前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
9 / 271
第一章 新しい生活の始まり

003-2

しおりを挟む
 トキア様とラズロさんが隣合わせに座り、何故か正面の席に僕を挟むようにしてクリフさんとノエルさんが座る。

 みんなの前にはラズロさんが淹れてくれた、コウチャという、赤い色の液体が入ったコップが置かれた。

「たまたま寄った村でアシュリーと出会って、アシュリーがダンジョンメーカーのスキルを持っている事が分かって、保護する事にしたんだ」

 ノエルさんの説明にクリフさんが頷く。

「アシュリーが他に持つ能力は、料理、テイマー、魔法なんだけど、テイマーとしての能力も、魔法もそれ程強くないんだよ」

 そのようだ、とトキア様が言った。
 ノエルさんが初めて会った時に僕の能力をあっさり見抜いたように、トキア様も見抜いたみたい。凄い。

「それで、アシュリーは料理は結構出来るから、王城の厨房で働いてもらえば、一石二鳥かなと思って」

「理に適っている」と、トキア様は頷いた。

「こっちも人手が足りねぇからな、正直助かる」

 そこからはトントン拍子に話が進んでいって、誓約書に僕はサインをした。

 調理人が立て続けに辞めてしまったので、空いてる部屋があるとの事で、相部屋にならず、僕だけの部屋をもらってしまった。勿論、人数が増えたら相部屋になるみたいだけど。

 鞄の中に閉じ込めっぱなしだったコッコは、鞄から出てくるなり怒って僕の頰を突いた。

「いたっ、いたたっ、コッコ、ごめん!ごめんってば!」

 扉をノックする音がして、入るぞー、の言葉と共にラズロさんが入って来た。

 僕が抱えているコッコを見て、笑う。

「おまえ、それ鶏じゃねぇか? 食材にでもすんのか?」

 食材?!

「ち、違います! コッコは僕と契約をしている鶏で、毎日卵を産んでくれる賢いコなんですっ」

 ラズロさんは僕の横まで来て、マジマジとコッコを見る。
 コッコは、命を狙われてると思ったのか、小さくコケ、とだけ鳴いた。

「テイマーの能力ありでも、テイマー出来るのが鶏か。まぁ、料理人になるなら悪くはねぇと思うけどな」

「前は牛もテイムしていたんですけど、さすがに王都には連れて来れないので、置いてきました」

「牛もか!」

 ぶはっ、とラズロさんは笑うと、立ち上がってベッドに腰掛けた。

「さすがに牛は部屋の中で飼わせられねぇからな、飼うんなら裏庭だな」

「えっ! 飼っていいんですか?」

「クリフとノエルに言えば大概の許可は下りんだろ。
そもそも、王室の都合で生まれ故郷から連れ出されてんだから、それぐらい言ってもバチあたんねぇよ」

 そ、そういうものなのかな。
 でも、僕、ミルクが大好きだから、出来たら牛を飼いたいなぁ。

「そうそう、その鶏、ネズミに齧られねぇように気をつけろよ?」

 ネズミ?!
 気の所為か、コッコが大きく目を見開いたような。

「何処だか見つけきれねぇんだけど、棲みつきやがってな。食材を齧られて困ってんだよ」

 はぁ、とラズロさんはため息を吐く。

 貴重な食材をネズミに食べられるなんて、大変だ。

「お、そうだ、ここに来た用事をすっかり忘れてたぜ」

 ほら、と言ってラズロさんは僕に銀貨を三枚渡してきた。

「やるよ」

「えっ!?」

 銀貨三枚を?! ありえない! こんな大金!

「だ、駄目です! こんな大金もらえないです!」

 ラズロさんはにやりと笑った。

「いいんだよ。今、厨房にはオレとおまえしかいねぇんだから」

 え……? あの大きな食堂で、僕とラズロさんだけ?!
 このお城の大きさからして、かなりの人数が食堂に来るよね?!

「本当なら十人で切り盛りする厨房を、当面の間二人で切り盛りすんだから、これぐらいもらってもバチ当たんねぇよ。もらっとけもらっとけ」

 むしろ返したくなった僕の手に、銀貨を強引に握りしめさせると、じゃあな、と言ってラズロさんは部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...