前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

062-2

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 皆も僕と同じで動揺していて、あたりはざわざわしていた。

「父親だったものだ。死者の魂をあのように閉じ込めることは自然の摂理に反する」
「死んでいない! 新しい肉体があればいいだけなのだから!!」

 首を振ってキルヒシュタフ様は否定する。

「肉体が滅びれば死ぬ。それは我ら魔女とて同じだ」

 なにかを守るように抱きしめ、パフィを見上げるキルヒシュタフ様を、僕はどう思えばいいのか分からない。

「人と魔女は同じ時は生きられても、同じ長さは生きられない」

 その声は少し悲しそうに聞こえた。僕がそう思ってるから、そんな風に聞こえたのかも知れない。

「人よりも高位の存在となれば良いのよ! その為に準備をしていたのに、どうして皆で邪魔をするの!? もう少しだったのよ!!」
「愛した男を化け物にするのが愛なのか」
「愛した人とずっと一緒にいたいと考えるのは当然でしょう!」

 遠くてよく見えないけど、キルヒシュタフ様は泣いてるみたいだった。声が、泣いてた。

「どれほど人より優れた力を持っていても、永遠の寿命を持っていても、一人では意味がないの! 孤独はもう沢山!!」

 悲鳴のような声で叫ぶキルヒシュタフ様を見ていたら、悪いことをしたんだろうって分かってるのに、可哀想に思えてきてしまった。
 だって、寂しいのは辛いから。
 一人で食べるごはんも、人と食べるごはんも、味は変わらないはずなのに、でもやっぱり、誰かと食べるごはんは美味しい。それが大切な人とだったら、何倍も美味しくなる。

 アマーリアーナ様でも千年は生きていた。
 始祖の魔女と呼ばれるキルヒシュタフ様は、もっと長生きなのだとしたら。
 その間ずっとずっと一人だったとしたら。

「終わらせてやろう、娘である私が」
「パシュパフィッツェ! この人を助けて私と三人で、親子水入らずで暮らしましょう!」
「断る」
「パシュパフィッツェ!!」

 パフィの腰まで伸びた髪が広がって、揺れる。

「この時の為に準備をしてきたと言ったな。私もだ。ずっと、この時を待っていた」

 キルヒシュタフ様の身体が宙に浮かび、パフィと同じ高さまで上がってきた。

「いくら準備したといえど、私には勝てないわ。私は万の時を生きたのよ。たかが五百年しか生きていないおまえなど造作なく滅ぼせるの」
「そうだろうな」

 パフィはキルヒシュタフ様の言葉を否定しない。
 万の時を生きた魔女……それでもパフィは、キルヒシュタフ様に向かうことを止めない。

 二人からあふれる熱みたいなものが、僕たちを息苦しくさせる。
 なにかが押し潰してこようとする。トラスが守ってくれているのに、それでも苦しい。
 横を見るとノエルさんが額から沢山の汗を流しながら呪文を唱えていた。トキア様も。他の魔法使いの人たちも。鼻血を出している人もいた。
 ティール様も術符を手にして呪文を唱える。一瞬にして術符が灰になってく。魔術師の人たちの術符が、全部。灰は吹いてきた風に飛ばされて消えていく。

 皆、苦しそうな顔ををしていた。でも、誰も止めようとしてなかった。
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