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第四章 魔女の国

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「冬の王のことは心配ですけど、僕は一座が楽しみです」

「うん、もうじきだね」

「次の休息日からだもんな。オレも今から楽しみだ。何食うかな」

「一座より出店のほうが楽しみなの?」

 呆れたようなノエルさんの問いにラズロさんがにやりと笑う。

「当然だろ。全力で楽しむんだよ。祭りなんだからな。恥ずかしがってる暇なんかねぇの」

「ラズロのその遊びに全力なところが別の分野に向けられてたら、ひとかどの人物になっていたんじゃないかなって思うんだよね」

 ノエルさんの言葉にうんうんと頷くティール様。

「あぁ? なんだと頭でっかちどもめ。オレの人生にケチつけるなんざいい度胸だ。飲め!」

 そう言ってエールを飲んで笑う三人。本当に仲良いなぁって思う。

『全力で遊ぶことに関しては賛成だな』

「パフィはなんだかんだ言って、やると決めたら全力だよね」

『なんでもかんでも全力でなど出来る訳がないだろう。そんなことを言う阿呆は放っておけ。
打ち込みたいと思うものがあったなら全力を注げ。上手くいったら最高に気分が良くなる』

「失敗したら?」

『悔しくなるな』

「悔しくなるだけ?」

 パフィのしっぽがぺちぺちと叩いてくる。

『全力でやって失敗したときの悔しさと、中途半端の悔しさが同じな訳あるまい。馬鹿だなおまえは』

 なんだか、わかるような、わからないような……?
 パフィの言葉を頭の中で繰り返しながら、肉を頬張る。

『人の一生など我らからすれば一瞬だ。その短い人生で何かを得んとするから人間は面白い』

 褒めてるんだよね?

『死ぬときに、楽しかったと言って逝けるようになれ。もっと遊びたかったと言うのも良い。
何も得ずとも良い。生きるとは星の瞬きだ。
我ら魔女にも神にもない光を放つ。それが人だ。命持つ者にしか出来ん』

「わかったような、わからないような?」

『おまえはまだ子供だからな』

 顔を上げると、ノエルさんたちはパフィを見て真面目な顔をしていた。
 みんなは大人だから、パフィの言うことがわかったのかな。
 ラズロさんが笑顔で言った。

「目の前のものに全力で生きてりゃ、楽しいってこった」

 僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「なにがあってもね」

 そう言って優しく微笑むノエルさん。

「失敗すら思い出になりますしね」

 やりたいことを、出来ることを、頑張れたなら。
 上手くいかなかったことも思い出になる。

「下手でも一生懸命踊る奴を見て、みっともないと笑うか、一緒に踊るか。どっちも馬鹿だけどな、一緒に踊れば楽しいぞ、きっとな」

 あぁ、それならわかる。
 上手くいかなかったね、って笑いあえたら、きっと楽しい。

「はい」
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