23 / 145
3章
王子様の秘密 7
しおりを挟む
イズミさんが帰ってから、この後どうするのかをみんなで話し合った。
透さんと私がふたりで出かけるのは眞澄くんが絶対反対。近所だと誠史郎さんが一緒に行けないということで、みんなで少し遠くへ遊びに行こうと言う結論が出た。
電車で1時間ほどの、海にほど近い有名な場所へ行けばもしそこで知り合いに会っても誠史郎さんとは偶然会ったということで押し通せるはず。
もしものことがあっても、淳くんが言ってくれたら誰が相手でも信じてくれると思うし。
それにしても、この男性陣は目立つ。駅のホームでも電車の中でもキラキラしている。
「着いたら昼飯?」
「俺、中華街がええなー」
「中華街って何?」
「中華料理店がたくさんある場所だよ」
「予約できるお店を探しましょう」
誠史郎さんがスマホを操作してお店探しをしてくれている。
私は未だにガラケーだから、そろそろスマホに変更したいなと誠史郎さんの手元を見つめてしまう。
電車を乗り継いで、中華街に1番近い駅で降りた。そして誠史郎さんが予約してくれたお店へ行ってみんなでランチを楽しくいただいた。
そして腹ごなしの散歩に海沿いの大きな公園へ移動する。潮の香りが風に乗って漂っていた。
「気持ちいいー」
私は精一杯伸びをする。
色とりどりのお花がたくさん咲いていて、見ているだけで楽しい。枝垂れ桜やいろいろな種類のバラを見ることができた。
しばらく散策していると海上バス乗り場の辺りに差しかかった。
もう少しで出発の時間だったので乗ることにして、みんなで船で移動した。
次の停船場で降りると、赤レンガ倉庫は目の前だった。海の方を見ると大きなクルーズ船が悠々と進んでいる。
柵に掴まって海を眺めていると、淳くんが隣にやって来た。
ミルクティーの色の髪が風になびいて、それを片手で抑えているだけなのにとても絵になる。
「みんなは?」
「裕翔がアイスクリームが食べたいって言うから買いに行ったよ」
お昼をあれだけ食べてさらにデザートだなんて、すごい食欲だと感心してしまう。
「誠史郎が僕らの分も買ってきてくれるって言ってたから、ここで待っていよう」
公園も中華街もそうだったけれど、土曜日なのでやっぱりここも混雑している。
「みんなで出かけられて良かったね」
淳くんはとても穏やかに微笑んだ。私もつられて微笑んでしまう。淳くんは本当に不思議。
「淳くんはどうしていつもそんなに穏やかでいられるの?」
単純に疑問に感じていたことを思わず聞いてしまった。
すると淳くんは、少し困ったように双眸を細める。
「僕は穏やかじゃないよ。本当の僕を知ったら、みさきはきっと……」
ミルクティーのような色の瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
淳くんから目が離せなくなっていると、強い海風が吹いた。驚いて目を閉じてしまい、再び開いたら目の前にいたはずの淳くんの姿がない。
「淳くん!?」
驚いて探しに行こうと一歩踏み出そうとした時、背後から私の両目を冷たくて大きな手が覆った。
「知らないままでいて」
耳元で淳くんの気品のある声が甘く囁く。
頭の芯がぼうっとしたような感覚に陥り、無意識に頷いてしまっていた。
「ありがとう」
淳くんは私をくるりと反転させて向かい合うと優しく微笑んでくれる。
そして彼は私の両方の二の腕の辺りをそっと掴むと、額にキスをした。
私自身に、現実に起こったことだと脳が理解するまで、少し時間がかかった。
私が真っ赤になって固まっていると、淳くんが笑顔でよしよしと頭を撫でてくれる。
「みさきー!」
裕翔くんが両手にアイスクリームの入ったカップを持って走って来た。
「はい、どーぞ」
満面の笑みの裕翔くんが、私にバニラアイスの入ったカップを渡してくれる。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、ニコッと裕翔くんは笑ったの。そしてスプーンいっぱいにストロベリーのアイスクリームの掬って、大きな口を開けてパクリと食べた。
「おいしー」
本当においしそうに裕翔くんが食べているので、見ているこっちまで幸せな気持ちになる。
「はい」
裕翔くんがは私にイチゴ味をひと口味見にくれようと、アイスクリームのたっぷり載ったスプーンを口元に差し出してくれる。
「ありがとう」
ありがたくいただいて、私のアイスクリームもスプーンに掬って裕翔くんの口の前に持っていく。パクリと裕翔くんがかぶりついてくれた。
淳くんは穏やかに微笑んで私達の様子を眺めている。
「裕翔クン、抜け駆けはあかんでー」
眞澄くん、誠史郎さん、透さんがアイスクリームを手に並んで歩いて来る。
海辺でみんなでワイワイ言いながら分け合って食べたアイスクリームは、いつもより美味しく感じた。
心配していたようなアクシデントはなく、混み合った帰りの電車に乗って最寄り駅まで戻った。
まだ日が暮れる前に帰れたのでヒスイくんに会うこともなかった。
「今日は俺、ここに泊まらせてもらおうかなー」
透さんの言葉で、なぜか家の中に妙な緊張感が走った。
