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1章
続・護衛騎士の災難2
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手紙の中にはカタリーナ様に会いたいという王子の思いが切々と書かれていた。この手紙を俺がもらってどうすれば良いか分からなかったが
『カタリーナ様も同じ気持ちだと思います。昨日カタリーナ様は孤児院を訪問して・・・』と言ったように適当に同意をしつつ、話しの内容を王子の興味のありそうな話題にすり替える。その手紙のやり取りが始まり1ヶ月ほどたった頃それとなしに、
『カタリーナ様の弟君であり、身近な人物であるルルーシュ様に相談してはいかがでしょうか』
と一言添えてみた。正直俺に王子の相手は荷が重すぎたからだ。だが、俺の思惑は簡単に外れる事になるかなが
『あいつは、面倒がって返事を返さないからだめだ』
と一刀両断された。ルルーシュ様は殿下をかわす手段を心得ているらしい。それが公爵家という身分によるものなのか、幼い頃からの付き合いによるものなのか、カタリーナ様の弟であるという特権が含まれているのかは分からない。ただ分かるのは、それらを何も持たない俺は、王子の命に従い愚痴こぼしの相手になりつつ、ストーカー行為を繰り返す事しか出来ない事だった。愚痴こぼしの手紙の返事は気は使うが、手元に届くのは所詮は紙。空気が冷える事も殺気を向けられる事もない為、カタリーナ様関係で王子を目の前にするよりもよっぽど気は楽だった。
王都を離れる期間が長くなればなるほど王子からの私的な手紙の数は増えていった。それほどストレスならば帰ってくれば良いと思ったが、男として最後までやり遂げたい思いもある様だ。カタリーナ様に良く見られたいという下心は明け透けだが、災害地を思う心も王子としての責任感も多少はあるだろうから問題はないだろう。・・・優先順位の一番はカタリーナ様である事に変わりはないがそのカタリーナ様が国を思ってくださっているのだから問題ないはずだ。王子の婚約者がカタリーナ様で良かったと心の底から思っている。
王子とカタリーナ様の手紙のやり取りは順調に進んでいた。だが、それは王子が辺境を訪れて6ヶ月を過ぎるまでだった。王子の手紙を受け取ったのを最後にカタリーナ様からの返事がなくなったのだ。護衛仲間の話では、何か書き物をしてはいるが途中で丸めて捨ててしまっているらしい。おそらく、それが王子に宛てた手紙ではないかという推測だった。毎日のように書いてはいるが、それらはすぐに捨てられて送られた形跡を見つける事が出来なかった。王子に手紙が届いていない事実はすぐにはっきりした。王子自ら手紙が届かない理由について、俺の所に手紙が来たからだ。最初はカタリーナ様の体調を気遣う手紙が2、3日に1度届くようになった。それが1週間続くと『離れている間に思う男ができたのか』と言う内容に発展した。手紙は毎日届くようになり、収拾がつかなくなり始めた。カタリーナ様の外出頻度は減っており男性と個人的に会われている様子はない。その事を伝えるが王子の元に手紙が届かない事実が不安をかきたてているようであり、全く効果はなかった。誰かに手紙を書く仕草をしている事を話すと『私の所に手紙が届いてないのであれば、他に受け取っている者がいるかもしれない。公爵家に関わる手紙についても調べるように』と言う指示を受けた。カタリーナ様のプライベートだけでなく、王家に次ぐ力をもつ公爵家のプライベートにまで関わる仕事が追加されようとしている事に背筋が凍りつく。 それならばと、妥協案でカタリーナが破棄した手紙をどうにか入手する案を示した。もしかすると、それから相手を絞る事が出来るかもしれないし、相手が王子であれば憂いは晴れる事になるからだ。公爵家の手紙には重要書類が含まれている可能性が高くそれをするには流石に憚られる。ゴミ漁りもどうかとは思うが、機密事項を暴いてしまうリスクを考えればこちらの方がましだろう。カタリーナ様の外出がほとんどなくなった今、俺たち護衛の主な仕事は殿下から命を受けたストーカー行為となっていた。仲間の護衛達も初めのような生き生きとした表情はなく、王子から俺宛の手紙が届くのを見ると哀れみの表情を浮かべるようになっていた。半年が経過した頃、ここにはもう王子を盲目的に心酔するような護衛はいなかった。
王子に納得してもらい、ゴミ漁りを始めた。多くの手紙のやり取りがあり、書き損じもそれなりの量であったが女性の字と思われるものは多くなかった。おそらく、これだろうという手紙は思いの外早く見つけることができた。
『逢いたい』
一言だけ綺麗な字で書かれた手紙は同様の内容で何枚か見つかったが、これを王子に見せても良いものかの判断は難しいものだった。なぜなら、王子宛と判断できる材料が何もないのだ。これを見て『手紙の相手を探せ』などと言われたらたまったものではない。あれほど真面目なカタリーナ様が他の方に秘めた思いをもつなど考えられないが、女性の心の中まで知る事は難しい。万が一お相手がいる事を考えると、それが見つかった事を考えると・・・あぁ、考えるのも嫌になる。とてもではないが王子には報告できないだろう。無難に
『公爵家の管理が厳しく、時間がかかり申し訳ありません。破棄された手紙ですらこの状態ですので、正式な手紙に関しては我々では難しいと思います』
本来はありえないが、王子には嘘の報告を送る事にした。王子に虚偽の報告をする事は許されないが、公爵家の手紙を覗き見る事も許されない事だ。あぁ、胃が痛くなる。そんなやり取りを続けると、いつの間にか王子から届く手紙は朝、夕の1日2通になっていた。そんなに気になるなら1日でも、帰って来てカタリーナ様にお会いすれば良いのにと思うが、それは男としての矜持が許さないらしい。こんな、ストーカー行為を繰り返す男の矜持とは何なのか疑問を投げかけたい思いを、どうにか飲み込んだ。
そんなことを続けたある日、ルルーシュ様にお会いする機会があった。
ルルーシュ様は何か思案されている様子で、王子の状況や護衛の仕事について質問を繰り返す。最初はぎこちないながらも笑顔を浮かべることができていたが質問が繰り返すたびに罪悪感でいっぱいになる。
ルルーシュ様はどこまでご存知なのか、婚約者とはいえ常軌を脱した行為であり公爵家から咎められるのではないか・・・考えれば考えるほどに表情は消え、顔色もわるくなってきている事だろう。その内指先まで震えてくる。手を握り込む事で、隠そうとするが、それがどこまで通用するかも分からない。どうにか俺が話すことが出来たのは
「すみません。業務に関わる事でありお伝えすることはできません」
と答えるだけだった。
納得はしていないが、ここを引き時だと感じたのだろう。ルルーシュ様自身のところにも王子からの手紙が届いている事を言い残し立ち去ろうとするのだった。言及から逃れられた事にほっとするが、王子の問題は何一つ解決していない事に気づく。いつかのあの時も王子の執務室で助けてくれたルルーシュ様なら対策を一緒に考えてくれるかもしれないと言う淡い期待が胸に過ぎる。
「あのっ・・・、この事を秘密にしていただけるのであれば、お話させていただきます。本来であれば、このような事は許される事ではありませんが、カタリーナ様の弟であり、殿下とも幼い時から交流のあるルルーシュ様であれば・・・ご理解いただけるかもしれません」
気づいた時にはそう声を出し、ルルーシュ様は足を止めていた。
ルルーシュ様から、ゆっくり話が出来るようにと公爵家の応接室に案内され、そこでカタリーナ様の護衛になってからの日々の話をした。たまたま手元に残っていた手紙もお渡しする。その手紙は特別なものではなく、いつの間にか朝と夕、1日2回届くようになった王子からカタリーナ様にへの想いを綴ったものだった。
『昨日も私の所には手紙は来なかった。カタリーナは昨日は青色のドレスを着ていたんだね。裾に入った黒色の刺繍は少し地味な気もするけれど、私の色を身につけていると思うと嬉しくなるよ。昨日の報告では朝食を少し残したようだが、何かあったのか?聞く限りではカタリーナが好まない物は出ていないようだが。体調に何かあるようであれば、私の方から連絡し医師を派遣する為連絡するように。昨日の報告書には、話をした男性の数と内容が示されていなかったため本日分に追加で記入する様に。調べてもらっている手紙にはついてだが・・・』
手紙を読み始めてすぐにそれを折りたたんだルルーシュ様は、視線をすぐに俺の方に向けた。後ろめたさから、思わず目を逸らしてしまう。そのまま一言だけ告げる。
「このような手紙が1日2回届きます」
視界の端に映ったルルーシュ様の目が見開かれたのがわかった。
「色々迷惑をかけて申し訳ない。王子にはこちらから話をしておく。仕事の途中なのに色々とありがとう」
この状況を改善とまではいかなくても、悪化を避けるためにルルーシュ様に声をかけたがこれが吉と出るか凶と出るか今の俺にはわからなかった。
『カタリーナ様も同じ気持ちだと思います。昨日カタリーナ様は孤児院を訪問して・・・』と言ったように適当に同意をしつつ、話しの内容を王子の興味のありそうな話題にすり替える。その手紙のやり取りが始まり1ヶ月ほどたった頃それとなしに、
『カタリーナ様の弟君であり、身近な人物であるルルーシュ様に相談してはいかがでしょうか』
と一言添えてみた。正直俺に王子の相手は荷が重すぎたからだ。だが、俺の思惑は簡単に外れる事になるかなが
『あいつは、面倒がって返事を返さないからだめだ』
と一刀両断された。ルルーシュ様は殿下をかわす手段を心得ているらしい。それが公爵家という身分によるものなのか、幼い頃からの付き合いによるものなのか、カタリーナ様の弟であるという特権が含まれているのかは分からない。ただ分かるのは、それらを何も持たない俺は、王子の命に従い愚痴こぼしの相手になりつつ、ストーカー行為を繰り返す事しか出来ない事だった。愚痴こぼしの手紙の返事は気は使うが、手元に届くのは所詮は紙。空気が冷える事も殺気を向けられる事もない為、カタリーナ様関係で王子を目の前にするよりもよっぽど気は楽だった。
王都を離れる期間が長くなればなるほど王子からの私的な手紙の数は増えていった。それほどストレスならば帰ってくれば良いと思ったが、男として最後までやり遂げたい思いもある様だ。カタリーナ様に良く見られたいという下心は明け透けだが、災害地を思う心も王子としての責任感も多少はあるだろうから問題はないだろう。・・・優先順位の一番はカタリーナ様である事に変わりはないがそのカタリーナ様が国を思ってくださっているのだから問題ないはずだ。王子の婚約者がカタリーナ様で良かったと心の底から思っている。
王子とカタリーナ様の手紙のやり取りは順調に進んでいた。だが、それは王子が辺境を訪れて6ヶ月を過ぎるまでだった。王子の手紙を受け取ったのを最後にカタリーナ様からの返事がなくなったのだ。護衛仲間の話では、何か書き物をしてはいるが途中で丸めて捨ててしまっているらしい。おそらく、それが王子に宛てた手紙ではないかという推測だった。毎日のように書いてはいるが、それらはすぐに捨てられて送られた形跡を見つける事が出来なかった。王子に手紙が届いていない事実はすぐにはっきりした。王子自ら手紙が届かない理由について、俺の所に手紙が来たからだ。最初はカタリーナ様の体調を気遣う手紙が2、3日に1度届くようになった。それが1週間続くと『離れている間に思う男ができたのか』と言う内容に発展した。手紙は毎日届くようになり、収拾がつかなくなり始めた。カタリーナ様の外出頻度は減っており男性と個人的に会われている様子はない。その事を伝えるが王子の元に手紙が届かない事実が不安をかきたてているようであり、全く効果はなかった。誰かに手紙を書く仕草をしている事を話すと『私の所に手紙が届いてないのであれば、他に受け取っている者がいるかもしれない。公爵家に関わる手紙についても調べるように』と言う指示を受けた。カタリーナ様のプライベートだけでなく、王家に次ぐ力をもつ公爵家のプライベートにまで関わる仕事が追加されようとしている事に背筋が凍りつく。 それならばと、妥協案でカタリーナが破棄した手紙をどうにか入手する案を示した。もしかすると、それから相手を絞る事が出来るかもしれないし、相手が王子であれば憂いは晴れる事になるからだ。公爵家の手紙には重要書類が含まれている可能性が高くそれをするには流石に憚られる。ゴミ漁りもどうかとは思うが、機密事項を暴いてしまうリスクを考えればこちらの方がましだろう。カタリーナ様の外出がほとんどなくなった今、俺たち護衛の主な仕事は殿下から命を受けたストーカー行為となっていた。仲間の護衛達も初めのような生き生きとした表情はなく、王子から俺宛の手紙が届くのを見ると哀れみの表情を浮かべるようになっていた。半年が経過した頃、ここにはもう王子を盲目的に心酔するような護衛はいなかった。
王子に納得してもらい、ゴミ漁りを始めた。多くの手紙のやり取りがあり、書き損じもそれなりの量であったが女性の字と思われるものは多くなかった。おそらく、これだろうという手紙は思いの外早く見つけることができた。
『逢いたい』
一言だけ綺麗な字で書かれた手紙は同様の内容で何枚か見つかったが、これを王子に見せても良いものかの判断は難しいものだった。なぜなら、王子宛と判断できる材料が何もないのだ。これを見て『手紙の相手を探せ』などと言われたらたまったものではない。あれほど真面目なカタリーナ様が他の方に秘めた思いをもつなど考えられないが、女性の心の中まで知る事は難しい。万が一お相手がいる事を考えると、それが見つかった事を考えると・・・あぁ、考えるのも嫌になる。とてもではないが王子には報告できないだろう。無難に
『公爵家の管理が厳しく、時間がかかり申し訳ありません。破棄された手紙ですらこの状態ですので、正式な手紙に関しては我々では難しいと思います』
本来はありえないが、王子には嘘の報告を送る事にした。王子に虚偽の報告をする事は許されないが、公爵家の手紙を覗き見る事も許されない事だ。あぁ、胃が痛くなる。そんなやり取りを続けると、いつの間にか王子から届く手紙は朝、夕の1日2通になっていた。そんなに気になるなら1日でも、帰って来てカタリーナ様にお会いすれば良いのにと思うが、それは男としての矜持が許さないらしい。こんな、ストーカー行為を繰り返す男の矜持とは何なのか疑問を投げかけたい思いを、どうにか飲み込んだ。
そんなことを続けたある日、ルルーシュ様にお会いする機会があった。
ルルーシュ様は何か思案されている様子で、王子の状況や護衛の仕事について質問を繰り返す。最初はぎこちないながらも笑顔を浮かべることができていたが質問が繰り返すたびに罪悪感でいっぱいになる。
ルルーシュ様はどこまでご存知なのか、婚約者とはいえ常軌を脱した行為であり公爵家から咎められるのではないか・・・考えれば考えるほどに表情は消え、顔色もわるくなってきている事だろう。その内指先まで震えてくる。手を握り込む事で、隠そうとするが、それがどこまで通用するかも分からない。どうにか俺が話すことが出来たのは
「すみません。業務に関わる事でありお伝えすることはできません」
と答えるだけだった。
納得はしていないが、ここを引き時だと感じたのだろう。ルルーシュ様自身のところにも王子からの手紙が届いている事を言い残し立ち去ろうとするのだった。言及から逃れられた事にほっとするが、王子の問題は何一つ解決していない事に気づく。いつかのあの時も王子の執務室で助けてくれたルルーシュ様なら対策を一緒に考えてくれるかもしれないと言う淡い期待が胸に過ぎる。
「あのっ・・・、この事を秘密にしていただけるのであれば、お話させていただきます。本来であれば、このような事は許される事ではありませんが、カタリーナ様の弟であり、殿下とも幼い時から交流のあるルルーシュ様であれば・・・ご理解いただけるかもしれません」
気づいた時にはそう声を出し、ルルーシュ様は足を止めていた。
ルルーシュ様から、ゆっくり話が出来るようにと公爵家の応接室に案内され、そこでカタリーナ様の護衛になってからの日々の話をした。たまたま手元に残っていた手紙もお渡しする。その手紙は特別なものではなく、いつの間にか朝と夕、1日2回届くようになった王子からカタリーナ様にへの想いを綴ったものだった。
『昨日も私の所には手紙は来なかった。カタリーナは昨日は青色のドレスを着ていたんだね。裾に入った黒色の刺繍は少し地味な気もするけれど、私の色を身につけていると思うと嬉しくなるよ。昨日の報告では朝食を少し残したようだが、何かあったのか?聞く限りではカタリーナが好まない物は出ていないようだが。体調に何かあるようであれば、私の方から連絡し医師を派遣する為連絡するように。昨日の報告書には、話をした男性の数と内容が示されていなかったため本日分に追加で記入する様に。調べてもらっている手紙にはついてだが・・・』
手紙を読み始めてすぐにそれを折りたたんだルルーシュ様は、視線をすぐに俺の方に向けた。後ろめたさから、思わず目を逸らしてしまう。そのまま一言だけ告げる。
「このような手紙が1日2回届きます」
視界の端に映ったルルーシュ様の目が見開かれたのがわかった。
「色々迷惑をかけて申し訳ない。王子にはこちらから話をしておく。仕事の途中なのに色々とありがとう」
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