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1章
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部屋の前に着きカタリーナは思わず息を飲む。
「王様の執務室など私がお尋ねしてもよろしいのですか?」
王の執務室には極秘資料なども多く含まれているだろう。そこへ踏み入ることが許可されているのは限られた人だけだ。
「今回の話は王宮内の執務にも関わってくる問題だからね。王様が指示されたのだから大丈夫だよ。」
父の言葉にホッとしていると、ノックの音が廊下に伝わる。父が部屋の前に立ちノックを行なっていたのだ。慌ててカタリーナは姿勢を正し、父に続いて室内へと足を踏み入れた。
父に連れられて訪れた王の執務室で待っていたのは国王本人、王妃とエヴァトリスだった。直系の王族が集まっているところなど、王宮主催の夜会でしかみられないためカタリーナは驚きを隠せない。今回の【お手伝い】の重要性を思い知らされることとなり、カタリーナは思わず息を飲むが、父は小さなため息を吐いただけだった。
父とカタリーナの表情は強張っているが国王、王妃、エヴァトリス王子の表情は柔らかいものだった。いや、それは少しだけ語弊があるかもしれない。こと、王妃とエヴァトリスに関してはいつも以上に表情は柔らかく機嫌が良さそうというのが正しい表現だろう。国王はというと、柔らかい表情をしながらも時折困ったような視線をカタリーナの父に向けており、その視線を向けられたカタリーナの父は疲れたような顔をしながら眉間にシワを寄せている。カタリーナは昨日から眉間のシワが取れない父を心配する中、国王と父の間でお手伝いについての話が進んで行く。国王と父の話の内容にも特に変わったところはなく、全て公爵家で聞いた手紙の延長線のようなものだった。主なカタリーナの仕事は王妃と王子の仕事の補助。時折会議などにも参加すると言うようなものだ。状況に合わせて追加の仕事を依頼するが、それはカタリーナに相談してからで無理をする必要がないことが伝えられた。しかし、会話の進行速度は速くカタリーナに口を挟むような暇はない。最後に国王から
「このように頼みたいのだが良いだろうか」
という問いかけが向けられた時に
「不慣れなことでご迷惑をおかけすることも多いと思いますがよろしくお願い致します。」
と返事をしただけだった。
その返事を聞いて一番最初に立ち上がったのは王妃だった。
「ありがとう、カタリーナがこんなに早く来てくれるなんて嬉しいわ。」
心から喜んでいるのが分かる声色と表情にカタリーナは嬉しくなるが父は小さくため息を吐き疲れた表情をするだけだ。父の表情に疑問を覚えるもカタリーナはそのまま王妃に向かい
「これからもご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。」
と礼をする。
「そんなにかしこまらないで、将来は親娘になるのだから。カタリーナの部屋はどこに準備させようかしら?今から楽しみだわ。」
頷きながら今まで話を聞いていたカタリーナだが、ここで疑問が生まれた。
部屋?手伝いがメインの仕事であり、朝は父と一緒に登城するつもりだったカタリーナはどうして部屋が必要になるかが分からなかった。だが、それに口を挟む暇もなく王妃とエヴァトリスは楽しそうにカタリーナの部屋に関する話をしているため口を挟むことはできない。頼みの綱である父は苦虫を噛み潰したような顔をして楽しそうな王妃とエヴァトリスを眺めつつ時折カタリーナに視線を向けたかと思うと疲れた表情に変えて小さくため息を吐くだけだった。
王妃とエヴァトリスの話は盛り上がっており、会話の終わりが見えない。この場で二人の会話を止めることができるのは国王ただ一人である。
「二人とも嬉しいのは分かるがその辺にしておきなさい。エヴァトリスは急にこちらに来たのだろう。辺境の者たちも困っているのだから戻る準備をしなさい。分かっているとは思うが今回の転移門の使用については処罰の対象になるので、心するように。公爵に、カタリーナ嬢もエヴァトリスが辺境に戻る関係で急な呼び出しとなり申し訳なかった。今後も何かとよろしく頼む。」
