19 / 28
風神龍と炎の薔薇
一夜明けて
しおりを挟む
戦いが終わって解放されると、俺たちはすぐに宿に帰って就寝。
気絶したまま放置しておいたとフィーナが教えてくれた魔女っ娘と変態忍者が少し気掛かりではあったけど、忍者の方は露出狂として無事に兵士に捕まったらしいので安心して眠りに就くことが出来た。
翌朝。どういうわけか忍者マサユキが宿に俺たちを迎えに来てしまう。
何事もなかったのように元気に「こんにちは」と挨拶をしてきたマサユキは、朝だから「おはようございます」じゃないのか、という俺のツッコミも無視してメアリーが待っているからついて来て欲しいと言い出した。
「まあ、一日自由に使うくらいは問題ないでしょう。急ぎ足ではあったものの、厳密に日程の決まっている旅ではありませんから」
メアリーのいる城まで向かう道すがら、ライラがそんな風に語る。
街の端にある小高い丘の上にそびえ立つガルド王城は、頑丈な石造りの城だ。両開きの扉を開けて中に入る。
魔石の入ったシャンデリアに照らされた大理石の床は煌々と光を放ち、朝にも関わらず、内部が外よりも明るいような錯覚を起こさせた。
マサユキは寄り道もせず城の内部を紹介するでもなく、そのまますぐにメアリーの居室へと案内してくれる。
ちなみに、ここまでの道中、フィーナは警戒心もあらわに変態忍者をじっと睨み続けていた。今日はさすがに忍び装束の下半身部分だけ破れているということはないけど、まあ無理もないわな。
「メアリー様、『フルーツ畑のわんちゃん』とフィーナ様一行をお連れしました」
「ご苦労様。昨夜は楽しかったわね、『フルーツ畑のわんちゃん』?」
「ラスナでいいよ。その名前で呼ばれるの普通に恥ずかしくなってきたわ」
メアリーの部屋には他に、ミリアムという名前らしい魔女っ娘と、モルグスと言う名前だと判明したずんぐりむっくりのノームみたいなやつがいた。
「それで、ガイアのお告げが天界中に広まってるってのはまあわかるんだけど、俺がラスナだってわかったのは何でなんだ?」
「あら、あなた本気で言っているの?変な魔道具を横に連れて歩く、ヴァレンティア王家のフィーナちゃんと一緒の男と来たら、普通は噂に聞くヴァレンティアの候補者じゃないかと勘繰るのはむしろ普通だと思うけれど。一昨日の夜に街を偵察していたそこのマサユキから報告があったわ」
なるほどな、それもそうか……。リオクライドについた当日の夜に俺たちは姿を見られていたと。いやでも、いきなり喧嘩をふっかけなくてもいいだろ。暇を持て余した王女様にも困ったもんだ……。
「フィーナちゃんも久しぶりね。やっぱりうちの三バカじゃまるで相手にならなかったみたいね」
天界では王家同士の交流がそこそこに行われているらしく、特に隣国の一つであるガルドは定期的に食事会などが催されているそうだ。そのため、フィーナは以前からメアリーや三バカと面識がある。
「うん、久しぶりメアリーちゃん。そんなことより、いつからマサユキは露出狂の変態になったの?」
「ああ、あれね。昨日の夜、どこかから帰ってきたあなたたちを見つけて私に報告しにきてくれたんだけど、またあなたたちのところに戻るときに、急ぎ過ぎてどこかの建物に服をひっかけて破いちゃったらしいわ。悪気はないみたいだから、許してあげてね」
「……本当に?」
フィーナはマサユキをじっと睨んでいる。でも、マサユキは微動だにせずに言い放った。
「本当でござる」
ござるという語尾のせいか、余計に疑わしく聞こえてしまうのは俺だけなのだろうか。昨日の、下半身だけ露出していてパンツ一枚という登場シーンが鮮烈だったせいで、ついこの忍者を警戒してしまうのはフィーナだけではないらしい。
忍者はともかく、メアリーは悪いやつじゃなかった。まだ知りあったばかりではあるけど、はっきりしている性格が俺としては好印象で、打ち解けながらガルド国について色んなことを教えてもらうことになる。そういった世間話などをしていると、早めの昼食をみんなでいただくことになった。
食堂らしき部屋に行くと、綺麗に皿の上に盛られた豪華な料理がテーブルを埋めるように並べられている。ヴァレンティア王家は日頃からあまり贅沢などはできないので、これにはフィーナとライラが結構喜んでいた。
それとは対照的に俺は食べ物にはあまり興味がない。とりあえず天チキを定期的に食えればいいぐらいだ。そういえばマダラシティを出た後は一枚も食ってないから、そろそろ食わないと禁断症状が出るかもな。
同じくボブも食べ物にはあまり興味がないらしく、モルグスとヒップホップについて熱く語り合っていた。この旅も終盤に来ているはずなんだけど、未だにボブのことが良くわからない。
俺はとりあえずその辺にある肉を手に取って食べながら、メアリーに七か国戦争について聞いてみることにした。
「なあメアリー、七か国戦争って具体的にはどうやって戦うんだ?」
「あら、そんなことも知らないの?」
「ヴァレンティアの国民にはこれまで全く関係のないことだったからな。特別に興味を持っているやつとかじゃないと知らないと思うぞ」
言ってしまえば、七か国戦争に興味を持つヴァレンティア国民というのは、他の国で行われているスポーツのリーグ戦を観戦するもの好きのようなものだ。いるにはいるけど、そこまで多くはない。
「そんなものかしら。まあいいわ。場所はアリアス。細かいルールは毎年連合評議会が決めているけど、基本は一対一のトーナメント形式よ。大会期間中だけ特別にアリアスへのカメラなどの撮影機器の持ち込みが許可されて盛大に行われるわ。まあ、戦争を禁止する代わりの殺し合いなのだから当然と言えば当然かしら」
アリアスってのは、マダラシティの北にある都市だ。闘技場のような多目的競技場があって、大きいものが一つと小さいものが二つ。スポーツの祭典なんかがよく催されているのが特徴となっている。
「なるほどな。去年の優勝者はどこ、というか誰だったんだ?」
「リオハルト王国の王子、レオン=リオハルトよ」
「レオン=リオハルト……そうか。他の国の代表者ってのは決まってるのか?」
「まだなとこがほとんどじゃない?でもまあ、正式に決まってないだけで、勝ち抜き戦でもやって選別していない限りは、大体は王族が選ばれるわ。国の威信をかけて戦う大会に一般市民は出しづらいし、元から各国の王族ってのは魔法の素質がある人がほとんどで強いからね」
天界の王族が強いというのは有名な話なんだけど、これには理由がある。今のメアリーの言い方は少し正確じゃなくて、実際には天界に移り住んだ人類が各国の初代王族を決める際に、要は「戦ってみて一番強いやつが王族」というやり方で決めたらしい。
つまり、王族に魔法の素質があって強いんじゃなくて、魔法の素質があって強い一族が王族になったってこと。
「なるほどな。大体わかったよ、ありがとう。いや、出発前に王家の人たちに詳しいことを聞き忘れちゃってな」
「あんたの方こそ色々教えなさいよ。あんた何者なの?いきなりヴァレンティアの代表に選ばれたにしては魔力が高いわけでもないし、あの戦い方とか技術はどこで身に付けたのよ?あんなの初めて見たわ」
そう聞かれて、俺はこれまでの経緯を話した。
生まれつき魔法が使えないこと、だから剣を使った戦闘の技術を必死に磨いたこと、そこに目を付けられてガイアにクロスを与えられてヴァレンティアの代表者にさせられたこと。でも、ガイアとの『ゲーム』をやっていることだけは、あいつとの約束だから話せなかった。
「ふ~ん、ちょうどルドラ様のところに行って来た帰りで、だから風魔法だけは使えたのね。じゃあタイミング的にはバッチリだったわ」
これは、全く魔法の使えない状態の俺と戦っても面白くなかった、という意味だろう。話していてわかったことだけど、メアリーはガイアと少し似ている。いつも刺激を欲していて、面白いもの、自分の退屈を紛らわせてくれるものが大好きみたいだ。
「まあ、がっかりはさせなかったみたいで良かったよ。俺はわかんないことも多いし、仲良くしてくれよな」
「ええ、もちろんそのつもりよ」
そういってメアリーは俺に近寄ると、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。あらまあ積極的ね。
そのとき、どこからかガシャーンと音がしたので振り向くと、こちらを見ていたフィーナが手に持っていた皿を落としたところで、驚いた表情のまま目を見開き、口を開けてこちらを見つめている。
「ヴァレンティアの代表があなたみたいな人で良かったわ。優等生で強いだけのつまらないリオハルトの王子と比べれば随分と私好みよ」
「ちょ、ちょっと……」
「あら動揺しちゃって。可愛いのね。これからはちょくちょくマダラシティに遊びに行くからよろしくね」
これはやばい。腕に何か柔らかいものが……ウホホッ。思考も何だかゴリラになりかけている気がするし……ウホッ。ウホホッ?
もうすぐ完全にゴリラになろうかというそのとき、俺は魔法の気配を察知した。しかし、メアリーに腕を取られて動けなかった俺はそれを避けれず、次の瞬間には身体が宙を舞っていた。
「ウホホッ!?」
後方に吹き飛ばされた俺は調度品などに激突し、大きな音が部屋に響く。メイドさんたちからも悲鳴があがった。えっ何?
辺りを見回すと、フィーナがこちらに向かって手をかざしている。どうやら俺に爆発魔法を撃ったらしい。威力は弱めてあるみたいだけど結構痛い。何してくれてんのこの子……。
「お兄ちゃんから離れてよ!お兄ちゃんにはお姉ちゃんがいるんだから!」
「へえ~あの実は人見知りの激しいフィーナちゃんがお兄ちゃん……ねえ?随分と仲良しみたいだけど」
メアリーは不敵な笑みを浮かべ、随分と挑発的な態度を取っている。いや、ていうか何で俺が吹き飛ばされたの?
「お兄ちゃんもお兄ちゃんよ。知り合ったばかりのメアリーちゃんにデレデレしちゃって……お姉ちゃんに言いつけるから!」
「あら、ラスナはスノウちゃんとお付き合いしてるの?」
「そ、それはまだだけどっ……とにかくダメはものはダメ!」
「じゃあ別にいいじゃない。何をそんなに興奮してるの?それとも、私とラスナが仲良くしたら困る理由が他にもあるのかしら?」
「うう~……」
フィーナはそう唸るだけで何も言えなくなってしまった。良くわからんけどこりゃメアリーの方が一枚上手って感じだな。
その後、フィーナはライラに宥められて何とか機嫌を直し、食事は続く。ちなみにこの一連の騒動の間、ボブとモルグスはこちらを見向きもせずにヒップホップ談議に夢中で、食事が終わった直後、メイドさんたちが食器やらを片付け終わると、食堂では二人のフリースタイルによるバトルが繰り広げられた。
それからまたメアリーの部屋で色々と話し込む。窓から差し込む光が茜色に染まりだすと、俺たちは話を切り上げて宿に戻る。城を出る際に、なぜか「親愛の証」だとか言ってマサユキから、あいつが着てるのと似たような忍び装束を渡された。本人の目の前で捨てるわけにもいかなかったので、渋々持ち帰ることにする。
翌朝になると早々に馬車に乗り込み、リオクライドを後にした俺たちはマダラシティへの帰路に就いた。
