108 / 145
淳ルート 2章
暗くなるまで待って 6
しおりを挟む
淳くんはそれぞれの手に銃を持って構えた。正面の月白さんを鋭く見据える。
ふたりはしばらくにらみあっていたけれど、月白さんが地面を強く蹴ってこちらへ猛スピードで突っ込んできた。
だけど淳くんがコルトで撃った3発の銀の弾丸は全弾正確に、無慈悲に月白さんの両足を撃ち抜く。
いくら吸血種とはいえ、銃撃を受けた衝撃で勢いよく地面に転がり倒れた。
「無謀ですね」
いつでも発砲できる状態のまま、淳くんは月白さんに近づく。
「あなたらしくない」
銃口は月白さんの心臓に向いていた。
「僕とあなたが、ここで争う必要はないと思います」
私は魔封じのロープで月白さんの両足首をひとつ縛った。これで時間は稼げる。
月白さんは私のことなど微塵も気にしていない様子で、ずっと淳くんを見ていた。
「おとなしく群れに帰って待っていてください」
「……長は、翡翠を見捨てる」
淳くんは一瞬ピクリと反応した。だけどすぐに平静を装う。
「もう時間がない」
哀願するように月白さんは言う。
「……あなたが翡翠とふたりで生きていく覚悟はないのですか?」
その言葉淳くんの目の前の青年は目を丸くする。その間に私は月白さんの身体を腕も一緒にロープでぐるぐる巻いて封じた。
「ふたりきりは難しいと言うなら、珠緒さんに……」
「バカにするな!」
月白さんの大きな声に私は驚いてしまう。
銀の弾丸に貫かれてかなりのダメージを受けているはずなのに、この反応。よほど彼の矜持を傷つけたとみえる。
「お前のように吸血種としての誇りのないものに、おれたちの何がわかる!?」
珠緒さんも吸血種だ。だけど人間と共存する道を選んでいるので、月白さんのいる群れとは正反対だ。
思想や思考の違いというのはやっかいで、そう簡単には溝を埋められない。
「わかりません」
淳くんは銃口の位置を変えることなく、冷ややかに告げる。
「僕は一度も、吸血種としての自分を誇ったことがないから」
月白さんは黙って淳くんを見ていた。
「だけど翡翠は、そんな僕でも生かしてくれた。彼と共に歩むことはできないけれど、実験台にされたままで良いなんて思っていない。必ず解放してもらう」
淡々と告げる淳くん。白い指先はいつでも引き金を引けるようになっている。
銀の弾丸のよる傷なのでかなりゆっくりとだけど、月白さんの傷口が修復していることに注意を払っているみたいだった。
「……翡翠のこと、よろしくお願いします」
頭を下げることはせず、紅蓮の瞳はまっすぐに人当たりの良さそうな青年を見つめる。
「そういうのは、翡翠を助け出してから言ってくれ」
動けなくされた月白さんは鼻を鳴らした。
「では僕が安心して行動できるよう、もう誰も傷つけないと約束してください」
「約束?あいかわらず甘いな」
嘲るように片頬だけで笑う。
「甘くありません」
かち、と小さく金属の動く音がする。
「約束できないのなら、今ここであなたの心臓を貫くだけです。約束してもらっても、野放しになんてしませんよ」
自転車を飛ばす人の姿が近づいてきていることに気づく。たぶん眞澄くんだ。みんながもうすぐ来てくれると、私はほっとした。
「野放しにしない、とは具体的にどうするつもりかな?」
魔封じのロープで動きを封じられているのに、月白さんは余裕そうだ。
「珠緒さんにあなたの身柄を預けます」
淳くんの案は確かに、私たちが彼を見張るより現実的に思えた。たぶん人間の血液という吸血種の食事だって提供してもらえる。
「……それは針のむしろだな」
月白さんは小さくため息をつく。だけど少し楽しそうにも見えた。
「その状況をつくったのはあなた自身だ」
「否定はしないけど」
「淳……っ!」
眞澄くんが結界の手前で自転車を乗り捨てて飛び込んできた。
脇差しを手にした彼は一目で状況を把握したみたいで、ちょっとほっとしたように息を吐く。
「みさき、下がってろ」
月白さんが逃げないように握っていたロープの端を持つのを交代してくれる。
3対1になって、さすがに月白さんは不利だと思ったようで身体の力を抜いた。 戦う意思はなくなったみたいだ。
「誠史郎たちもすぐ来る」
眞澄くんの言葉通り、誠史郎さんの運転する自動車が私たちのすぐ近くに停車した。
裕翔くんが助手席から降りてくる。
「なんだー。もう終わってた」
「その方が良いのですよ」
誠史郎さんも運転席から出てくると、後部座席のドアを開けた。
「真壁さんが彼を閉じ込めておく陣を用意してくださっています」
淳くんはうなずくと、月白さんの足を縛っていた魔封じはほどく。身体を巻いているものはそのままだ。
「おかしなことは考えないでください」
「みさきは前に乗って」
裕翔くんはそう言って、淳くんとの間に月白さんを挟むように後部座席に座る。
もし誰かに見られていたら騒ぎになってしまうけれど、幸い目撃者はいなかった。
「俺は先に帰ってるから」
眞澄くんは自転車で先に家へ向かう。
誠史郎さんもみんなが乗り込むとすぐに発車してくれた。
家までの道のりの時間、月白さんはおとなしく座っていた。そして透さんが鍛練場に作った魔法陣の中におとなしく入ってくれる。
珠緒さんに彼のことをお願いすると、今夜中に引き取ってくれると返事があった。
ふたりはしばらくにらみあっていたけれど、月白さんが地面を強く蹴ってこちらへ猛スピードで突っ込んできた。
だけど淳くんがコルトで撃った3発の銀の弾丸は全弾正確に、無慈悲に月白さんの両足を撃ち抜く。
