怪奇事変

桜木未来(小説家見習い)

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怪奇事変 紅い花

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 僕は安國将人やすくにまさと、良く武将見たいな名前って言われている。
 これは昔の話になるけど――両親の都合で家を引っ越す事になってしまった。
 中の良かった友達とも離れ離れになってしまって寂しかったけど、新しい“家”には期待もあった。
 小学校4年生の時の話だ、僕は転校すると同時に中古物件で購入した家を両親から「今日から此処が将人の新しい家だぞ」と言われて飛び跳ねて喜んでたのを今でも覚えている。
 一戸建のデザイナーズ物件、中古で凡そ一千万円台だと聞いた。
 ローンを組んで買ったとか、此処からのアクセスは悪くなく、近所には小さな店もあればスーパーもあり便利性はかなり良い。
 ただ――当時、いや、今でも気になっているとしたらあの“紅い花”が咲いている所だけ。
 最初は物珍しいとか言う事で“綺麗だな”って感想しかなかったんだけど、後になってその花の名所を知りこの物件が不吉に思えて“嫌悪”してしまった。



 「ひろ~い!」
 
 「ハハハ、あまり飛び跳ねて怪我をするなよ?麻沙美、荷物持つよ」

 「ありがとう、アナタ」

 拾い家は初めてで、当初の僕はとても浮かれていた。
 何せ前に住んで居た場所は団地で、壁も薄く、少しでも騒げば近隣住民の迷惑とされ嫌味を多々言われたものだ。
 だがその心配も今日で消え失せる。
 大声で歌を歌っても、誰にも咎められることもないし、近所の迷惑を気にする必要性もない――ある程度だが。
 荷物を片づけて整理している親を余所に、僕は外に飛び出し広い庭を駆けずり回った。
 その際に、偶然見つけた綺麗な一輪の花が合った。

 「コレ……なんて花、だろう?」

 放射状に咲いた赤い花、特徴的な花だ。
 見た事もなかった僕はそれに触れようとすると母親が血相を変えて飛んできた。

 「触っちゃダメ!!」

 「お、お母さん?」

 「このお花はね、“彼岸花”って言うの。茎や葉の切り口に毒が付いているから、そのまま触ったら手が真っ赤に腫れちゃうわよ」

 「そ、そうなんだ……」

 見た目はとても綺麗な花だが、その恐ろしい効力を持っているとはこの時の僕は知らなかった。
 母の注意がなければそのまま触ってしまい、強い痛みに泣き叫んでいたかもしれない。
 そうなったら折角の引越もお祝いも台無しだ。
 だが、母は此処で奇妙な発言をした。

 「どうして……もう11月なのに、普通は枯れてるはず……」

 彼岸花は基本的に9月に咲く花であって、終わるのも9月なのだ。
 つまり11月まで咲いていることはほぼありえない、だがその時の僕はこの花が“特別なモノ”だと母に言ったのだ。

 「きっと魔法がかかった特別な花なんだよ!だから枯れないんだよ!」

 「フフ、そうね!魔法のかかった魔法のお花って事にしておきましょう!」

 母は僕に合わせてそう言ってくれたが、今となれば不気味な話だ。
 本来は枯れているはずの花、そして前の持ち主はなぜ彼岸花を此処に植えようと思ったのか?
 大人になると色々疑問が尽きないが、重要な所はそこではなかったのだ。
 まだこの時は気づいていなかったが……。

 「さて、引越の準備も閉幕に近づいてきた、そろそろ車出して飯の支度でも整えるか~」
 
 「そうね!今日は何が良いかしら?」

 「将人の好きなカレーにするか!」

 「え!カレー!?食べる!!」

 初日の引越はあっという間に終わり、その日の晩御飯はカレーになった。
 何を思ったのか小さかった僕は、その日から日記を書く事にした、理由はあの“紅い花”を見た事が一番の影響だろう。
 ただのノートに、筆は自然に流れるように書かれて行き、今日起きた出来事を淡々とまとめる日記へと変化したのだった。
 そう、今語っているこの内容も日記の一部なのだ。
 僕はそっとノートを閉じるとベットから見える外の景色を一望して、目を輝かせていた。
 だがふと、気になった庭に目を向けるとあの“紅い花”が目に映った。
 特徴的で気になる花、水はやるべきなのだろうか?あのまま枯れたりしないのだろうか?それとも毒があると言う事で、母が安全を期して抜いてしまうのだろうか?
 色々な不安が頭を過るも、その日は体力を使い果たしてしまい就寝してしまうのであった。

