237 / 271
第四章 魔女の国
058-3
しおりを挟む
お昼休憩前に、庭の石窯にフライパンを入れていく。水を少し足して、フタをしたものを。四番目の砂時計が落ち切れば取り出して平気。
蒸し焼きしている間に、酢漬けの野菜やオイル漬けにしたキノコを炒めて、それぞれ大皿に移しておく。
今日のメニューはエビの頭の部分や貝殻が残る。それを入れる別の容器も用意しておく。
エビの殻はフルールの皿にたっぷり入っていて、ひとつずつ口に入れてはパキパキと音をさせて食べている。
フルールはスライムだけど、ウサギの姿になっているせいなのか、歯があって、それで固いものでも噛んでしまう。
消化吸収が早いのは、まず噛んでるからかも?
「美味しい?」
ひょこ、と揺れる耳を撫でる。
ラズロさんは僕が水を入れておいた水差しをそれぞれのテーブルに置いていく。
カトラリー、水差し、大皿によそった料理、食べ終えた食器を入れるカゴ、水を飲む器、全部を用意し終えたところで砂時計が落ちた。
熱いのと重いから、石窯からフライパンを持ってきてくれるのはラズロさん。
「ぅおー、なんでオレは今すぐにこれを食えないんだー!」
叫びながらラズロさんはフライパンを持ってくる。
フタを開けると、コメの甘い香りと、魚貝の香りと、にんにくの香りが合わさった、なんともいえない良い匂いがした。フタを閉じて、お昼になるのを待つ。
次のフライパンを石窯に入れて、蒸し焼きを始める。フタをしておくと冷めにくいけど、なるべく温かいうちに食べてもらいたいから、順番に石窯で蒸し焼きする。
お昼を告げる鐘の音がして、バタバタと走る音がした。
「庭の石窯からあんなに良い匂いがしてたら仕事にならないよー!」
「腹減ったー!」
食堂にやってきた皆に、魚貝とコメの蒸し焼きをよそった皿を渡す。
「エビの頭と尻尾、貝を食った後の貝殻は食わなくていいぞー。皿を片付けるときに分けといてくれれば」
ラズロさんがみんなに説明していく。
こういうやりとりもすっかり慣れて、皆文句を言わない。ありがたいなって思う。
「面倒くさい。食べやすいようにこんなの入れないでくれ」
「頭がついてるほうが格段に美味いんだよ。頭を切り落としちまうと見た目が悪くなっちまうからそうやってる」
……こんな風にたまにはいるけど。
「嫌なら食わんでいいぞ。無理強いをするつもりはないからな、悪ぃな」
「食いたくないわけじゃ……」
ブツブツ言いながら皿を持ってテーブルに向かう。
納得してなさそうだけど、ずっと立ち止まられると後ろが詰まってしまうから、なかなか困りもの。
「意見を聞いたほうがいいんでしょうか」
「あの手の輩は文句が言いたいんであって、本当に不満を抱えてるんじゃねぇんだよ」
「え、じゃあどうして?」
「てめぇの機嫌をてめぇで取れないからだ。嫌なら食わずに出てくだろ。だから嫌なんじゃないんだよ。自分の思い通りにしたいだけだ」
自分の機嫌かぁ。
イライラしてしまう時ってあるよね。人に優しくできない時もあると思う。
そういうのってどうやって落ち着かせればいいんだろう? 僕は一人で散歩したり、暖かくて甘いものを飲んだりする。どうしても消えない時は早く眠ってしまう。
僕はそうやってるけど、大人になると僕よりもっと苛立つことがあって、落ち着くのが間に合わない、なんてこともあるのかもしれない。
「今度、びっくりする飲み物を作ってみたいと思います」
「びっくり?」
「イライラを忘れちゃうような、びっくりするもの」
「美味いじゃなくて?」
「甘いのが好きな人も嫌いな人もいるから、美味しい飲み物を作るのは難しいかなって」
「それでびっくりな」
「はい」
どんなものなら驚くだろうかと、ラズロさんと話しながら、料理を皆に渡していく。
全部なくなって安心。魚貝の日は残ることがあるから。
「大成功、だな」
「はい」
明日は魚貝のスープ!
