前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

039-2

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 ザックさんに魚料理を教えてもらいたいと言ったら、どうせならこれを持ち込んで食べさせてもらおう、とラズロさんが言い出した。
 既に他の料理だって準備してるんだろうから、それは迷惑だと止めたんだけど、ラズロさんとパフィ、ナインさんの勢いが強くて駄目だった……。

 宵鍋に到着し、魚を見せたところ、ザックさんが笑顔になった。
 あ、そうか。北の国から仕入れられないから、魚料理を作りたくても作れないんだ、と、ザックさんの笑顔を見て気付く。

 待ってる間、肉料理を頼む。
 フルールにはさっそくいつものが届いて、夢中で食べ始めた。

 前にラズロさんがやってくれた魚介祭は、魚を焼いただけだったけど、ザックさんはどんな料理にしてくれるんだろう?
 時間がないからやっぱり焼くのかな?

 エールの入った器がラズロさんとパフィ、ティール様の前に置かれる。僕とナインさんの前にはジュース。

「じゃあ、乾杯だ」

 いつもなら大きな声で乾杯をするラズロさんも、周りの雰囲気に合わせて小さく言った。
 みんな頷いて、器をちょっとだけ持ち上げる。

 店内にはあまりお客さんがいない。
 あんなににぎわっていたのに。

「大丈夫だ、時間はかかってもこの国は立ち直る」

「そうです」

 ティール様とラズロさんの言葉に、僕も頷いた。
 あんなに殿下や、ノエルさんたち、リンさんたち、みんなみんな頑張ってるんだから、大丈夫。
 分かってるけど、少し悲しくなってしまう。前を知っているから余計に。

「さ、美味いもんを食って、元気だそうぜ。腹が減ってたら力が出ねぇ、踏ん張りがきかねぇからな」

 テーブルに並べられた料理が皿に取り分けられていく。

 いつもと変わらずに美味しいザックさんの料理。
 お客さんが来なくても作られては、残って、捨てられただろう料理。
 他の店だってそう。店を開かないと生きていけない。でも客は少ない。食べてもらえない料理を作るのは辛いだろうって思う。

「食って食って食いまくれ。店の料理が売り切れるぐらいにな」

 ラズロさんが魚を渡したときのザックさんの笑顔には、素材を買うお金がかからなかったこともあったのかも知れない。
 そう思ってラズロさんを見ると、少しだけ困った顔になって、大きな手が伸びてきて僕の頭を撫でてくれた。

「……はい、たくさん食べます」

「そうだ、たらふく食えよ」

 みんな無言で黙々と食べていたら、ティール様が嬉しそうに喋り始めた。

「この料理は大好きです。一度油で揚げた後に根野菜と酢漬けにする事で日持ちがしますし、夏の暑さでも料理が劣化することを極力防ぐ。その上身体にも良い、実に素晴らしい料理です。更にここのは美味です!」

 ティール様は周囲の空気の流れを気にしない人で、今も興奮した様子で話してる。それをラズロさんが苦笑いを浮かべて見てる。

「蘊蓄は良いから死ぬ程食えよ」

「死ぬ程食べるのは論理上無理で……」と、話し始めたティール様の口に別の料理を放り込む。
 一瞬言葉が止まったティール様だったけど、すぐに料理を食べ終えて、これも美味ですね、と言い出したので笑ってしまった。
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