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1章
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公爵家の朝は他家に比べると早い。というのも、朝食を皆でそろって食べるためだ。夕食は父の仕事や夜会などの都合で揃ってに食べることが難しいため、少しでも家族との時間を取りたいと思う父の案であったが誰もそれに意を唱えるものはいない。いつも通り、お互いに今日の予定などを話しているが、昨日の王子の突撃について一言も話しが出ないのは逆に不自然である。だが、そこは藪蛇でありカタリーナも突つく気はない。時々ルルーシュがニヤニヤとこちらを見てくるが、決して話しを振ってはいけないことは分かりきっており、知らないふりをする。そんな朝食時間にノックの音が響く。家族の時間を大切にしたい父から、急用以外でなければこの時間は配膳係以外は立ち入りを禁止されているため何かが起きたのは明白だ。
「食事の時間に申し訳ありません、至急で届けられた手紙があったのでお持ち致しました」
父の手に渡された手紙には王子の印である百合の封蝋が見えたがカタリーナは見なかったことにして食事の途中であったが、部屋に戻ることを決意する。父が封蝋を見た途端に眉を顰めたのがわかったが、それも見ないふりをする。
「食事の途中で申し訳ありませんが、お父様も忙しそうですし先に部屋に戻らせていただきますね」
返事を待たず立ち上がり、そのままフェードアウトすべくドアに向かい歩き出そうとするがすぐに母から静止の声がかかる。
「手紙の内容を聞いてからにしたら?」
やはり皆にも封蝋が見えていたのだろう。声をかけた母だけでなく、ルルーシュも面白がるような視線を向けてくる。どうやら、カタリーナが藪をつつかなくても蛇は出てくる仕組みになっていたらしい。最後のあがきのようにため息を吐きながら席にもどった。
家令よりペーパーナイフを受け取り、中身を確認する父だが表情は険しいままである。眉間にしわを寄せながら告げたのは一言。
「カタリーナ。今日は王宮に行くことになったから準備をしなさい」
理由もわからず首をかしげるカタリーナに対して首を横にふる父。手紙を母に回すと、すぐに母は手紙に目を通した。
「王妃教育が終わったカタリーナに、手伝って欲しい仕事があるみたいよ。本来は王太子妃になってからのものだけれど、辺境での水害の件もあって人手が足りないみたいなの。王太子妃になってからスムーズに仕事ができるようにって言う意味もあるみたいよ。強制ではないみたいだけれど、どうする?」
それほどおかしな内容ではないため父が顔をしかめていた理由が気にはなったが、手紙の内容としては意を唱える必要もないことである。
「どこまでお手伝い出来るかは分かりませんが、お役に立てることがあればやってみたく思います。」
「そうね、きっとカタリーナの勉強にもなるわね。でも、少し寂しくなるわ」
にこやかに話す母は、眉間にしわを入れっぱなしの父とは対照的だ。王宮での手伝いをするのであれば、確かに自宅で過ごす時間は減る。しかし、今までもお茶会や神殿に行くなど外出する機会は多くあり、母も社交として積極的にお茶会に参加していたため、それほど日中一緒に過ごしてたわけではない。むしろ、昼を一緒に過ごす方が珍しいくらいだ。そう考えると、寂しがる母の言葉にも僅かな疑問をいだく。
「私は今日はお父様と一緒に王宮に迎えばよろしいですか?」
依然として眉間にしわを寄せ続ける父に声をかける。ルルーシュは完全な傍観者として優雅に食後のお茶を飲んでいる。
「いや、私は先に行って仕事を片付けているよ。王宮に着いたらまっすぐ私の執務室にきなさい。そこで詳しい話をしよう。」
いつもに比べると父の機嫌が悪いが昨夜に引き続き問題の連続であり、ある程度仕方のないことであろう。
「では、準備がありますので先に失礼します。」
カタリーナは礼をしたうえで、退室する。
すでに話を聞いていた、侍女達には湯浴みに案内された。食後すぐにこれでもかと言うくらい磨かれカタリーナは王宮に向かうことになった。
カタリーナは王宮に着くと約束通りに父の執務室を目指す。何度か来た通路であり慣れたものではあるが、途中の庭園を見ると毎度のように少し見て回りたい誘惑にかられる。離れた位置からみる王宮の庭は見事なものであり、季節の花が少ない時期である今でも見とれてしまう。離れていてこれほど美しいのだから、近くに寄ってみたくなるのは仕方のないことだろう。カタリーナはそんな庭園を横目で眺めながら目的地に向かって歩き続ける。
エヴァトリスが辺境に行く前に一緒にお茶会をする約束をしていたが、あれはいつまで有効なのだろうかとつい思ってしまう。しかし、この忙しさ、それを問う勇気はカタリーナになかった。
よそ事を考えているとあっという間に父の執務室に到着した。扉の前にいる護衛に声をかけるとカタリーナはなぜか困ったような顔をされる。護衛からの静止の言葉はなく、入らない理由もないのでそのまま父の執務室に入室してからカタリーナの表情も硬くなる。執務室内はお通夜のような重い空気が漂っており、その明らかな原因は朝よりも深く眉間にしわを寄せた姿の父だった。
「遅くなって申し訳ありません。ただいま到着しましたので、約束通り挨拶に伺いました」
この冷え切った空気の中どう声をかけて良いかわからなかったため無難な挨拶で切り出す。カタリーナ自身は何かをした記憶はないが警戒するに越したことはない。
「わかった。これから国王との話をすることになっている。時間まで、そこのソファーで待っていなさい」
執務室内に置かれたソファーを指されるが、この空間にいる限り心休まることがないのは明白であるため逃れる手段を考える。
「ここではお仕事の邪魔になってしまいますので、時間まで少し散歩をしてきますわ。何時ころ戻れば・・・。」
父からの鋭い視線が向けられたためカタリーナはそれ以上の言葉を続けるのを辞め、そのまま話を切り替えた。
「と思ってましたけど、外の風も冷たいですしこちらで待たせてもらってもよろしいですか?」
同じ執務室で働く事務官から安堵の息が漏れた。だが、何が地雷かわからないため、カタリーナの表情はいつもより強張ってしまう。「触らぬ神に祟りなし」心のなかで呟きながらカタリーナはソファーに腰掛ける。
強張った表情のカタリーナを見たところで、父はハッとしたような表情を作る。
「カタリーナ、すまないね。カタリーナに怒っている訳ではないんだよ。ただ、難しい案件が多くてね・・・。」
困ったような父の姿を見てはそれ以上カタリーナには何も言うことができない。いつの間にかソファー近くのローテーブルにはお茶とお菓子の準備も済んでいた。
「いえ、お疲れのところお手を煩わせてしまい申し訳ありません。お言葉に甘えて少しこちらでゆっくりさせていただきます。」
先ほどの父の言葉で幾分かは室内の空気が和む。
カタリーナはお茶とお菓子を口に運びながら、これからの事に思いを馳せる。エヴァトリスとの手紙で交わした政策についての話もできるのだろうか、ほかの文官らの意見はどのようなものだろうか、そして何より新たなことを学べる喜びでいっぱいだった。
1時間ほどそうやって過ごすと、時間になったらしく父に促され部屋を移動する事になった。と言っても移動距離は父の執務室から部屋3つ分ほどであり、あっという間の距離だった。
「食事の時間に申し訳ありません、至急で届けられた手紙があったのでお持ち致しました」
父の手に渡された手紙には王子の印である百合の封蝋が見えたがカタリーナは見なかったことにして食事の途中であったが、部屋に戻ることを決意する。父が封蝋を見た途端に眉を顰めたのがわかったが、それも見ないふりをする。
「食事の途中で申し訳ありませんが、お父様も忙しそうですし先に部屋に戻らせていただきますね」
返事を待たず立ち上がり、そのままフェードアウトすべくドアに向かい歩き出そうとするがすぐに母から静止の声がかかる。
「手紙の内容を聞いてからにしたら?」
やはり皆にも封蝋が見えていたのだろう。声をかけた母だけでなく、ルルーシュも面白がるような視線を向けてくる。どうやら、カタリーナが藪をつつかなくても蛇は出てくる仕組みになっていたらしい。最後のあがきのようにため息を吐きながら席にもどった。
家令よりペーパーナイフを受け取り、中身を確認する父だが表情は険しいままである。眉間にしわを寄せながら告げたのは一言。
「カタリーナ。今日は王宮に行くことになったから準備をしなさい」
理由もわからず首をかしげるカタリーナに対して首を横にふる父。手紙を母に回すと、すぐに母は手紙に目を通した。
「王妃教育が終わったカタリーナに、手伝って欲しい仕事があるみたいよ。本来は王太子妃になってからのものだけれど、辺境での水害の件もあって人手が足りないみたいなの。王太子妃になってからスムーズに仕事ができるようにって言う意味もあるみたいよ。強制ではないみたいだけれど、どうする?」
それほどおかしな内容ではないため父が顔をしかめていた理由が気にはなったが、手紙の内容としては意を唱える必要もないことである。
