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プロローグ
プロローグ
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どこか、賃貸マンションの一室だろうか。部屋の中では、仮面をつけた怪しい一人の男がテレビゲームをしている。次々に出てくるゾンビを撃って倒していく類のもので、協力プレイや対人戦も可能な、そこそこ人気のタイトルだ。
「うーん、どのステージもあっさりクリアできるようになっちゃったなあ」
男はコントローラーを置いて立ち上がると、部屋の隅に置いてある鏡の前に立った。姿見で少し古風なデザインをしているが、そこに映し出されているものはその男の姿ではなく、どこか会議室のような場所だ。何人かの人間が話し合いをしているところだった。
「もうそろそろ限界かなぁ……」
頭をかきながらそう言うと、次に男は、とても物騒な一言をつぶやく。
「さ~てと、人類、滅ぼしちゃいますか」
再びゲームやディスプレイ、パソコンなどが置いてある机の前に座り、ちらちらと鏡を見ながら、男はネットで新しいゲームを探している。
不意に、男が鏡を二度見した。そして鏡の前に歩み寄る。どうやら、興味をひかれる何かを発見したらしい。
「へえ……」
◇ ◇ ◇
石造りの城の中庭で、王子然とした端正な顔立ちの青年と一人の男が剣を交えている。
一しきり打ち合うと、頃合いを見計らったように青年が男の剣を弾いた。
剣は宙を舞い、男の後方に突き刺さる。
「さすがはレオン殿下……もうこの国だけではなく、世界でも殿下に叶うものはいないかもしれませんね」
「ありがとうシャルダール。でも、そんなことはないよ。仮にそうだとしても、慢心はできない。僕はこの国を、民の生活を支えるために、七か国戦争に勝利し続けないといけないから」
「殿下……私は殿下のような素晴らしいお方にお仕えすることができて幸せです」
「いちいち大袈裟だな、シャルダールは」
青年がそう言って苦笑すると、また別の男が二人のもとへやってきた。
「レオン殿下、そろそろお時間です」
「ありがとう」
促されて移動した先は、城の正面、最上階に突き出る位置にあるバルコニー。
王家が朝礼や式典などで挨拶をするために使われる場所だ。
眼下には、ずらりと兵士が並び立っている。
その兵士たちに見守られながらバルコニーに立つと、青年は腰につけた鞘から剣を引き抜き、天に向かって掲げた。
青年の持つ剣の刀身に反射した陽光は、遠くからでもその場所がわかるように、強く煌めいている。
眼下の兵士たちが一斉に歓声をあげた。
「『英雄』レオン=リオハルト殿下万歳!」
「リオハルト王国に永遠の繁栄を!」
「レオン殿下の行く先に、勝利のあらんことを!」
◇ ◇ ◇
土埃の舞う、道もろくに舗装されていない森の中を一人の男が駆ける。
何やら後ろから、ゴリラのような動物に追いかけられていた。
男は一本の木に向かって走るとスピードを緩める。
後ろから追いかけてきた動物が、チャンスとばかりにその太い腕を振りかぶった瞬間に、男は木を壁のように蹴り上げて三角飛びをする。
空中でくるりと回転してゴリラの背後に着地すると、腰から剣を引き抜いた。
さすがは野生の動物というべきか、その動きを察知した動物が振り向きざまに裏拳を振ってくるも、男はそれを予想済みなのかしゃがんで避ける。
そして低い体勢のまま一気に懐に潜り込むと、動物に剣を突き刺した。
男が剣を抜くと、動物は力が抜けたように膝から崩れ落ちる。
その様子を見ていた通りすがりの人々が、ぼそぼそと話している。
(何であいつ魔法を使わないんだ?)
