彼の親に振り回されました

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明らかになった真実(2)

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「まず、お前に婚約者はいない。お前の結婚適齢期に、私の会社の利益となる結婚をさせようと思った。その時、お前に想い人や恋人がいると困ると思った。だから、お前が恋しないように、嘘をついていた。まあ、ずっと守っていたにも関わらず高校で出会った寺東さんに恋したがな」
「え?」
「勉強に力を入れさせ、試験で満点を取れと言っていたのは、母さんが理由だ。私と彼女は大学時代に出会い、結婚したが、正確には私が母さんを奪った。彼女には高校時代から交際している人がいたが、権力で別れさせた。しかし、私に振り向くことはなく、私と結婚した後も元恋人を想っていた。彼女の元恋人は勉強はできなかったがスポーツの才能に溢れていた。特に剣道は小さい頃から続けているらしく、全国大会の常連だった。無論今も、だ。私とは正反対の人物だ。私はスポーツは不得意だったからな。自分の息子には、自分の恋敵のような人物になってほしくなかった。そのため、スポーツには手を出さないよう、やる時間ができないよう、徹底的に勉強させた。そしてそれに従わなかった時が1度だけあったのだが、その時に追いかけ回したことで額に傷を作ってしまった」

 誠一はおでこにある傷に手を当て、父親がものすごく怖い顔で追いかけてきたことを思い出した。

「先ほども言ったが、母さんの元恋人は、現在も剣道を続けている。全国大会に出場しているからな。2人が再会しないよう、絶対に剣道大会には行くな、と再三言っていた。しかし、私が長期出張していた時、お前が小学生の時1度全国大会に行っただろう。そこで2人は再会したらしくてな。まあ、再び脅したからそれ以降は会っていないし連絡も取りあっていないがな。それ以降は絶対に行かせないよう、大会の日には必ず母さんに監視を付けた。もちろん、お前に会いに行かせることも禁じた上でな。母さんが私に意見を言うことなくいつも従っていたのはそのためだ。何かあったら元恋人に危害が加わると思い込ませていたからな」

 誠一は、自分の父親がこんなことをしていたのかと驚くとともに、母親がいつも父親に従っていた理由を知ることができて納得していた。

「高校1年の時、お前が珍しく休日に出掛けたから、望月に後をつけさせた。驚いたよ。剣道大会に行っていたからな。お前が行った目的を明らかにしろ、と命じておいた。優秀な秘書を持ったよ。寺東さん目当てだと連絡がきたからな。お前に脅しのメールを送ったのはそのすぐ後だ。優秀なお前は、すぐに帰ってきたな。そしてお前が彼女に好意を抱いていることにはすぐに気が付いた。だが、お前は恋を知らない。だから、それが恋だと自覚したらすぐに脅すつもりだった。2度と彼女と話さないように、と。お前にも彼女にも、もう2度と話さないようにと釘を刺したのは、お前が自覚したからだ。さすが、だな。2人とも私の約束を呑んで話さなくなった。それで、安泰だと思っていたのが間違いだったよ。まさかお前が彼女を諦めていなかったとはな。彼女を手に入れるために動いていたとは気が付かなかった」

 大好きな彼女にも脅しをしていたと知り、怒りでおかしくなりそうだったが、なんとか耐えていた。

「また、小学校まで一緒で仲の良かった中角君と会うことも許さなかったこと、申し訳なかった。彼は小学生時代までのことを知っているからな。成長してお前の味方になることを恐れていた。彼は交友関係が広い。私の敵になるような人物と知り合ってしまったら勝てないと思った。高校が一緒になるとは思っていなかった。彼の成績では、東高校に入れないと思っていたからな。お前の高校入学とともに私が以前より忙しくなってしまい、お前の監視を緩めてしまったことが敗因だ」

 そこで一口コーヒーを飲んだ時義は、再び口を開いた。

「最後になったが、お前に勉強を強要したこと、それにより友人が疎遠になったこと。私の顔色を窺うあまり、感情を表に出さなくなったこと、あまり笑わなくなったこと。すべて私のせいだ。申し訳なかった」

 誠一は深々と頭を下げる父親を冷めた目で見つめていた。

「そうですか。つまり、僕はあなたのわがまま、プライドに振り回されていた、ということですね」
「ああ、そうだ」
「分かりました。過去のことは許せませんが、そのおかげで僕の恋は彼女だけのもの。それに関しては感謝しましょう。では、僕は彼女を幸せにするので、絶対に手を出さないでください。また、もう僕や彼女を脅さないでください」
「ああ。約束しよう。それから、1つお願いがある」
「なんでしょうか」
「私の会社の支援をしてくれないか」
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