転生を希望します!

黛 ちまた

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第一章 学園編

076.ヤンデル

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 結局押し切られて、私はモニカと女子会という名のお泊まり会をしております。
 あと四ヶ月で卒業だから、月に一度女子会をしたとしても、四回ぐらいしかこんな風にモニカとお泊り出来ないんだなーと思ったら、来てました、フレアージュ邸。

「それで、剣術大会後、モニカはご褒美を殿下に差し上げたのですか?」

 モニカの顔が真っ赤になった。
 お、これはしたな?

「いえ……」

 アレ? してないの?
 それなら何故、顔が赤く……。

「差し上げようと思ったのですけれど、殿下が、それは自分に都合が良すぎるからと……」

 男前!

「まぁ、殿下からされたのですけれど……」

 ……なんだ、自分からしたかっただけなんじゃないの? 王子ってば。ちょっとがっかり。

 うふふ、残念でした、とモニカが笑う。
 まぁ、いいんですけどね?

「あの時のお二人の姿、絵のようでした。
駆けて行くモニカと、それに応える殿下。本当にステキでした」

 私のボキャブラリーだとこんな表現になっちゃうけど、感動したんだよね、あの時。
 キレイだって、清いものを見てる気持ちになったんだよ。さすが主役級、と。

「それを言うなら、ミチルとルシアン様だって」

 え、でも私はモニカに押されたから前に出たのであって、自発的には行ってないし……。

「いつも声を荒げないミチルが、ルシアン様に送った声援が可愛らしかったですわ。
最後に勝利を捧げたルシアン様に、気を失った令嬢がいたとか……」

 それ、単純に意外性が前面に出てません?
 それにしても、イケメンって、罪作りなんだな、本当に……。

「それで、剣術大会優勝のご褒美は何だったのですか?」

 モニカの家にお泊りに行ったら絶対聞かれると思っていたから、虹色の魔石のことを話しても大丈夫なのかをルシアンに確認したんだよね。
 ルシアンは気にした様子もなく、構いませんよ、と答えたけど。

「虹色の魔石というものを、モニカはご存知ですか?」

 モニカは首を横に振った。
 ですよねー。

「私も初めてのことなので、本当か嘘か分からないという前提でお話しますね」

 頷くのを見て、話を続ける。

 私が転生者であることから、ルシアンは来世のことを早い段階で気にかけていたらしい。
 どうやったら前世の記憶を持ったまま生まれ変われるのか、同じ世界、同じ時代に生まれ変わることは可能なのか、その方法をずっと探していたとのこと。
 国内で手に入る文献からは有益な情報はなく、国外から情報を入手する為、アルト公爵の代理で皇都に行った際には、文献探しに勤しんだとのこと。
 転生者、転生について、記憶、手に入れられるだけの情報をひたすら集め、公爵の力を借りて探したりもしたようだ。
 少しずつ情報は集まるものの、それでも決定打になるものは見つからない。
 同じように記憶を来世に持ち越そうとする者達の研究結果なども手に入れたりもした。

 そんな時に、マグダレナ教会の新教皇に就任したゼファス様が、各地を巡礼する際に依頼をした結果、バラバラになっていたピースを繋ぐ情報が手に入ったのだそうだ。
 それが、虹色の魔石。
 ただ、その作り方が分からない。
 そこでカーネリアン先生の元を訪れたら、先生はかつて作ったことがあったらしく、作り方を丁寧に教えてくれた。

「それで、その虹色の魔石をどうするんですの?」

「食べるのです」

「食べる?!」

 私は頷いた。

「食べると、どうなるのですか? どんな効果が?」

 片方の人物だけが食べれば、その相手のいる場所が分かるらしい。
 ピンポイントで日本の東京! とかそういうのではなく、割と漠然としていて、あっち、とかこっち、とかそんな感じみたいだけど。
 それでどうなるんだよ……という感じだけど。
 ちなみに、私はルシアンの魔石を食べたので、屋敷の中にいる時、あ、あっちの方にいるな、というのを感じる。
 なんていうの、コンパスみたいなものが自分の中にある感じ。ルシアンだけをひたすら指し続けるコンパス。

