120 / 145
誠史郎ルート 2章
禁断の果実 2
しおりを挟む
お隣から誰か私の後を付けていないか、背中を気にしながら駅へ向かう。
誠史郎さんは朝ごはんを食べ終わってからすぐに一度車で自宅に戻った。待ち合わせはお昼前に設定した。
ホームでも周囲を警戒していたけれど、山神さんは見当たらなかった。他にも雇われている人がいるかもしれないけれど。
電車を降りて、小走りで駅前のロータリーへ行く。見慣れた誠史郎さんの車はすぐに見つかった。
誰にも邪魔されたくなくて、自然に走り出していた。
運転席にある涼やかで整った横顔を確認して、助手席に滑り込む。
「お待たせしました」
素早くシートベルトを装着する。それを確認した誠史郎さんの流し目が妖艶でどきりとした。
「こちらこそ、お待たせしました。行きましょう」
緩やかにアクセルを踏んだ誠史郎さんはバックミラーを気にしている。私もつられて後ろを気にして振り返る。この車の動きに呼応するような車は今のところ見当たらなかった。
「少し遠くへ行きましょうか。木を隠すなら森の中が良いでしょうし」
都心へ向かう高速道路に向けて車は進む。ここまで来ると、もう後を追ってくる自動車があるかどうかは私には判断がつかない。
「昼食は少し遅くなっても構いませんか?」
「はい。大丈夫です」
時々バックミラーを気にしていた誠史郎さんが穏やかな様子なので、もう心配いらないのかもしれない。
一時間ほど経つと、高層ビルが両サイドに流れる風景になった。
土曜日のお昼なので、さすがに道路は混雑している。
そこから更に走ってトンネルに入る。カーナビは海へと向かっていることを示していた。
誠史郎さんが私を連れていこうとしている場所に察しがついた。わくわくしてくる。いろんな味のポップコーンがあるけれど、私はキャラメル味を買いたい。
「行き先はファンタジーキングダムですか?」
ファンタジーキングダムは日本で1番人気と言っても過言ではない、有名なテーマパーク。ケットシーという猫の精霊の王様がメインキャラクターだ。他にもいろんな動物がモチーフのたくさん仲間がいて、とてもかわいいグッズもたくさんある。
「ええ。あそこなら人がたくさんいますし、みさきさんとの約束もひとつ果たせます」
誠史郎さんの気持ちが嬉しくて頬が緩む。
ファンタジーキングダムが近くなってくると、高速道路に平行するように電車が走っているのが見えた。子どもの頃、何度か見た景色だと思い出す。最近は来ていなかった。
シンボルのお城が見えてくる。目的地はもう目の前だった。
駐車場に車を置いて、入園口へ向かって歩き始める。
すぐ隣にいる誠史郎さんを見上げる。手を繋ぎたい衝動に駆られた。
私の視線に気づいたのか、誠史郎さんがこちらに振り向いた。
目が合っただけで心臓が跳ねる。
何も言っていないのに、誠史郎さんのしなやかな手が私の手をそっと握ってくれた。どうしてわかったのだろうとうろたえてしまう。
「デートですから」
優しい微笑みに胸がきゅんとなる。自然にきゅっと握り返していた。
この時間がずっと続けば良いのに。
そう思いながらゲートをくぐる。チケットも誠史郎さんが用意してくれていた。急遽やって来たのに、何と言う準備の良さだろうと驚く。
入ってすぐの場所はいろんなグッズをお店がたくさん集まる区画になっている。
「郷に入っては郷に従いましょう」
そのお店はパーク内で多くの人が装着しているキャラクターの耳を模したカチューシャや帽子、Tシャツと言った身につけるものを中心に販売していた。
誠史郎さんの頭にネコミミ。すごく見たい。
わくわくしながら物色し始める。
「誠史郎さん!これはどうですか?」
「私よりみさきさんに似合うと思いますよ」
ここの王様の猫の灰色の耳を薦めたけれど、誠史郎にひょいと取り上げられて私の頭につけられる。
「私はサングラスにしますから、先にみさきさんの耳を選びましょう」
カチューシャがお妃様のピンクのネコミミの取り替えられる。私は誠史郎さんの楽しそうな表情に見とれてしまう。普段と違って、なんだかちょっと少年のような顔に思えた。これも王国の魔力だろうか。
「似合っていますよ。とてもかわいいです」
誠史郎さんにそう言われると照れてしまう。だけど今の私には誠史郎さんがとてもかわいく見える。人前なのに、つい好きと声に出してしまいそう。
「これにします」
私がそう伝えると、誠史郎さんは破顔してうなずいてくれた。
誠史郎さんはゆっくり吟味することなく、手近にあったケットシーをモチーフにしたシルバーのフレームのサングラスを取った。これをかけるのかとちょっと驚く。
「私がこんなサングラスをかけているなんて、知り合いは夢にも思わないでしょうから」
その笑顔は策士の表情だった。
カチューシャとサングラスを買って、お店の人にタグを取ってもらった。装着して外へ出る。もうすっかり王国の住人だ。
目元の隠れている誠史郎さんの口角が上がっている。互いに自然に手を取り合っていた。
「食べたいものはありますか?」
「肉まんが食べたいです」
王国にはレストランがいくつかあるけれど、売店のようなところで手軽に食べられるものもいろんな場所で売っている。
こんな機会はそんなにないと思うので、誠史郎さんとベンチに座って青空の下で食べたい。
「売っているお店の場所はご存知ですか?」
「忘れちゃったので、案内図見ましょう!」
誠史郎さんは穏やかな微笑みで応えてくれた。
