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第二章
新たな『個』
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「『私からも』ってことは……椎名も誘われてたのか?」
理解しようと脳をフル回転させる俺に対して、椎名はふわふわとどこか宙に浮いたような雰囲気を纏ったままだ。
黙って彼女が頷く。
椎名の歌が上手いことを俺が知ったのは4人でカラオケに行ったあの日だ。
しかし椎名と綾瀬は1年生からの仲。
もし誘うならもっと早い段階で誘っているはずだが、今になって誘う理由がわからない。
単純に知らなかったか、それとも今になって必要になったのか…………。
そもそも俺と椎名が入るということはボーカルが2人になるということになる。
綾瀬がギター、俺と椎名がボーカル。
……なんだかバランスが悪い。
そもそも、何故この2人は俺に入って欲しいのだろうか。
俺は何度も言っているがサッカー部。
部の立ち位置としては今のところ上の方に居るから現状に満足していないわけでもない。
まして音楽が嫌いだということを綾瀬は知っている。
何故俺にこだわるのだろうか。
「俺が音楽を嫌いだってことは知ってるか」
「え……?」
「やっぱり知らないか。 俺は中学生の時なーー」
綾瀬にもした話を椎名にも聞かせる。
「そんなことが……」
「なんだ……隠しててごめんな」
「同じ中学にいたわけでもないですし、気にすることではないですよ」
申し訳ないことを聞いたかのように彼女は顔を伏せる。
どこからともなく沈黙がやってくるが、俺は少しだけ勇気を出して彼女に質問をぶつける。
「俺の話は沢山したし、これ以上話すこともない。 そこで椎名にちょっとしたことを聞きたいんだけど」
「何です」
「大したことじゃないんだけどな。 なんで敬語を使う?」
ここ最近浮かんできた疑問だ。
俺は椎名とあまり絡むことがないから単純に心を開いていないという可能性もあるが、それなりに友達として仲良くしてきたと思う。
綾瀬にも智和にも敬語を使っているところを見るとこれが自然体なんだとは思うが、一度気になってしまえば疑問は取り払われないからここで聞いておきたかった。
彼女とももっと親しくしていけたら、とも思う。
……キャラじゃないって言われそうだが。
「いえ、特に理由があるというわけでは……」
「そっか、なんかごめんな」
「……こういう口調の方が……いい?」
「えっ」
突如口調が変わった彼女の様子に驚いて、失礼と捉えられるかもしれないが驚きの声を漏らしてしまった。
「えっと…………やっぱりやめたほうがいい……かな?」
少し恥ずかしそうに目を逸らす。
その何気ない仕草が可愛らしいと思ってしまうのは、きっとこの場の妙な雰囲気のせいだろう。
「……っと…………なんで反応したらいいんだか……」
こんなときはどのような反応をすればいいのか、人間関係が薄かった俺からしたら難しい問題だ。
「今まで通りの方が良いかもしれませんね」
気付いたら妙な雰囲気もなくなり、いつものように笑う彼女の姿がそこにあった。
「……そうなのかもな」
「なんかすいません、混乱させてしまったみたいで」
「いや、俺にしてみれば椎名の普段見ない一面も見れて良かったよ。 あえて言うけど、ちょっと距離取られてたかな、とか思ってたんだ」
正直に俺の気持ちを暴露すると、慌てたように顔の前で両手を横に振る。
「いやいや! 全くそんなことはないんです! なんででしょうかね、普通の話し方も出来るには出来るのですけど、何故だかこういう口調の方がしっくりくるんです」
「そうか。 別に人の口調だのなんだのにケチをつけるような人間ではないし、気にしないでいいよ。 そういうところが見れるのも面白いし」
「面白いって……からかってるんですか?」
「その気持ちは半々かな」
「……悪い気はしません」
そうこうしているうちに駅に着き、俺たちはそれぞれの家に帰っていく。
途中で立ち止まったり、寄り道をしたりしながら人は進退を繰り返す。
それは例えば友人関係であったり、勉強であったり。
部活もそうだ。
何だってそうだと思う。
忘れてはいけないのは、俺たちは常に変わっているということだ。
俺も、椎名も、綾瀬も、智和も。
誰だって常に同じ人間はいない。
諸行無常、ってやつだ。
また、それと同じように大事なのは、変わることは決して悪ではないということ。
俺は1人、そんな哲学じみた想いを抱えながら。
