私が聖女になった時(旧:聖女の国)

海栗

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2章

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「まずは、あの時・・・聖女様が現れた後だけど、色々な確認があったから、聖女様には貴賓室に泊まってもらったんだ。そして、次の日神殿に移動する予定だったので、聖女様と一緒に神殿からの迎えを待っていた。迎えに来てくれたのはリシャール殿だったよ。私の役割はそこで終わりのはずだったんだけど、
神殿に行く事を嫌がったんだ。理由をはっきりとは言ってくれなかったのでわからなかったけれど、神殿からもここまで拒否している人を連れて行く事はできないって言われてね。何度か話し合いをしたんだけど、聖女様の意思は硬くてこちら側が折れた形になってしまったよ。まぁ、流石に教師まで王宮で準備するわけにはいかないから、それは神殿からの派遣ってことになったけど。」
聖女が現れるたびに神殿で保護してきたのには理由がある。まずは、この国を知ってもらう事、そして王族に都合が良いことばかり刷り込まないようにするためだ。公式には知られていないが、過去の王族で聖女を保護した際に自分ん達にだけ都合のよい教育を聖女に施した者がいたらしい。その予防の意味を含め、王宮以外で学びの場を儲け、その学んだ内容を王族と共有するようなシステムができた様だ。
「あと、聖女様はリシャール殿が苦手みたいだね。」
少し笑いながら話すエヴァトリスを見てカタリーナも思わず笑ってしまった。
「そうですね、お若い方であれば、余計にそう感じるのかもしれません。リシャール様は見目が非常に美しいので見ている分には令嬢方にも人気のある方ですが・・・。」
それ以降の言葉をカタリーナは思わず濁してしまう。
リシャールは表情の変化がほとんどない。その上、こちらが話しかけたとしても、必要性を感じない会話であればそのまま立ち去るぐらいのことは平気でする。そのため、噂を知っている普通の令嬢であれば話しかけることはしない。そう、リシャールは「観賞用」としての立ち位置を確固たるものにようとしていた。非常に残念な立ち位置ではあるが、本人が招いた結果であり仕方のないことであろう。
「聖女様は、とても熱心に勉強しているみたいだよ。魔法については戸惑っているみたいだけど、この国についてはすごい勢いで吸収していているらしいよ。」
それは素晴らしいことだろう。今までの文献を見る限り、聖女が元の世界に帰ったという記録はない。そうなれば、早いうちに慣れてしまった方がいいだろうとカタリーナも思う。
「私も、聖女様に負けない様に、早く公務になれないといけないですね。」
それしか自分には役割がないとでもいう様に、少し悲しげに話すカタリーナ。それを見たエヴァトリスは眉をひそめる。だが、今の何も決まっていない状態で、何の保証もなく安易な言葉を告げることはできずエヴァトリスは口をつぐむしかなかった。
「今後のことについては意見が分かれている状態だ。慣例通り・・・異世界からの聖女様を・・・私の正妃とすべきだという者と、まだ何の功績もない者より、今まで国のために尽くしてくれたカタリーナを正妃にすべきという意見だ。・・・私は、リーナしか欲しくない・・・。」
エヴァトリスの最後の言葉はとても弱々しいものだった。だが、カタリーナにできる事は何もなかった。
「頑張るから、待ってて。本当に、頑張るから・・・。ごめん、これしか言えなくて。でも、本当に頑張るから。」
エヴァトリスの言葉に気づくとカタリーナは涙を流していた。そのままエヴァトリスに抱きしめられる。
また期待をしても良いのだろうか、それともその後に絶望が待っているのだろうか・・・。
今は何も考えたくない。
考えることを放棄して、カタリーナはエヴァトリスを抱きしめ返した。

どれくらいの時間をそうやって過ごしたのだろう。気がつくとカタリーナの規則的な寝息が聞こえる様になってきた。泣き疲れたのだろうか。エヴァトリスは抱きしめていた体を離し顔を覗き込む。そこにははっきりとした涙の跡が残り、僅かだが瞼も腫れていた。それを見たエヴァトリスは眉をひそめ、カタリーナを抱きしめ直す。
「ごめん、ごめん・・・、本当に大好きなんだ。愛しているんだ。君だけは、どうしても諦めきれないんだ」
エヴァトリスの震えた声は誰に聞かれるでもなく部屋の中に消えていった。
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