めたタイミングでドアがノックされる。

「はーい」

返事をして砺波さんは立ち上がり、ドアを開けた。

「三島様をお連れしました」

「はーい、ありがとう」

さらにドアを押さえて開け、砺波さんが来訪者を中に入るように促す。
大柄で髭面の屈強な男に引きずられるようにして入ってきたのは、高志だった。
確かにこんな男が相手では、逃げるなど無理だろう。

「とりあえず、座ってね」

先程まで自分が座っていた席に砺波さんが高志を無理矢理座らせる。

「いつもわるいな。
またよろしく頼むよ」

「いえ、こちらこそいつも、ありがとうございます。
では、失礼いたします」

男は礼儀正しくお辞儀をし、出ていった。
海星本部長が〝いつも〟とか〝また〟とか言っているから、懇意にしている方なのだろう。

「さて。
まずは自己紹介させてもらいます。
私はこちら、盛重海星さんの顧問弁護士をしている砺波と申します」

私たちと高志のあいだ、いわゆるお誕生日席に砺波さんは行き、高志へと名刺を差し出した。

「……で。
俺になんの用だよ」

高志は完全にふて腐れ、机に頬杖をついてそっぽを向いている。

「盛重さんが婚約者があなたから受けた不利益を訴えたいとおっしゃいましてね」

「婚約!?」

いきなり高志が立ち上がり、椅子が倒れそうになって大きな音を立てた。

「オマエ、二股してたのか!」

「やめないか!」

掴みかかろうと手を伸ばしてきた高志から、海星本部長が私を庇ってくれる。

「婚約したのはついさっきです。
知り合ったのも昨日ですし」

「はぁっ!?」

高志は驚いているが、まあそうだよね。
高志が出ていってから二日で婚約なんて私だって想定外だ。

「そんな昨日の今日で婚約なんてするかよ」

どさっと乱雑に高志は再び椅子に腰を下ろした。

「コンビニで偶然、手が触れあっただけで『運命だね』と花音さんの家に転がり込んだ人に言われたくありませんが」

唇を綺麗な三日月型につり上げ、海星本部長がにっこりと笑う。
それは酷く作りものめいていて、否定を許さなかった。

「……だいたい、オレがコイツに与えた不利益ってなんだよ?
反対にオレが受けたほうだけどな。
ああ、そうか。
オレが受けた不利益を訴えるって手もあるのか」

いいことを思いついたとばかりに頬を歪め、醜い笑みを高志が浮かべる。

「ええっと。
じゃあ、理由をお話ししますね。
まず、不当に坂下さんに背負わせた借金の即時返済」

砺波さんがひとつずつ読み上げていく。

「不当のなにも、コイツが勝手に借りた金だろ?
オレは知らない」

「そんな……!」

確かに私は高志に頼まれて借入証にサインした。
なのに、知らないなんて……!
「坂下さんに対する暴力の慰謝料。
以上になります」

「オレは暴力なんて振るってない」

逃げ切れると思ったのか高志がにやりと笑う。

「話はそれだけか?
どっちもオレは無実だ。
反対にそんな言いがかりをつけられたって名誉毀損で訴えてもいいけどな?」

私のほうへ身を乗り出し、高志はバカにするようにニヤニヤと笑っている。
それになんと言っていいのかわからなくて、黙って俯いた。
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