いくら吸血種とはいえ、銃撃を受けた衝撃で勢いよく地面に転がり倒れた。
「無謀ですね」
いつでも発砲できる状態のまま、淳くんは月白さんに近づく。
「あなたらしくない」
銃口は月白さんの心臓に向いていた。
「僕とあなたが、ここで争う必要はないと思います」
私は魔封じのロープで月白さんの両足首をひとつ縛った。これで時間は稼げる。
月白さんは私のことなど微塵も気にしていない様子で、ずっと淳くんを見ていた。
「おとなしく群れに帰って待っていてください」
「……長は、翡翠を見捨てる」
淳くんは一瞬ピクリと反応した。だけどすぐに平静を装う。
「もう時間がない」
哀願するように月白さんは言う。
「……あなたが翡翠とふたりで生きていく覚悟はないのですか?」
その言葉淳くんの目の前の青年は目を丸くする。その間に私は月白さんの身体を腕も一緒にロープでぐるぐる巻いて封じた。
「ふたりきりは難しいと言うなら、珠緒さんに……」
「バカにするな!」
月白さんの大きな声に私は驚いてしまう。
銀の弾丸に貫かれてかなりのダメージを受けているはずなのに、この反応。よほど彼の矜持を傷つけたとみえる。
「お前のように吸血種としての誇りのないものに、おれたちの何がわかる!?」
珠緒さんも吸血種だ。だけど人間と共存する道を選んでいるので、月白さんのいる群れとは正反対だ。
思想や思考の違いというのはやっかいで、そう簡単には溝を埋められない。
「わかりません」
淳くんは銃口の位置を変えることなく、冷ややかに告げる。
「僕は一度も、吸血種としての自分を誇ったことがないから」
月白さんは黙って淳くんを見ていた。
「だけど翡翠は、そんな僕でも生かしてくれた。彼と共に歩むことはできないけれど、実験台にされたままで良いなんて思っていない。必ず解放してもらう」
淡々と告げる淳くん。白い指先はいつでも引き金を引けるようになっている。
銀の弾丸のよる傷なのでかなりゆっくりとだけど、月白さんの傷口が修復していることに注意を払っているみたいだった。
「……翡翠のこと、よろしくお願いします」
頭を下げることはせず、紅蓮の瞳はまっすぐに人当たりの良さそうな青年を見つめる。
「そういうのは、翡翠を助け出してから言ってくれ」
動けなくされた月白さんは鼻を鳴らした。
「では僕が安心して行動できるよう、もう誰も傷つけないと約束してください」
「約束?あいかわらず甘いな」
嘲るように片頬だけで笑う。
「甘くありません」
かち、と小さく金属の動く音がする。
「約束できないのなら、今ここであなたの心臓を貫くだけです。約束してもらっても、野放しになんてしませんよ」
自転車を飛ばす人の姿が近づいてきていることに気づく。たぶん眞澄くんだ。みんながもうすぐ来てくれると、私はほっとした。
「野放しにしない、とは具体的にどうするつもりかな?」
魔封じのロープで動きを封じられているのに、月白さんは余裕そうだ。
「珠緒さんにあなたの身柄を預けます」
淳くんの案は確かに、私たちが彼を見張るより現実的に思えた。たぶん人間の血液という吸血種の食事だって提供してもらえる。
「……それは針のむしろだな」
月白さんは小さくため息をつく。だけど少し楽しそうにも見えた。
「その状況をつくったのはあなた自身だ」
「否定はしないけど」
「淳……っ!」
眞澄くんが結界の手前で自転車を乗り捨てて飛び込んできた。
脇差しを手にした彼は一目で状況を把握したみたいで、ちょっとほっとしたように息を吐く。
「みさき、下がってろ」
月白さんが逃げないように握っていたロープの端を持つのを交代してくれる。
3対1になって、さすがに月白さんは不利だと思ったようで身体の力を抜いた。 戦う意思はなくなったみたいだ。
「誠史郎たちもすぐ来る」
眞澄くんの言葉通り、誠史郎さんの運転する自動車が私たちのすぐ近くに停車した。
裕翔くんが助手席から降りてくる。
「なんだー。もう終わってた」
「その方が良いのですよ」
誠史郎さんも運転席から出てくると、後部座席のドアを開けた。
「真壁さんが彼を閉じ込めておく陣を用意してくださっています」
淳くんはうなずくと、月白さんの足を縛っていた魔封じはほどく。身体を巻いているものはそのままだ。
「おかしなことは考えないでください」
「みさきは前に乗って」
裕翔くんはそう言って、淳くんとの間に月白さんを挟むように後部座席に座る。
もし誰かに見られていたら騒ぎになってしまうけれど、幸い目撃者はいなかった。
「俺は先に帰ってるから」
眞澄くんは自転車で先に家へ向かう。
誠史郎さんもみんなが乗り込むとすぐに発車してくれた。
家までの道のりの時間、月白さんはおとなしく座っていた。そして透さんが鍛練場に作った魔法陣の中におとなしく入ってくれる。
珠緒さんに彼のことをお願いすると、今夜中に引き取ってくれると返事があった。
0
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜
具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。
主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。
みたいなはなし
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる