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1章
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皆の視線が入り口に集まりしばらくすると、ドアが大きく開かれる。開かれたドアから最初に見えたのはエヴァトリスの姿であり、少し疲れた表情をしていたが、カタリーナと視線が合うとすぐに柔らかい笑顔に変わる。カタリーナはそれを見て顔を赤くし、思わす視線を逸らしてしまうが、エヴァトリスが柔らかい笑顔でカタリーナだけを見ていることは変わらない。カタリーナが視線を戻すとエヴァトリスと再度目が合い、恥ずかしくなり逸らす・・・そんな状態が何度も続き、恥ずかしさに耐えられなくなったカタリーナは最終的に床に視線を固定することとなった。
カタリーナが呆けている間に、国王の話、エヴァトリスの話、辺境支援の責任者の話などなど、色々と終わり退室の時間となった。
そう、完全にカタリーナは呆けていた。1ヶ月前の夜エヴァトリスが家に来た時の事を何度も思い出し、その度に顔を赤くした。時折エヴァトリスに視線を向けると、目が合いまた顔を赤くした。視線が合うたびにに嬉しそうにするエヴァトリスにどうして良いかわからず、話に集中することもできず・・・結果気づいたら終わっていたのだ。
父は仕事があるため、そのまま執務室へと移動することとなる。カタリーナはこの後、エヴァトリスと庭園でお茶をする予定だ。手紙では、夕食も誘われていたがエヴァトリスの体調が心配であり辞していたのだ。
広間に入って来た時一瞬ではあったが、疲れた表情はしていた。身長が伸びたせいか、以前よりも痩せたようにも見えた。前回会ったのが、夜であり色々あって慌ただしくしていたから気づけなかった部分も多いだろう。前回会った時を思い出すと、自然とエヴァトリスとの口づけまで思い出し、カタリーナは顔を赤くした。いつもは凛とした姿でしっかりと前を向いて歩いているカタリーナが、わずかに頬を紅潮させ視線を下げているのが王宮で見られるのは初めてのことである。
隙がないためどこか近寄りがたい印象を受けていたカタリーナであったが、今の表情はその真逆で可愛らしくみえるものだった。通り過ぎる人々がそんなカタリーナの姿に見とれていたが、そんな事を本人は知る由もなくエヴァトリスと待ち合わせをしている庭園に向かうのだった。
庭園が見えるところまで近づくと、すでにエヴァトリスが席に着き待っていることが分かり、カタリーナは自然と早足になる。近くことで気づいたのは大広間でみた服装と同じということだ。おそらく大広間からそのまま庭園に来たのだろう。そう考えるとしばらく待たせていた可能性が出て来たためさらに早足になった。近づくことでエヴァトリスもカタリーナの登場に気がついたのだろう。椅子から立ち上がり手を上げて微笑みを浮かべたかと思ったら、それはすぐに驚きの表情へと変わる。そのまま小走りでカタリーナの元にやってくると、エヴァトリスはカタリーナを自身の胸の中に隠すように抱きしめた。
「え、エヴァトリス殿下、あの・・・」
突然の事に驚きながらも、カタリーナは声を出す。恥ずかしさのため顔は赤くなり、言葉も少し震えているが、怒ったような口調で話し始めたエヴァトリスに言葉を遮られてしまい全てを伝えることはできなかった。
「君はその顔でここまで来たの?何を考えているんだ!」
いつもは柔らかい口調が特徴であるが、少し語尾が荒くなっており普段見る姿とは離れている。カタリーナは何か粗相をしたのかとも思ったが、特に変わったところは思い浮かばない。この体勢をどうにかして欲しい気持ちもあるが、その前にエヴァトリスの怒りを鎮めることが先であると考えたカタリーナは思い切って声をかける。
「申し訳ありません。私何か無作法をしたでしょうか?」
