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淳ルート 2章
暗くなるまで待って 3
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夜の探索、三日目。そう簡単には目的を果たせない。
月白さんに会える気配がないので、今日は帰ろうと淳くんと家へ向かいはじめる。
いつもと違う道を通ると、小さな頃、淳くんと何度か遊んだことのある公園に通りかかった。ここは遊具がブランコと砂場しかない小さな遊び場だったので、それほど回数は来ていないけれど。
あんなに大きく感じていたブランコが今は小さく思えた。
「みさき?」
懐かしくて立ち止まった私に気がついた淳くんが少し首を傾げる。
「ここでも淳くんに遊んでもらったなーと思って」
「アイスクリームを落として、大泣きしてたね」
淳くんはふわりと微笑んだ。
言われたできごとは、全く記憶にない。
「覚えてない……」
小さいころの恥ずかしい話はこそばゆくて、斜め下を見てしまう。
「薫さんも一緒に来てくれた日で……」
薫は私のお父さんのことだ。淳くんは私のお父さんのこともお母さんのことも名前で呼ぶ。
思い出そうとするけれど、ちっとも映像は浮かばなかった。
腕を組んでうんうん唸っている私を見て、淳くんはくすくすと笑う。
「あんなに泣いてたのに、落ちたアイスクリームをアリたちが運ぼうとしてるのに気づいてね。それを真剣に見てたよ。泣き止んで、僕と薫さんにアリの生態の質問攻めだった」
きっと淳くんの脳内では、ちっちゃな私がしゃがみこんでアリを眺めている姿がリプレイされているのだろう。
私が幼稚園児だったときの淳くんは、やっぱり見た人が息を呑むほどの美少年だった。それはさすがに覚えている。
「あのときの僕は何も答えられなくて、それが悔しかった。だから、周と薫さんに勉強を教えてもらうようになったんだ」
「だめだー。思い出せない」
私は記憶の海に潜ることを止めた。現実に戻ってくると青年の淳くんがニコニコしている。そんな努力をしていたことも知らなかった。
「すごくかわいかった」
鼓膜を揺らす言葉に驚いて、ぱっと隣に立つ白皙の美男子を見上げる。
「今もかわいいけど」
呼吸するのと何も変わらない感じでこういうことが言えるのが、淳くんの王子様感だと思う。
「あっ、ありがとう……」
心臓がどくどく鳴っているのがわかる。
淳くんの長い腕が私を引き寄せた。穏やかに抱きしめられる。前髪にそっと唇が触れた。
「今はかわいいだけじゃなくて、綺麗になった」
「そ、そんなに誉められると……」
ミルクティーの色の瞳に凝視されるだけで身体が火照ってしまう。
「本当のことを言っているだけだよ?この先みさきはもっと綺麗になっていくから、こうして捕まえておかないと、ね」
頭のてっぺんから湯気が出ていると思う。
「大丈夫……だよ」
ぽそりと淳くんの胸板に額を預けた。男性としては細い腰に腕を回す。
「みさき……」
少し笑ったような吐息がこぼれたのが、頭の上で聞こえた。
「……うん」
頷いた淳くんの大きな手が髪を優しく撫でてくれる。どきどきするけど、安心する。
「そろそろ戻ろうか」
淳くんの声に名残惜しさが混じっていた。私も、もう少しこうしていたいけど、みんなが心配する。おとなしく頷いて、また手を繋いで歩きはじめた。
††††††††
淳くんも眞澄くんも進学を希望している受験生だ。予備校には行っていないから、家で勉強している。
今日は近所では一番大きな本屋さんへ参考書を買いに行くと言うので、ついて行くことにした。私も数学の問題集を買おうと思う。