(もしかしてあいつ、あれじゃね?世界で唯一人、魔法が使えないっていう……)
(ああ……そうか、気の毒に……しかもそれで冒険者やってんのかよ……)
剣を鞘に納め、先ほど倒した動物を携帯のカメラで撮影すると、男は着ているスーツのポケットに両手を突っ込んで歩き出した。
「明日は護衛の仕事か……」
これは、かつて神々の住まう地で繁栄をとげた人類の物語。
魔法の飛び交う世界で独自の文化を築き、神々に見守られながら、それでも不完全である人類の結末とは、どんなものだったのか。
今、八人の英雄の物語が始まろうとしていた。
「うーん、どのステージもあっさりクリアできるようになっちゃったなあ」
男はコントローラーを置いて立ち上がると、部屋の隅に置いてある鏡の前に立った。姿見で少し古風なデザインをしているが、そこに映し出されているものはその男の姿ではなく、どこか会議室のような場所だ。何人かの人間が話し合いをしているところだった。
「もうそろそろ限界かなぁ……」
頭をかきながらそう言うと、次に男は、とても物騒な一言をつぶやく。
「さ~てと、人類、滅ぼしちゃいますか」
再びゲームやディスプレイ、パソコンなどが置いてある机の前に座り、ちらちらと鏡を見ながら、男はネットで新しいゲームを探している。
不意に、男が鏡を二度見した。そして鏡の前に歩み寄る。どうやら、興味をひかれる何かを発見したらしい。
「へえ……」
◇ ◇ ◇
石造りの城の中庭で、王子然とした端正な顔立ちの青年と一人の男が剣を交えている。
一しきり打ち合うと、頃合いを見計らったように青年が男の剣を弾いた。
剣は宙を舞い、男の後方に突き刺さる。
「さすがはレオン殿下……もうこの国だけではなく、世界でも殿下に叶うものはいないかもしれませんね」
「ありがとうシャルダール。でも、そんなことはないよ。仮にそうだとしても、慢心はできない。僕はこの国を、民の生活を支えるために、七か国戦争に勝利し続けないといけないから」
「殿下……私は殿下のような素晴らしいお方にお仕えすることができて幸せです」
「いちいち大袈裟だな、シャルダールは」
青年がそう言って苦笑すると、また別の男が二人のもとへやってきた。
「レオン殿下、そろそろお時間です」
「ありがとう」
促されて移動した先は、城の正面、最上階に突き出る位置にあるバルコニー。
王家が朝礼や式典などで挨拶をするために使われる場所だ。
眼下には、ずらりと兵士が並び立っている。
その兵士たちに見守られながらバルコニーに立つと、青年は腰につけた鞘から剣を引き抜き、天に向かって掲げた。
青年の持つ剣の刀身に反射した陽光は、遠くからでもその場所がわかるように、強く煌めいている。
眼下の兵士たちが一斉に歓声をあげた。
「『英雄』レオン=リオハルト殿下万歳!」
「リオハルト王国に永遠の繁栄を!」
「レオン殿下の行く先に、勝利のあらんことを!」
◇ ◇ ◇
土埃の舞う、道もろくに舗装されていない森の中を一人の男が駆ける。
何やら後ろから、ゴリラのような動物に追いかけられていた。
男は一本の木に向かって走るとスピードを緩める。
後ろから追いかけてきた動物が、チャンスとばかりにその太い腕を振りかぶった瞬間に、男は木を壁のように蹴り上げて三角飛びをする。
空中でくるりと回転してゴリラの背後に着地すると、腰から剣を引き抜いた。
さすがは野生の動物というべきか、その動きを察知した動物が振り向きざまに裏拳を振ってくるも、男はそれを予想済みなのかしゃがんで避ける。
そして低い体勢のまま一気に懐に潜り込むと、動物に剣を突き刺した。
男が剣を抜くと、動物は力が抜けたように膝から崩れ落ちる。
その様子を見ていた通りすがりの人々が、ぼそぼそと話している。
(何であいつ魔法を使わないんだ?)
(もしかしてあいつ、あれじゃね?世界で唯一人、魔法が使えないっていう……)
(ああ……そうか、気の毒に……しかもそれで冒険者やってんのかよ……)
剣を鞘に納め、先ほど倒した動物を携帯のカメラで撮影すると、男は着ているスーツのポケットに両手を突っ込んで歩き出した。
「明日は護衛の仕事か……」
これは、かつて神々の住まう地で繁栄をとげた人類の物語。
魔法の飛び交う世界で独自の文化を築き、神々に見守られながら、それでも不完全である人類の結末とは、どんなものだったのか。
今、八人の英雄の物語が始まろうとしていた。
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