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淳ルート 2章
暗くなるまで待って 2
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淳くんの視線が上がって堺さんを真っ直ぐに見る。
「申し訳ありませんが、今回のお話はお断りさせていただきます」
涼やかで上品な声が柔らかくそう告げる。
「そうですか……」
堺さんがガックリと肩を落とした。
「私たちにメリットのある交渉ができるようでしたら、また声をかけてください」
誠史郎さんが横から嘴を挟む。挑発するような言葉に驚いて彼を見ると、大島さんを見て薄く微笑んでいた。
「ほんならお暇しよかー」
透さんは立ち上がって伸びをする。みんなそれぞれに席を立ち、会議室の出入口へ歩き始める。
堺さんは立ってみんなに会釈していた。こちらもみんな、お辞儀をして出ていく。
私もだけど、誰も大島さんの淹れてくれたお茶に手をつけていなかった。
「あーら、残念」
片付けようとしていた彼女はそう呟いていた。
せっかく都会に出てきたので、乗り換えのターミナル駅にたくさんの百貨店があるからどこかへ寄ろうと透さんが言った。
せっかくのなので、少し歩くけれど一番大きいところへ行くことにする。
地下のお惣菜売り場へ行くとおいしそうなものがたくさんあってワクワクした。どれを買おうか目移りしてしまう。
「お肉が食べたーい!」
同じくウキウキしている裕翔くんとふたり、キョロキョロしてしまう。
「走るな。幼稚園児じゃないんだから」
今にも駆け出してしまいそうな裕翔くんの頭を眞澄くんが大きな手で掴むように押さえる。そう言えば裕翔くんはここに来るのは初めてな気がする。はしゃぐ気持ちはわかる。
「お弁当、買って帰る?」
「そうですね」
淳くんと誠史郎さんもこう言っている。夕飯はお弁当かお惣菜だ。デザートも買って帰りたい。何から決めようか悩んでしまう。
「デザートは僕とみさきで決めるから、夕飯は任せるね」
淳くんが王子様の微笑みを浮かべて、すっと手を繋いだ。そして人混みに紛れてみんなから離れてしまう。
意外な行動にドキドキしながら、整った横顔を盗み見る。
「どうしたの?」
見ていたことに気づかれていた。淳くんは穏やかに微笑んでいる。
「最近、淳くん大胆だなって……」
それを聞いて淳くんはふふ、と小さく笑った。
「悩むのを止めようと思って」
私は無言のまま淳くんを見上げた。周りはたくさんの人が行き交っているのに、淳くんのことしか見えない。
「悩んでいる間にみさきを他の人にさらわれたくないからね」
満面の笑顔に、胸がきゅんとする。天使の微笑みだ。
スイーツのお店が集まる一角へ到着した。
見た目もかわいくておいしそうなお菓子がたくさんある。全部食べたくなってしまう。
角にあるお店に並べられている動物をモチーフにしたケーキに目を奪われてしまった。
「みさきに似てる」
そう言った淳くんの形の良い指が差していたのはピンクのうさぎさんだった。まるくてころんとしている。
「これにしようか」
照明のせいだろうか。淳くんがいつもより艶っぽくて、直視すると眩暈がしそうになる。
うさぎのケーキはみっつしか並んでいなかったので、違う種類も買い求めてお惣菜売り場へみんなを探しに行く。
「裕翔がお肉って言ってたから、みんなお肉屋さんかな?」
淳くんはケーキを持って、反対の手を私と繋いで人の波をするすると器用に抜けていく。だけど私が歩きやすいように気を使ってくれていた。
「連絡してみる?」
「……みさき」
指が痛みを感じるほど強く握られる。
突然どうしたのだろうと頭ひとつ背の高い淳くんを見上げた。白い頬が少し強張っているように感じる。
「淳くん?」
「みさきの嫌がることはしないから」
突然何を言い出すのか、と驚いて顔が赤くなる。
「あ、淳くん……?」
