今世では溺れるほど愛されたい

キぼうのキ

文字の大きさ
25 / 28

たからもの

しおりを挟む

 午前中はパパと、午後は学校から戻ったマドにーにと過ごすようだ。
 私の涙がおさまったあと、パパがベルで呼んだじいやに教えてもらった。

 私はお風呂がある部屋でお着替えと顔を洗って、髪飾りは侍女に可愛く付け直してもらった。
 部屋を出るとパパも着替え終わっていて、軽い食事がテーブルに運ばれた。
 パパは黒い飲み物しか飲まなくて、聞いたら、たまにしか朝ごはんは食べないそうだ。
 私は1口サイズのパンケーキを数個とココアを頂いた。

 午前中の仕事を休ませてしまって申し訳ないが、一緒に居られて嬉しい。

 歯磨きカプセルを噛んでさっぱりすると、たたたっと近くで控えていたじいやの元へ駆け寄る。じいやがしゃがんで視線を合わせてくれた。

「じいや!」
「リフレシア様、如何されましたか?」

 私はその場でクルンと回る。可愛いドレスを着せてもらったので、可愛さ倍増だと思う。ほれほれ幼児って可愛かろ? まあ、今回のメインは私じゃないけど。

「みてみて! リボン! にあう?」
「とてもよく似合っておりますよ。まるで妖精のように可愛らしいですよ」
「えへへー」

 赤くなった頬を両手で抑え、恥ずかしくてぴょんぴょん飛び跳ねてしまう。

「あのねー、これパパに貰ったの」
「それはようございました。リフレシア様の可愛らしさが更に引き立つ素晴らしいリボンですね」
「リシアのたからもの!」
「ふふふ、愛らしいですね」

 優しい笑顔のじいやにほっこりする。
 両手を広げてギュッと抱きついた。驚いたのか、少し慌てている。

「リフレシア様?」
「リシアねー、じいやもたからものにするの」
「なんと、このじいやをでございますか?」
「うん! あのねー、好きなものはたからものにするんだよ」

 知ってたー? と首を傾げると、じいやは目を丸くした。すぐに茶目っ気たっぷりの顔をして、いいことを知りましたと破顔する。

「リシア」

 パパが私を呼ぶ。はーいと返事をしたあと、じいやにこっそり耳打ち。

「一番はパパなの。ないちょだよ?」

 じいやは楽しそうに笑いながら、存在感のある宝物ですねと言ってきたので、心の中で確かにそうかもとくすくす笑った。
 パパが痺れを切らしたように再度私を呼ぶ。じいやから離れると、不動の一位に抱きついた。

「楽しそうだな」
「うん、たのちい!」

 私を抱き上げたパパは、ふんっとじいやを見て鼻を鳴らした。

「宝物はそれだけでいいだろう」

 髪飾りを見ながらそんなことを言うパパが可笑しくて、えー? と笑って首を振った。
 きっと午後にマドにーにからドラゴンをプレゼントされる。それも宝物に入れないと。

「プリンが拗ねちゃう」
「プリン?」
「たからもの! たくさんあるの!」

 パパはなんとも言えない顔をして、私の頭を撫でた。

 午前中、パパの部屋でのんびりお喋りをして過ごした。ほとんど私が話していたけど。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...