祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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透ルート 3章

エンゲージ 6

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 テレビでよく見る、銀座の時計台を見上げる。
 とにかく人が多い。

 透さんと真壁さんがどちらの宝飾店に行くかで揉めていた。

「みさきちゃんに似合うんは映画の朝食のとこやろ」
「婚約指輪は一生に一度のモンや。有名人御用達のところ行ったらええやん」
「両方行くのはだめですか?」

 今日指輪を決める必要はないからそう提案したのだけど。

 まずは真壁さんが言っていたお店へ行った。そして驚いた。
 お店の雰囲気から違う。私の場違い感がすごい。高校生が入る場所じゃない。

 真壁さんが堂々とお店へ入って行く。その姿はとてもかっこいい。
 私は透さんの服のすそをつかんでおずおず中に入った。

 思わず立ちすくみそうになる。ショーケースに並んだ、見たことのない大きさのダイヤモンドの指輪やネックレス。そして見たことのない数字の羅列。

 すっかり気後れしてしまう。困惑して透さんを見上げた。透さんは私を安心させるように微笑んでくれる。

 ダイヤがハートの形にカットされている指輪がかわいいと一瞬思ったのだけど、値段に驚いて後退った。

 何だかぐったりしたけれど、透さんの言っていたお店へ移動する。

 有名な昔の映画のタイトルになっている宝飾店なので名前は知っていたけれど、店内はこちらもとてもキラキラしていた。そしてやっぱり私はこの場所に不釣り合いに感じる。

「みさきちゃんにはこっちの指輪の方が似合うと思うんや」

 優しい透さんの横顔を見ていると、ここで選びたい気持ちになる。
 だけど真壁さんに嫌われないようにするためには、さっきのお店にした方が良いような気もする。

 婚約指輪はやっぱり仰け反るような値段のものが並んでいた。
 とてもじゃないけれど、今すぐ決められない。

「もう少し考えさせてください」

 そう正直な気持ちを伝えた。

「みさきちゃん、左手の薬指予約の指輪はつけてもらいたいから、一緒に選ぼ?」

 透さんに手を引かれて、店内のシルバーのアクセサリーの集まる一角へ移動する。さっきよりは安心して見られるけれど、こんな金額のものを身に着けたことはない。

「みさきちゃんにはカワイイのが似合うと思うんや」

 透さんが選んだ数種類の指輪を店員さんが目の前に出してくれた。その中で一番好きだなと思ったオープンハートの指輪を試着させてもらう。

「よう似合ってる」

 艷やかな微笑みでそう言ってもらえるだけで嬉しくなる。

「それにしよか」
「でも……」
「俺がみさきちゃんにつけてほしいから」
「ありがとうございます」

 きれいな青い箱に、透さんの買ってくれた指輪が包まれた。


 ✝✝✝✝✝✝✝✝


 素敵なカフェで休憩することになった。

「……みさきちゃん不足や」

 おいしいケーキで幸せにひたっていたら、隣に座っている透さんが急に私の肩に頭を預けてきた。驚きとくすぐったさで肩をすくめてしまう。

 奥まった席で、真壁さんが化粧室へ行ったからふたりきりになったけれど、すぐ隣に女性グループが談笑しているし、満席で人がたくさんいる。いちゃいちゃしてるのを誰かに気づかれたら恥ずかしい。

「透さん……」
「もう一日以上ちゅーもしてない」

 いじけたように上目遣いに見られる。かわいい。胸がきゅんとなる。

「早よふたりきりになりたい……」

 耳朶に唇が寄せられ、甘く低いささやきが鼓膜を撫でる。テーブルの下で扇情的に指を絡められた。

 カツンとハイヒールが大理石の床を鳴らす音が背後で聞こえた。音が近づくのを感じて、透さんはぱっと私から離れて姿勢を正す。

「お待たせ。みさきちゃんこの後行きたいとこある?」

 向かい側の席に真壁さんが戻ってきた。

「特には……」

 この辺りのことは全然わからない。それから高級すぎる宝石たちにあてられて少し疲れていた。

「ほんならごはんうて帰ろか」
「あ、俺、行きたいトコある」

 透さんの行きたいところは、かわいい部屋着がたくさん売っているお店だった。生地に触れてみると、肌触りがとても良い。

 長袖の男女ペアになっている品物を購入していた。

「みさきちゃんとお揃いのパジャマ、家に置いとくな」

 何だか透さんが言うと艶っぽく聞こえる。頬を赤くして、こくんとうなずくことしかできなかった。

 買い物を終えて、みんなでデパートの食料品売り場へ移動した。真壁さんに美味しそうな夕ご飯のおかずをたくさん買っていただいた。何だか申し訳ない。

 電車で帰ろうと思っていたのだけど、来るときと同じように、黒沢さんが運転する車で家まで送っていただくことになった。

「何から何まで申し訳ありません……」
「そんなに気ぃ遣わんといて! 透と結婚するんやし」
「そうや。結婚するんやから、今日はうち泊まっていこうや。みさきちゃん、明日も学校休みなんやし」

 ドキリとした。
 透さんと一緒にいたいけれど、せっかく買ってもらったおかずたちもある。

「一旦、家に寄っていただいても大丈夫ですか? これをみんなに渡してから、私も真壁さんのお家に行きたいです」

 いきなり図々しくなってしまった。だけど透さんが嬉しそうな表情になってくれたから、私も嬉しくなる。

「よろしいですか? 奥様」
「ええよ」
「ありがとうございます」

 真壁さんと黒沢さんがいるから、いきなり透さんの望む退院祝いにはならないだろうし。でもちょっとぐらいふたりきりになれる時間が持てるかもしれないし。そしたらちゅーぐらい、なんて。

 そんなことを考えて、自然ににやけてしまう。

 自宅の前に到着したら黒沢さんにお礼を言って、急いで中に入った。夕飯のおかずをリビングにいた淳くんと裕翔くんに渡す。そして私は一度自室に戻って着替えをバッグに詰めた。

「透さんのお家に泊まらせてもらうね。真壁さんと黒沢さんも一緒だから」

 苦しい言い訳だと自分でも思う。ウソはついていないけど。

「わかった。夕飯、真壁さんたちにお礼を言いたいから見送るよ」

 淳くんと一緒に家を出る。

 真壁さんが車から降りて、隣の家の前で亘理さんと向かい合っていた。
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