その心の声は。

久恵立風魔

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その心の声は。第二章

木漏れ日

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 部屋の窓から射し込む陽射しはめっきり優しくなり、秋の気配が感じられていた。窓から見える木々は少しだけ色付きはじめていた。
 病室のベッドに横になって、連日流れるスカイハック壊滅のニュースを観て世界各国が歓迎し、喜んでいる報せに剣崎はそっと満足していた。
 「トントン」
 病室の扉をノックする音の後、橋本、ジョージ、神谷、佐藤雫が面会に訪れた。

 「ったたたたっ!」

 面会人に無理して起き上がろうとした剣崎を雫は制止して、そのまま横になっていてくださいと労った。

 「すまんな。横になったままで失礼する。」

 そう言う剣崎に橋本は剣崎の体調を訊ねた。

 「ああ、体調はすこぶる良いよ。肋骨が折れてて、タバコを吸えないのが残念だがな。」

 剣崎はそう言い、小さく笑った。

 「今回は剣崎さん、あなた方日本の公安調査庁に大きな借りが出来ましたな。あなた方の活躍が無ければ、世界的ハッカーテロリスト、スカイハックを壊滅出来なかった。改めて礼を言う。ありがとう。」

 「いやいや、それは逆ですよ。ジョージさん、あなた方CIAや雫さん、皆の協力が無ければ、解決出来なかったでしょう。こちらこそありがとうございました。ただ、もし、ジョージさんが私どもに借りが出来たというのであれば、その礼として、我々公安調査庁にもゴーグル社の読心スマホの使用を許可願いたい。CIAだけ独占というのはズルすぎますぞ。」

 「あははは。分かりました。本部に相談して、前向きに検討しましょう。」

 ジョージはそう言うと親指を立てて頷いた。

 「雫さん、民間人でしかも女性でもあるあなたを巻き込み、時に危険な思いをさせて申し訳なかった。」

 剣崎は雫を見つめ、小さく頭を下げた。

 「いえ。謝るのは私どもです。読心スマホの流出、DOGUMAの暴走、多くのご迷惑をおかけしました。会社としても事の大きさ、重大さを痛感しています。社内の研究等、抜本的見直しをしてコンプライアンスを順守、オープンな研究、経営をするよう動いております。こちらこそ申し訳ございませんでした。」

 「雫さん、あなたが既婚者でなければ、ここで、このタイミングで告白して熱いキスでもするのだがな。」

 イタズラに笑う剣崎に雫も笑顔で、

 「剣崎さんもいい男ですが、私の旦那様はさらにいい男です。残念ですが、諦めてください。」

 「あちゃー。橋本、見事にフラれたよ。俺を慰めてくれ。」

 そう言う剣崎に橋本は、

 「私はそのシュミはありませんので、独り悲しんでください。」

 と、言い周りを笑いで和ませていた。
 そして剣崎は神谷に声をかけた。

 「神谷、お前の数々の機転がなければ今頃どうなっていた事か。感謝する。しかし、何だな。お前とはそんなに対面していないのに、ずっと居たような感覚になっているのは何故だか・・・・・・」

 その疑問に神谷は、

 「それは永野さんや、住吉さんをベッタリ俺にくっつけて見てたからだろ?悪いが彼等をこっちもウオッチさせてもらってたよ。翌日のシフトも分かるくらいにね。」

 「そうか。不快な思いをさせたな。すまん。」

 「いやいや。逆に俺は楽しんでたよ。貴重な体験をさせてもらった。」

 その言葉にハッとした剣崎は、

 「お前、今回の件を週刊誌なんかにタレ込むなよ。公安調査庁は隠密な集団だ。その手法を暴露されたら俺達はおマンマの食い上げだ。」

 「お!それいいですね。いい金になりそうだ。」

 「おまっ、!」

 「あはは。冗談だよ。いいアイデアだが、それはない。約束するよ。」

 周りは笑いに包まれた。その後も仲の良い家族のように笑いと話が尽きなかった。

 一時間程か、語り合った仲間達は剣崎の病室を後にした。一人残された剣崎はベッドの中で、改めて皆に感謝していた。
 そして、また窓の外を眺め暮れ行く夏に思いを馳せていた。

 病院の玄関を出た雫と神谷は玄関前の広場でそれぞれ別れようとしていた。そして神谷は別れ際、雫に声をかけた。

 「佐藤さん、これ返しておきます。」

 それは、読心スマホであった。雫は思い出したかの様に「あ、そうだった」と、言い、

 「あなた程このスマホを使いこなした人はいなかったですね。返して貰っていいのですか?」

 「元々このスマホは雫さん達の物だ。正当な所有者に返すだけです。」

 「ありがとう。」

 そう言い、雫はスマホを受け取った。

 「それじゃあ、神谷さん、お元気で。」

 「雫さんも、お元気で。」

 そうして二人は別れた。神谷は雫の背中を見送った。そして神谷は空を見上げ、小さく微笑み、帰路に着いた。

 空には一筋の飛行機雲が流れていた。

 

 END
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