その本屋はショッピングセンターの中に入っているので、同じ建物の中にフードコートもある。
お昼ごはんはそこで食べて帰ろうと言う話になった。
透さんが車に乗せてくれると言うので甘えてしまった。裕翔くんも一緒にきた。誠史郎さんは一度自宅に戻ると朝うちを出た。
「トールは大学行ってたの?」
裕翔くんは後部座席でくつろぎながら、運転中の透さんに質問する。
「一応行ってたで」
「そっかー。じゃあオレも勉強しなきゃなー」
「おー、エライエライ」
目的地へ向かって車は右折する。
「眞澄と淳が同じトコ行ったら、みさきもソコ目指すの?」
隣に座る裕翔くんはかわいく首を傾げた。
確かにそうしたいけど、ふたりともたぶん公立の大学へ行く。誠史郎さんとそんな話をしていたのを聞いた。
眞澄くんと淳くんは自分の稼いだお金で学費を払うつもりらしい。だから仕事をしながら勉強もがんばっている。ふたりとも、本当にすごい。
「行けるようにがんばる」
ガッツポーズをして頷く。私の今の学力では厳しい。だから努力しなくては。
「同じとこ来てくれた方が、俺たちも安心だよ」
一番後ろにいる眞澄くんの言葉に、助手席の淳くんが笑顔で頷いた。
「まず俺たちが受からないといけないけどな」
「そうだね……」
「しゃーないなー。勤労学生たちに、おにーさんが昼はごちそうしたるわ」
ちょっとブルーになったふたりに、透さんが運転しながらおどけて言う。
「ありがとうございます」
淳くんがみんなを代表して、にこやかにお礼を言った。
到着したら寄り道しないで本屋へ行った。
透さんはマンガがたくさん並ぶところへ移動し、高校生チームは受験対策の本がたくさんある場所へ向かう。
淳くんと眞澄くんが、私に合いそうな数学の問題集を何冊か見繕ってくれる。裕翔くんにも英語と数学の問題集を持たせていた。
ふたりは平積みされていたセンター試験の過去問題集を手に取っていた。
透さんと合流して、昼食を食べに行く。裕翔くんの希望でしゃぶしゃぶの食べ放題のお店になった。
楽しい食事の時間を過ごして、夕飯の食材を併設されているスーパーで買ってから家に帰った。
月白さんに会える気配がないので、今日は帰ろうと淳くんと家へ向かいはじめる。
いつもと違う道を通ると、小さな頃、淳くんと何度か遊んだことのある公園に通りかかった。ここは遊具がブランコと砂場しかない小さな遊び場だったので、それほど回数は来ていないけれど。
あんなに大きく感じていたブランコが今は小さく思えた。
「みさき?」
懐かしくて立ち止まった私に気がついた淳くんが少し首を傾げる。
「ここでも淳くんに遊んでもらったなーと思って」
「アイスクリームを落として、大泣きしてたね」
淳くんはふわりと微笑んだ。
言われたできごとは、全く記憶にない。
「覚えてない……」
小さいころの恥ずかしい話はこそばゆくて、斜め下を見てしまう。
「薫さんも一緒に来てくれた日で……」
薫は私のお父さんのことだ。淳くんは私のお父さんのこともお母さんのことも名前で呼ぶ。
思い出そうとするけれど、ちっとも映像は浮かばなかった。
腕を組んでうんうん唸っている私を見て、淳くんはくすくすと笑う。
「あんなに泣いてたのに、落ちたアイスクリームをアリたちが運ぼうとしてるのに気づいてね。それを真剣に見てたよ。泣き止んで、僕と薫さんにアリの生態の質問攻めだった」
きっと淳くんの脳内では、ちっちゃな私がしゃがみこんでアリを眺めている姿がリプレイされているのだろう。
私が幼稚園児だったときの淳くんは、やっぱり見た人が息を呑むほどの美少年だった。それはさすがに覚えている。
「あのときの僕は何も答えられなくて、それが悔しかった。だから、周と薫さんに勉強を教えてもらうようになったんだ」
「だめだー。思い出せない」
