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最終章 決別と未来
8-3
「……海星」
胸を押してその腕の中から逃れ、彼を見上げる。
汚れた眼鏡ではよく表情が見えないが、それでも戸惑っているのはわかった。
「なんで私を責めないんですか……?」
彼が私を責めないのはわかっていた。
だからこそ、私は私が許せない。
「私を責めてくださいよ。
なんで俺を社長にしてくれなかったんだって罵ってくださいよ」
彼の胸を拳で叩き、感情をぶつけた。
じっと私を見つめたまま、海星は固まっている。
「……花音は俺に、罰してほしいのか」
なにも言わず、訴えるようにただ彼を見上げた。
「わかった」
頷いた彼が私を見下ろす。
「花音は一士の妻より早く妊娠して、俺を社長にできなかった。
だから」
一度、言葉を切り、海星が私の頬に触れる。
「一生、俺のもとから離れるのは許さん。
なにがあっても花音は俺のものだ。
別れるとか絶対に許さない」
私を見つめる、レンズの奥の瞳は揺るがない。
「……そんなの」
「ん?」
「そんなの、ご褒美じゃないですかー」
言い替えれば一生、海星は私と一緒にいるということだ。
それは私の望むところで、罰になっていない。
「そうか?
喧嘩して俺を嫌いになっても、別れられないんだぞ?」
からかうように海星が笑う。
「嫌いになったりしません」
「そうか」
再び私を抱き締めた海星の腕は優しい。
優しいからこそ、自分が嫌になる。
「俺は社長になれなくても、花音がいさえすればいいんだ」
「でも、会社、は」
一士本部長が社長になり、会社が潰れて迷惑をかける従業員の、関係会社のために社長になりたいのだと言っていた。
「一士が社長になったからって、いきなり会社が潰れるわけじゃないからな。
そのあいだにできることを外からするよ」
小さく海星が肩を竦める。
この人はこんなにもいっぱい考えている。
そんな彼を社長にできないのはやはり、惜しい。
「それに俺は、花音に感謝している」
「感謝、ですか……?」
私から離れた海星はソファーに座り、隣をぽんぽんした。
意味がわかり、そこに座る。
彼は私から眼鏡を取り、ポケットから出した眼鏡拭きで拭いてくれた。
「そう。
結婚報告で実家に行ったとき、怒ってくれただろ?
しかも花音はこの家の嫁にはならないと言っていた。
なんかそれで、もうこの家から自由になっていいんじゃないかって思えたんだ」
再び彼が、私に眼鏡をかけさせてくれる。
海星がそんなこと、考えているなんて知らなかった。
私はまだ、彼のすべてを理解していなかったんだな。
「だから花音には感謝してる。
俺をあの家から解放してくれてありがとう」
笑った彼は晴れ晴れとした顔をしていた。
少しは私、海星の役に立てたのかな。
だったら、いい。
「でもさ。
一士に子供ができたって聞いて、羨ましかったんだ」
「羨ましい……?」
なんだかんだいってもやはり、社長になりたかったのかと思ったものの。
「俺も、花音との子供が欲しい」
気がついたときにはソファーに押し倒されていた。
「社長になれるとか関係なく、花音との子供が欲しいんだ」
「……あっ」
耳朶に口付けを落とされ、甘い吐息が漏れる。
「私も海星との子供が欲しい」
自分から彼を引き寄せ、唇を重ねた。
互いに、ただ貪りあうキスをする。
唇が離れ、もどかしそうに海星はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩めた。
「……花音。
愛してる」
「あっ」
彼の唇が身体に触れたところから幸せが広がっていく。
私の服を脱がせ、海星は私を幸福感に溺れさせていった。
彼の指がぐちゅぐちゅと蜜壺をかき混ぜ、何度も潮を噴いた。
「すっかり癖になったな」
「だってぇ。
……ああっ!」
甘えるように声を出した瞬間、また潮を噴く。
そんな私を嗤い、海星はスラックスの前をくつろげ、下着の中から暴発寸前になっているそれを取り出した。
「ちょっと持たない、かも」
ゆっくりと彼が、私の身体の中に押し入ってくる。
「ん……あ……ああ……」
すっかり慣らされている私の花筒はそれだけで、歓喜の蜜を零しだす。
「気持ちよさそうだな」
「うん……」
うっとりと髪を撫でられ、頷いた。
「最初は気持ちいいと思えないとか、ちょっと苦痛だとか言っていたくせに」
ゆるゆると彼が、私の媚壁を擦る。
奧のさらに奥から引きずり出される快楽はつらいが、そのつらさが私に喜びを与えた。
「それはっ、海星がちゃんと、私を愛してくれたから……!」
ただ子供を作るためだけに抱かれていたら、やはりこの行為はあまり好きにはなれていなかっただろう。
でも海星は最初から丁寧に私を愛し、私も気持ちよくなれるように気遣ってくれた。
今では海星に抱かれるのが嬉しい、全身がそう叫んでいる。
「花音!」
海星の唇が深く重なる。
互いに求めあいながら、彼の動きは次第に余裕のないものへと変わっていった。
「愛してる。
花音を愛してる。
花音は一生、俺のものだ」
「愛してる、海星を愛している。
一生、離れたりしない」
指を絡めて手を握りあう。
最後の仕上げだとばかりに海星が奥を数度撞き、私が絶頂を迎えると同時に、子胤を彼が私の子宮へ注ぎ込む。
「ああーっ!」
「うっ。
……はぁーっ」
海星が深い息を吐く。
閉じた瞼を開けると彼と目があい、にっこりと微笑みあった。
「今日こそ絶対、子供できたよな」
「絶対です」
私の下腹部にのる彼の手に、私の手を重ねる。
これ以上ないほど、幸せだった。
胸を押してその腕の中から逃れ、彼を見上げる。
汚れた眼鏡ではよく表情が見えないが、それでも戸惑っているのはわかった。
「なんで私を責めないんですか……?」
彼が私を責めないのはわかっていた。
だからこそ、私は私が許せない。
「私を責めてくださいよ。
なんで俺を社長にしてくれなかったんだって罵ってくださいよ」
彼の胸を拳で叩き、感情をぶつけた。
じっと私を見つめたまま、海星は固まっている。
「……花音は俺に、罰してほしいのか」
なにも言わず、訴えるようにただ彼を見上げた。
「わかった」
頷いた彼が私を見下ろす。
「花音は一士の妻より早く妊娠して、俺を社長にできなかった。
だから」
一度、言葉を切り、海星が私の頬に触れる。
「一生、俺のもとから離れるのは許さん。
なにがあっても花音は俺のものだ。
別れるとか絶対に許さない」
私を見つめる、レンズの奥の瞳は揺るがない。
「……そんなの」
「ん?」
「そんなの、ご褒美じゃないですかー」
言い替えれば一生、海星は私と一緒にいるということだ。
それは私の望むところで、罰になっていない。
「そうか?
