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ぷつ、ぷつと、節の目立つ長い指がボタンを外していく。
別に見せつけるようにしている訳ではないのに、そのしぐさがやけにスローモーションのように感じられた。
少しずつ露わになってゆくその胸元。
さっき既に自分で暴き立てたというのに、駈は息をするのも忘れ、そこに釘付けになってしまっていた。
「そんなにじっと見ないでよ」
笑い交じりの声に、駈はハッと顔を上げる。そして、一瞬にして顔に血を上らせた。
駈は自分で自分をタコ殴りしたくなった。浅ましいにも程がある! 駈は穴を掘ってでもそこに埋まって、一生出て来たくないとさえ思った。
「別に、見て、ないっての……」
そんな無意味なことを呟きながら、駈はいよいよ泣き出しそうな顔を限界まで背けている。
そんな哀れすぎる姿を、英は懐かしさと愛おしさの混じった目で見つめていた。
駈は昔からそうだった。
自分の内面をそう簡単に晒そうとはしないくせに、その表情は雄弁なものだから、よく持ち主を裏切っては慌てさせてきたのだ。
あの頃も、そんな彼をいじりつつも可愛らしく思っていたのだが……今、その当時は想像するだけだったことを現実に出来ているのだと思うと、改めて身体中の血が沸騰しそうなほどの興奮を覚えた。
でも……またさっきのように気を逸らせ過ぎたあまり、駈を怯えさせるようなことだけは絶対にしたくなかった。
英は駈が顔を赤らめたり青ざめたりさせている間に急いでベッドから降りると、上も下もその身体から取り払った。
「駈」
名前を呼ばれ、おずおずとその顔を上げる。
英がまたベッドに戻ってきたのはその振動で分かっていたが、いざ、その姿を確かめた瞬間、駈は絶句し――サッと目を逸らした。
リビングから差し込む光のせいで、その身体は目を凝らさなくともはっきりと見えた。
……見えるからこそ、見ていられなかった。
英を襲った時、その胸板がご立派なことはよくよく分かっていたが、今一度目の当たりにしたそこは、やはりみっしりとした筋肉に覆われていた。
さらにその腹筋も、特別鍛え上げられているという風ではないものの、彼に流れる血のせいもあってか筋肉の凹凸が見事に引き立っている。
ただ……その下に視線を落とした瞬間、そんなドキドキ感やある種の感動は全てどこかに吹っ飛んでいってしまった。
英はなぜか畏まって正座をしていたのだが、そのせいで、股の間のソレがしっかりと屹立しているのが目に飛び込んできてしまったのだ。
さっき指を這わせたときにも、その大きさが尋常でないことは感じ取っていた。が……いざ現物を目の前にすると、その美しい顔や身体とは対照的なグロテスクなまでの存在感に、思い返すだけで駈の背中に冷や汗が流れ落ちる。
「あれ、駈? どうしたんだよ」
英が不思議そうな声を上げる。
「せっかく脱いだのに……」
「……」
自分の言ったことを忠実に守っただけの英に、駈は理不尽にキレそうになった。
……とはいえ、いつまでもこうしている訳にもいかない。
駈は自分自身に「平常心だ、平常心」と言い聞かせる。さらに何度か深呼吸までした上で彼へと振り向いたが……その暗示はあっという間に意味のないものになってしまった。
目の前に迫ってくる、英の透けるような瞳。
そこに自分が映ったと思った時にはもう、その唇は彼に奪われてしまっていた。
今日だけで一体どれほど、こうして唇を交わしただろう。
彼と舌を絡めあう度に、駈は腰から溶けてしまいそうな快感とともに、自分の秘めておきたい部分がどんどんと彼へと流れてしまっているような、そんな身ぐるみを剥がされていくような心細さもまた感じていた。
そして今……上半身を覆っていた最後の一枚を脱がされてしまい、二人とも一糸まとわぬ姿で抱き合っている。
英の肩に凭れながら、駈は目を瞑る。
失った分だけ与えられ続けた温もりに、駈はとうとう、凝り固まっていた最後の力が抜けていく心地がした。
そのまま押し倒され、ベッドに沈む。
背中と後頭部に彼の手を感じながら、圧し掛かる裸の胸を自分の胸で受け止める。
こんなにも忙しなくどくどくと鼓動させていたんでは長生きできないんじゃないかと心配になるほど、二人の心臓はこの上なく激しく高鳴っていた。
「んっ……ぅ、ン……ッ」
彼のなまめかしい舌の動きに翻弄され、また前と……そして後ろが、はしたないほど疼いて止まらない。
彼へとすり寄せる太腿がびくびくと震える。それに英もとっくに気付いているはずなのに、彼は口の中を攻めるだけで、決してその手を下へと降ろそうとはしなかった。
ただ、その理由が理由なだけに、駈も下手に誘うことも出来ず、その舌の熱さに涎を溢れさせることしかできなくなってしまう。
しかし、そうしている間にも二人のものはどんどん張り詰め、触れ合う刺激にお互い眉を顰めるようになっていた。
駈は英の広い背中に回していた右手を、彼の下肢へとそろりと伸ばす。
そして……腹に付きそうなほど猛り脈打つそこに、恐る恐る指を絡めた。
「あっ、駈!」
発火しそうなほどの熱さと英の声に、駈は思わず手を引いてしまいそうになる。
「ちょ、それ、ダメだって……っ!」
真上から慌てた声が降ってくる。
だが、駈はぐっと唾を飲み込むと、血管を浮きあがらせる逞しいそれを優しく包み、下からゆっくりと擦り上げた。
別に見せつけるようにしている訳ではないのに、そのしぐさがやけにスローモーションのように感じられた。
少しずつ露わになってゆくその胸元。
さっき既に自分で暴き立てたというのに、駈は息をするのも忘れ、そこに釘付けになってしまっていた。
「そんなにじっと見ないでよ」
笑い交じりの声に、駈はハッと顔を上げる。そして、一瞬にして顔に血を上らせた。
駈は自分で自分をタコ殴りしたくなった。浅ましいにも程がある! 駈は穴を掘ってでもそこに埋まって、一生出て来たくないとさえ思った。
「別に、見て、ないっての……」
そんな無意味なことを呟きながら、駈はいよいよ泣き出しそうな顔を限界まで背けている。
そんな哀れすぎる姿を、英は懐かしさと愛おしさの混じった目で見つめていた。
駈は昔からそうだった。
自分の内面をそう簡単に晒そうとはしないくせに、その表情は雄弁なものだから、よく持ち主を裏切っては慌てさせてきたのだ。
あの頃も、そんな彼をいじりつつも可愛らしく思っていたのだが……今、その当時は想像するだけだったことを現実に出来ているのだと思うと、改めて身体中の血が沸騰しそうなほどの興奮を覚えた。
でも……またさっきのように気を逸らせ過ぎたあまり、駈を怯えさせるようなことだけは絶対にしたくなかった。
英は駈が顔を赤らめたり青ざめたりさせている間に急いでベッドから降りると、上も下もその身体から取り払った。
「駈」
名前を呼ばれ、おずおずとその顔を上げる。
英がまたベッドに戻ってきたのはその振動で分かっていたが、いざ、その姿を確かめた瞬間、駈は絶句し――サッと目を逸らした。
リビングから差し込む光のせいで、その身体は目を凝らさなくともはっきりと見えた。
……見えるからこそ、見ていられなかった。
英を襲った時、その胸板がご立派なことはよくよく分かっていたが、今一度目の当たりにしたそこは、やはりみっしりとした筋肉に覆われていた。
さらにその腹筋も、特別鍛え上げられているという風ではないものの、彼に流れる血のせいもあってか筋肉の凹凸が見事に引き立っている。
ただ……その下に視線を落とした瞬間、そんなドキドキ感やある種の感動は全てどこかに吹っ飛んでいってしまった。
英はなぜか畏まって正座をしていたのだが、そのせいで、股の間のソレがしっかりと屹立しているのが目に飛び込んできてしまったのだ。
さっき指を這わせたときにも、その大きさが尋常でないことは感じ取っていた。が……いざ現物を目の前にすると、その美しい顔や身体とは対照的なグロテスクなまでの存在感に、思い返すだけで駈の背中に冷や汗が流れ落ちる。
「あれ、駈? どうしたんだよ」
英が不思議そうな声を上げる。
「せっかく脱いだのに……」
「……」
自分の言ったことを忠実に守っただけの英に、駈は理不尽にキレそうになった。
……とはいえ、いつまでもこうしている訳にもいかない。
駈は自分自身に「平常心だ、平常心」と言い聞かせる。さらに何度か深呼吸までした上で彼へと振り向いたが……その暗示はあっという間に意味のないものになってしまった。
目の前に迫ってくる、英の透けるような瞳。
そこに自分が映ったと思った時にはもう、その唇は彼に奪われてしまっていた。
今日だけで一体どれほど、こうして唇を交わしただろう。
彼と舌を絡めあう度に、駈は腰から溶けてしまいそうな快感とともに、自分の秘めておきたい部分がどんどんと彼へと流れてしまっているような、そんな身ぐるみを剥がされていくような心細さもまた感じていた。
そして今……上半身を覆っていた最後の一枚を脱がされてしまい、二人とも一糸まとわぬ姿で抱き合っている。
英の肩に凭れながら、駈は目を瞑る。
失った分だけ与えられ続けた温もりに、駈はとうとう、凝り固まっていた最後の力が抜けていく心地がした。
そのまま押し倒され、ベッドに沈む。
背中と後頭部に彼の手を感じながら、圧し掛かる裸の胸を自分の胸で受け止める。
こんなにも忙しなくどくどくと鼓動させていたんでは長生きできないんじゃないかと心配になるほど、二人の心臓はこの上なく激しく高鳴っていた。
「んっ……ぅ、ン……ッ」
彼のなまめかしい舌の動きに翻弄され、また前と……そして後ろが、はしたないほど疼いて止まらない。
彼へとすり寄せる太腿がびくびくと震える。それに英もとっくに気付いているはずなのに、彼は口の中を攻めるだけで、決してその手を下へと降ろそうとはしなかった。
ただ、その理由が理由なだけに、駈も下手に誘うことも出来ず、その舌の熱さに涎を溢れさせることしかできなくなってしまう。
しかし、そうしている間にも二人のものはどんどん張り詰め、触れ合う刺激にお互い眉を顰めるようになっていた。
駈は英の広い背中に回していた右手を、彼の下肢へとそろりと伸ばす。
そして……腹に付きそうなほど猛り脈打つそこに、恐る恐る指を絡めた。
「あっ、駈!」
発火しそうなほどの熱さと英の声に、駈は思わず手を引いてしまいそうになる。
「ちょ、それ、ダメだって……っ!」
真上から慌てた声が降ってくる。
だが、駈はぐっと唾を飲み込むと、血管を浮きあがらせる逞しいそれを優しく包み、下からゆっくりと擦り上げた。
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