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第3章〜幻想都市グリーディア〜

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勝った……のか?

いや、その前に早く解除しないと
溺れて死んでしまう!
けどこの魔法どう消せばいいんだ……?

慌てふためくフューゼ。

「……どうされました?ヴァンドラ様」

「いや、この魔法解除したいんだが……。炎と違って上手く解除出来ないんだ。」

「……確かに本来ヴァンドラ様もとい私達には水魔法に由縁がありませんからね。何故使用出来たのかもまた解除方も私では……」

「え?そうなのか?どうしたら……。」

「外に向かって力を分散させたらいいんじゃないッスか?オイラ魔法使えないッスけど魔法書だけは読んでるッスよ!!」


「なるほど……やってみるか!!」
中から力を外に向かって分散…。
弾けるように……!

一瞬手を握りしめ開くと同時に
イメージを魔力にのせるフューゼ。

水の玉は弾けロングソードは床にどさりと倒れた。


「大丈夫か?生きてるか!?」
フューゼがロングソードに駆け寄る。


「息をしてないかもしれない…!」
気道確保するフューゼ。

「ヴァンドラ様……何をされてるんですか?」

「この子を助ける。」

「なっ!?その者はヴァンドラ様を殺そうとしてたんですよ?」

「関係ないさ。俺は生きてる。この子を見殺しになんて出来ない。」

「危険です!それに……甘すぎますよ!怪我を負わされたんですよ!?」

「そうかもしれない……でも悪いがシルビア、ここは退けない。助けたいんだ。」
シルビアを真っ直ぐと見つめるフューゼ。

「……っ!」

「何かあれば俺が止めるさ。」

「わか…りました……」


「ありがとうシルビア。」
再度気道確保しなおすフューゼ。
そして顔を近づける。

「フュゼ様……何を?」
「そ、それはいけません!ヴァンドラ様!」


フューゼの唇がロングソードに
触れそうになったその時。

「がほっ!げほっ!!……ぅ。」
ロングソードが息を吹き返しゆっくりと目を開く。

「あ!ぶ、無事だったか!!よかった!」

少し周りを見渡すロングソード。

「あ、何もしてないぞ?安心してくれ!」
かなり近づけていた顔を離し
慌てるフューゼに対し一筋の涙を流すロングソード。

「…!!ホントに何もしてないぞ!信じてくれ!」

またも慌てるフューゼを気にとめずロングソードは天井を見上げていた。




ボクは……また負けたのに生きてるんだね。
弱いから情けをかけられて……。

途中までは間違いなく生きてるって感じてたのに…。
何だか今はまたからっぽだよ……。
ボクはからっぽだ。つまらない…………。


ゆっくりと立ち上がるロングソード。
そして自らの腕をまた斬りつける。

「お、おい!!」

「フューゼと戦ってる時は生きてるって感じてたんだ……。ボクが強ければつまらなくないし…戦ってくれるよね?フューゼ……」
ゆらりとふらつくロングソード。

咄嗟にそれを支えるフューゼ。
そして斬りつけようとする腕を止める。

「ロングソード。君はつまらなくなんてないよ。」

フューゼに語りかけられるも
目をそらすロングソード。

「嘘だよ……それならなんで殺してくれないの?弱くてつまらないからでしょ?」

「君は強かった。途中で本当に焦ったさ。ただ、だからといって殺すこととは関係ないんだ。少なくとも俺は殺そうと思わなかった。」

「……だからそれが「それなら!」」
ロングソードの言葉を遮るフューゼ。

「また戦えばいい。それなら文句はないだろ?逆に今満身創痍のロングソードと戦う方がつまらないんじゃないかな?」

「ぅぅ……」
座り込むロングソード。

「わかっ……たよ……。今回は悔しいけど……ボクの負け……。また、戦おう」

「あぁ!約束だ!」
ぽんぽんとロングソードの頭を撫でるフューゼ。

「えっ……!」
フューゼを見上げるロングソード。


その時だった。
「……危ない!」
フューゼを払うロングソード。

ザクッ!
「うっ……!」
フューゼを払ったロングソードの腹部に矢が刺さる。

「……ロングソード!」

「だ、大丈夫……だよ。ボクは約束は守るんだ……。だか……ら大丈……夫」
そのまま倒れるロングソード。

「……どういうつもりだ!!」
フューゼが立ち上がりながら振り返ると
そこには弓を構えるグリーディア王レベッカ。

「事情が変わってな。貴様を生かして返せなくなった。覚悟しろ。我国の仇敵ボルシエオンの使者ヴァンドラよ!!」
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