103 / 271
第二章 マレビト
026-1
しおりを挟む
休息は必要だよね。
気ままに出かけたい時には、屋台での買い物なんかも考えて、少しお金を持ってお散歩をする。
そう、僕は今、散歩中です。何故かマグロに入ったパフィと。
『鬱憤の晴らし方が散歩と言うのはおまえらしい』
しかも、僕が抱っこしてる。どうしてなの。
散歩に付き合うって言ったから、並んで歩くのかと思っていたのに。マグロになってまで横着だなんて。
「パフィがいるので気晴らしになってないけど」
理想は一人散歩です。
フルールも後ろを歩いてるから、そもそも一人ではないんだけど。フルールは良いんです。
おなかが空いてるのか、フルールははっぱを拾って僕を見る。最近フルールが覚えたのは、食べて良いのかを僕に確認すること。
でも、フルールは喋れないから、拾ってはじっと僕を見る。
頷くと、はっぱを口に入れた。うん、なんか、ウサギっぽいです。可愛いです。ウサギになってくれて本当ありがとう、フルール。
『スライムに学習能力があったとはな』
これは良い、これは駄目、って教えていたら、聞いてくるようになったのは、正直に驚きです。
トキア様もノエルさんも初めて見る、って言ってたし。
ラズロさんは、ウサギの姿でいるとおなかが空くし、僕の許可がないと食べられないから、確認することを覚えたんじゃないか、って言ってた。
それが正解な気がする。
『おまえ、あのノエルから私の事を聞いたのだろう?』
「うん、教えてもらった」
『どう思った?』
被せるように聞かれた。
どうって言われても……。
「"混沌"という二つ名がパフィらしいなぁ、って言うのと……あ、国を滅ぼしたのって、パフィでしょう?」
マグロがにやりと笑った。猫のにやり顔って、結構凄い。
『で?』
「で、って言われても、あぁ、やっぱりパフィは凄い魔女だったんだなぁ、としか」
ふん、と鼻で笑われた。
『つまらんなぁ、もっと驚かんか。子供らしくない』
僕が子供っぽくないのは、パフィのきまぐれに振り回され続けたからだと思うなぁ……。言ったら拗ねるだろうから、言わないけど。七歳の時から鍛えられたなって思う……。
「だって、その国の話、前に聞かせてくれたでしょう? 怖いって言うより、あぁ、あの国の事かな、って感じだったから」
まぁな、と魔女──パフィが言った。
「パフィ」
『なんだ? 暇だからここに来てる訳ではないぞ?』
今、それを聞こうと思っていたんだよね。
最近やたらこっちに顔を見せてるのは、暇って言うより、何か思うところがあってだと思うんだけど。
暇だろうな、とも思ってるけど。
『随分と馴染んでいるではないか』
「みんな良い人で良かったなって思ってる」
これは、本当に。
マグロの目を通して、パフィはみんなの事を見たと思う。多分、人柄とかも、分かってると思うんだ。
そうじゃなければ、あんな事言わないと思う。
『あの前世持ちの事なら心配ない、と教えてやろうと思ってな』
「本当?!」
思わず大きな声で反応してしまって、マグロの二股しっぽに頬をぺちぺちされてしまった。
『うるさい。二日酔いの頭に響くだろうが』
二日酔いの影響って、使い魔と共有してても残るんだね……。それと、相変わらず飲んでるんだね……。
「ごめんなさい」
『元々胆力はある人格の持ち主のようであるし、保護した者達が良かったのだろう。あれが邪な奴等なら、クロウリーの二の舞だ』
「そういえば、パフィはクロウリーさんの事は知っていたんだね」
家名まで言い当ててたし。
『おまえに教える気がなかっただけだ』
僕がダンジョンメーカーのスキルを持っていたから?
