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忠珍鱈

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サヤマスグルこと砂山英――彼との出会いは高校時代にさかのぼる。

あいつが駈のいる片田舎の学校に引っ越してきたのは、高校2年の5月という中途半端な時期だった。
都会ばかりを転々としてきたという彼はあか抜けていて、おまけに背も高く、女子にはモテても男子にはやっかみを受けそうなタイプだった。

だが、実際そうはならなかった。
あいつは馬鹿をやるときは馬鹿になりきれたし、そして転校続きの人生で培われたのか、絶妙に皆の地雷を避けるのが上手かった。

駈の学校は部活動が強制だったため、英がどの部に入るかはちょっとした注目の的になった。
中学はバスケ部、高校ではハンドボール部に所属していたというだけあって運動神経は抜群。どちらからも声が掛かったが、あいつがドアを叩いたのはよりにもよって駈のいる『ゲーム研究部』だった。

ゲーム研究部――放課後にみんなでゲームして遊んでいるだけ、とよく勘違いされるその部活は、その通りの部分もないわけではなかったが、メインの活動は「ゲームの作成」だった。
駈はそこでゲーム音楽を中心に携わっていた。

「作曲が出来るなんて、やっぱりすごいなぁ」
突然見学にやってきたあいつは、パソコンに齧りつくように作業をしている駈の椅子に手をやり、その真横から画面を覗き込む。
「別に……やり方さえ覚えれば、こんなの誰だってできる」
そっけない答えにも、あいつはめげることはなく。
「へぇ、じゃあ俺でもできるかな」
そうやって首を傾げるものだから。
「やってみれば。ほら」

そうしてその椅子を譲ったのが、始まりであり、運の尽きだったのかもしれない。

ボーっとしている時間はあっという間に過ぎてゆく。
午後からは、もう体験会まで3か月を切っているというのにまだ不安だらけのもう一方の企画について詰めていかなければ。
目頭を強く押さえながら、駈は席を立った。
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