有無を言わせることのできない威圧感、きっとこれが王たる所以なのだろう。国王の言葉でここでの話し合いが一度終わりの兆しをみせる。その言葉を聞いた父が早々に退室の挨拶を述べると
「色々と家族でも話すことがあるだろうから、公爵も今日は帰って良いよ。カタリーナ嬢もいつも申し訳ないね。これからもエヴァトリスのことをよろしく頼むよ。」
国王はさっきまでの威圧感は形を潜め少し困った笑い方をしている。ここまで瞬時に雰囲気を変えることのできる人はそういないだろう。カタリーナが返事をするより早く、父が
「そう思うのであれば・・・。」
とため息混じりに話し出すが、続きは聞かれない。ただ、父の視線はエヴァトリスを示しており彼に対して、もの言いたいことがあるのは誰の目にも明らかである。当のエヴァトリスは気にした様子もなくニコニコしており、悪びれた様子は見られない。国王はそんなエヴァトリスに視線を向けた後、父に向けて口をひらく。
「迷惑をかけたな。今日はゆっくり休んでくれ。」
「・・・お休みはありがたくいただきます。これで本当に失礼致します。」
父がそう声をかけると従者によりドアが開かれる。カタリーナは父に続き礼をした後、部屋を無事に退室すると、馬車に向かって歩き出す。ドアから出た直後に父から「今日の話については王宮内で詳しく話すことができないので、質問があるなら帰宅してから聞こう」と小声で言われたため、廊下を歩く父とカタリーナの間には会話の一つもない状態が続いていた。
王宮に来た時は時間が異なったため、別の馬車を使用している。それぞれが違う馬車に乗り、公爵家に向かう中でカタリーナは帰宅後に質問しなくてはいけない事を頭の中でまとめていく。
転移門について、王妃と王子の仕事の手伝いという言葉・・・あの場で出た言葉以外での他意が含まれていたのか、そして王宮にカタリーナの部屋を準備することについて・・・。最近驚かされることが多かったため、カタリーナ自身冷静に欠ける言動が多かった。父との話ではそんな失態を侵さぬようにカタリーナは頭の中でシュミレーションを繰り返すのだった。
「王様の執務室など私がお尋ねしてもよろしいのですか?」
王の執務室には極秘資料なども多く含まれているだろう。そこへ踏み入ることが許可されているのは限られた人だけだ。
「今回の話は王宮内の執務にも関わってくる問題だからね。王様が指示されたのだから大丈夫だよ。」
父の言葉にホッとしていると、ノックの音が廊下に伝わる。父が部屋の前に立ちノックを行なっていたのだ。慌ててカタリーナは姿勢を正し、父に続いて室内へと足を踏み入れた。
父に連れられて訪れた王の執務室で待っていたのは国王本人、王妃とエヴァトリスだった。直系の王族が集まっているところなど、王宮主催の夜会でしかみられないためカタリーナは驚きを隠せない。今回の【お手伝い】の重要性を思い知らされることとなり、カタリーナは思わず息を飲むが、父は小さなため息を吐いただけだった。
父とカタリーナの表情は強張っているが国王、王妃、エヴァトリス王子の表情は柔らかいものだった。いや、それは少しだけ語弊があるかもしれない。こと、王妃とエヴァトリスに関してはいつも以上に表情は柔らかく機嫌が良さそうというのが正しい表現だろう。国王はというと、柔らかい表情をしながらも時折困ったような視線をカタリーナの父に向けており、その視線を向けられたカタリーナの父は疲れたような顔をしながら眉間にシワを寄せている。カタリーナは昨日から眉間のシワが取れない父を心配する中、国王と父の間でお手伝いについての話が進んで行く。国王と父の話の内容にも特に変わったところはなく、全て公爵家で聞いた手紙の延長線のようなものだった。主なカタリーナの仕事は王妃と王子の仕事の補助。時折会議などにも参加すると言うようなものだ。状況に合わせて追加の仕事を依頼するが、それはカタリーナに相談してからで無理をする必要がないことが伝えられた。しかし、会話の進行速度は速くカタリーナに口を挟むような暇はない。最後に国王から
「このように頼みたいのだが良いだろうか」
という問いかけが向けられた時に
