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うごかして、という声は、ほとんど吐息になってしまっていた。
それでも、耳に直接吹き込まれたそれに、英は眩暈を起こしそうなほど興奮し、駈の頭の横に置いた拳をぎりぎりと握りしめた。
荒くなっていくばかりの呼吸を必死に抑えて、目の前の駈を改めて見つめる。
さっきまでのどこか緊張感のあった表情はすっかり消え、逸らされた目は赤く色づき、熱い雫を一筋流したところだった。その唇は月明かりに濡れて光り、短い呼吸を繰り返している。それに合わせ、パーカーの下の胸が忙しく上下していた。
と、ずっと入れっぱなしになっていた指に、きゅっと圧が掛かる。
「お前、見すぎ……ぁッ」
ちょっとした仕返しのつもりで駈はそうしたのだろうが、逆にそれが引き金になってしまったらしい。駈は顔をバッと腕で隠すと、指を咥え込んだままの腰を淫らにくねらせた。
馬鹿だな、と揶揄おうとした口の中はいつの間にかからからに乾いていた。
彼の下半身はもう駈以上に漲り、固い布地をぐいぐいと押し上げている。
このまま欲望に任せ、その立派に育ったものを取り出して駈の中に潜り込ませたら、いったいどれほど気持ちがいいだろう……そんな妄想が頭を掠める。
だが、英はその悪魔の誘惑を何とか追い払うと、再び駈へと意識を戻した。
覆った腕の隙間から覗くその唇は閉じることを忘れてしまい、流れた涎は既にシートにまで濡らしてしまっていた。
官能の炎にずっと炙られ続けているその姿はむしろ苦しそうなほどで、英はその頭をそっと撫でてやると、埋めていた指をずるりと引き抜いた。
「あっ、ああ……っ!」
駈の口から悲鳴にも似た嬌声が上がる。突然の刺激に中は過敏に反応し、駈の全身にぞわりと鳥肌を立たせる。一方、ずっと咥えさせられていたものが消えたそこは、さっきまでそこにあったものを探すようにきゅんきゅんとわななき続けた。
その求めに応えるべく、英はすぐにその指を切なく震えるそこへと沈めていく。
「ひっ……」
さっきとは打って変わって、小さな喘ぎが一つだけ上がる。
だが、その控えめな声とは正反対に、その内壁は激しく痙攣し、その指を思いきり締め上げた。
どうやら中だけで軽くイってしまったらしい。
細切れの喘ぎを漏らしながら、駈は指を食んだままの下半身をシートの上でぴくぴくと跳ね上げさせていた。
最初は、辛そうな駈を一旦イかせて、それから部屋へと連れて行くつもりだった。が……目の前で、あまりにも容易に快感に屈する駈を見ているうち、英の中でいけない悪戯心がむくむくと頭をもたげてきてしまった。
「ねぇ、駈」
「……ん、なに……っ?」
駈は腕を少しずらすと、とろんとした目で英を見上げた。そして、呂律の回らなくなってきた舌でそう返す。
「もう、イキたい?」
分かり切った質問に、駈は英を睨むのも忘れて何度もこくこくと頷く。
その間にも、その指はひくつく中をゆっくりと往復し、駈は背をしならせながら身体中に汗を浮かばせた。
そして咄嗟に、悪さを繰り返す英の腕をその太腿で挟んでしまった。
すると今度はその指に、内壁に潜むしこりをくにくにと押し込まれる。
「やっ……!!」
そのあまりに直接的な快感に、駈は涙を散らし、遠慮のない声で善がってしまう。
英はその泣き所を掠めるように刺激しながら、駈の頬に顔を寄せた。
「だったら……こう言って」
「……?」
駈は腕の合間から、視線だけで男を見やる。
英は埋めた指をぐるりと回し、もう一度駈を甘く鳴かせた後、その赤い耳に唇を触れさせながら囁いた。
「あの男より……俺といる時の方が、楽しいって」
「……!!」
駈はぎょっとして英へと顔を向ける。
彼の顔はうっすらと笑みすら浮かべていたが、その奥の目は全く笑っていなかった。
(あの時だ……!)
記憶を辿るまでもなく、駈はその原因に思い至る。
さっきのあのバーで、確かに駈はタクヤに、今日は久々に楽しかった的なことを言ったのだ。それを英は隣で黙って聞いていた、という訳だ。
でも、英にいくら責められようと、その言葉に嘘は無かった。
この数週間、しばらく英に会えていなかったのもあったし、その英のことでずっと悩んでいたこともあって、どうしても鬱々とした気持ちが抜けずにいたのだ。
そんな中、タクヤに親身に相談に乗ってもらい、さらにマスターも加わってふざけ合ったあの時間は、駈にとっては本当に、久しぶりに心が軽くなるひと時だった。
だから……先の台詞は、英といる時間とタクヤといる時間を比較して言った訳では断じてなかった。
……ということを、素直に伝えられる駈であれば、そもそもこんなに拗れたりはしない。
「あれは、違……う、んッ!」
「何が違うの?」
英はとうとう表面上の笑みも引っ込め、駈が感じてやまない場所をわざと外すように指を行ったり来たりさせる。
「だって、駈……すごく嬉しそうにしてたよね、あの男に頭撫でられてさ」
「してないっ! してない、って……あっ、やだ、そこ……っ!!」
英は言葉で駈を攻めながら、さらに指を器用に動かす。
下からはぐちぐちという水音が響いてきて、駈は自分の従順すぎる下半身に泣きたくなった。
「俺の時、あんな顔、したことなかったよな……」
英は本気で考え込むような顔をする。
と、その瞬間、意識がそれた指先は、ずっと放置されていたあの場所を勢いよく擦ってしまった。
それでも、耳に直接吹き込まれたそれに、英は眩暈を起こしそうなほど興奮し、駈の頭の横に置いた拳をぎりぎりと握りしめた。
荒くなっていくばかりの呼吸を必死に抑えて、目の前の駈を改めて見つめる。
さっきまでのどこか緊張感のあった表情はすっかり消え、逸らされた目は赤く色づき、熱い雫を一筋流したところだった。その唇は月明かりに濡れて光り、短い呼吸を繰り返している。それに合わせ、パーカーの下の胸が忙しく上下していた。
と、ずっと入れっぱなしになっていた指に、きゅっと圧が掛かる。
「お前、見すぎ……ぁッ」
ちょっとした仕返しのつもりで駈はそうしたのだろうが、逆にそれが引き金になってしまったらしい。駈は顔をバッと腕で隠すと、指を咥え込んだままの腰を淫らにくねらせた。
馬鹿だな、と揶揄おうとした口の中はいつの間にかからからに乾いていた。
彼の下半身はもう駈以上に漲り、固い布地をぐいぐいと押し上げている。
このまま欲望に任せ、その立派に育ったものを取り出して駈の中に潜り込ませたら、いったいどれほど気持ちがいいだろう……そんな妄想が頭を掠める。
だが、英はその悪魔の誘惑を何とか追い払うと、再び駈へと意識を戻した。
覆った腕の隙間から覗くその唇は閉じることを忘れてしまい、流れた涎は既にシートにまで濡らしてしまっていた。
官能の炎にずっと炙られ続けているその姿はむしろ苦しそうなほどで、英はその頭をそっと撫でてやると、埋めていた指をずるりと引き抜いた。
「あっ、ああ……っ!」
駈の口から悲鳴にも似た嬌声が上がる。突然の刺激に中は過敏に反応し、駈の全身にぞわりと鳥肌を立たせる。一方、ずっと咥えさせられていたものが消えたそこは、さっきまでそこにあったものを探すようにきゅんきゅんとわななき続けた。
その求めに応えるべく、英はすぐにその指を切なく震えるそこへと沈めていく。
「ひっ……」
さっきとは打って変わって、小さな喘ぎが一つだけ上がる。
だが、その控えめな声とは正反対に、その内壁は激しく痙攣し、その指を思いきり締め上げた。
どうやら中だけで軽くイってしまったらしい。
細切れの喘ぎを漏らしながら、駈は指を食んだままの下半身をシートの上でぴくぴくと跳ね上げさせていた。
最初は、辛そうな駈を一旦イかせて、それから部屋へと連れて行くつもりだった。が……目の前で、あまりにも容易に快感に屈する駈を見ているうち、英の中でいけない悪戯心がむくむくと頭をもたげてきてしまった。
「ねぇ、駈」
「……ん、なに……っ?」
駈は腕を少しずらすと、とろんとした目で英を見上げた。そして、呂律の回らなくなってきた舌でそう返す。
「もう、イキたい?」
分かり切った質問に、駈は英を睨むのも忘れて何度もこくこくと頷く。
その間にも、その指はひくつく中をゆっくりと往復し、駈は背をしならせながら身体中に汗を浮かばせた。
そして咄嗟に、悪さを繰り返す英の腕をその太腿で挟んでしまった。
すると今度はその指に、内壁に潜むしこりをくにくにと押し込まれる。
「やっ……!!」
そのあまりに直接的な快感に、駈は涙を散らし、遠慮のない声で善がってしまう。
英はその泣き所を掠めるように刺激しながら、駈の頬に顔を寄せた。
「だったら……こう言って」
「……?」
駈は腕の合間から、視線だけで男を見やる。
英は埋めた指をぐるりと回し、もう一度駈を甘く鳴かせた後、その赤い耳に唇を触れさせながら囁いた。
「あの男より……俺といる時の方が、楽しいって」
「……!!」
駈はぎょっとして英へと顔を向ける。
彼の顔はうっすらと笑みすら浮かべていたが、その奥の目は全く笑っていなかった。
(あの時だ……!)
記憶を辿るまでもなく、駈はその原因に思い至る。
さっきのあのバーで、確かに駈はタクヤに、今日は久々に楽しかった的なことを言ったのだ。それを英は隣で黙って聞いていた、という訳だ。
でも、英にいくら責められようと、その言葉に嘘は無かった。
この数週間、しばらく英に会えていなかったのもあったし、その英のことでずっと悩んでいたこともあって、どうしても鬱々とした気持ちが抜けずにいたのだ。
そんな中、タクヤに親身に相談に乗ってもらい、さらにマスターも加わってふざけ合ったあの時間は、駈にとっては本当に、久しぶりに心が軽くなるひと時だった。
だから……先の台詞は、英といる時間とタクヤといる時間を比較して言った訳では断じてなかった。
……ということを、素直に伝えられる駈であれば、そもそもこんなに拗れたりはしない。
「あれは、違……う、んッ!」
「何が違うの?」
英はとうとう表面上の笑みも引っ込め、駈が感じてやまない場所をわざと外すように指を行ったり来たりさせる。
「だって、駈……すごく嬉しそうにしてたよね、あの男に頭撫でられてさ」
「してないっ! してない、って……あっ、やだ、そこ……っ!!」
英は言葉で駈を攻めながら、さらに指を器用に動かす。
下からはぐちぐちという水音が響いてきて、駈は自分の従順すぎる下半身に泣きたくなった。
「俺の時、あんな顔、したことなかったよな……」
英は本気で考え込むような顔をする。
と、その瞬間、意識がそれた指先は、ずっと放置されていたあの場所を勢いよく擦ってしまった。
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