 それが、お互いに食べると、欠けた分の魂が引き寄せる効果があるらしく、生まれ変わっても、近くで生を受けると。しかも、前世の記憶が残ると。
 どうやらこれは、虹色の魔石を食べるとそうなるみたいなので、もしかしたら自分の虹色の魔石を食べると前世の記憶持ちとして生まれ変われるかも知れない。ここは調べてないらしい。どっちにしろ私の虹色の魔石を食べるつもりのルシアンにとって、どうでも良かったらしいので、自分が食べた場合のことは知らないとのことでした。
 まぁ、なんてチートな!
 前世の記憶持ちの私が言うのもなんですが。

「ただ、ルシアン曰く、効果が永遠なのだそうです」

 来世ぐらいならまだしも、永遠にだなんて、覚悟良すぎると思うんだよね……。

「ミチルはそれを了解した上で、ルシアン様の魔石を口にしたのですか?」

「いえ、来世でも会えると聞かされて」

 はぁ、とモニカはため息を吐いた。

「ルシアン様らしいですわ。素直に全て話したら、ミチルは絶対受け入れないと分かっていたのでしょうね」

「そうですね。きっと、受け入れておりません」

 断片的な情報だけを私に伝え、私を誘導したルシアン。
 狡いよね。
 しかも嘘は吐いてない。

「ですが、ルシアン様はミチルを永遠に自分の物にする為にそうなさったのね」

 ヤンデルよねー。
 なかなか凄いと思うのですよ。
 今生だって、この想いが継続するかも分からないと言うのに、永遠ですよ?!

「ミチルはどう思ってるのですか? 騙されたこと、許せないのかしら?」

 騙された……ことになるのかな、アレは……。

「……なんと言えばいいのか……正直に申し上げて……私ばかりが得をしているような気がしてならないのです」

「え? 得?!」

 そう、得。

「前世の私は、今に輪をかけて平凡で、容姿も十人並み……と思いたい……そんな私が、来世に優れた容姿ですとか、優秀な頭脳を持って生まれるとも思えず……。
その点ルシアンは生まれ変わっても、何でも持って生まれそうと申しますか……そんなルシアンの来世を、私なんかが奪ってしまって良いものかと……しかも、効果が永遠だなんて……ルシアンが私に呪われたみたいで申し訳なくて……」

 はぁ……めっちゃ素気無くされたりしたら泣くよ、本当……。

 モニカは目をぱちくりさせた後、私のおでこに手をあてる。熱はないよ?

「ミチルはご自身に関しての評価がおかしいですわ。
謙虚を通り越してますわね」

 いやいや、なんだかみんな、私のことを過大評価してるだけだから。
 私は前世の記憶があるという一点以外は、平凡です。

「ミチルとしては、嫌ではないのですよね?」

「私にはメリットしかありませんから、嫌がる理由がありませんね」

 ルシアンが不快に感じない人間に生まれ変われますように……。切に願います……。

「私、殿下の事はお慕いしておりますけれど、さすがにそこまでは思いきれませんわ。
確かに来世でもお会い出来たらとは思います。ですが……」

 正確に言えば、私は色々と受け入れてはいないんですけどね? 後出しジャンケンだったし。

「ミチルもルシアン様も、そういった躊躇はないのですね。凄いですわ……」

 ルシアンはいつか後悔すると思うけど……。
 その時が来たら、またルシアンはこの永遠に続く関係を断ち切る方法を調べて実行に移すんだと思う。

「私……来世でもミチルと友人になりたいですわ」

「!」

 きゅんてした!

「私も、モニカと友人になりたいです!」

 そして、こうやってまた、女子会をするんだよね!






「ただいま戻りました」

 モニカとの女子会を終えて屋敷に戻ると、使用人達に混じってルシアンがいた。
 何故、主人自ら出迎えを……?

「おかえりなさい、ミチル。帰りが待ち遠しかったです」

 私をひょいと抱き上げると、おでこにキスをしてくる。
 甘い! 甘すぎるよ!!
 そして恥ずかしい!!

「わざわざお迎えに来て下さったのですか?」

 私を抱き上げたまま階段を上がって行く。
 階段はちょっと揺れるので、ルシアンの首に抱き付く。
 ルシアンは嬉しそうに微笑む。

 い、いや、ルシアンを喜ばせようとしてる訳じゃなくてだね、階段は揺れるんだって、本当に。

「ミチルも感じませんか? 距離や方向を」

 それは感じる。
 あぁ、私が戻って来るのが分かったから、迎えに来たってこと?