「どこまでお手伝い出来るかは分かりませんが、お役に立てることがあればやってみたく思います。」
「そうね、きっとカタリーナの勉強にもなるわね。でも、少し寂しくなるわ」
にこやかに話す母は、眉間にしわを入れっぱなしの父とは対照的だ。王宮での手伝いをするのであれば、確かに自宅で過ごす時間は減る。しかし、今までもお茶会や神殿に行くなど外出する機会は多くあり、母も社交として積極的にお茶会に参加していたため、それほど日中一緒に過ごしてたわけではない。むしろ、昼を一緒に過ごす方が珍しいくらいだ。そう考えると、寂しがる母の言葉にも僅かな疑問をいだく。
「私は今日はお父様と一緒に王宮に迎えばよろしいですか?」
依然として眉間にしわを寄せ続ける父に声をかける。ルルーシュは完全な傍観者として優雅に食後のお茶を飲んでいる。
「いや、私は先に行って仕事を片付けているよ。王宮に着いたらまっすぐ私の執務室にきなさい。そこで詳しい話をしよう。」
いつもに比べると父の機嫌が悪いが昨夜に引き続き問題の連続であり、ある程度仕方のないことであろう。
「では、準備がありますので先に失礼します。」
カタリーナは礼をしたうえで、退室する。
すでに話を聞いていた、侍女達には湯浴みに案内された。食後すぐにこれでもかと言うくらい磨かれカタリーナは王宮に向かうことになった。
カタリーナは王宮に着くと約束通りに父の執務室を目指す。何度か来た通路であり慣れたものではあるが、途中の庭園を見ると毎度のように少し見て回りたい誘惑にかられる。離れた位置からみる王宮の庭は見事なものであり、季節の花が少ない時期である今でも見とれてしまう。離れていてこれほど美しいのだから、近くに寄ってみたくなるのは仕方のないことだろう。カタリーナはそんな庭園を横目で眺めながら目的地に向かって歩き続ける。
エヴァトリスが辺境に行く前に一緒にお茶会をする約束をしていたが、あれはいつまで有効なのだろうかとつい思ってしまう。しかし、この忙しさ、それを問う勇気はカタリーナになかった。
よそ事を考えているとあっという間に父の執務室に到着した。扉の前にいる護衛に声をかけるとカタリーナはなぜか困ったような顔をされる。護衛からの静止の言葉はなく、入らない理由もないのでそのまま父の執務室に入室してからカタリーナの表情も硬くなる。執務室内はお通夜のような重い空気が漂っており、その明らかな原因は朝よりも深く眉間にしわを寄せた姿の父だった。
「遅くなって申し訳ありません。ただいま到着しましたので、約束通り挨拶に伺いました」
この冷え切った空気の中どう声をかけて良いかわからなかったため無難な挨拶で切り出す。カタリーナ自身は何かをした記憶はないが警戒するに越したことはない。
「わかった。これから国王との話をすることになっている。時間まで、そこのソファーで待っていなさい」
執務室内に置かれたソファーを指されるが、この空間にいる限り心休まることがないのは明白であるため逃れる手段を考える。
「ここではお仕事の邪魔になってしまいますので、時間まで少し散歩をしてきますわ。何時ころ戻れば・・・。」
父からの鋭い視線が向けられたためカタリーナはそれ以上の言葉を続けるのを辞め、そのまま話を切り替えた。
「と思ってましたけど、外の風も冷たいですしこちらで待たせてもらってもよろしいですか?」
同じ執務室で働く事務官から安堵の息が漏れた。だが、何が地雷かわからないため、カタリーナの表情はいつもより強張ってしまう。「触らぬ神に祟りなし」心のなかで呟きながらカタリーナはソファーに腰掛ける。
強張った表情のカタリーナを見たところで、父はハッとしたような表情を作る。
「カタリーナ、すまないね。カタリーナに怒っている訳ではないんだよ。ただ、難しい案件が多くてね・・・。」
困ったような父の姿を見てはそれ以上カタリーナには何も言うことができない。いつの間にかソファー近くのローテーブルにはお茶とお菓子の準備も済んでいた。
「いえ、お疲れのところお手を煩わせてしまい申し訳ありません。お言葉に甘えて少しこちらでゆっくりさせていただきます。」
先ほどの父の言葉で幾分かは室内の空気が和む。
カタリーナはお茶とお菓子を口に運びながら、これからの事に思いを馳せる。エヴァトリスとの手紙で交わした政策についての話もできるのだろうか、ほかの文官らの意見はどのようなものだろうか、そして何より新たなことを学べる喜びでいっぱいだった。
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