『おまえはあのまま村で穏やかに過ごすだろうと思っていたからな』
それは、僕もそう思ってた。
『それが、稀代の天才魔術師であり、災いを生み出すダンジョンを作り出したクロウリーと同じスキルを持ってます、などと教えたらどうなる』
僕の腕の中からマグロは飛び降りて、先を歩く。それを慌てて追いかける。
もし、みんながその事を知ったら、どうなったんだろう。僕だけじゃなくて、家族はどんな扱いを受けたんだろう……。
想像するのがちょっと怖い。
『知らん方が良い事など腐る程ある。あの時、アマーリアーナに呼び出されておらねば、絶対に行かせはしなかった』
あの日、パフィは村を離れていた。たまにある魔女の集会だとは聞いていたから珍しい事とも思ってなかった。
『スキルを正しく覚えよ』
マグロは振り向いた。
『あの者も言っていたろう。力の使い方について』
ノエルさんとクリフさんの事かな。
二人はあんなに凄い力を持っていても、それを人に見せつけたり、傷つけようとはしない。そこがあの二人の凄いところだと思う。
『私は前にも言ったな。
スキルは人生における指標の一つではあるが、目標にしてはならん。自惚れるな、奢るな、忘れるな』
ふわり、とマグロの身体が浮いた。
『安心しろ。おまえがあの力に呑まれる時は、私が殺してやる』
物騒な言葉にびっくりしていると、マグロは笑った。
『もっとも、おまえならそうはならないと知っているがな』
そう言ってマグロごとパフィは消えた。
気ままに出かけたい時には、屋台での買い物なんかも考えて、少しお金を持ってお散歩をする。
そう、僕は今、散歩中です。何故かマグロに入ったパフィと。
『鬱憤の晴らし方が散歩と言うのはおまえらしい』
しかも、僕が抱っこしてる。どうしてなの。
散歩に付き合うって言ったから、並んで歩くのかと思っていたのに。マグロになってまで横着だなんて。
「パフィがいるので気晴らしになってないけど」
理想は一人散歩です。
フルールも後ろを歩いてるから、そもそも一人ではないんだけど。フルールは良いんです。
おなかが空いてるのか、フルールははっぱを拾って僕を見る。最近フルールが覚えたのは、食べて良いのかを僕に確認すること。
でも、フルールは喋れないから、拾ってはじっと僕を見る。
頷くと、はっぱを口に入れた。うん、なんか、ウサギっぽいです。可愛いです。ウサギになってくれて本当ありがとう、フルール。
『スライムに学習能力があったとはな』
これは良い、これは駄目、って教えていたら、聞いてくるようになったのは、正直に驚きです。
トキア様もノエルさんも初めて見る、って言ってたし。
ラズロさんは、ウサギの姿でいるとおなかが空くし、僕の許可がないと食べられないから、確認することを覚えたんじゃないか、って言ってた。
それが正解な気がする。
『おまえ、あのノエルから私の事を聞いたのだろう?』
「うん、教えてもらった」
『どう思った?』
被せるように聞かれた。
どうって言われても……。
「"混沌"という二つ名がパフィらしいなぁ、って言うのと……あ、国を滅ぼしたのって、パフィでしょう?」
マグロがにやりと笑った。猫のにやり顔って、結構凄い。
『で?』
「で、って言われても、あぁ、やっぱりパフィは凄い魔女だったんだなぁ、としか」
ふん、と鼻で笑われた。
『つまらんなぁ、もっと驚かんか。子供らしくない』
僕が子供っぽくないのは、パフィのきまぐれに振り回され続けたからだと思うなぁ……。言ったら拗ねるだろうから、言わないけど。七歳の時から鍛えられたなって思う……。
「だって、その国の話、前に聞かせてくれたでしょう? 怖いって言うより、あぁ、あの国の事かな、って感じだったから」
まぁな、と魔女──パフィが言った。
「パフィ」
『なんだ? 暇だからここに来てる訳ではないぞ?』
今、それを聞こうと思っていたんだよね。
最近やたらこっちに顔を見せてるのは、暇って言うより、何か思うところがあってだと思うんだけど。
暇だろうな、とも思ってるけど。
『随分と馴染んでいるではないか』
「みんな良い人で良かったなって思ってる」
これは、本当に。
マグロの目を通して、パフィはみんなの事を見たと思う。多分、人柄とかも、分かってると思うんだ。
そうじゃなければ、あんな事言わないと思う。
『あの前世持ちの事なら心配ない、と教えてやろうと思ってな』
「本当?!」
思わず大きな声で反応してしまって、マグロの二股しっぽに頬をぺちぺちされてしまった。
『うるさい。二日酔いの頭に響くだろうが』
二日酔いの影響って、使い魔と共有してても残るんだね……。それと、相変わらず飲んでるんだね……。
「ごめんなさい」
『元々胆力はある人格の持ち主のようであるし、保護した者達が良かったのだろう。あれが邪な奴等なら、クロウリーの二の舞だ』
「そういえば、パフィはクロウリーさんの事は知っていたんだね」
家名まで言い当ててたし。
『おまえに教える気がなかっただけだ』
僕がダンジョンメーカーのスキルを持っていたから?
『おまえはあのまま村で穏やかに過ごすだろうと思っていたからな』
それは、僕もそう思ってた。
『それが、稀代の天才魔術師であり、災いを生み出すダンジョンを作り出したクロウリーと同じスキルを持ってます、などと教えたらどうなる』
僕の腕の中からマグロは飛び降りて、先を歩く。それを慌てて追いかける。
もし、みんながその事を知ったら、どうなったんだろう。僕だけじゃなくて、家族はどんな扱いを受けたんだろう……。
想像するのがちょっと怖い。
『知らん方が良い事など腐る程ある。あの時、アマーリアーナに呼び出されておらねば、絶対に行かせはしなかった』
あの日、パフィは村を離れていた。たまにある魔女の集会だとは聞いていたから珍しい事とも思ってなかった。
『スキルを正しく覚えよ』
マグロは振り向いた。
『あの者も言っていたろう。力の使い方について』
ノエルさんとクリフさんの事かな。
二人はあんなに凄い力を持っていても、それを人に見せつけたり、傷つけようとはしない。そこがあの二人の凄いところだと思う。
『私は前にも言ったな。
スキルは人生における指標の一つではあるが、目標にしてはならん。自惚れるな、奢るな、忘れるな』
ふわり、とマグロの身体が浮いた。
『安心しろ。おまえがあの力に呑まれる時は、私が殺してやる』
物騒な言葉にびっくりしていると、マグロは笑った。
『もっとも、おまえならそうはならないと知っているがな』
そう言ってマグロごとパフィは消えた。
18
あなたにおすすめの小説
あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方
tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。
しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。
追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが?
どうなる俺の田舎でのスローライフ???
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる