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僕の過去、そして(2)
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数日後。部活を終えて帰宅している杏夏は、突然知らない男性に話しかけられていた。
「はじめまして。株式会社TUKI-SUEの社長秘書をしております、望月と申します」
「はあ」
望月と名乗った男性は、杏夏に名刺を差し出した。
「単刀直入に申し上げます。社長のご子息、津末誠一様には、お近づきにならないようお願いいたします。彼は婚約者がいる身にも関わらず、あなたに現を抜かしております。これ以上あなたとは話さないで頂きたい。もし話している所を私共が見かけた場合は、彼は勘当されます。また、あなたの御父上を解雇いたします」
「っ!」
「県立東高校学年2位の優秀なあなたなら、やるべきことはお分かりですね?」
そう言い残し望月は車に乗り込んで去っていった。
「うそ、でしょ」
杏夏は、大事な人たちを守るためにはもう2度と好きな人と話をすることができない、という現実にショックを受けた。
それ以降、杏夏が誠一に話しかけることはなくなった。初めは、どうしたのか、と学年がざわついていたものの、誠一も杏夏に見向きをしなくなったため、大喧嘩をしたのだろう、と結論付けていた。しかし、真実を知っている者がいた。杏夏は彩花に、誠一は浩に話をしていた。2人が大喧嘩したなんてあり得ないと思った彩花と浩は、何か他のことがあったに違いない、と話を聞いていたのだった。杏夏から話を聞いた彩花は友人のことを思って泣いてしまい、浩もまたショックを受けていたのだった。
そして3年生になった。3年生は、文系と理系でクラスが決まる。理系の杏夏は1組に、文系の誠一は4組になった。
「あれ、誠一4組なの? 理系だったよな。なら1から3のどこかのはずだけど」
「あ、浩。文系にした」
「え?」
「経営学部志望」
「なるほどな」
誠一から父親との一件を聞いていた浩は、起業する、といった誠一を思い出していた。
『え、起業?』
『ああ。婚約破棄をすると僕は勘当、彼女の父親は解雇となるらしい。時間がかかるが、起業しようと思う。そして父の会社を超える会社にする。そうすれば父は僕に何も言えないだろう。もし勘当されても生きていけるだけの力はつくだろうし、本人が了承してくれれば彼女の父親には僕の会社で働いてもらうさ』
『そうか。俺に出来ることがあったら言えよ。お前の初恋応援してるし、何よりお前は俺の親友!』
『ああ、頼りにしているぞ、親友』
『せ、誠一!』
誠一から初めて親友という言葉を聞いた浩は、誠一に抱き着いたのだった。
杏夏は高校3年生になり、勉強、部活と忙しくしていた。勉強では第一志望校A判定、部活では全国大会優勝、という成績を収めていた。
一方、誠一は受験勉強をしながら経営について、起業について学んでいた。杏夏の剣道大会の成績を知りさすが彼女だなと感心しながら、彼女との未来のために勉学に励んでいった。
そして高校3年生の3月。杏夏たちは高校を卒業した。
「はじめまして。株式会社TUKI-SUEの社長秘書をしております、望月と申します」
「はあ」
望月と名乗った男性は、杏夏に名刺を差し出した。
「単刀直入に申し上げます。社長のご子息、津末誠一様には、お近づきにならないようお願いいたします。彼は婚約者がいる身にも関わらず、あなたに現を抜かしております。これ以上あなたとは話さないで頂きたい。もし話している所を私共が見かけた場合は、彼は勘当されます。また、あなたの御父上を解雇いたします」
「っ!」
「県立東高校学年2位の優秀なあなたなら、やるべきことはお分かりですね?」
そう言い残し望月は車に乗り込んで去っていった。
「うそ、でしょ」
杏夏は、大事な人たちを守るためにはもう2度と好きな人と話をすることができない、という現実にショックを受けた。
それ以降、杏夏が誠一に話しかけることはなくなった。初めは、どうしたのか、と学年がざわついていたものの、誠一も杏夏に見向きをしなくなったため、大喧嘩をしたのだろう、と結論付けていた。しかし、真実を知っている者がいた。杏夏は彩花に、誠一は浩に話をしていた。2人が大喧嘩したなんてあり得ないと思った彩花と浩は、何か他のことがあったに違いない、と話を聞いていたのだった。杏夏から話を聞いた彩花は友人のことを思って泣いてしまい、浩もまたショックを受けていたのだった。
そして3年生になった。3年生は、文系と理系でクラスが決まる。理系の杏夏は1組に、文系の誠一は4組になった。
「あれ、誠一4組なの? 理系だったよな。なら1から3のどこかのはずだけど」
「あ、浩。文系にした」
「え?」
「経営学部志望」
「なるほどな」
誠一から父親との一件を聞いていた浩は、起業する、といった誠一を思い出していた。
『え、起業?』
『ああ。婚約破棄をすると僕は勘当、彼女の父親は解雇となるらしい。時間がかかるが、起業しようと思う。そして父の会社を超える会社にする。そうすれば父は僕に何も言えないだろう。もし勘当されても生きていけるだけの力はつくだろうし、本人が了承してくれれば彼女の父親には僕の会社で働いてもらうさ』
『そうか。俺に出来ることがあったら言えよ。お前の初恋応援してるし、何よりお前は俺の親友!』
『ああ、頼りにしているぞ、親友』
『せ、誠一!』
誠一から初めて親友という言葉を聞いた浩は、誠一に抱き着いたのだった。
杏夏は高校3年生になり、勉強、部活と忙しくしていた。勉強では第一志望校A判定、部活では全国大会優勝、という成績を収めていた。
一方、誠一は受験勉強をしながら経営について、起業について学んでいた。杏夏の剣道大会の成績を知りさすが彼女だなと感心しながら、彼女との未来のために勉学に励んでいった。
そして高校3年生の3月。杏夏たちは高校を卒業した。
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