祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

文字の大きさ
22 / 145
3章

王子様の秘密 6

しおりを挟む
 あの日から翡翠くんにも遥さんにも会うことは無く週末を迎えた。
  変わったことと言えば、透さんが1日置きに私たちの下校時間に校門に迎えに来てくれて、そのまま一緒に夕飯を食べて帰るようになったことぐらい。

 明日はお休みで、イズミさんが私と裕翔くんのタリスマンの完成品を届けてくれる予定。

 私は透さんがお土産にくれた大きな瓶に入っているバスソルトを溶かした湯船に浸かった。
  大きく深呼吸をすると、浴室を満たしたオリエンタルな香りが鼻腔をくすぐる。

  それにしてもイズミさんと言い透さんと言い、私は女子力で負けている気がする。

 と、言うか、私は全般に渡ってみんなの足を引っ張っている。私の存在がみんなに迷惑をかけている。

 思わずため息を吐いてしまって、慌てて首を何度も横に振った。
  みんなとても鋭いから、私がこんなマイナス思考に陥っていたらものすごい勢いで心配してくれる。それはまた申し訳ない気持ちになってしまう。

 強くなるしかない。せめて足手まといにならないように。
 いつもながらその答えにしか行き着かないのだけど、それしかない、と湯船を出た。





「おっはよ~!」

 イズミさんがまたたくさんの荷物を抱えて、我が家へ来てくれた。

「おはようございます」
「淳くんの微笑み、本当に癒されるわ~」

 淳くんとイズミさんの足元で、みやびちゃんが毛を逆立ててイズミさんをいかくしている。

  淳くんはスマートにイズミさんの荷物を代わりに持って家の中へ案内する。

「おはよー」

 リビングへ行くと、裕翔くんがワクワクした様子でイズミさんの側へ駆け寄って来た。

「おはようございます」
「……おはよう」

 優雅に本を読んでいた誠史郎さんと、ソファーを盾のようにして警戒している眞澄くん。

「眞澄くーん、会いたかったわ~」

 両腕を広げてイズミさんが眞澄くんに駆け寄ろうとすると、私の背中の影に眞澄くんは隠れた。

「イズミさん!眞澄より、早くオレのタリスマン見せてよー」

 裕翔くんがイズミさんのシャツの裾を引っ張っる。

「お代の中に眞澄くんとハグするのも入っ……」
「なんや、朝から騒がしいなあ」

 いつの間にか透さんが来ていた。淳くんが通してくれたみたい。

「あら~、透くん~」
「お久しぶりです」

 イズミさんに透さんは会釈する。ふたりも知り合いだったみたいだ。祓い屋業界は広いようで狭い。

「みさきちゃん、家の中に閉じこもっててもらちが開かんから俺と出かけへん?」

 透さんがにっこり笑って私の手を握ろうとしたけれど、眞澄くんが間に割って入った。

「……俺も行く」

「いけませんよ、ふたりとも。まずはイズミさんからタリスマンをいただいて、出かけるのはその後です」

「お母様はお元気~?」
「めっちゃ元気。せやから俺はしばらくひとりで首都圏で仕事しろって追い出されたんや」

「え……。それでこちらに?」

 淳くんが少し驚いた様子で透さんに問いかける。どうやら私たちが思っていたような難しい事情はなかった。

「そうや。ホンマ人使いの荒いオカンやで。真堂さんとこへは絶対挨拶行け言われるし。来たら早々吸血鬼騒動の依頼があるし」

 裕翔くんの視線が天井の辺りを泳ぐ。

「ま、おかげで可愛いみさきちゃんとも会えたんやけど」

 ウインクして見せた透さんにイズミさんが後ろから抱きついて、頬を指先でつついた。

「みさきちゃん、気をつけなさいよ~。透くんはとんでもない狼よ~」
「人聞き悪いなあ」

「絶対とんでもない狼だろ……」
「眞澄クンに言われたくないなぁ」

「そうね~。種類はちょっと違うけど。みさきちゃんは大変ね~」

 イズミさんにそう言われたけれど、私の何が大変なのかわからなくて腕を組んで首を傾げて考える。

「なかなかの強敵やな」
「ねー、オレのタリスマンはー?」

 すっかり忘れられていた裕翔くんが唇を尖らせる。

「やだ~、ごめんなさいね~」

 イズミさんは持ってきた荷物へ駆け寄ると中からふたつの箱を取り出してテーブルに置いた。
  ひとつは腕時計、もうひとつはネックレスが入っていた。

「腕時計がみさきちゃんのよ~。ネックレスは裕翔くん~」

「ありがとうございます」
「ありがとうー!」

 裕翔くんがイズミさんの腕にしがみつく。

「いいのよ~。お仕事だもの~」

 イズミさんが裕翔くんの頭をよしよしと撫でた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...