私は記憶の海に潜ることを止めた。現実に戻ってくると青年の淳くんがニコニコしている。そんな努力をしていたことも知らなかった。
「すごくかわいかった」
鼓膜を揺らす言葉に驚いて、ぱっと隣に立つ白皙の美男子を見上げる。
「今もかわいいけど」
呼吸するのと何も変わらない感じでこういうことが言えるのが、淳くんの王子様感だと思う。
「あっ、ありがとう……」
心臓がどくどく鳴っているのがわかる。
淳くんの長い腕が私を引き寄せた。穏やかに抱きしめられる。前髪にそっと唇が触れた。
「今はかわいいだけじゃなくて、綺麗になった」
「そ、そんなに誉められると……」
ミルクティーの色の瞳に凝視されるだけで身体が火照ってしまう。
「本当のことを言っているだけだよ?この先みさきはもっと綺麗になっていくから、こうして捕まえておかないと、ね」
頭のてっぺんから湯気が出ていると思う。
「大丈夫……だよ」
ぽそりと淳くんの胸板に額を預けた。男性としては細い腰に腕を回す。
「みさき……」
少し笑ったような吐息がこぼれたのが、頭の上で聞こえた。
「……うん」
頷いた淳くんの大きな手が髪を優しく撫でてくれる。どきどきするけど、安心する。
「そろそろ戻ろうか」
淳くんの声に名残惜しさが混じっていた。私も、もう少しこうしていたいけど、みんなが心配する。おとなしく頷いて、また手を繋いで歩きはじめた。
††††††††
淳くんも眞澄くんも進学を希望している受験生だ。予備校には行っていないから、家で勉強している。
今日は近所では一番大きな本屋さんへ参考書を買いに行くと言うので、ついて行くことにした。私も数学の問題集を買おうと思う。
その本屋はショッピングセンターの中に入っているので、同じ建物の中にフードコートもある。
お昼ごはんはそこで食べて帰ろうと言う話になった。
透さんが車に乗せてくれると言うので甘えてしまった。裕翔くんも一緒にきた。誠史郎さんは一度自宅に戻ると朝うちを出た。
「トールは大学行ってたの?」
裕翔くんは後部座席でくつろぎながら、運転中の透さんに質問する。
「一応行ってたで」
「そっかー。じゃあオレも勉強しなきゃなー」
「おー、エライエライ」
目的地へ向かって車は右折する。
「眞澄と淳が同じトコ行ったら、みさきもソコ目指すの?」
隣に座る裕翔くんはかわいく首を傾げた。
確かにそうしたいけど、ふたりともたぶん公立の大学へ行く。誠史郎さんとそんな話をしていたのを聞いた。
眞澄くんと淳くんは自分の稼いだお金で学費を払うつもりらしい。だから仕事をしながら勉強もがんばっている。ふたりとも、本当にすごい。
「行けるようにがんばる」
ガッツポーズをして頷く。私の今の学力では厳しい。だから努力しなくては。
「同じとこ来てくれた方が、俺たちも安心だよ」
一番後ろにいる眞澄くんの言葉に、助手席の淳くんが笑顔で頷いた。
「まず俺たちが受からないといけないけどな」
「そうだね……」
「しゃーないなー。勤労学生たちに、おにーさんが昼はごちそうしたるわ」
ちょっとブルーになったふたりに、透さんが運転しながらおどけて言う。
「ありがとうございます」
淳くんがみんなを代表して、にこやかにお礼を言った。
到着したら寄り道しないで本屋へ行った。
透さんはマンガがたくさん並ぶところへ移動し、高校生チームは受験対策の本がたくさんある場所へ向かう。
淳くんと眞澄くんが、私に合いそうな数学の問題集を何冊か見繕ってくれる。裕翔くんにも英語と数学の問題集を持たせていた。
ふたりは平積みされていたセンター試験の過去問題集を手に取っていた。
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