「この効果は想定外でしたが、便利ですね」

 便利? 何に使うの?
 私にはただのコンパスだけど。

「いつもミチルを感じられるので、幸せです」

「!!」

 顔が熱くなる。

 どうしてこう、このイケメンは、恥ずかしい言葉をサラリと言っちゃうのかな……。

 階段を上がりきったので、ルシアンの首から手を離そうとしたら、駄目、そのまま、と言われてしまい、仕方なくそのまましがみ付いた状態でいる。
 この体勢さ、意外に筋肉使うね? しがみつく訳だし。

 部屋に着いて、やっと下ろしてもらえた。
 ほっ。
 このままだったらどうしよう、ってちょっと心配した。
 ……けど、なんか、近い。

 カウチには座らせてもらえたけど、隣に座るルシアンは、私の腰に腕を回してるし、こめかみにキスしてるし、手は握られてるし……。

 アレ……?
 なんか……前より……甘くなってる……??
 この人の甘さの上限は何処なの……。

「ミチル」

 止めて止めてー! 耳元で囁くのは反則です!

「ルシアン、どうなさったのですか?! 甘いです! 甘すぎです!!」

 ルシアンの身体を少しでも自分から離そうと、押した腕を掴まれ、手の甲にキスされる。

 えぇっ?!
 何が、何が起きてるの?!
 ちょっと、心臓がもたないよ?!

「まだ憂いは全て取り払えてはいませんが、最大の懸念事項が解消されたので、我慢するのを少し止めました」

「?!」

 これで、我慢を少し止めた?!
 これで?!
 懸念事項が全て解消されたら、私はどうなるの?!
 恐る恐るルシアンの顔を見ると、にっこり微笑んでる。

「あ、あの……参考までにお聞きしますけれど、他の懸念事項というのは、どういった……?」

「困った事にまだいくつかありますが、春には全て終わります」

 え、その時、私……どうなって……?

「ドロドロに甘やかされるのと、閉じ込められるのと、どちらからがいいですか?」

 二択じゃないの?!
 どっちが先かしかないの?!

 ふふ、と艶っぽく微笑むイケメンに、不安しか感じない私は、引きつった笑顔しか浮かべられなかった。

 願わくば……少しずつ慣らして欲しい……。



 仕事を片付けにルシアンは書斎に向かった。
 入れ違いに部屋に入って来たセラは、さっそくほうじ茶を淹れてくれて、私の前に座って淹れたてのお茶を飲んでる。

「ねぇ、セラ」

「なぁにー?」

「ドロドロに甘やかされるのと、閉じ込められるのとだったら、どっちが刺激が少ないのかしら?」

 ごふっ、と音をたててセラがテーブルに突っ伏した。
 お茶が変なとこに入ったっぽいな。
 すまんな。
 飲み終えてから聞けば良かったわ。
 ゴホゴホと赤い顔して噎せるセラは、噎せてても美人で、凄いな、と思った。

「ちょっと! 変な質問しないでよ!」

「変な内容ですけれど、私には深刻な悩みです」

 どっちもされちゃうのなら、先に閉じ込められるほうかな。
 閉じ込められるって、何するんだろう?
 監禁?!
 え、でも私、そんなことされなくても割とひきこもりだよね?
 ルシアンだから監禁すらひと味違うのか?

「どっちも変わらない気もするけど?」

 え? そうなの?
 あぁ、そうか。監禁だのなんだの言っても、甘いのか、そうか。

「こんな言い方なんだけど、ミチルちゃんてば、厄介な人に愛されたわよねー」

 厄介って言うな。

「厄介ではありませんけれど、常人なら不可能なことも現実のものにするのが凄いと思います」

「物は言いようねぇ」

 だってセラ、私、もう、永遠に逃げられないらしいよ?
 乙女的には、永遠に愛する、とか言われるのはきゅんとしちゃう発言だよね。
 ただ、そんなの現実じゃないって、頭の何処かで理解してはいる。
 でも言われることにロマンを感じる訳だよね。単純に、それぐらい愛してる! ってことだから。

 それを現実に出来ちゃう頭の良さと実行力と、箍が外れた倫理っていうの? それが揃うとこうなるんだなって、身をもって知りました。
 まだ実感がないからだとは思うけど、若干ヤンデレな気質が私にもあるのか、心の何処かで、喜んでいる自分を感じているのは、事実である。
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