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第二章 マレビト

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 ダンジョンに入る。
 ティール様が作ってくれた術符のおかげで、魔力が充満してる。

『この階層も、下の階層も、魔力は十分だな』

 後ろからパフィの声がした。ついて来てくれたみたい。

「ねぇ、パフィ、アマーリアーナ様が言ってた魔力の結晶って、どうやって作るの?」

 すっかり忘れていたけど、アマーリアーナ様、怒ってたりしないかな。

『あれは作るものではない』

 でも、アマーリアーナ様は僕に作って欲しいって言ってたような……。

『ダンジョンは魔素だけでも作成されるものだ。だがその場合の階層は浅い。
クロウリーやおまえのようなダンジョンメーカーは魔素の集合体である魔力でもってダンジョンを作る。自然に集まった魔力によって作られたダンジョンもある事にはある。
魔力は魔物を強くする。力を求めて魔物はダンジョンに入り込むのだ』

 だからメルの毛艶が良くなってるのかな? メルも強くなるの?

『おまえの牛は強くなっても限度がある。安心しろ』

 メルが強くなって荒々しくなったらどうして良いか分からないから、安心した。

『さっきも言ったように、自然発生したダンジョンには魔物が入り込む。そうしてダンジョン内の魔力を身に取り込む。魔力を失ったダンジョンはただの洞窟に成り果てる訳だが、ダンジョンメーカーが作り出したダンジョンには、制約がかけられる』

 魔物が入らないから、魔力が減らないってこと?

『クロウリーは元々、潤沢な魔力を持ち得ていた。
可能だろうと言う仮説は立てていたものの、検証する必要がなかった事がある。ダンジョンへの魔力の補充の可否だ』

 クロウリーさんと違って僕は魔力が少ないから、ティール様に術符を作ってもらって、魔力を外から取り込んでもらってるんだもんね。

『次に、一度にダンジョンの階層を組成するのではなく、必要に応じて追加していく、という事だ。
アマーリアーナが、ダンジョンメーカーがダンジョンを消す事が可能だと言った事から、逆も然りだと気付いた』

 最初に、ナインさんは僕の魔力だと階層を四つ作るのが限度だろうって言ってた。ナインさんの持つクロウリーさんの記憶からすれば、一度に作れる階層は、四つまでだったんだろうな。

『その辺の足元を見てみるといい。光るものが落ちているだろう』

 マグロのしっぽが指す先を見てみると、草むらの中にキラキラ光る小さな石があった。石を拾って、掌にのせてみる。

『魔石だ。この階層の魔力が不足すれば、ダンジョンそのものに吸収されて消えるだろうが、今は充足しているからな、余剰分が石化しているのだ』

「へぇぇ。キレイだね」

 掌の上で転がしてみる。石そのものが発光してるみたいにキラキラしていて、不思議だ。

『光に透かしてみろ。濁りが見られる筈だ』

 パフィに言われたとおり、魔石を指で摘んで、階層内に用意した、お日様の代わりに透かしてみる。掌にのせて見た時には気づかなかったけど、緑色と黄色が混じっているように見えた。

「緑色と、黄色が入ってるように見えるね」

『エーテルが混じったのだろうな。おまえがいずれ作る事になる魔力水晶は、一切の濁りがないものが出来上がるだろう』

 アマーリアーナ様が、ヴィヴィアンナ様の為に必要だって言ってる魔力水晶。
 エーテルが混じっていてもこんなにキレイだから、水晶はもっとキレイなんだろうな。

『当面はクズ王子の下僕共の殲滅に注力しろ』

 同時に出来ることと、出来ないことって、あるもんね。

「うん、分かった」

『それよりも、術符を持つ者は第一階層まで入れるようにしておけ』

 あ、そうだった。
 ティール様からもらった術符をポケットから取り出して、これと同じ術符を持っている人は、この第一階層まで入れるようになりますように、と祈っておく。
 それから、ジャッロたちが酷い目に遭いませんように、と祈ってからダンジョンを出た。
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