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2章
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ひとしきり涙を流した後、カタリーナは部屋に戻る。図書室の前で待機させていた侍女と護衛からは、何か言いたげな視線を向けられるが、それは見て見ぬふりをする。公爵家から連れてきた侍女であれば、確実に理由を問われたであろうが、それほど付き合いのない王宮の侍女であったため突っ込んで話してくることはなくカタリーナは少しだけホッとした。
翌日の朝食の時間、カタリーナは体調不良を理由にエヴァトリスとの時間を拒否した。だが、食事が終わるのを見計らったようにエヴァトリスはカタリーナの部屋にやってきた。しかし、それはカタリーナとしても予想の範囲内であり、事前にその説明を受けていた護衛騎士はエヴァトリスの入室をはっきりと拒否した。その事に少しだけカタリーナはホッとする。事前に話をした時、護衛騎士は困惑した様子を隠せなかったからだ。だが、それもも自国の王子の要請を拒む様な指示を令嬢がしたのだからそれは仕方のない事だろう。
その後も、しばらくカタリーナの部屋の前で押し問答が繰り広げられていたが、それはあっけない幕切れとなった。
「殿下、執務の時間になりましたので戻りますよ。」
時間が来るとエヴァトリスの側使えの一言で王子付きの護衛騎士が動き強制退去となった。文句を言うエヴァトリスの声が少しずつ遠置いて行く。部屋の前が静かになったと思った頃にまたカタリーナに声がかかった。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。お疲れのことと思いますのでゆっくりおやすみください。」
それは優しげなエヴァトリスの側使えの声だった。昨日泣き顔を見られており気を使ってくれたのだろう。申し訳なく思い、お礼の返事を使用としたが昨日のことを思い出すと涙が出そうになりうまく言葉にできなかった。扉越しであるにも関わらずカタリーナの様子がわかっているのか、側使えは話を続ける。
「返事は要りませんよ。ゆっくりお休みください。そう言う時も大切ですから。」
幼い頃からエヴァトリスとカタリーナを見守ってくれていたこの側使えはカタリーナにとっておじいさんのような存在だった。カタリーナはそんな側使えに心の中でお礼の言葉をつたえるのだった。
側使えの足音がさると、ようやく廊下に静寂が訪れ、カタリーナはほっとしたようにゆっくりと息を吐いた。
「担当の護衛騎士・・・王妃様が配置してくださった方で助かったわ」
始めはエヴァトリスが配置した護衛騎士であったが、王宮に入った翌日には王妃直属の騎士に変わっていた。王妃が言うには「狼の手下に護衛は任せられない」だった。思い出したカタリーナは笑みを浮かべる。数ヶ月前の出来事なのに、最近多くの出来事があり随分と昔に感じられた。そして今後のことを思いカタリーナはため息を吐いた。
その日はエヴァトリスの必死さが伝わる1日だった。朝食後の突撃に始まり、次は早くて昼食か夕食になると思っていたのに少しのお茶の休憩時間なども部屋にやってきた。カタリーナも王妃の手伝いをしているため常に部屋にいるわけではないのだが、それでも律儀にカタリーナの部屋に通い、部屋にいなければ王妃の執務室にも突撃してきた。すると、王妃は笑顔で青筋を浮かべ
「嫌がる女性を追いかける暇があるならば執務に励みなさい。それが終わるまでカタリーナに会いに行くことは禁止とします」
と告げ、通常の3倍量の書類をエヴァトリスの執務室に届けるよう指示していた。少し冷却期間が欲しくて、エヴァトリスを避けていたカタリーナとしては少々申し訳ない気持ちになってしまうがそれと同時に今日はもうエヴァトリスに会うことはないとホッとしている自分もいることに気がつくのだった。
その夜の夕食後一人の時間を過ごす。予想通り、ある意味当然の結果ではあるが、エヴァトリスが夕食に現れることもなかった。あの量の書類だ、おそらく今も格闘していることだろう。
久しぶりの一人で過ごすお茶の時間がものさみしいものに感じてしまう。エヴァトリスとの時間は会話がなくても時折視線があい笑い合うだけで、カタリーナに幸せを運んでくれていたことに今更ながら気がつき、自嘲の笑みが浮かぶ。
「本当に今更だわ。」
お茶のカップが空になってもカタリーナは動けずにいる。
「いつまでも避けているわけにもいかないから、ちゃんと話をしなくちゃ」
この流れでいけば、エヴァトリスは王妃から膨大な量の執務を任せられることになりそうだ。昨日の今日なので、今日は多めに見てもらいたいが、あまり長く続くと申し訳なくなりそうだ。
「明日の朝、もしエヴァトリスが来たら話してみようかしら・・・。」
可能性としては5分5分だろう。徹夜をして必死に行えば王妃が渡した執務量を終えられる可能性は十分にあるが、エヴァトリスがそこまでしてくれるかどうかが問題だ。カタリーナも少しエヴァトリスを試したい気持ちになったのかもしれない。言葉では愛を囁いていても、視線はどうしても聖女を見つめている。カタリーナのために徹夜での執務ぐらい乗り越えてほしいと心の奥で思ってしまった。だが、それを第三者として、少し遠いところから見ているカタリーナもいた。
「そんな事したところで気持ちは変わらないし、動き出した歯車もとめられないのにね。」
エヴァトリスを試すようなことをしたところで何も変わらない、大切なのはお互いの気持ちであり、カタリーナ自身がどうしたいかという事なのは頭の中でわかってはいたがどうにもできなかった。
「もういいや、これ以上考えたところでどうにもならないし。明日の朝考えよう。」
考えすぎて疲れてしまったのか、カタリーナは思考を放棄した。エヴァトリスと明日話す内容についても完全に抜けているが、それに気づくことはなくベッドに入るのだった。
翌日の朝食の時間、カタリーナは体調不良を理由にエヴァトリスとの時間を拒否した。だが、食事が終わるのを見計らったようにエヴァトリスはカタリーナの部屋にやってきた。しかし、それはカタリーナとしても予想の範囲内であり、事前にその説明を受けていた護衛騎士はエヴァトリスの入室をはっきりと拒否した。その事に少しだけカタリーナはホッとする。事前に話をした時、護衛騎士は困惑した様子を隠せなかったからだ。だが、それもも自国の王子の要請を拒む様な指示を令嬢がしたのだからそれは仕方のない事だろう。
その後も、しばらくカタリーナの部屋の前で押し問答が繰り広げられていたが、それはあっけない幕切れとなった。
「殿下、執務の時間になりましたので戻りますよ。」
時間が来るとエヴァトリスの側使えの一言で王子付きの護衛騎士が動き強制退去となった。文句を言うエヴァトリスの声が少しずつ遠置いて行く。部屋の前が静かになったと思った頃にまたカタリーナに声がかかった。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。お疲れのことと思いますのでゆっくりおやすみください。」
それは優しげなエヴァトリスの側使えの声だった。昨日泣き顔を見られており気を使ってくれたのだろう。申し訳なく思い、お礼の返事を使用としたが昨日のことを思い出すと涙が出そうになりうまく言葉にできなかった。扉越しであるにも関わらずカタリーナの様子がわかっているのか、側使えは話を続ける。
「返事は要りませんよ。ゆっくりお休みください。そう言う時も大切ですから。」
幼い頃からエヴァトリスとカタリーナを見守ってくれていたこの側使えはカタリーナにとっておじいさんのような存在だった。カタリーナはそんな側使えに心の中でお礼の言葉をつたえるのだった。
側使えの足音がさると、ようやく廊下に静寂が訪れ、カタリーナはほっとしたようにゆっくりと息を吐いた。
「担当の護衛騎士・・・王妃様が配置してくださった方で助かったわ」
始めはエヴァトリスが配置した護衛騎士であったが、王宮に入った翌日には王妃直属の騎士に変わっていた。王妃が言うには「狼の手下に護衛は任せられない」だった。思い出したカタリーナは笑みを浮かべる。数ヶ月前の出来事なのに、最近多くの出来事があり随分と昔に感じられた。そして今後のことを思いカタリーナはため息を吐いた。
その日はエヴァトリスの必死さが伝わる1日だった。朝食後の突撃に始まり、次は早くて昼食か夕食になると思っていたのに少しのお茶の休憩時間なども部屋にやってきた。カタリーナも王妃の手伝いをしているため常に部屋にいるわけではないのだが、それでも律儀にカタリーナの部屋に通い、部屋にいなければ王妃の執務室にも突撃してきた。すると、王妃は笑顔で青筋を浮かべ
「嫌がる女性を追いかける暇があるならば執務に励みなさい。それが終わるまでカタリーナに会いに行くことは禁止とします」
と告げ、通常の3倍量の書類をエヴァトリスの執務室に届けるよう指示していた。少し冷却期間が欲しくて、エヴァトリスを避けていたカタリーナとしては少々申し訳ない気持ちになってしまうがそれと同時に今日はもうエヴァトリスに会うことはないとホッとしている自分もいることに気がつくのだった。
その夜の夕食後一人の時間を過ごす。予想通り、ある意味当然の結果ではあるが、エヴァトリスが夕食に現れることもなかった。あの量の書類だ、おそらく今も格闘していることだろう。
久しぶりの一人で過ごすお茶の時間がものさみしいものに感じてしまう。エヴァトリスとの時間は会話がなくても時折視線があい笑い合うだけで、カタリーナに幸せを運んでくれていたことに今更ながら気がつき、自嘲の笑みが浮かぶ。
「本当に今更だわ。」
お茶のカップが空になってもカタリーナは動けずにいる。
「いつまでも避けているわけにもいかないから、ちゃんと話をしなくちゃ」
この流れでいけば、エヴァトリスは王妃から膨大な量の執務を任せられることになりそうだ。昨日の今日なので、今日は多めに見てもらいたいが、あまり長く続くと申し訳なくなりそうだ。
「明日の朝、もしエヴァトリスが来たら話してみようかしら・・・。」
可能性としては5分5分だろう。徹夜をして必死に行えば王妃が渡した執務量を終えられる可能性は十分にあるが、エヴァトリスがそこまでしてくれるかどうかが問題だ。カタリーナも少しエヴァトリスを試したい気持ちになったのかもしれない。言葉では愛を囁いていても、視線はどうしても聖女を見つめている。カタリーナのために徹夜での執務ぐらい乗り越えてほしいと心の奥で思ってしまった。だが、それを第三者として、少し遠いところから見ているカタリーナもいた。
「そんな事したところで気持ちは変わらないし、動き出した歯車もとめられないのにね。」
エヴァトリスを試すようなことをしたところで何も変わらない、大切なのはお互いの気持ちであり、カタリーナ自身がどうしたいかという事なのは頭の中でわかってはいたがどうにもできなかった。
「もういいや、これ以上考えたところでどうにもならないし。明日の朝考えよう。」
考えすぎて疲れてしまったのか、カタリーナは思考を放棄した。エヴァトリスと明日話す内容についても完全に抜けているが、それに気づくことはなくベッドに入るのだった。
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