そして、心の中に芽生えたある感情を優しく撫でながら。
今日という1日を終えた。
理解しようと脳をフル回転させる俺に対して、椎名はふわふわとどこか宙に浮いたような雰囲気を纏ったままだ。
黙って彼女が頷く。
椎名の歌が上手いことを俺が知ったのは4人でカラオケに行ったあの日だ。
しかし椎名と綾瀬は1年生からの仲。
もし誘うならもっと早い段階で誘っているはずだが、今になって誘う理由がわからない。
単純に知らなかったか、それとも今になって必要になったのか…………。
そもそも俺と椎名が入るということはボーカルが2人になるということになる。
綾瀬がギター、俺と椎名がボーカル。
……なんだかバランスが悪い。
そもそも、何故この2人は俺に入って欲しいのだろうか。
俺は何度も言っているがサッカー部。
部の立ち位置としては今のところ上の方に居るから現状に満足していないわけでもない。
まして音楽が嫌いだということを綾瀬は知っている。
何故俺にこだわるのだろうか。
「俺が音楽を嫌いだってことは知ってるか」
「え……?」
「やっぱり知らないか。 俺は中学生の時なーー」
綾瀬にもした話を椎名にも聞かせる。
「そんなことが……」
「なんだ……隠しててごめんな」
「同じ中学にいたわけでもないですし、気にすることではないですよ」
申し訳ないことを聞いたかのように彼女は顔を伏せる。
どこからともなく沈黙がやってくるが、俺は少しだけ勇気を出して彼女に質問をぶつける。
「俺の話は沢山したし、これ以上話すこともない。 そこで椎名にちょっとしたことを聞きたいんだけど」
「何です」
「大したことじゃないんだけどな。 なんで敬語を使う?」
ここ最近浮かんできた疑問だ。
俺は椎名とあまり絡むことがないから単純に心を開いていないという可能性もあるが、それなりに友達として仲良くしてきたと思う。
綾瀬にも智和にも敬語を使っているところを見るとこれが自然体なんだとは思うが、一度気になってしまえば疑問は取り払われないからここで聞いておきたかった。
彼女とももっと親しくしていけたら、とも思う。
……キャラじゃないって言われそうだが。
「いえ、特に理由があるというわけでは……」
「そっか、なんかごめんな」
「……こういう口調の方が……いい?」
「えっ」
突如口調が変わった彼女の様子に驚いて、失礼と捉えられるかもしれないが驚きの声を漏らしてしまった。
「えっと…………やっぱりやめたほうがいい……かな?」
少し恥ずかしそうに目を逸らす。
その何気ない仕草が可愛らしいと思ってしまうのは、きっとこの場の妙な雰囲気のせいだろう。
「……っと…………なんで反応したらいいんだか……」
こんなときはどのような反応をすればいいのか、人間関係が薄かった俺からしたら難しい問題だ。
「今まで通りの方が良いかもしれませんね」
気付いたら妙な雰囲気もなくなり、いつものように笑う彼女の姿がそこにあった。
「……そうなのかもな」
「なんかすいません、混乱させてしまったみたいで」
「いや、俺にしてみれば椎名の普段見ない一面も見れて良かったよ。 あえて言うけど、ちょっと距離取られてたかな、とか思ってたんだ」
正直に俺の気持ちを暴露すると、慌てたように顔の前で両手を横に振る。
「いやいや! 全くそんなことはないんです! なんででしょうかね、普通の話し方も出来るには出来るのですけど、何故だかこういう口調の方がしっくりくるんです」
「そうか。 別に人の口調だのなんだのにケチをつけるような人間ではないし、気にしないでいいよ。 そういうところが見れるのも面白いし」
「面白いって……からかってるんですか?」
「その気持ちは半々かな」
「……悪い気はしません」
そうこうしているうちに駅に着き、俺たちはそれぞれの家に帰っていく。
途中で立ち止まったり、寄り道をしたりしながら人は進退を繰り返す。
それは例えば友人関係であったり、勉強であったり。
部活もそうだ。
何だってそうだと思う。
忘れてはいけないのは、俺たちは常に変わっているということだ。
俺も、椎名も、綾瀬も、智和も。
誰だって常に同じ人間はいない。
諸行無常、ってやつだ。
また、それと同じように大事なのは、変わることは決して悪ではないということ。
俺は1人、そんな哲学じみた想いを抱えながら。
そして、心の中に芽生えたある感情を優しく撫でながら。
今日という1日を終えた。
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