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第3章〜幻想都市グリーディア〜

斬滅鋼体

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ガキィン!!!凄まじい音が鳴る。

「……何とか…間に合った。」
フューゼは片腕を盾に剣を止めた。

「フューゼ……!」

「大丈夫か?お前達。」

「あ、あ、ありがとうございますっ……!」



……ボクの剣を受け止めるなんて……。
しかも生身の片手……!!
これは……!!

「キミ、名前は?持ってるんでしょ?」

「フューゼ。ヴァンドラ・フューゼだ。」

「フューゼ!キミはつまらなくないね!それどころかおもしろいよ!!」
急に笑顔になり目を輝かせるロングソード。

「そりゃどうも。でもこの子達は斬らせないよ。」

「そんなのどうでもいいよ!ボクと遊ぼう!」

「そうか、じゃあまずはこの子達を解放させてもらうぞ。《 従順なる我が眷属よ。我に呼応し姿を現せ、“イグニ・シルビア”》!」

「ハッ!」
妖しく光った矢先にシルビアが現れ、
ロングソードを蹴り飛ばす。

「フューゼ様!お怪我は!?」

「大丈夫だ。それよりこの子達を頼む。」
合成生物キメラ少女達をシルビアに託すフューゼ。

「ヴァンドラ様……!」

「大丈夫だ。だから頼むぞ。」


蹴り飛ばされたロングソードが一気に間合いを詰める。

ガァン!!

またもフューゼに斬りかかり、フューゼもそれを止める。

「ねぇねぇ!それどうやったの?2対1で戦うの?」

「シルビアは来てくれって頼めば何時でも来てくれるんだよ。そしてお前と戦うのはこの俺だ。」

「あははっ!なにそれ!でもおもしろいからいいよ!キミを斬れるならそれでいい!!」

フューゼ達が会話を交わしてるうちに
少女達を連れ檻を出るシルビア。


「……やはり聞き間違いではなかったか。」

ヴァンドラ……。
王との会話が聞こえた時は
聞き間違いだと思っていたがあの男……。
まさか夜王ヴァンドラだったとでも言うのか?
奴を記した書を読んだことがあるが横暴にて凶暴。
生ける災厄と記載があったが……。
やはり資料は役に立たないな……。
しかしあの資料によれば奴の体は
通常の刃物では傷一つつかないと記されていた。

現に奴は生身であのロングソードの攻撃を
受け止めている……。
だとすればその情報は真実ということか。
そして奴はヴァンドラだという事になるな。


「王様よ……少しよろしいか。」

「何だクタール」

「あの男……夜王ヴァンドラでございますか?」

「あぁ、そのようだ」


やはり本物か……!
だが僕の作り出したロングソードはこんなものじゃない……!

「失礼ですが王様よ。先ほど何か揉めていた様子ですが。」

「貴様には関係無いだろう」

「そうですね……。ですがもし、ご面倒事であったとしてあの夜王を屠る事ができたらどうなさいますか?」

「何……?」

「私の創りしロングソードで奴を屠ってみせましょう。その代わりその報酬として私に自由な実験環境を頂けたならと。」

「ほぅ……。」



「なりません王様!もし失敗すればグリーディアはヴァンドラに攻撃したとみなされます」

「……今更であろう。よし、クタールよ。やってみせよ。」

「王様!!」

「ありがたき幸せ。必ず奴を屠りましょう。」

「ただしもし敗北しヴァンドラに何かを求められれば貴様が責任をとれ。その命をもってな」


「しょ、承知致しました。」

……勝てばいいだけだ。
ロングソードは最高傑作。
人間、家畜、エルフ、鋼鉄、斬れなかった物などない……!
そしてあのスキルもある……!!

「ロングソード!!奴を斬りたければスキルを使いなさい。」

「え?いいの?」

「あぁ。“許可”する。」

「あはぁっ!」
持っていた剣を地面に突き刺したロングソード。



……何をする気だ?
スキルと言ってたからな……。
魔力障壁に頼り切るのも危ないか?


右手で柄を掴んだまま左腕を振り上げるロングソード。

ザシュッ!
そしてそのまま思い切り剣に腕を擦り付けた。
「あははっ!」

「なっ!?何をしてる!」

フューゼを無視し剣に腕を擦り続けるロングソード。
徐々に吹き出す血の勢いが落ちる。

そして左腕から血が吹き出なくなり
その腕を掲げると光り輝いている左腕。

そして次に腕を入れ替え右手を擦り始めた。


呆然とするフューゼ。


そしてまた、血が止まり両腕が銀に光るロングソード。

「待っててくれたんだね…!ボクの身体は剣で斬れば斬るほど鋭さを増す鋼の身体なんだ!研がないと元の弱い身体になっちゃうけどね」


「何だと……?」

恐らくロングソードはクタールが禁忌で
創り出したんだろうが……。
自分を傷付けないと使えないスキルなんて
趣味が悪いな……クタール!!

「クククッ!敵に斬られようとも鋭さを増し全てを切り裂く刃の身体!斬滅鋼体キリングボディ!それが彼女の能力さ!!」
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