突っ込むべき場所がわからないため漠然とした問いかけになってしまうことは仕方のないことだろう。
カタリーナの問いかけに対してエヴァトリスは大きくため息を吐く。あからさまに呆れられるほどの事をしたのかと思うと怖くもなるが、そこは我慢をしてエヴァトリスに視線を向ける。一瞬視線があったが、その視線はエヴァトリスによって外されることとなり、さらに大きなため息が聞こえてくる。エヴァトリスはカタリーナを抱きしめたままの姿勢で無言を貫いていたが、それに焦れたカタリーナから声がかかる。
「あの・・・、本当にわからなくて。申し訳ありません。」
言葉尻が少しずつ小さくなり、いつもの凜とした雰囲気ではなく庇護欲かきたてられる様子に思わずエヴァトリスは抱きしめる腕に力を入れる。
「顔を赤くして、目を潤ませて・・・、急いで来たから少し息も切れているし。いくら王宮が安全な場所とは言え不用心だよ。そんな姿私以外に見せないで」
女性らしい体つきに、美しい所作は高潔な様でありながら、顔を赤くし目を潤ませ息を乱しているのはどこか官能的な様子を連想させる。普段は淑女の見本とまで言われる女性であり、手の届かない高貴な華であるが、それをどうにか乱したいという欲望を抱かせるには十分な姿だ。ここに来るまでの間で何人の男がこの姿を見たのかと思うとエヴァトリスは悔しく思ったし、周りへの影響についていつになっても理解しないカタリーナにも腹が立った。
「こんな人目のあるところでお茶会なんてしてられない。移動するよ。」
そういうと、抱きしめていたカタリーナを解放した。先ほどまで恥ずかしさもありすぐに視線を下に向け、一息ついたカタリーナだったが、すぐに視界が狭くなった。どうやら頭から布を被せられたらしい。エヴァトリスがジャケットを着ていないところを見ると、カタリーナが頭から被せられたものはエヴァトリスの服だろう。装飾品もついており少し重いため、違和感が強い。それにこのまま王宮内を歩くのが悪目立ちするのは明らかであるが、カタリーナの反応を待つこともなくエヴァトリスは歩き出す。
「エヴァトリス殿下・・・流石にこの姿は無作法ではないでしょうか」
少し困ったカタリーナは控えめに進言するが歩く足は止まらない。いつものエスコートよりも強く腰を抱かれ、押す様に歩みを早められることとなる。
「そんな顔しているカタリーナが悪い」
さも当然のようなエヴァトリスの振る舞いが返ってきたためカタリーナはそれ以上言葉を発することなく促される様に歩みを進める。時折、王宮で働く人たちとすれ違うが視界が狭くなっているカタリーナは相手が誰かもどんな表情をしているかもわからない。あわよくば、無作法な状態で歩いているのが、カタリーナであると分からないことを願うが、後からついてくる侍女の中には公爵家のメイド服をきている者もいるためそれは難しいだろう。
しばらく歩き続けると途中から全く人とすれ違う事がなくなった。わずかに視界に映されていた景色も気づくと見覚えのないものばかりである。嫌な予感を抱きながら訪れたのは豪華な扉の前だった。扉が開き、部屋の中へ案内されるとエヴァトリスは一息つきそのまま話し始める。
「護衛は部屋の前で待機せよ。あと、庭園で予定していたお茶をここで行うのでその準備を」
エヴァトリスの声に従い護衛騎士は部屋を退室し、何人かの侍女はお茶の準備を始める。部屋の中に男性がいなくなったことを確認したエヴァトリスはカタリーナに被せていた己のジャケットを外す。
数分ぶりに開けた視界にカタリーナも息をつきながら、自身のいる場所を確認するために失礼ではない程度に辺りに視線を向けた。何年も王宮に通っていたカタリーナであったが、その部屋は来た事のない部屋だった。印象としては本の多い部屋であるが調度品はそれほど多くはない。シンプルにまとめてはあるが、よく見ると一つ一つの物が高級品であることが分かる。おそらくではあるが、人を招くための部屋ではない事が予想できる。
「エヴァトリス殿下、こちらのお部屋は・・・」
どう質問して良いか分からないエステルは自身の考えを否定して欲しい気持ちを込めて声をかける。
「あぁ、ここは私の私室だ。」
エヴァトリスの返答はカタリーナの希望を否定するものであり、王族以外が本来は足を踏み入れてはいけない場所だった。
カタリーナが呆けている間に、国王の話、エヴァトリスの話、辺境支援の責任者の話などなど、色々と終わり退室の時間となった。
そう、完全にカタリーナは呆けていた。1ヶ月前の夜エヴァトリスが家に来た時の事を何度も思い出し、その度に顔を赤くした。時折エヴァトリスに視線を向けると、目が合いまた顔を赤くした。視線が合うたびにに嬉しそうにするエヴァトリスにどうして良いかわからず、話に集中することもできず・・・結果気づいたら終わっていたのだ。
父は仕事があるため、そのまま執務室へと移動することとなる。カタリーナはこの後、エヴァトリスと庭園でお茶をする予定だ。手紙では、夕食も誘われていたがエヴァトリスの体調が心配であり辞していたのだ。
広間に入って来た時一瞬ではあったが、疲れた表情はしていた。身長が伸びたせいか、以前よりも痩せたようにも見えた。前回会ったのが、夜であり色々あって慌ただしくしていたから気づけなかった部分も多いだろう。前回会った時を思い出すと、自然とエヴァトリスとの口づけまで思い出し、カタリーナは顔を赤くした。いつもは凛とした姿でしっかりと前を向いて歩いているカタリーナが、わずかに頬を紅潮させ視線を下げているのが王宮で見られるのは初めてのことである。
隙がないためどこか近寄りがたい印象を受けていたカタリーナであったが、今の表情はその真逆で可愛らしくみえるものだった。通り過ぎる人々がそんなカタリーナの姿に見とれていたが、そんな事を本人は知る由もなくエヴァトリスと待ち合わせをしている庭園に向かうのだった。
庭園が見えるところまで近づくと、すでにエヴァトリスが席に着き待っていることが分かり、カタリーナは自然と早足になる。近くことで気づいたのは大広間でみた服装と同じということだ。おそらく大広間からそのまま庭園に来たのだろう。そう考えるとしばらく待たせていた可能性が出て来たためさらに早足になった。近づくことでエヴァトリスもカタリーナの登場に気がついたのだろう。椅子から立ち上がり手を上げて微笑みを浮かべたかと思ったら、それはすぐに驚きの表情へと変わる。そのまま小走りでカタリーナの元にやってくると、エヴァトリスはカタリーナを自身の胸の中に隠すように抱きしめた。
「え、エヴァトリス殿下、あの・・・」
突然の事に驚きながらも、カタリーナは声を出す。恥ずかしさのため顔は赤くなり、言葉も少し震えているが、怒ったような口調で話し始めたエヴァトリスに言葉を遮られてしまい全てを伝えることはできなかった。
「君はその顔でここまで来たの?何を考えているんだ!」
いつもは柔らかい口調が特徴であるが、少し語尾が荒くなっており普段見る姿とは離れている。カタリーナは何か粗相をしたのかとも思ったが、特に変わったところは思い浮かばない。この体勢をどうにかして欲しい気持ちもあるが、その前にエヴァトリスの怒りを鎮めることが先であると考えたカタリーナは思い切って声をかける。
「申し訳ありません。私何か無作法をしたでしょうか?」
突っ込むべき場所がわからないため漠然とした問いかけになってしまうことは仕方のないことだろう。
カタリーナの問いかけに対してエヴァトリスは大きくため息を吐く。あからさまに呆れられるほどの事をしたのかと思うと怖くもなるが、そこは我慢をしてエヴァトリスに視線を向ける。一瞬視線があったが、その視線はエヴァトリスによって外されることとなり、さらに大きなため息が聞こえてくる。エヴァトリスはカタリーナを抱きしめたままの姿勢で無言を貫いていたが、それに焦れたカタリーナから声がかかる。
「あの・・・、本当にわからなくて。申し訳ありません。」
言葉尻が少しずつ小さくなり、いつもの凜とした雰囲気ではなく庇護欲かきたてられる様子に思わずエヴァトリスは抱きしめる腕に力を入れる。
「顔を赤くして、目を潤ませて・・・、急いで来たから少し息も切れているし。いくら王宮が安全な場所とは言え不用心だよ。そんな姿私以外に見せないで」
女性らしい体つきに、美しい所作は高潔な様でありながら、顔を赤くし目を潤ませ息を乱しているのはどこか官能的な様子を連想させる。普段は淑女の見本とまで言われる女性であり、手の届かない高貴な華であるが、それをどうにか乱したいという欲望を抱かせるには十分な姿だ。ここに来るまでの間で何人の男がこの姿を見たのかと思うとエヴァトリスは悔しく思ったし、周りへの影響についていつになっても理解しないカタリーナにも腹が立った。
「こんな人目のあるところでお茶会なんてしてられない。移動するよ。」
そういうと、抱きしめていたカタリーナを解放した。先ほどまで恥ずかしさもありすぐに視線を下に向け、一息ついたカタリーナだったが、すぐに視界が狭くなった。どうやら頭から布を被せられたらしい。エヴァトリスがジャケットを着ていないところを見ると、カタリーナが頭から被せられたものはエヴァトリスの服だろう。装飾品もついており少し重いため、違和感が強い。それにこのまま王宮内を歩くのが悪目立ちするのは明らかであるが、カタリーナの反応を待つこともなくエヴァトリスは歩き出す。
「エヴァトリス殿下・・・流石にこの姿は無作法ではないでしょうか」
少し困ったカタリーナは控えめに進言するが歩く足は止まらない。いつものエスコートよりも強く腰を抱かれ、押す様に歩みを早められることとなる。
「そんな顔しているカタリーナが悪い」
さも当然のようなエヴァトリスの振る舞いが返ってきたためカタリーナはそれ以上言葉を発することなく促される様に歩みを進める。時折、王宮で働く人たちとすれ違うが視界が狭くなっているカタリーナは相手が誰かもどんな表情をしているかもわからない。あわよくば、無作法な状態で歩いているのが、カタリーナであると分からないことを願うが、後からついてくる侍女の中には公爵家のメイド服をきている者もいるためそれは難しいだろう。
しばらく歩き続けると途中から全く人とすれ違う事がなくなった。わずかに視界に映されていた景色も気づくと見覚えのないものばかりである。嫌な予感を抱きながら訪れたのは豪華な扉の前だった。扉が開き、部屋の中へ案内されるとエヴァトリスは一息つきそのまま話し始める。
「護衛は部屋の前で待機せよ。あと、庭園で予定していたお茶をここで行うのでその準備を」
エヴァトリスの声に従い護衛騎士は部屋を退室し、何人かの侍女はお茶の準備を始める。部屋の中に男性がいなくなったことを確認したエヴァトリスはカタリーナに被せていた己のジャケットを外す。
数分ぶりに開けた視界にカタリーナも息をつきながら、自身のいる場所を確認するために失礼ではない程度に辺りに視線を向けた。何年も王宮に通っていたカタリーナであったが、その部屋は来た事のない部屋だった。印象としては本の多い部屋であるが調度品はそれほど多くはない。シンプルにまとめてはあるが、よく見ると一つ一つの物が高級品であることが分かる。おそらくではあるが、人を招くための部屋ではない事が予想できる。
「エヴァトリス殿下、こちらのお部屋は・・・」
どう質問して良いか分からないエステルは自身の考えを否定して欲しい気持ちを込めて声をかける。
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