喧嘩して俺を嫌いになっても、別れられないんだぞ?」
からかうように海星が笑う。
「嫌いになったりしません」
「そうか」
再び私を抱き締めた海星の腕は優しい。
優しいからこそ、自分が嫌になる。
「俺は社長になれなくても、花音がいさえすればいいんだ」
「でも、会社、は」
一士本部長が社長になり、会社が潰れて迷惑をかける従業員の、関係会社のために社長になりたいのだと言っていた。
「一士が社長になったからって、いきなり会社が潰れるわけじゃないからな。
そのあいだにできることを外からするよ」
小さく海星が肩を竦める。
この人はこんなにもいっぱい考えている。
そんな彼を社長にできないのはやはり、惜しい。
「それに俺は、花音に感謝している」
「感謝、ですか……?」
私から離れた海星はソファーに座り、隣をぽんぽんした。
意味がわかり、そこに座る。
彼は私から眼鏡を取り、ポケットから出した眼鏡拭きで拭いてくれた。
「そう。
結婚報告で実家に行ったとき、怒ってくれただろ?
しかも花音はこの家の嫁にはならないと言っていた。
なんかそれで、もうこの家から自由になっていいんじゃないかって思えたんだ」
再び彼が、私に眼鏡をかけさせてくれる。
海星がそんなこと、考えているなんて知らなかった。
私はまだ、彼のすべてを理解していなかったんだな。
「だから花音には感謝してる。
俺をあの家から解放してくれてありがとう」
笑った彼は晴れ晴れとした顔をしていた。
少しは私、海星の役に立てたのかな。
だったら、いい。
「でもさ。
一士に子供ができたって聞いて、羨ましかったんだ」
「羨ましい……?」
なんだかんだいってもやはり、社長になりたかったのかと思ったものの。
「俺も、花音との子供が欲しい」
気がついたときにはソファーに押し倒されていた。
「社長になれるとか関係なく、花音との子供が欲しいんだ」
「……あっ」
耳朶に口付けを落とされ、甘い吐息が漏れる。
「私も海星との子供が欲しい」
自分から彼を引き寄せ、唇を重ねた。
互いに、ただ貪りあうキスをする。
唇が離れ、もどかしそうに海星はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩めた。
「……花音。
愛してる」
「あっ」
彼の唇が身体に触れたところから幸せが広がっていく。
私の服を脱がせ、海星は私を幸福感に溺れさせていった。
彼の指がぐちゅぐちゅと蜜壺をかき混ぜ、何度も潮を噴いた。
「すっかり癖になったな」
「だってぇ。
……ああっ!」
甘えるように声を出した瞬間、また潮を噴く。
そんな私を嗤い、海星はスラックスの前をくつろげ、下着の中から暴発寸前になっているそれを取り出した。
「ちょっと持たない、かも」
ゆっくりと彼が、私の身体の中に押し入ってくる。
「ん……あ……ああ……」
すっかり慣らされている私の花筒はそれだけで、歓喜の蜜を零しだす。
「気持ちよさそうだな」
「うん……」
うっとりと髪を撫でられ、頷いた。
「最初は気持ちいいと思えないとか、ちょっと苦痛だとか言っていたくせに」
ゆるゆると彼が、私の媚壁を擦る。
奧のさらに奥から引きずり出される快楽はつらいが、そのつらさが私に喜びを与えた。
「それはっ、海星がちゃんと、私を愛してくれたから……!」
ただ子供を作るためだけに抱かれていたら、やはりこの行為はあまり好きにはなれていなかっただろう。
でも海星は最初から丁寧に私を愛し、私も気持ちよくなれるように気遣ってくれた。
今では海星に抱かれるのが嬉しい、全身がそう叫んでいる。
「花音!」
海星の唇が深く重なる。
互いに求めあいながら、彼の動きは次第に余裕のないものへと変わっていった。
「愛してる。
花音を愛してる。
花音は一生、俺のものだ」
「愛してる、海星を愛している。
一生、離れたりしない」
指を絡めて手を握りあう。
最後の仕上げだとばかりに海星が奥を数度撞き、私が絶頂を迎えると同時に、子胤を彼が私の子宮へ注ぎ込む。
「ああーっ!」
「うっ。
……はぁーっ」
海星が深い息を吐く。
閉じた瞼を開けると彼と目があい、にっこりと微笑みあった。
「今日こそ絶対、子供できたよな」
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私の下腹部にのる彼の手に、私の手を重ねる。
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