前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

058-3

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 お昼休憩前に、庭の石窯にフライパンを入れていく。水を少し足して、フタをしたものを。四番目の砂時計が落ち切れば取り出して平気。
 蒸し焼きしている間に、酢漬けの野菜やオイル漬けにしたキノコを炒めて、それぞれ大皿に移しておく。
 今日のメニューはエビの頭の部分や貝殻が残る。それを入れる別の容器も用意しておく。
 エビの殻はフルールの皿にたっぷり入っていて、ひとつずつ口に入れてはパキパキと音をさせて食べている。
 フルールはスライムだけど、ウサギの姿になっているせいなのか、歯があって、それで固いものでも噛んでしまう。
 消化吸収が早いのは、まず噛んでるからかも?

「美味しい?」

 ひょこ、と揺れる耳を撫でる。

 ラズロさんは僕が水を入れておいた水差しをそれぞれのテーブルに置いていく。
 
 カトラリー、水差し、大皿によそった料理、食べ終えた食器を入れるカゴ、水を飲む器、全部を用意し終えたところで砂時計が落ちた。

 熱いのと重いから、石窯からフライパンを持ってきてくれるのはラズロさん。

「ぅおー、なんでオレは今すぐにこれを食えないんだー!」

 叫びながらラズロさんはフライパンを持ってくる。
 フタを開けると、コメの甘い香りと、魚貝の香りと、にんにくの香りが合わさった、なんともいえない良い匂いがした。フタを閉じて、お昼になるのを待つ。

 次のフライパンを石窯に入れて、蒸し焼きを始める。フタをしておくと冷めにくいけど、なるべく温かいうちに食べてもらいたいから、順番に石窯で蒸し焼きする。

 お昼を告げる鐘の音がして、バタバタと走る音がした。

「庭の石窯からあんなに良い匂いがしてたら仕事にならないよー!」
「腹減ったー!」

 食堂にやってきた皆に、魚貝とコメの蒸し焼きをよそった皿を渡す。

「エビの頭と尻尾、貝を食った後の貝殻は食わなくていいぞー。皿を片付けるときに分けといてくれれば」

 ラズロさんがみんなに説明していく。
 こういうやりとりもすっかり慣れて、皆文句を言わない。ありがたいなって思う。

「面倒くさい。食べやすいようにこんなの入れないでくれ」
「頭がついてるほうが格段に美味いんだよ。頭を切り落としちまうと見た目が悪くなっちまうからそうやってる」

 ……こんな風にたまにはいるけど。

「嫌なら食わんでいいぞ。無理強いをするつもりはないからな、悪ぃな」
「食いたくないわけじゃ……」
 
 ブツブツ言いながら皿を持ってテーブルに向かう。
 納得してなさそうだけど、ずっと立ち止まられると後ろが詰まってしまうから、なかなか困りもの。

「意見を聞いたほうがいいんでしょうか」
「あの手の輩は文句が言いたいんであって、本当に不満を抱えてるんじゃねぇんだよ」
「え、じゃあどうして?」
「てめぇの機嫌をてめぇで取れないからだ。嫌なら食わずに出てくだろ。だから嫌なんじゃないんだよ。自分の思い通りにしたいだけだ」

 自分の機嫌かぁ。
 イライラしてしまう時ってあるよね。人に優しくできない時もあると思う。
 そういうのってどうやって落ち着かせればいいんだろう? 僕は一人で散歩したり、暖かくて甘いものを飲んだりする。どうしても消えない時は早く眠ってしまう。
 僕はそうやってるけど、大人になると僕よりもっと苛立つことがあって、落ち着くのが間に合わない、なんてこともあるのかもしれない。

「今度、びっくりする飲み物を作ってみたいと思います」
「びっくり?」
「イライラを忘れちゃうような、びっくりするもの」
「美味いじゃなくて?」
「甘いのが好きな人も嫌いな人もいるから、美味しい飲み物を作るのは難しいかなって」
「それでびっくりな」
「はい」

 どんなものなら驚くだろうかと、ラズロさんと話しながら、料理を皆に渡していく。
 全部なくなって安心。魚貝の日は残ることがあるから。

「大成功、だな」
「はい」

 明日は魚貝のスープ!
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