「不慣れなことでご迷惑をおかけすることも多いと思いますがよろしくお願い致します。」
と返事をしただけだった。
その返事を聞いて一番最初に立ち上がったのは王妃だった。
「ありがとう、カタリーナがこんなに早く来てくれるなんて嬉しいわ。」
心から喜んでいるのが分かる声色と表情にカタリーナは嬉しくなるが父は小さくため息を吐き疲れた表情をするだけだ。父の表情に疑問を覚えるもカタリーナはそのまま王妃に向かい
「これからもご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。」
と礼をする。
「そんなにかしこまらないで、将来は親娘になるのだから。カタリーナの部屋はどこに準備させようかしら?今から楽しみだわ。」
頷きながら今まで話を聞いていたカタリーナだが、ここで疑問が生まれた。
部屋?手伝いがメインの仕事であり、朝は父と一緒に登城するつもりだったカタリーナはどうして部屋が必要になるかが分からなかった。だが、それに口を挟む暇もなく王妃とエヴァトリスは楽しそうにカタリーナの部屋に関する話をしているため口を挟むことはできない。頼みの綱である父は苦虫を噛み潰したような顔をして楽しそうな王妃とエヴァトリスを眺めつつ時折カタリーナに視線を向けたかと思うと疲れた表情に変えて小さくため息を吐くだけだった。
王妃とエヴァトリスの話は盛り上がっており、会話の終わりが見えない。この場で二人の会話を止めることができるのは国王ただ一人である。
「二人とも嬉しいのは分かるがその辺にしておきなさい。エヴァトリスは急にこちらに来たのだろう。辺境の者たちも困っているのだから戻る準備をしなさい。分かっているとは思うが今回の転移門の使用については処罰の対象になるので、心するように。公爵に、カタリーナ嬢もエヴァトリスが辺境に戻る関係で急な呼び出しとなり申し訳なかった。今後も何かとよろしく頼む。」
有無を言わせることのできない威圧感、きっとこれが王たる所以なのだろう。国王の言葉でここでの話し合いが一度終わりの兆しをみせる。その言葉を聞いた父が早々に退室の挨拶を述べると
「色々と家族でも話すことがあるだろうから、公爵も今日は帰って良いよ。カタリーナ嬢もいつも申し訳ないね。これからもエヴァトリスのことをよろしく頼むよ。」
国王はさっきまでの威圧感は形を潜め少し困った笑い方をしている。ここまで瞬時に雰囲気を変えることのできる人はそういないだろう。カタリーナが返事をするより早く、父が
「そう思うのであれば・・・。」
とため息混じりに話し出すが、続きは聞かれない。ただ、父の視線はエヴァトリスを示しており彼に対して、もの言いたいことがあるのは誰の目にも明らかである。当のエヴァトリスは気にした様子もなくニコニコしており、悪びれた様子は見られない。国王はそんなエヴァトリスに視線を向けた後、父に向けて口をひらく。
「迷惑をかけたな。今日はゆっくり休んでくれ。」
「・・・お休みはありがたくいただきます。これで本当に失礼致します。」
父がそう声をかけると従者によりドアが開かれる。カタリーナは父に続き礼をした後、部屋を無事に退室すると、馬車に向かって歩き出す。ドアから出た直後に父から「今日の話については王宮内で詳しく話すことができないので、質問があるなら帰宅してから聞こう」と小声で言われたため、廊下を歩く父とカタリーナの間には会話の一つもない状態が続いていた。
王宮に来た時は時間が異なったため、別の馬車を使用している。それぞれが違う馬車に乗り、公爵家に向かう中でカタリーナは帰宅後に質問しなくてはいけない事を頭の中でまとめていく。
転移門について、王妃と王子の仕事の手伝いという言葉・・・あの場で出た言葉以外での他意が含まれていたのか、そして王宮にカタリーナの部屋を準備することについて・・・。最近驚かされることが多かったため、カタリーナ自身冷静に欠ける言動が多かった。父との話ではそんな失態を侵さぬようにカタリーナは頭の中でシュミレーションを繰り返すのだった。
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