祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

文字の大きさ
105 / 145
淳ルート 2章

暗くなるまで待って 3

しおりを挟む
 夜の探索、三日目。そう簡単には目的を果たせない。
 月白さんに会える気配がないので、今日は帰ろうと淳くんと家へ向かいはじめる。

 いつもと違う道を通ると、小さな頃、淳くんと何度か遊んだことのある公園に通りかかった。ここは遊具がブランコと砂場しかない小さな遊び場だったので、それほど回数は来ていないけれど。

 あんなに大きく感じていたブランコが今は小さく思えた。

「みさき?」

 懐かしくて立ち止まった私に気がついた淳くんが少し首を傾げる。

「ここでも淳くんに遊んでもらったなーと思って」
「アイスクリームを落として、大泣きしてたね」

 淳くんはふわりと微笑んだ。

 言われたできごとは、全く記憶にない。

「覚えてない……」 

 小さいころの恥ずかしい話はこそばゆくて、斜め下を見てしまう。

かおるさんも一緒に来てくれた日で……」

 薫は私のお父さんのことだ。淳くんは私のお父さんのこともお母さんのことも名前で呼ぶ。

 思い出そうとするけれど、ちっとも映像は浮かばなかった。
 腕を組んでうんうん唸っている私を見て、淳くんはくすくすと笑う。

「あんなに泣いてたのに、落ちたアイスクリームをアリたちが運ぼうとしてるのに気づいてね。それを真剣に見てたよ。泣き止んで、僕と薫さんにアリの生態の質問攻めだった」

 きっと淳くんの脳内では、ちっちゃな私がしゃがみこんでアリを眺めている姿がリプレイされているのだろう。
 私が幼稚園児だったときの淳くんは、やっぱり見た人が息を呑むほどの美少年だった。それはさすがに覚えている。

「あのときの僕は何も答えられなくて、それが悔しかった。だから、あまねと薫さんに勉強を教えてもらうようになったんだ」
「だめだー。思い出せない」

 私は記憶の海に潜ることを止めた。現実に戻ってくると青年の淳くんがニコニコしている。そんな努力をしていたことも知らなかった。

「すごくかわいかった」

 鼓膜を揺らす言葉に驚いて、ぱっと隣に立つ白皙の美男子を見上げる。

「今もかわいいけど」

 呼吸するのと何も変わらない感じでこういうことが言えるのが、淳くんの王子様感だと思う。

「あっ、ありがとう……」

 心臓がどくどく鳴っているのがわかる。
 淳くんの長い腕が私を引き寄せた。穏やかに抱きしめられる。前髪にそっと唇が触れた。

「今はかわいいだけじゃなくて、綺麗になった」
「そ、そんなに誉められると……」

 ミルクティーの色の瞳に凝視されるだけで身体が火照ってしまう。

「本当のことを言っているだけだよ?この先みさきはもっと綺麗になっていくから、こうして捕まえておかないと、ね」

 頭のてっぺんから湯気が出ていると思う。

「大丈夫……だよ」

 ぽそりと淳くんの胸板に額を預けた。男性としては細い腰に腕を回す。

「みさき……」

 少し笑ったような吐息がこぼれたのが、頭の上で聞こえた。

「……うん」

 頷いた淳くんの大きな手が髪を優しく撫でてくれる。どきどきするけど、安心する。

「そろそろ戻ろうか」

 淳くんの声に名残惜しさが混じっていた。私も、もう少しこうしていたいけど、みんなが心配する。おとなしく頷いて、また手を繋いで歩きはじめた。



 ††††††††



 淳くんも眞澄くんも進学を希望している受験生だ。予備校には行っていないから、家で勉強している。
 今日は近所では一番大きな本屋さんへ参考書を買いに行くと言うので、ついて行くことにした。私も数学の問題集を買おうと思う。

 その本屋はショッピングセンターの中に入っているので、同じ建物の中にフードコートもある。
 お昼ごはんはそこで食べて帰ろうと言う話になった。

 透さんが車に乗せてくれると言うので甘えてしまった。裕翔くんも一緒にきた。誠史郎さんは一度自宅に戻ると朝うちを出た。

「トールは大学行ってたの?」

 裕翔くんは後部座席でくつろぎながら、運転中の透さんに質問する。

「一応行ってたで」
「そっかー。じゃあオレも勉強しなきゃなー」
「おー、エライエライ」

 目的地へ向かって車は右折する。

「眞澄と淳が同じトコ行ったら、みさきもソコ目指すの?」

 隣に座る裕翔くんはかわいく首を傾げた。

 確かにそうしたいけど、ふたりともたぶん公立の大学へ行く。誠史郎さんとそんな話をしていたのを聞いた。

 眞澄くんと淳くんは自分の稼いだお金で学費を払うつもりらしい。だから仕事をしながら勉強もがんばっている。ふたりとも、本当にすごい。

「行けるようにがんばる」

 ガッツポーズをして頷く。私の今の学力では厳しい。だから努力しなくては。

「同じとこ来てくれた方が、俺たちも安心だよ」

 一番後ろにいる眞澄くんの言葉に、助手席の淳くんが笑顔で頷いた。

「まず俺たちが受からないといけないけどな」
「そうだね……」
「しゃーないなー。勤労学生たちに、おにーさんが昼はごちそうしたるわ」

 ちょっとブルーになったふたりに、透さんが運転しながらおどけて言う。

「ありがとうございます」

 淳くんがみんなを代表して、にこやかにお礼を言った。

 到着したら寄り道しないで本屋へ行った。
 透さんはマンガがたくさん並ぶところへ移動し、高校生チームは受験対策の本がたくさんある場所へ向かう。

 淳くんと眞澄くんが、私に合いそうな数学の問題集を何冊か見繕ってくれる。裕翔くんにも英語と数学の問題集を持たせていた。
 ふたりは平積みされていたセンター試験の過去問題集を手に取っていた。

 透さんと合流して、昼食を食べに行く。裕翔くんの希望でしゃぶしゃぶの食べ放題のお店になった。
 楽しい食事の時間を過ごして、夕飯の食材を併設されているスーパーで買ってから家に帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜

具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。 主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。 みたいなはなし ※表紙はAIです

処理中です...