面食らう私を淳くんの琥珀色の双眸が捉える。心臓が痛いぐらい大きく脈打つ。ほっぺにちゅーぐらいはくるのかと、目を閉じて待った。
「僕のやり方で月白を止めたいから、協力してもらえるかな?」
ぱっと両目を見開く。一瞬頭が真っ白になった。私は何を期待していたのだろう。淳くんが人目を憚らずキスしたりするはずないのに舞い上がっていた。穴があったら入りたいぐらい恥ずかしい。
高速で何度もこくこくと首を縦に振る。恥ずかしくて頭を抱えたくなったけれど、じわじわ嬉しくなってきた。淳くんがひとりでどうにかしようとしないで、私を巻き込んでくれている。
「ありがとう」
見る者を幸せにする極上の微笑み。見惚れていると、淳くんの唇が耳元に寄せられる。
「キスはふたりきりのときに、ね?」
私の思考は淳くんにだだもれだった。少し照れくさそうに破顔した淳くんは、思わず抱きしめたくなるほどかわいらしい。
顔を見合わせてまた笑い合った。
家に帰るとみやびちゃんが玄関マットの上で待っていた。淳くんの姿を見るなりすっくと立ち上がって、足元にかまってとスリスリしに行く。
「ただいま、みやび」
軽く頭を撫でられたみやびちゃんは、満足そうな表情で淳くんにまとわりついている。
ネコという利点を最大限に活かした甘え方だ。羨ましい。
淳くんが帰りの電車でみんなに伝えたのは、今日からしばらくの間、夜になったら月白さんをおびき出すために私とふたりで散歩に出るということだった。こちらがふたりなら、相手も乗ってくるはず、と。
すぐに理解を示してくれたのは眞澄くん。淳くんは言い出したら聞かないと言って、優しく微笑んでいた。
何かあったらみんながすぐに駆けつけられるように、あまり遠くへは行かないことと、携帯電話を忘れずに持って行くように念を押された。
それはもちろん、私たちも気をつけるつもりだ。武器だってきちんと携帯する。
私たちは囮だ。それはわかっているけれど、やっぱりふたりきりになれるのは嬉しかった。
夕飯を食べてから一時間ほどふたりで歩いて回ったけれど、今日は空振りだった。
「申し訳ありませんが、今回のお話はお断りさせていただきます」
涼やかで上品な声が柔らかくそう告げる。
「そうですか……」
堺さんがガックリと肩を落とした。
「私たちにメリットのある交渉ができるようでしたら、また声をかけてください」
誠史郎さんが横から嘴を挟む。挑発するような言葉に驚いて彼を見ると、大島さんを見て薄く微笑んでいた。
「ほんならお暇しよかー」
透さんは立ち上がって伸びをする。みんなそれぞれに席を立ち、会議室の出入口へ歩き始める。
堺さんは立ってみんなに会釈していた。こちらもみんな、お辞儀をして出ていく。
私もだけど、誰も大島さんの淹れてくれたお茶に手をつけていなかった。
「あーら、残念」
片付けようとしていた彼女はそう呟いていた。
せっかく都会に出てきたので、乗り換えのターミナル駅にたくさんの百貨店があるからどこかへ寄ろうと透さんが言った。
せっかくのなので、少し歩くけれど一番大きいところへ行くことにする。
地下のお惣菜売り場へ行くとおいしそうなものがたくさんあってワクワクした。どれを買おうか目移りしてしまう。
「お肉が食べたーい!」
同じくウキウキしている裕翔くんとふたり、キョロキョロしてしまう。
「走るな。幼稚園児じゃないんだから」
今にも駆け出してしまいそうな裕翔くんの頭を眞澄くんが大きな手で掴むように押さえる。そう言えば裕翔くんはここに来るのは初めてな気がする。はしゃぐ気持ちはわかる。
「お弁当、買って帰る?」
「そうですね」
淳くんと誠史郎さんもこう言っている。夕飯はお弁当かお惣菜だ。デザートも買って帰りたい。何から決めようか悩んでしまう。
「デザートは僕とみさきで決めるから、夕飯は任せるね」
淳くんが王子様の微笑みを浮かべて、すっと手を繋いだ。そして人混みに紛れてみんなから離れてしまう。