誠史郎さんは朝ごはんを食べ終わってからすぐに一度車で自宅に戻った。待ち合わせはお昼前に設定した。
ホームでも周囲を警戒していたけれど、山神さんは見当たらなかった。他にも雇われている人がいるかもしれないけれど。
電車を降りて、小走りで駅前のロータリーへ行く。見慣れた誠史郎さんの車はすぐに見つかった。
誰にも邪魔されたくなくて、自然に走り出していた。
運転席にある涼やかで整った横顔を確認して、助手席に滑り込む。
「お待たせしました」
素早くシートベルトを装着する。それを確認した誠史郎さんの流し目が妖艶でどきりとした。
「こちらこそ、お待たせしました。行きましょう」
緩やかにアクセルを踏んだ誠史郎さんはバックミラーを気にしている。私もつられて後ろを気にして振り返る。この車の動きに呼応するような車は今のところ見当たらなかった。
「少し遠くへ行きましょうか。木を隠すなら森の中が良いでしょうし」
都心へ向かう高速道路に向けて車は進む。ここまで来ると、もう後を追ってくる自動車があるかどうかは私には判断がつかない。
「昼食は少し遅くなっても構いませんか?」
「はい。大丈夫です」
時々バックミラーを気にしていた誠史郎さんが穏やかな様子なので、もう心配いらないのかもしれない。
一時間ほど経つと、高層ビルが両サイドに流れる風景になった。
土曜日のお昼なので、さすがに道路は混雑している。
そこから更に走ってトンネルに入る。カーナビは海へと向かっていることを示していた。
誠史郎さんが私を連れていこうとしている場所に察しがついた。わくわくしてくる。いろんな味のポップコーンがあるけれど、私はキャラメル味を買いたい。
「行き先はファンタジーキングダムですか?」
ファンタジーキングダムは日本で1番人気と言っても過言ではない、有名なテーマパーク。ケットシーという猫の精霊の王様がメインキャラクターだ。他にもいろんな動物がモチーフのたくさん仲間がいて、とてもかわいいグッズもたくさんある。
「ええ。あそこなら人がたくさんいますし、みさきさんとの約束もひとつ果たせます」
誠史郎さんの気持ちが嬉しくて頬が緩む。
ファンタジーキングダムが近くなってくると、高速道路に平行するように電車が走っているのが見えた。子どもの頃、何度か見た景色だと思い出す。最近は来ていなかった。
シンボルのお城が見えてくる。目的地はもう目の前だった。
駐車場に車を置いて、入園口へ向かって歩き始める。
すぐ隣にいる誠史郎さんを見上げる。手を繋ぎたい衝動に駆られた。
私の視線に気づいたのか、誠史郎さんがこちらに振り向いた。
目が合っただけで心臓が跳ねる。
何も言っていないのに、誠史郎さんのしなやかな手が私の手をそっと握ってくれた。どうしてわかったのだろうとうろたえてしまう。
「デートですから」
優しい微笑みに胸がきゅんとなる。自然にきゅっと握り返していた。
この時間がずっと続けば良いのに。
そう思いながらゲートをくぐる。チケットも誠史郎さんが用意してくれていた。急遽やって来たのに、何と言う準備の良さだろうと驚く。
入ってすぐの場所はいろんなグッズをお店がたくさん集まる区画になっている。
「郷に入っては郷に従いましょう」
そのお店はパーク内で多くの人が装着しているキャラクターの耳を模したカチューシャや帽子、Tシャツと言った身につけるものを中心に販売していた。
誠史郎さんの頭にネコミミ。すごく見たい。
わくわくしながら物色し始める。
「誠史郎さん!これはどうですか?」
「私よりみさきさんに似合うと思いますよ」
ここの王様の猫の灰色の耳を薦めたけれど、誠史郎にひょいと取り上げられて私の頭につけられる。
「私はサングラスにしますから、先にみさきさんの耳を選びましょう」
カチューシャがお妃様のピンクのネコミミの取り替えられる。私は誠史郎さんの楽しそうな表情に見とれてしまう。普段と違って、なんだかちょっと少年のような顔に思えた。これも王国の魔力だろうか。
「似合っていますよ。とてもかわいいです」
誠史郎さんにそう言われると照れてしまう。だけど今の私には誠史郎さんがとてもかわいく見える。人前なのに、つい好きと声に出してしまいそう。
「これにします」
私がそう伝えると、誠史郎さんは破顔してうなずいてくれた。
誠史郎さんはゆっくり吟味することなく、手近にあったケットシーをモチーフにしたシルバーのフレームのサングラスを取った。これをかけるのかとちょっと驚く。
「私がこんなサングラスをかけているなんて、知り合いは夢にも思わないでしょうから」
その笑顔は策士の表情だった。
カチューシャとサングラスを買って、お店の人にタグを取ってもらった。装着して外へ出る。もうすっかり王国の住人だ。
目元の隠れている誠史郎さんの口角が上がっている。互いに自然に手を取り合っていた。
「食べたいものはありますか?」
「肉まんが食べたいです」
王国にはレストランがいくつかあるけれど、売店のようなところで手軽に食べられるものもいろんな場所で売っている。
こんな機会はそんなにないと思うので、誠史郎さんとベンチに座って青空の下で食べたい。
「売っているお店の場所はご存知ですか?」
「忘れちゃったので、案内図見ましょう!」
誠史郎さんは穏やかな微笑みで応えてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる