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第一章 新しい生活の始まり
018-2
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チリン、と鈴の音がした。
久々に聴いた。
「ん? 鈴の音か?」
ラズロさんはキョロキョロ辺りを見回して、音の主を探す。
「ラズロさん、上です」
上? と聞き返しながら、ラズロさんは天井を見上げた。
黒い猫が逆さまの状態でお座りしてた。
「のわっ?!」
あり得ない光景に、ラズロさんは身体をのけ反らせて驚いてる。
うん、そうだよね。僕には見慣れた光景だけど、普通はあり得ないもんね。
「マグロ、久しぶり」
手を洗ってキレイにしてから、天井に向けて両手を伸ばすと、黒猫は腕の中に飛び降りて来た。
「あっ、アシュリーさん?! こちらどちら様?!」
ラズロさんの声が裏返ってる。
「魔女の使い魔のマグロです」
黒猫は二股に分かれた尻尾をゆらゆらと揺らし、にぅ、と返事をした。
メルのミルクをマグロに出したら、ネロがやって来て自分にもと催促してきた。
マグロにはそのまま出せるけど、ネロにはちょっと濃いから薄めて出してあげる。
二匹の黒猫の尻尾が、嬉しそうに揺れてる。可愛い。
「魔女の使い魔、なのか?」
ラズロさんはマグロの二股の尻尾を見てる。
村にいた時、いつもミルクをあげていたんだよね。
「そうです。猫又と言う魔物です。元はネロと同じ普通の猫なんですけど」
猫が通常の寿命よりも長く生きれた場合、たまに猫又になるらしい。魔女の猫は猫又なんだって。
「それで、その魔女の使い魔サマがどうしてここに?」
それなんだよね。
「とりあえず、お昼の仕込みに戻りましょう。マグロはミルクを飲み終えてからが長いんです」
「長い?」
「すぐ分かると思います」
厨房に戻って昼の仕込みを始める。
ラズロさんはマグロが気になるらしくて、チラチラ見てる。マグロはミルクを飲み終えたので、口の周りのお掃除を念入りにしてる。たぶんあのままヒゲのお手入れに突入して、それが終わったら全身の手入れになって、床に背中を擦り付けて遊んだ後、こっちに来ると思う。
集中出来ないラズロさんの事はそっとしておいて、僕は酢漬けの野菜を取り出した。
今日のお昼は腸詰と酢漬け野菜の煮込みにする予定。
城の人達も粒マスタードに慣れたみたいで、むしろもっと付けて欲しいと言う人もいるぐらい。
端肉とネギのスープも作っておこうかな。塩、コショウだけの味付けなんだけど、後を引くんだよね。
ラズロさんが待っている間も、マグロは毛繕いをしているし、終わったら遊び始めたので、さすがにラズロさんも諦めたというか、分かってくれたみたいだった。
「アシュリーの言う通り、長いな。アイツ、本当に何しに来たんだ?」
首を傾げるラズロさんに僕は苦笑する。
「魔女やその使い魔は僕たちと感覚が違いますから、気にしちゃ駄目ですよ」
「そういうもんなのか」
「そういうものなんです」
色々と満足したらしいマグロが、僕の足元に来て身体を擦り付ける。
「マグロ、落ち着いた?」
にゃうー、と返事をして、その場にお座りする。
屈むとマグロの首輪に手紙が巻き付けられているのが見えた。手紙を首輪から外して、折り畳まれているのを開いていく。
『アシュリーへ
元気にしているか?
今年は冬の王が現れた所為で寒さが厳しいな。おまえが冬になるとよく作ってくれたスープが食べたくなる。
こんな状況じゃなければ食べに行くんだが。
夢見鳥が、マレビトがおまえの元に訪れると告げた。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
パシュパフィッツェ』
「マレビト……?」
「そうみたいです」
魔女がわざわざ教えてくれるという事は、厄介な人が来るのかな。
しかも吉凶判断不能っていうのも信じられない。
魔女の占いが阻害されなければ、どちらかの結果が出る筈なのに。
にゃにゃと鳴いて、マグロが前足で僕の頭を撫でた。
「ありがとう、マグロ」
にゃん、と鳴いてマグロは立ち上がり、扉に向かって走り出した。
「あっ! 扉、閉まってるぞ!」
慌ててラズロさんが追いかける。目の前でマグロは扉に吸い込まれるようにして消える。僕にはいつもの事でも、ラズロさんは初めて見たから信じられないみたいで、目をこすってる。
「アシュリーさん? ワタクシ、昨日そんなに飲んでないと思うんです」
ラズロさんの言い方に笑ってしまう。
「魔法です。ノエルさんたち魔法使いと魔女の魔法は違うんです」
「魔女って、何者なんだ……」
「何者なんでしょうね」
「アシュリー、俺は真剣にだな」
「ラズロさん、一番大きい鍋取ってもらってもいいですか?」
はっ、とした顔になったラズロさんは、慌てて鍋を取ってくれた。
「スマン、ほとんどアシュリーにやらせちまった」
「いえ、マグロが気になるの分かりますから、大丈夫ですよ。あと、魔女に、魔女の事を聞いた事がありますけど、女の神秘はまだおまえには早い、って言われちゃいました」
「魔女、すげーな?」
何に凄いと思ったのか不明だけど、魔女が凄いのは間違いないから頷く。
久々に聴いた。
「ん? 鈴の音か?」
ラズロさんはキョロキョロ辺りを見回して、音の主を探す。
「ラズロさん、上です」
上? と聞き返しながら、ラズロさんは天井を見上げた。
黒い猫が逆さまの状態でお座りしてた。
「のわっ?!」
あり得ない光景に、ラズロさんは身体をのけ反らせて驚いてる。
うん、そうだよね。僕には見慣れた光景だけど、普通はあり得ないもんね。
「マグロ、久しぶり」
手を洗ってキレイにしてから、天井に向けて両手を伸ばすと、黒猫は腕の中に飛び降りて来た。
「あっ、アシュリーさん?! こちらどちら様?!」
ラズロさんの声が裏返ってる。
「魔女の使い魔のマグロです」
黒猫は二股に分かれた尻尾をゆらゆらと揺らし、にぅ、と返事をした。
メルのミルクをマグロに出したら、ネロがやって来て自分にもと催促してきた。
マグロにはそのまま出せるけど、ネロにはちょっと濃いから薄めて出してあげる。
二匹の黒猫の尻尾が、嬉しそうに揺れてる。可愛い。
「魔女の使い魔、なのか?」
ラズロさんはマグロの二股の尻尾を見てる。
村にいた時、いつもミルクをあげていたんだよね。
「そうです。猫又と言う魔物です。元はネロと同じ普通の猫なんですけど」
猫が通常の寿命よりも長く生きれた場合、たまに猫又になるらしい。魔女の猫は猫又なんだって。
「それで、その魔女の使い魔サマがどうしてここに?」
それなんだよね。
「とりあえず、お昼の仕込みに戻りましょう。マグロはミルクを飲み終えてからが長いんです」
「長い?」
「すぐ分かると思います」
厨房に戻って昼の仕込みを始める。
ラズロさんはマグロが気になるらしくて、チラチラ見てる。マグロはミルクを飲み終えたので、口の周りのお掃除を念入りにしてる。たぶんあのままヒゲのお手入れに突入して、それが終わったら全身の手入れになって、床に背中を擦り付けて遊んだ後、こっちに来ると思う。
集中出来ないラズロさんの事はそっとしておいて、僕は酢漬けの野菜を取り出した。
今日のお昼は腸詰と酢漬け野菜の煮込みにする予定。
城の人達も粒マスタードに慣れたみたいで、むしろもっと付けて欲しいと言う人もいるぐらい。
端肉とネギのスープも作っておこうかな。塩、コショウだけの味付けなんだけど、後を引くんだよね。
ラズロさんが待っている間も、マグロは毛繕いをしているし、終わったら遊び始めたので、さすがにラズロさんも諦めたというか、分かってくれたみたいだった。
「アシュリーの言う通り、長いな。アイツ、本当に何しに来たんだ?」
首を傾げるラズロさんに僕は苦笑する。
「魔女やその使い魔は僕たちと感覚が違いますから、気にしちゃ駄目ですよ」
「そういうもんなのか」
「そういうものなんです」
色々と満足したらしいマグロが、僕の足元に来て身体を擦り付ける。
「マグロ、落ち着いた?」
にゃうー、と返事をして、その場にお座りする。
屈むとマグロの首輪に手紙が巻き付けられているのが見えた。手紙を首輪から外して、折り畳まれているのを開いていく。
『アシュリーへ
元気にしているか?
今年は冬の王が現れた所為で寒さが厳しいな。おまえが冬になるとよく作ってくれたスープが食べたくなる。
こんな状況じゃなければ食べに行くんだが。
夢見鳥が、マレビトがおまえの元に訪れると告げた。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
パシュパフィッツェ』
「マレビト……?」
「そうみたいです」
魔女がわざわざ教えてくれるという事は、厄介な人が来るのかな。
しかも吉凶判断不能っていうのも信じられない。
魔女の占いが阻害されなければ、どちらかの結果が出る筈なのに。
にゃにゃと鳴いて、マグロが前足で僕の頭を撫でた。
「ありがとう、マグロ」
にゃん、と鳴いてマグロは立ち上がり、扉に向かって走り出した。
「あっ! 扉、閉まってるぞ!」
慌ててラズロさんが追いかける。目の前でマグロは扉に吸い込まれるようにして消える。僕にはいつもの事でも、ラズロさんは初めて見たから信じられないみたいで、目をこすってる。
「アシュリーさん? ワタクシ、昨日そんなに飲んでないと思うんです」
ラズロさんの言い方に笑ってしまう。
「魔法です。ノエルさんたち魔法使いと魔女の魔法は違うんです」
「魔女って、何者なんだ……」
「何者なんでしょうね」
「アシュリー、俺は真剣にだな」
「ラズロさん、一番大きい鍋取ってもらってもいいですか?」
はっ、とした顔になったラズロさんは、慌てて鍋を取ってくれた。
「スマン、ほとんどアシュリーにやらせちまった」
「いえ、マグロが気になるの分かりますから、大丈夫ですよ。あと、魔女に、魔女の事を聞いた事がありますけど、女の神秘はまだおまえには早い、って言われちゃいました」
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