意外な行動にドキドキしながら、整った横顔を盗み見る。
「どうしたの?」
見ていたことに気づかれていた。淳くんは穏やかに微笑んでいる。
「最近、淳くん大胆だなって……」
それを聞いて淳くんはふふ、と小さく笑った。
「悩むのを止めようと思って」
私は無言のまま淳くんを見上げた。周りはたくさんの人が行き交っているのに、淳くんのことしか見えない。
「悩んでいる間にみさきを他の人にさらわれたくないからね」
満面の笑顔に、胸がきゅんとする。天使の微笑みだ。
スイーツのお店が集まる一角へ到着した。
見た目もかわいくておいしそうなお菓子がたくさんある。全部食べたくなってしまう。
角にあるお店に並べられている動物をモチーフにしたケーキに目を奪われてしまった。
「みさきに似てる」
そう言った淳くんの形の良い指が差していたのはピンクのうさぎさんだった。まるくてころんとしている。
「これにしようか」
照明のせいだろうか。淳くんがいつもより艶っぽくて、直視すると眩暈がしそうになる。
うさぎのケーキはみっつしか並んでいなかったので、違う種類も買い求めてお惣菜売り場へみんなを探しに行く。
「裕翔がお肉って言ってたから、みんなお肉屋さんかな?」
淳くんはケーキを持って、反対の手を私と繋いで人の波をするすると器用に抜けていく。だけど私が歩きやすいように気を使ってくれていた。
「連絡してみる?」
「……みさき」
指が痛みを感じるほど強く握られる。
突然どうしたのだろうと頭ひとつ背の高い淳くんを見上げた。白い頬が少し強張っているように感じる。
「淳くん?」
「みさきの嫌がることはしないから」
突然何を言い出すのか、と驚いて顔が赤くなる。
「あ、淳くん……?」
面食らう私を淳くんの琥珀色の双眸が捉える。心臓が痛いぐらい大きく脈打つ。ほっぺにちゅーぐらいはくるのかと、目を閉じて待った。
「僕のやり方で月白を止めたいから、協力してもらえるかな?」
ぱっと両目を見開く。一瞬頭が真っ白になった。私は何を期待していたのだろう。淳くんが人目を憚らずキスしたりするはずないのに舞い上がっていた。穴があったら入りたいぐらい恥ずかしい。
高速で何度もこくこくと首を縦に振る。恥ずかしくて頭を抱えたくなったけれど、じわじわ嬉しくなってきた。淳くんがひとりでどうにかしようとしないで、私を巻き込んでくれている。
「ありがとう」
見る者を幸せにする極上の微笑み。見惚れていると、淳くんの唇が耳元に寄せられる。
「キスはふたりきりのときに、ね?」
私の思考は淳くんにだだもれだった。少し照れくさそうに破顔した淳くんは、思わず抱きしめたくなるほどかわいらしい。
顔を見合わせてまた笑い合った。
家に帰るとみやびちゃんが玄関マットの上で待っていた。淳くんの姿を見るなりすっくと立ち上がって、足元にかまってとスリスリしに行く。
「ただいま、みやび」
軽く頭を撫でられたみやびちゃんは、満足そうな表情で淳くんにまとわりついている。
ネコという利点を最大限に活かした甘え方だ。羨ましい。
淳くんが帰りの電車でみんなに伝えたのは、今日からしばらくの間、夜になったら月白さんをおびき出すために私とふたりで散歩に出るということだった。こちらがふたりなら、相手も乗ってくるはず、と。
すぐに理解を示してくれたのは眞澄くん。淳くんは言い出したら聞かないと言って、優しく微笑んでいた。
何かあったらみんながすぐに駆けつけられるように、あまり遠くへは行かないことと、携帯電話を忘れずに持って行くように念を押された。
それはもちろん、私たちも気をつけるつもりだ。武器だってきちんと携帯する。
私たちは囮だ。それはわかっているけれど、やっぱりふたりきりになれるのは嬉しかった。
夕飯を食べてから一時間ほどふたりで歩いて回ったけれど、今日は空振りだった。
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