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第3章〜幻想都市グリーディア〜

誤解

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「ちょっと待ってください!俺はただ…!」

「黙れ。去らねば殺す」

グリーディア王が殺気を放つ中
一つの声が響く。

「ちょ、ちょっと待つッス!何してるッスか!?」

少年エルフが止めに入る。

「……お前か。邪魔をするな。」

「何があったんスか!?この人はさっきオイラが話してた人っスよ!?」

「なに……?先ほどの話しの男とはこいつだったのか?」


「そうッス!だからまずは止めて欲しいッス!」

「……チッ!借りがあるのか」

弓をおろすグリーディア王。


「……悪質な奴隷商を追い出したらしいな。そしてそこの奴隷を解放し、ついでにそこの我が弟を助けたと」

「ついでってひどくないッスか!?」

「黙ってろ。で、それは真実か?」


「…そうですね。まぁ悪質だったのはその子が教えてくれたんですけどね。」


「……本当に貴様が…」

言い淀む王を遮り少年が叫ぶ。
「1つ!グリーディア民たるもの義の道に反することなかれ!恩を仇で返す者存在に値せず。」

「……就任式の際の新王3条の第1条ッス。」

「くっ……」
たじろぐグリーディア王。


「……グリーディアの王がこれを破るんスか?自分で定めた条例を。」


「レベッカ……」
王を見つめる隣の女。


「その名で呼ぶな……。もういい、今回は何も無かった事にする。だから早く去れ」


「兄さん、何があったのか知らないッスけど今回はやめておいた方がいいッス。」


「うーん……同盟組めないのはまだ理解できるんだけど…。」

「どうしたんスか?」

「いや、ちょっとな。シルビア、アリス。聞いていいか?」

「何でしょう」
「いいよー!」

「確か忌み嫌われたとか何とか言ってたが俺達はこんなに嫌われてたのか?」

「……確かに人族や共存派ウォレスからは疎まれてるでしょうが独立派セリアスのグリーディアにここまで否定されるとは予想外でしたね」

「私もそう思うよー!外に出たの自体久々だけど前はこんな事なかったもん!」


「そうか……グリーディアの王様、1つ聞かせてください。」

「……何だ」

「同盟を結んでもらえないのはわかったんですが理由を教えてくれないでしょうか?」

「……知りたければまずはそのくさい演技をやめたらどうだ」

「演技?何のことです?」

「数百年の歴史の中常に独立派セリアスだった貴様等が急に同盟…その時点でおかしい。そしてヴァンドラ、貴様のそのへりくだった態度。これが全てを物語っている」

「え?へりくだってました?」

「そういうところだ。あの代々横暴なヴァンドラが急に現れ丁寧に敬語まで使って我等に頼み事だと?敬語を必死に覚えたであろうがそれが仇となったな」


「……え?」
今までのヴァンドラってそんなにひどかったの?
というか他国の王に対して敬語使っただけで
ここまで怪しまれるの?

「そ、それは悪かったな。」

「ふん、今更戻しても遅いわ。このボルシエオンの犬め」

「え?それはどういう意味かな?」

「貴様等がここに同盟に来るなどボルシエオンに降って我等の懐柔でもしに来たに決まっている」

「それは誤解だ!俺達はボルシエオンに……」
フューゼが話しているその時。


「みぃつけたぁ……何してるのかな?こんな所で……!!」
「キャーーー!!」
クタールの大声と悲鳴が響く。

「何事だ!!」

「あ、失礼致しました王様。献品しに来たんですが僕の出来損ない達が悪さをしてましてねぇ……。」
少女達をつまみ上げてきたクタール。

「ちょうど良かった、献品の性能を見せるためにこいつらを使いましょう。」
クタールが部屋の中央に小さな何かを投げる。

ボンッ!と音を立て縦横30m近くの檻が現れた。

「まずは頼まれたうちの1つ……持ち運べる檻。もちろんサイズはこれより小さく出来ますよ。」

そして檻のドアを蹴り開けそこに少女達を投げ込むクタール。

「そしてこれがもう1つの献品です……!」
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