透さんと私がふたりで出かけるのは眞澄くんが絶対反対。近所だと誠史郎さんが一緒に行けないということで、みんなで少し遠くへ遊びに行こうと言う結論が出た。
電車で1時間ほどの、海にほど近い有名な場所へ行けばもしそこで知り合いに会っても誠史郎さんとは偶然会ったということで押し通せるはず。
もしものことがあっても、淳くんが言ってくれたら誰が相手でも信じてくれると思うし。
それにしても、この男性陣は目立つ。駅のホームでも電車の中でもキラキラしている。
「着いたら昼飯?」
「俺、中華街がええなー」
「中華街って何?」
「中華料理店がたくさんある場所だよ」
「予約できるお店を探しましょう」
誠史郎さんがスマホを操作してお店探しをしてくれている。
私は未だにガラケーだから、そろそろスマホに変更したいなと誠史郎さんの手元を見つめてしまう。
電車を乗り継いで、中華街に1番近い駅で降りた。そして誠史郎さんが予約してくれたお店へ行ってみんなでランチを楽しくいただいた。
そして腹ごなしの散歩に海沿いの大きな公園へ移動する。潮の香りが風に乗って漂っていた。
「気持ちいいー」
私は精一杯伸びをする。
色とりどりのお花がたくさん咲いていて、見ているだけで楽しい。枝垂れ桜やいろいろな種類のバラを見ることができた。
しばらく散策していると海上バス乗り場の辺りに差しかかった。
もう少しで出発の時間だったので乗ることにして、みんなで船で移動した。
次の停船場で降りると、赤レンガ倉庫は目の前だった。海の方を見ると大きなクルーズ船が悠々と進んでいる。
柵に掴まって海を眺めていると、淳くんが隣にやって来た。
ミルクティーの色の髪が風になびいて、それを片手で抑えているだけなのにとても絵になる。
「みんなは?」
「裕翔がアイスクリームが食べたいって言うから買いに行ったよ」
お昼をあれだけ食べてさらにデザートだなんて、すごい食欲だと感心してしまう。
「誠史郎が僕らの分も買ってきてくれるって言ってたから、ここで待っていよう」
公園も中華街もそうだったけれど、土曜日なのでやっぱりここも混雑している。
「みんなで出かけられて良かったね」
淳くんはとても穏やかに微笑んだ。私もつられて微笑んでしまう。淳くんは本当に不思議。
「淳くんはどうしていつもそんなに穏やかでいられるの?」
単純に疑問に感じていたことを思わず聞いてしまった。
すると淳くんは、少し困ったように双眸を細める。
「僕は穏やかじゃないよ。本当の僕を知ったら、みさきはきっと……」
ミルクティーのような色の瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
淳くんから目が離せなくなっていると、強い海風が吹いた。驚いて目を閉じてしまい、再び開いたら目の前にいたはずの淳くんの姿がない。
「淳くん!?」
驚いて探しに行こうと一歩踏み出そうとした時、背後から私の両目を冷たくて大きな手が覆った。
「知らないままでいて」
耳元で淳くんの気品のある声が甘く囁く。
頭の芯がぼうっとしたような感覚に陥り、無意識に頷いてしまっていた。
「ありがとう」
淳くんは私をくるりと反転させて向かい合うと優しく微笑んでくれる。
そして彼は私の両方の二の腕の辺りをそっと掴むと、額にキスをした。
私自身に、現実に起こったことだと脳が理解するまで、少し時間がかかった。
私が真っ赤になって固まっていると、淳くんが笑顔でよしよしと頭を撫でてくれる。
「みさきー!」
裕翔くんが両手にアイスクリームの入ったカップを持って走って来た。
「はい、どーぞ」
満面の笑みの裕翔くんが、私にバニラアイスの入ったカップを渡してくれる。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、ニコッと裕翔くんは笑ったの。そしてスプーンいっぱいにストロベリーのアイスクリームの掬って、大きな口を開けてパクリと食べた。
「おいしー」
本当においしそうに裕翔くんが食べているので、見ているこっちまで幸せな気持ちになる。
「はい」
裕翔くんがは私にイチゴ味をひと口味見にくれようと、アイスクリームのたっぷり載ったスプーンを口元に差し出してくれる。
「ありがとう」
ありがたくいただいて、私のアイスクリームもスプーンに掬って裕翔くんの口の前に持っていく。パクリと裕翔くんがかぶりついてくれた。
淳くんは穏やかに微笑んで私達の様子を眺めている。
「裕翔クン、抜け駆けはあかんでー」
眞澄くん、誠史郎さん、透さんがアイスクリームを手に並んで歩いて来る。
海辺でみんなでワイワイ言いながら分け合って食べたアイスクリームは、いつもより美味しく感じた。
心配していたようなアクシデントはなく、混み合った帰りの電車に乗って最寄り駅まで戻った。
まだ日が暮れる前に帰れたのでヒスイくんに会うこともなかった。
「今日は俺、ここに泊まらせてもらおうかなー」
透さんの言葉で、なぜか家の中に妙な緊張感が走った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる