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第3章〜幻想都市グリーディア〜

初めての潜入

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決起した少女達はフューゼ達のあとをつけていた。

そして隣の大きなテントに入っていくフューゼ達。

「フュ、フューゼさん達入っていきましたよ!」

「ちょっと待ってて」
そういうとテントの方に走りだした銀髪合成生物キメラ少女。

「あ、あぶないよっ!」 
静止も聞かずテントの横で聞き耳を立てる銀髪合成生物キメラ少女。


そしてしばらくすると戻ってきた。


「中に門番みたいなのが居るみたい」

「門番……?」

「簡単に言うと私達の敵。それがドアを塞いでる」

「じじ、じゃあ通れないじゃないですかぁ!」

「静かに。私に考えがある」

「考え……?」

「とりあえず着いてきて。適当に合わせて。もし“吐いちゃったら”倒れたふりをして」

「う、うん!わかったよ!」



そしてテントの前に行く少女達。
そしてテントに声をかける銀髪合成生物キメラ少女。

「すみません……誰かいませんか…?」

返事はないが何度も呼びかけると1人の槍を持った男が現れた。

「何だ貴様等。どこの奴隷だ?自由時間であろうとテントから出る事は許されんぞ」

「ごめんなさい……でも私達バケモノに襲われて……助けて欲しい……」

「化物……?」
あたりを見渡す男。

「何もいないぞ。からかってるのか?」

「遠くから逃げてきた……」

「……どこからだ?襲われたにしては小綺麗な格好だが?」


少し戸惑う銀髪合成生物キメラ少女。

「大きなバケモノに襲われて、何か吐いてきた……。それに当たっちゃってから…この子の様子がおかしい……」
そうして黒髪合成生物キメラ少女を指差す。


えぇ!?急にわたしにいわれてもどうしたらいいかわからないよ!

あわあわする黒髪合成生物キメラ少女。
「貴様。こいつの言ってることは本当なのか?」

「え!?は、はい!その、えと、ほんとう……です」

「どうも気に食わんな。襲われて今どうあるというのだ。」

「そ、それは……その……」

「どこのガキだかしらんが大人をからかうとはお仕置きが必要なようだな。」

「ひぃ!おし、お、お、おし、おし、“おしおき”……?」

「あぁそうだ。お仕置きだ。こっちに来い!」
そう言って男が黒髪合成生物キメラ少女に触れた途端。

「いいぃ……!!あぅええぇ!!」
男に内臓を吐きかける少女。

「うおおおおぁっ!!何だこれは!!」


……あ、吐いたら倒れなきゃ。

そしてそのまま倒れる少女。


「ど、どうなってる!!これは!!なん、何なんだ!!」

「あぁ、これ、どうしたらいいの……!」

倒れた少女の内臓をかき集める銀髪合成生物キメラ少女。

「そ、そんなもの触るんじゃない!!」

「あ……れ?」
突然内臓を掴んだまま立ち上がる少女。

「どうした!何があった!」
パニックを起こしている男。

「こ、これ触ったら、何かおかしい……!」
手に持っていた内臓を落とす少女。

「うぅ、あぅぇ……!」
そして男に内臓を吐きかけ倒れた。


「ひ、ひ、ひいいぃぃぃ!!!」
必死に体に付いた内臓を払う男。

「何の化物だったんだ!何だこれは!!死に、死にたくない!!こんな、こんな死に方、したくない!!」
一目散に男は逃げ出した。



「…………上手くいった」
むくりと立ち上がる銀髪合成生物キメラ少女。

「もういいよ、行こう」

「こ、こわかったですよぅ!!ちゃんと教えて下さいよ!」

「教えてたら演技下手くそだからバレる…。いくよ」


テントに入り込んだ2人。

「とりあえずここをまっすぐ行くよ」

廊下を歩き出ししばらくすると、足音が聞こえてきた。

「……誰か来る!隠れて……!」
近くにあった巨大な壺の裏に隠れる少女達。
そして通り過ぎる1人の男。

「クククッ!今回の合成生物キメラは出来がいい!これで評価さえ上がればまた実験ができる……!僕の!僕だけの合成生物キメラが……!!」


「……博士!」

「あぅぅ!こわ、こわいぃ…!」
吐きそうになる黒髪合成生物キメラ少女。

「だめ、耐えて。バレちゃうよ」

「あぅぅぅ……」


「おや、そこにいるのは誰かな?」
クタールの声が響く。



バレた……!?そんな……
絶望しかける少女達。




「久しぶりですねぇ。弟君。」


……え?


「えーっと……ごめんなさい誰ッスか?」


博士が気づいたのは私達じゃない……!
誰かと話してる……!


「失礼、まともに会話をしたのは初めてでしたねぇ。私はクタール。隣のテントの住人さ。」

「隣の……?あ!実験室ッスか!?」

「ご認識頂けたなら幸いです。では僕は急ぐのでここで……。」

「ちょ、ちょっと待って欲しいッス!」

「……何かな?」

「王様に用があるって言ってたオイラの尊敬する人に実験室で待ってもらってたんスけど居なくなってて……どこにいるか知らないっスか?」


「……それなら今王の間にいるよ。案内したんだ。」

「そうだったんスね!恩に着るッス!じゃあオイラ行くッス!」

「はい。行ってらっしゃいませ、弟君。」


駆け出すエルフの少年。
しばらくして歩き出すクタール。


「……博士は帰った。多分バレちゃう。早くフューゼのとこにいこう」

「う、うん!はやくいこう!」

そして少女達もエルフの少年の後を隠れながら追っていった。
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