蒸し焼きしている間に、酢漬けの野菜やオイル漬けにしたキノコを炒めて、それぞれ大皿に移しておく。
今日のメニューはエビの頭の部分や貝殻が残る。それを入れる別の容器も用意しておく。
エビの殻はフルールの皿にたっぷり入っていて、ひとつずつ口に入れてはパキパキと音をさせて食べている。
フルールはスライムだけど、ウサギの姿になっているせいなのか、歯があって、それで固いものでも噛んでしまう。
消化吸収が早いのは、まず噛んでるからかも?
「美味しい?」
ひょこ、と揺れる耳を撫でる。
ラズロさんは僕が水を入れておいた水差しをそれぞれのテーブルに置いていく。
カトラリー、水差し、大皿によそった料理、食べ終えた食器を入れるカゴ、水を飲む器、全部を用意し終えたところで砂時計が落ちた。
熱いのと重いから、石窯からフライパンを持ってきてくれるのはラズロさん。
「ぅおー、なんでオレは今すぐにこれを食えないんだー!」
叫びながらラズロさんはフライパンを持ってくる。
フタを開けると、コメの甘い香りと、魚貝の香りと、にんにくの香りが合わさった、なんともいえない良い匂いがした。フタを閉じて、お昼になるのを待つ。
次のフライパンを石窯に入れて、蒸し焼きを始める。フタをしておくと冷めにくいけど、なるべく温かいうちに食べてもらいたいから、順番に石窯で蒸し焼きする。
お昼を告げる鐘の音がして、バタバタと走る音がした。
「庭の石窯からあんなに良い匂いがしてたら仕事にならないよー!」
「腹減ったー!」
食堂にやってきた皆に、魚貝とコメの蒸し焼きをよそった皿を渡す。
「エビの頭と尻尾、貝を食った後の貝殻は食わなくていいぞー。皿を片付けるときに分けといてくれれば」
ラズロさんがみんなに説明していく。
こういうやりとりもすっかり慣れて、皆文句を言わない。ありがたいなって思う。
「面倒くさい。食べやすいようにこんなの入れないでくれ」
「頭がついてるほうが格段に美味いんだよ。頭を切り落としちまうと見た目が悪くなっちまうからそうやってる」
……こんな風にたまにはいるけど。
「嫌なら食わんでいいぞ。無理強いをするつもりはないからな、悪ぃな」
「食いたくないわけじゃ……」
ブツブツ言いながら皿を持ってテーブルに向かう。
納得してなさそうだけど、ずっと立ち止まられると後ろが詰まってしまうから、なかなか困りもの。
「意見を聞いたほうがいいんでしょうか」
「あの手の輩は文句が言いたいんであって、本当に不満を抱えてるんじゃねぇんだよ」
「え、じゃあどうして?」
「てめぇの機嫌をてめぇで取れないからだ。嫌なら食わずに出てくだろ。だから嫌なんじゃないんだよ。自分の思い通りにしたいだけだ」
自分の機嫌かぁ。
イライラしてしまう時ってあるよね。人に優しくできない時もあると思う。
そういうのってどうやって落ち着かせればいいんだろう? 僕は一人で散歩したり、暖かくて甘いものを飲んだりする。どうしても消えない時は早く眠ってしまう。
僕はそうやってるけど、大人になると僕よりもっと苛立つことがあって、落ち着くのが間に合わない、なんてこともあるのかもしれない。
「今度、びっくりする飲み物を作ってみたいと思います」
「びっくり?」
「イライラを忘れちゃうような、びっくりするもの」
「美味いじゃなくて?」
「甘いのが好きな人も嫌いな人もいるから、美味しい飲み物を作るのは難しいかなって」
「それでびっくりな」
「はい」
どんなものなら驚くだろうかと、ラズロさんと話しながら、料理を皆に渡していく。
全部なくなって安心。魚貝の日は残ることがあるから。
「大成功、だな」
「はい」
明日は魚貝のスープ!
16
あなたにおすすめの小説
あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方
tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。
しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。
追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが?
どうなる俺の田舎でのスローライフ???
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる