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第4章〜同盟国を求めて〜

グリーディアからの餞別

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「皆様お疲れ様でした!港に着きましたよ!」
グリーディアから出て20分ほど歩くと
港に着いたフューゼ達。

「もう着いたのか?早いな……ってうぉ!?」
何だこれ!
形状は元の世界の船と似てる気がするが
大きくないか!?

「キャラット……大きすぎないか?この船。」

「仲間を探しながらの旅になるということとボルシエオン帝国に船で乗り込む可能性を考慮した結果です!大きさも強度もバッチリですよ!」

「そ、それにしても大きくないか?何百人も載りそうなんだが……。」

「もちろん!なので好きなだけ仲間を作れますね!」

……動く船上国家みたいになりそうだな。


「まぁいいか。どうやって乗り込むんだ?」

「船の側面に縄はしごがありますのでそこから乗り込みますよ!」
そういってキャラットが船を指さす。

「魔法とか魔鉱石の力じゃなくてここは原始的なんだな。」

「もちろん魔鉱石等の力を使った装置でもよかったんですが故障して乗れなくなったり他人に使用される危険性がありますからね。それに縄はしごだと折り畳めますし結構便利ですよ!」

「なるほど、使わない時には折り畳んでいれば侵入されづらいって事か。まぁ1人は残ってないといけないけど。」
フューゼが船の側面に近付く。

「あれ?キャラット、縄はしごが無いぞ?」

「え?本当だ!何で……?」
オロオロするキャラット。
すると上から声が響く。

「ヴァンドラの兄さん!遅いッスよ!」
見上げるとエルフの少年が船から見下ろしていた。

「レベッカの弟じゃないか!どうしてこんな所に?」

「ヴァンドラの兄さん達は操舵出来る人がいないって聞いたッス!だからオイラが船を動かそうと思ったッス!あと船が盗られないように船番しておいたッス!」

「船番無しで置いてたのか……?」

「す、すみません」

「いや、キャラット気にしないでくれ。問題は無かったからな。少年!縄はしごを降ろしてくれないか?」

「あいあいさー!了解ッス!」
エルフの少年が縄はしごを下に降ろす。
そして、それを登り始める一同。


「船番ありがとな!おかげで船も無事だったよ。」

「いえいえ!とんでもないッス!」
にこにこする少年だったが一気に顔が引きつる。

「キャ、キャラットさん……!何故ここに……?」

「……わたくしはフューゼさん達をスノーフィスにお送りするためですが、弟君こそ何故ここにいるのですか?」

「え、えっとだから船を操舵する為にッスね……。」

「弟君、実際に操舵した事ないでしょう?それにモナさんが操舵を担当されるんですよ?」

「えぇ!?そうなんスか!?」

「そうだよ……モナがするんだよ」

「レベッ…王様に伝えてきたんですか?」

「……言ってないッス……。」
俯く少年。

「それじゃあ今から戻りましょう。フューゼさん、少し待っていただいても……」

「オイラもヴァンドラの兄さんの役に立ちたいんス!!」
声を張り上げるエルフの少年。

「もちろん経験不足なのは自分でもわかってるッス……。でも何度かヴァンドラの兄さんの役に立てた時本当に嬉しかったんス……。」

「ですがかなりの危険が伴いますし…」

「オ、オイラも覚悟の上ッス!!オイラだって自分の道を選びたいッス!!」

……!少年も本気みたいだな。

「しかしですね…」
話そうとするキャラットを制止するフューゼ。

「フューゼさん……?」

「少し話してもいいかな?」

「はい…」


少年に近づくフューゼ。

「君の気持ちはよくわかった。ロングソードやモナ、マコの話をしている時に君もいたのにその気持ちに気づけなかったのは悪かった。」

「そ、そんなことないッス!謝らないで欲しいッス!」

「ありがとな。俺も君に何度も助けてもらったから付いてきてくれるなら嬉しい。」

「本当ッスか!?」

「あぁ。だがな、本当に危険な旅になる。命の保証は出来ないぞ?」

「覚悟は決めてるッス。」

「……それなら後は1つだけやらないといけない事があるな。」

「やらないといけない事……ッスか?」

「レベッカとちゃんと話すんだ。彼女の許可が出れば付いてきて構わない。」
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