 翌日――

 「ボク……行きたくないよ」

 「だーめ、学校に行くのは将人のお仕事でしょ?」

 「でもまたみんなに挨拶して、緊張しちゃって、きっとまだ武将って呼ばれるよ!」

 「あらカッコイイじゃない武将!だって日本は侍の国だもの、その中で武将は作戦を立てて軍を率いたリーダーなのよ?自信を持ちなさい」

 「……でも」

 「さぁ、遅刻しない内に行くわよ」
 
 「……うー」
 
 この時の僕の心境は複雑だった。
 前の友人とは離れ離れになった上に、もう一度人間関係を構築しなければならないと言うストレスと、名前で馬鹿にされるのでは?と言う羞恥心が大きかったからだ。
 家を出る前に、昨日見た花を見ると、見間違い?いや、見間違いじゃない。
 “彼岸花”は2つになっていたのだ。



 午後になると、朝出る前の憂鬱な気持ちは変化しており、周りには友達が増えていた。
 校内で遊び、帰宅時間になってから家に着くと、朝気になっていた“彼岸花”を確認していく。
 するとやはり1輪から2輪になっている。
 
 「増えた……」

 不思議だと今でも思うよ、だって1輪しか咲いてなかったんだから。
 それが今朝目覚めたら2輪になっていれば、驚くだろう。
 
 「あらお帰り」

 「ただいま!お母さん、コレ見て」
 
 「あら、将人は本当にお花が好き――」

 そこまで言いかけて言葉が止まる母の様子は驚愕そのものだった。
 いや、今だから分かる、正常な判断なのだ。
 何故1輪しか咲いてない花が2輪に増えている?
 母は急に辺りを見渡し、僕の手を引いて急いで家の中に入れた。
 そしてなるべく母は僕にこう告げるのであった。

 「いい将人、知らない人に付いて行ってはダメよ!知らない人が来ても出ちゃダメ!窓から見るのもダメ!良い?」

 「なんで?」

 「そうしないと、将人は怖い人に連れ去られちゃうかもしれないわよ~」

 少し怖そうな表情で冗談を交えて言う。
 当初の僕はそれが怖くて母の言葉に同意した。
 しばらくして食事などを済ませ、寝る前の日記を書く、これがいつの間にか僕の中で習慣化されるようになって行ったのだ。

 「今日は、お花が2つに増えた、あれはきっと本当に“魔法の花”なんだ」

 最後にそう綴り、ノートを閉じてカーテンを開けようとするが、母に言われた事を思い出してこの日カーテンを開けなかった。
 同時に自分は明日になったらまた花が増えているんじゃないかという期待もあったからだ。
 もし増えていたのならば――ノートに書いた“魔法の花”と言う言葉は間違いではなくなるからだと実感できると感じだからだ。

 夢の中で何かが聞こえた様な気がする……厳密にはコレは父と母の話声なのだが。
 将人の部屋はリビングの部屋の真上だった為、天井の壁が薄い為に漏れてしまったのだろう。
 
 「あの子、またって……」

 「ああ、確認したが今日は花が3輪になっていた、本当に将人の言う通り“魔法の花”なら良いんだが……」

 「あの花って“彼岸花”で間違いなんでしょ?それに――」

 「ああ、なのに何で何事無かったかの様に生えてくるんだ?」

 「嫌だ!私、なんだか怖いわ……将人も日記なんて書く子じゃなかったのに急に――」

 「考えすぎだ麻沙美、あの子の心境の変化は確かに花の影響かもしれないが、あの子が変わったのは良い事じゃないか?玩具やゲームで遊んで成績が落ちるよりはマシって前に言ってただろう?」

 「そう……ね、考えすぎ……ね」

 「兎に角、明日も出勤する前に抜いて行くよ。それでも生えてくるなら対策を考えなくちゃな」

 「でも普通じゃないわ!抜く前と同じなんて……」

 「麻沙美。ポジティブに考えよう、難しく考える必要なんてないんだ」

 「アナタまで何言い出すの!?」
 
 「麻沙美、将人が起きてしまう、良いじゃないか!明日出勤する前に抜いてそれでお終いだ!今日は寝て明日に備えよう!」

 「……ええ」
 
 話し声だけしか今となって分からない事だが、母は明らかに同様してた様に聞こえるし、逆に父は楽観的な感じだった。
 そんな両親の言い合いを聞きながら考えていたのは、あの“紅い花”がだけだった。

 翌日――

 「あ!またお花が生えてる!!」

 「……」

 喜ぶ自分とは裏腹に母は蒼顔の様子でその光景を見ていた。
 当初の僕はビックリしすぎて驚いている程度にしか思えなかったが、きっと今見たのなら違うのだろう。
 母は僕の腕を引き力一杯抱き寄せると、静かにこう口にした。

 「良い?この先、何か変な事があっても無視して何も見なかった様に生活して?」

 「どうして?」

 「お願いよ!!」

 突然の声と共に身体がビクっと跳ね驚いてしまう。
 叱られたと思い込んだ僕は目尻に涙を浮かべ恐怖で怯えた顔を作るも、母はそれを見た途端顔つきを変えて優しく、諭す様に話す。

 「ごめんね驚かせちゃって!でもね、将人が安全な事がママにとって一番大切な事なの!分かってくれるよね?」

 「う、うん……」

 出てくる暖かい涙を手で拭うが、母が代わりに持っていたハンカチで涙を拭い、学校に行く身支度を整えてくれる。

 「今日はお母さんもいくの?」
 
 「え?ええ、ママも行くわ!行かないと、将人が途中で怪我したら大変だもの」

 「なんでボクが怪我するの?」

 「そ、それは……ほ、ほら!将人は“魔法のお花”に夢中になるぐらい周りが見えてないんだもの!車も通るし、危ないでしょ?」

 「でもボク、何時も1人で学校行けてるよ!」

 「え、ええ、そ、そうね。でも今日はダメ、今日はママと一緒に行きましょう!」

 「は、恥ずかしいよ!」

 「恥ずかしく何てないの!大丈夫、何が遭っても私が将人を守るから!」

 「……お母さん、何か変だよ?何でボクを守るの?」

 「……行きましょう、遅刻ちちゃう」

 その時の母の顔はまるで別人の様だったのを今でも覚えている。
 どうして此処まで過保護すぎる行いをするのか?
 今では分からなくもないが、当時の僕は突如母が別の人に変わってしまった様な気がして……怖かった。



 そんな事柄く頃には学校でが流れる様になった。
 それは怪談話と呼ばれる所謂、怖い話と言うやつだ。
 当時の僕はその話に興味を抱き、新しく友人になった子と話を聞いていた。

 「将人はさ!まだ此処にきてから全然知らねーけど、何処かに“紅い花が咲く家”があるらしいぜ!」

 「“紅い花”……あ!それボクん家だよ!」
 
 「将人の?そんな訳ねーだろ?」

 「本当だって!」

 「本当か?よーし!じゃ今日皆で将人の家に行って“紅い花”見てみようぜ!」

 場が盛り上がる、それほどに興奮されるとなんだかこっちまで緊張してしまうが、流石に今更嫌とは撤回できなかった。
 
 「ね?なんで“紅い花”が珍しいの?」

 「さぁ?この街ではがあるんだってよ」

 「噂?」

 「ああ、何でも願いが叶う“魔法の花”なんだって」

 「へ、へぇ~凄いや!それがボクん家に……」

 「将人将軍!本当か?」

 「ほ、本当だよ!」

 「お~し!嘘ついたら菓子おごりな!」
 
 「絶対本当だもん!」

 そう維持を張っていたのが懐かしい、いや、維持を張らずに嘘だと言えば良かったと後悔さえ今はしている。
 まさかあんな事になるなんて思いもしなかったのだから。

 放課後――

 こうして将人と数人の友達は将人が住んで居る家に帰る事になった訳だが、帰宅し早速友人を母に紹介しようとするも、母は何処に見当たらなかった。
 仕方なく戻ってきて、花が咲いている場所に向かうも、そこには手が土と肉と爪が抉れたのか、血まみれになっており、血走った目付きの母が洗い息を吐きながらそこに立っていた。
 「なんで……ど、どうしてなのよ!」

 急に汚れた手で髪をグシャグシャと搔きむしり始める母の姿は狂気そのものだった。

 「お、おかあ……さん」
 
 ギロっと目玉が動き、それは母の目ではない何かの目だった。
 
 「お、俺帰るは!」

 「お、俺も」

 「じゃな、将人……」

 数人の友人は離れて行ったが、母はずっと僕を凝視しており、瞬き1つした瞬間、母は僕の身体を宙に浮かぶほど持ち上げて身体を揺すぶる。

 「なんで!どうして!!連れてきたのよ!!」

 「お、おか、おかあん――」

 「あれほど!言ったじゃない!変な事があっても無視しなさいって!どうしてお友達を連れてきたの!!」

 「ご、ごめー―」

 「ごめんで済むと思うなこのクソガキが!!」

 「ヒク、ヒク!」

 「はぁ…はぁ……ん、くッ……はぁ~」

 恐怖で用を足っしてしまった僕はただ目の前の何かが怖かった。
 クシャクシャに乱れた髪は、顔の前を覆っており、テレビのCMで見た事のあるお化けか何かに似ていたからだ。
 まだ血走った目だけが僕を見つめており、それが怖くてただ泣く事しかできない。
 しばらくすると、母は我に返った様に戻り、痛みで顔をしかめるも、自分の息子が号泣している事に驚きを隠せず、近づこうとするも、逃げる様に家に戻り鍵を閉める音が聞こえる。

 「将人!将人!!開けて!ママよ!此処を開けて!」

 「こ、こないで!お、お母さん、お母さんは何処にやったの!?」

 「違う、将人!私がママーー」

 「お前なんて知らないよ!怪物!」

 「ッ!?」

 衝撃を受けたのだろう、ショックでドアノブを激しく回していた母がドアノブを回すのを辞めると、ステンレス越しの窓から覗き見る。
 またあの血走った目だろうっと思っていたが、それ以上に――見下ろす黒い眼が2つ、将人を捉えており、将人は恐怖で自身の部屋へ避難した。
 濡れたズボンも気にせず、そのまま布団に包まり恐怖を緩和させるために、ただジッと母ではなく父の帰りを待つ。
 それだけが将人が助かるチャンスだと思ったからだ。
 時間が何時になったか覚えてはいないが、下の鍵が開く音が聞こえビクリと身体が震えてしまう。
 廊下を歩く音が聞こえる、そしてノックの音、お母さんが此処に来たに違いないっと思った僕はそのまま無視するも、ゆっくりドアは開かれ入室してくる。
 
 「将人」

 それは母の声ではなく、父の声だった。
 勢いよく掛け布団を脱がした僕は父に飛びつき泣きじゃくる。
 それだけ事態は深刻だったと言う事は父も此処で気づき、優しく頭を撫でてくれる。
 僕はその後、父と簡単な入浴を済ませてなるべく母を見ない様に食事を済ませて就寝する事になった。
 父の計らいだろう、母もこの時は動揺していたと言う事もあり、なるべく刺激を与えない様にと後に部屋で待機していたらしい。
 その後はまた眠りに付くも激しい口論が聞こえて来た。

 「私は此処に来るのは反対だったのよ!」
 
 「仕事なんだから仕方ないだろう?それに麻沙美の意見だった聞いたうえでの引っ越しだったじゃないか?」
 
 「だからってこの家をわざわざ選ぶ必要なんて――」
 
 「破格の価格なんだ、仕方ないだろ」

 「そもそもあなたがもっと稼いで居れば――」

 「結婚する当時、その話は耳の鼓膜が破れる程話したよな?それに将人はもう小学4年だ、そこまで言うならお前だってパートでも何でもして働けば良いだろう?」

 「何よその言い方!」

 「事実だろ?共働きが嫌だなんて話は聞いてないし、何より収入面は把握してたはずだろ?」

 「それは、貴方がちゃんと昇給すれば――」

 「それを人は他責思考って呼ぶんだ、自分の心配事は自分で解決してくれって言いたい処だが、俺達は夫婦だ、何とかやっていくしかないだろ」

 「私はこの家が嫌だって話をしているの!」

 「なら引っ越せるように頑張るしかないだろ、将人と2人で別居するとしても俺の支援だってかなりギリギリだし、何より――将人があんなに怖がってるのにやっていけるのか?」

 「そ、それは……」

 「麻沙美。お前、将人に何した?」

 「……覚えてないわ」

 「あんな怖がった将人を見たのは初めてだ、とてもじゃないが今から2人で暮らすなんて無理だ、悪いが出て行きたいなら共働きで金を稼いで別の物件を探すか、麻沙美が出て行くかのどちからだ」

 「な!?なんで私から将人を奪い取ろうとするの?」

 「奪うんじゃない、お前から遠ざけるだけだ、今のままじゃ将人はお前を受けれてはくれないぞ」

 「……」

 「俺だって父親だ、肩書だけじゃない、こうして帰って息子の様子、妻の様子だって分かる、お前……手が血だらけになるまでしてた?」

 「……覚えてない、わ」

 「まぁどうするかは追々考えてお前も寝ろ、そんなやつれた顔されたんじゃ俺も何から言えば良いか分からん」

 「……おやすみ」

 「ああ、おやすみ」

 喧嘩は終わったようだ、だが2階に上がってくる母は自室に戻る前に、何故か僕の部屋の前に止まった。
 それが怖くて毛布を深く被り遠ざかるのを待つも、全くそこから動かない。
 
 「は嘘よ、そんな事、あるはずない」

 友達が言っていたあの噂と言う言葉だ、確かに聞いた事はあるけど具体的に何がと言うのは聞いた事がない。
 いや、聞かない方が身の為なのだろうか?
 僕はそのまま落ちる様に眠りに落ち、その後母が部屋に入る事はなかった。



 それから数年――
 あれ以来の出来事はなく、家も引っ越す事はなかった。
 ただ変わった事があるとすれば、家の庭に“あの花”が咲きほこっていた事だ。
 中学になった将人はその花をもう“魔法の花”とは呼んでおらず“彼岸花”と正式名所で呼んでいた。
 あれからもと言うのは聞く事もできず、一度両親に聞いてみたが、教えてくれることはなかった。
 中学は公立に通う事になり、家系的にも安心した学校生活と生活を送る事ができたのは幸いであった。
 だが、新しい学校で聞いてしまったのだ。

 「知ってるか?ある家だけに咲く花も噂」

 「なんだよ、ソレ」
 
 「何でも“紅い花”で――」

 その時、子供の頃に植え付けられた母の凶器染みた表情と言動、行動が全て思い浮かばされ耳を塞ぐ。

 「君、大丈夫?」
 
 「へ?あ、ああ、大丈夫」

 「……君、不思議な匂いがするね?」

 「はぁ?」
 
 「何でもない、ただ――気を付けてね」

 意味深な言葉を言われ立ち去るその生徒は隣のクラスの物静かな男性だった。


 放課後――

 部活動に属する事なく家路に着く将人の前に、小学校からの友人が焦ってこちらに走ってくる。
 そんな友人に心配の声をかける。
 
 「大丈夫か?」
 
 「だ、大丈夫じゃねーって!校舎裏で自殺があったんだよ!」

 「はぁ!?」

 「良いからお前も来いって!」

 手を惹かれるまま走り出し、そのまま校舎裏に行くと、スカートが見えた所で女子生徒だと言う事は理解した。
 関心の肉体は野次馬の群れで見えなかったが、悲惨な状況なのだろう。
 
 「やっぱり……やっぱりはマジなんだ!」

 「それ、僕が中学になっても教えて貰えてないんですけど」

 「知らないままよく中学まで過ごせたな、お前」

 はぐらかせるからだよ、お前達にっと心の中で唱えておくと、友人は語りだした。

 「ならしっとけ、この街は――噂じゃなくて本当に“呪われて”るんだ」

 「はぁ?」
 
 「“毎日誰かが必ず死ぬ”、そんな凶器の呪いが掛けられた場所なんだ」

 「…………プ」

 「お、おい」

 「アハハハハ、そんな訳ないだろ!冗談にしても下手すぎだって」

 「馬鹿!冗談じゃねーって」
 
 「だって――なんですか?」

 先ほどまで死体を見ていた野次馬達が一斉にこちらを見る。
 不気味に感じた僕は反射的にそう返すと、野次馬の1人が言った。

 「噂は本当だよ――毎日“誰かが死ぬんだ”、どう言う死に方か分からないけど」
 
 「そんで亡くなった方には、その墓ではなくに咲く“花”がある」

 「……ある、場所?」

 緊張が走る、それはまさか――

 「ああ、それはある自宅にひっそり咲く花――“彼岸花”が」

 急いで家路に着くと、何時も日課になっていた花の数を数えていると、その花の数は――今朝よりも1輪増えていた。
 つまり、此処に彩られてい居る花は、全て“死者への手向けの花”であり“魔法の花”などとは言い難い“呪われた花”なのだ。

 それ以降、毎日の様に1輪と咲いていく花、雑草の様に移住区に咲きほこり寧ろ邪魔になっていた。
 母は衰弱しており、僕も既に数を数えるのを辞めている。
 抜いても生える花、この花は毎日誰かが1人亡くなった証であり、何故かこの家に住んで居る者にしか見えない花。
 父もこの状況に異常を察した事で引っ越す事が決定した。
 最後に車に荷物をまとめ、去る際に、1輪1輪に咲く花の傍らで、亡くなった亡霊がこちらを恨みがましい目で見ていたのを覚えている。
 まるでお前は逃げるのか?っと言うような、そんな表情だった。


 第十一怪 死に咲く彼岸花
 
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