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第四章 魔女の国
061-3
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月が空の真ん中で光ってる。
キレイだけど、寒い。
寒くないようにいっぱい着込んで、魔術符も用意してもらったのに。
『寒い』
僕の腕の中でパフィが文句を言う。
いつも通りの様子にほっとする。
ずっと眠り続けていたパフィは、出かける直前になって起きてきた。
王都の正門の上に、僕とパフィは立ってる。
ノエルさんやクリフさん、ティール様たちがずらりと横に並んでる。パフィを援護……というよりは僕を守るためなんだろうな。
『……聞かんのか』
「聞いたら答えてくれるの?」
『ものによるな』
「そうだよね。たぶん僕の知りたいことをパフィははぐらかして教えてくれない気がする」
『よく分かってるではないか』
二股の尻尾がゆらゆらと揺れる。
「あ、これは言っておかないとって思ってたんだ」
『なんだ』
「必ず勝ってね」
『誰にものを言ってる』
これまでよりも強い風が吹いた。
オオオォン、と鳴き声のようなものが聞こえた。
強風はたまに、獣が鳴いているように勘違いしてしまうことがある。
『おいでになったようだ』
パフィの言葉に、皆が構える。
唸り声のような、悲鳴のような、よく分からない音をさせながら現れたのは、真っ赤な大きな目を光らせた、巨大な影だった。
「……人型だ」
「獣じゃない……」
「人が、食われたのか……?」
そんなに大きくない声なのに、静かだからかよく聞こえる。
「パフィ」
『人を食ろうたのだろう、魔力のたっぷりある人間をな。たとえば、北の国の王なんぞをな』
北の国の魔法使いたちが来たというから、貴族たちが来たのは分かってたけれど、王様までは来てなかったのか。それは、そうか。
貴族が魔力をたっぷり持ってるということは、王様もそうでもおかしくないし。
『随分と膨れ上がったなぁ』
「人型だと、強くなるの?」
『知性を持つ』
冬の王は知性がない、そう聞いていたけど、魔力を持つ人を食べると知性を持てるんだとしたら、城壁の下にいる人たちも冬の王に取り込まれてしまったら、もっと賢くなってしまうのかな。
『寒いな、本当に。ノロノロと進みおって』
黒猫姿のパフィの口から吐き出された息は白かった。
「あれ? 寒さも共有するの?」
『おまえは鈍いな』
地の底から湧き上がってくるような鳴き声と、吹き飛びそうになるぐらい強い風が吹いたのは同時だった。
城壁の下にいただろう、北の国の人たちが、風に吸い込まれていく。悲鳴をあげながら。
風を避けるように目を閉じていると、構え! と叫ぶ声が聞こえた。
目を開けると、そこに、いた。
真っ黒で、真っ赤な目をした、巨大な人型の化け物──冬の王が。
『手を放せ』
「え?」
『早く』
言われるままにパフィを抱く腕の力を緩める。
ふわりふわりとパフィの身体が宙に浮かび、チリン、と鈴の音が鳴った。
淡い光が黒猫の身体を包む。
背を丸め、伸びをするようにして起き上がると、そこにいたのは、猫ではない、パフィがいた。
『では、始めるとするか』
キレイだけど、寒い。
寒くないようにいっぱい着込んで、魔術符も用意してもらったのに。
『寒い』
僕の腕の中でパフィが文句を言う。
いつも通りの様子にほっとする。
ずっと眠り続けていたパフィは、出かける直前になって起きてきた。
王都の正門の上に、僕とパフィは立ってる。
ノエルさんやクリフさん、ティール様たちがずらりと横に並んでる。パフィを援護……というよりは僕を守るためなんだろうな。
『……聞かんのか』
「聞いたら答えてくれるの?」
『ものによるな』
「そうだよね。たぶん僕の知りたいことをパフィははぐらかして教えてくれない気がする」
『よく分かってるではないか』
二股の尻尾がゆらゆらと揺れる。
「あ、これは言っておかないとって思ってたんだ」
『なんだ』
「必ず勝ってね」
『誰にものを言ってる』
これまでよりも強い風が吹いた。
オオオォン、と鳴き声のようなものが聞こえた。
強風はたまに、獣が鳴いているように勘違いしてしまうことがある。
『おいでになったようだ』
パフィの言葉に、皆が構える。
唸り声のような、悲鳴のような、よく分からない音をさせながら現れたのは、真っ赤な大きな目を光らせた、巨大な影だった。
「……人型だ」
「獣じゃない……」
「人が、食われたのか……?」
そんなに大きくない声なのに、静かだからかよく聞こえる。
「パフィ」
『人を食ろうたのだろう、魔力のたっぷりある人間をな。たとえば、北の国の王なんぞをな』
北の国の魔法使いたちが来たというから、貴族たちが来たのは分かってたけれど、王様までは来てなかったのか。それは、そうか。
貴族が魔力をたっぷり持ってるということは、王様もそうでもおかしくないし。
『随分と膨れ上がったなぁ』
「人型だと、強くなるの?」
『知性を持つ』
冬の王は知性がない、そう聞いていたけど、魔力を持つ人を食べると知性を持てるんだとしたら、城壁の下にいる人たちも冬の王に取り込まれてしまったら、もっと賢くなってしまうのかな。
『寒いな、本当に。ノロノロと進みおって』
黒猫姿のパフィの口から吐き出された息は白かった。
「あれ? 寒さも共有するの?」
『おまえは鈍いな』
地の底から湧き上がってくるような鳴き声と、吹き飛びそうになるぐらい強い風が吹いたのは同時だった。
城壁の下にいただろう、北の国の人たちが、風に吸い込まれていく。悲鳴をあげながら。
風を避けるように目を閉じていると、構え! と叫ぶ声が聞こえた。
目を開けると、そこに、いた。
真っ黒で、真っ赤な目をした、巨大な人型の化け物──冬の王が。
『手を放せ』
「え?」
『早く』
言われるままにパフィを抱く腕の力を緩める。
ふわりふわりとパフィの身体が宙に浮かび、チリン、と鈴の音が鳴った。
淡い光が黒猫の身体を包む。
背を丸め、伸びをするようにして起き上がると、そこにいたのは、猫ではない、パフィがいた。
『では、始めるとするか』
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