夜には中継地点であるサントの街について宿を取ったんだけど、そこで俺はまたあの声に呼ばれ、夢の中で数日ぶりに変なおっさんに会うはめになった。
気絶したまま放置しておいたとフィーナが教えてくれた魔女っ娘と変態忍者が少し気掛かりではあったけど、忍者の方は露出狂として無事に兵士に捕まったらしいので安心して眠りに就くことが出来た。
翌朝。どういうわけか忍者マサユキが宿に俺たちを迎えに来てしまう。
何事もなかったのように元気に「こんにちは」と挨拶をしてきたマサユキは、朝だから「おはようございます」じゃないのか、という俺のツッコミも無視してメアリーが待っているからついて来て欲しいと言い出した。
「まあ、一日自由に使うくらいは問題ないでしょう。急ぎ足ではあったものの、厳密に日程の決まっている旅ではありませんから」
メアリーのいる城まで向かう道すがら、ライラがそんな風に語る。
街の端にある小高い丘の上にそびえ立つガルド王城は、頑丈な石造りの城だ。両開きの扉を開けて中に入る。
魔石の入ったシャンデリアに照らされた大理石の床は煌々と光を放ち、朝にも関わらず、内部が外よりも明るいような錯覚を起こさせた。
マサユキは寄り道もせず城の内部を紹介するでもなく、そのまますぐにメアリーの居室へと案内してくれる。
ちなみに、ここまでの道中、フィーナは警戒心もあらわに変態忍者をじっと睨み続けていた。今日はさすがに忍び装束の下半身部分だけ破れているということはないけど、まあ無理もないわな。
「メアリー様、『フルーツ畑のわんちゃん』とフィーナ様一行をお連れしました」
「ご苦労様。昨夜は楽しかったわね、『フルーツ畑のわんちゃん』?」
「ラスナでいいよ。その名前で呼ばれるの普通に恥ずかしくなってきたわ」
メアリーの部屋には他に、ミリアムという名前らしい魔女っ娘と、モルグスと言う名前だと判明したずんぐりむっくりのノームみたいなやつがいた。
「それで、ガイアのお告げが天界中に広まってるってのはまあわかるんだけど、俺がラスナだってわかったのは何でなんだ?」
「あら、あなた本気で言っているの?変な魔道具を横に連れて歩く、ヴァレンティア王家のフィーナちゃんと一緒の男と来たら、普通は噂に聞くヴァレンティアの候補者じゃないかと勘繰るのはむしろ普通だと思うけれど。一昨日の夜に街を偵察していたそこのマサユキから報告があったわ」
なるほどな、それもそうか……。リオクライドについた当日の夜に俺たちは姿を見られていたと。いやでも、いきなり喧嘩をふっかけなくてもいいだろ。暇を持て余した王女様にも困ったもんだ……。
「フィーナちゃんも久しぶりね。やっぱりうちの三バカじゃまるで相手にならなかったみたいね」
天界では王家同士の交流がそこそこに行われているらしく、特に隣国の一つであるガルドは定期的に食事会などが催されているそうだ。そのため、フィーナは以前からメアリーや三バカと面識がある。
「うん、久しぶりメアリーちゃん。そんなことより、いつからマサユキは露出狂の変態になったの?」
「ああ、あれね。昨日の夜、どこかから帰ってきたあなたたちを見つけて私に報告しにきてくれたんだけど、またあなたたちのところに戻るときに、急ぎ過ぎてどこかの建物に服をひっかけて破いちゃったらしいわ。悪気はないみたいだから、許してあげてね」
「……本当に?」
フィーナはマサユキをじっと睨んでいる。でも、マサユキは微動だにせずに言い放った。
「本当でござる」
ござるという語尾のせいか、余計に疑わしく聞こえてしまうのは俺だけなのだろうか。昨日の、下半身だけ露出していてパンツ一枚という登場シーンが鮮烈だったせいで、ついこの忍者を警戒してしまうのはフィーナだけではないらしい。
忍者はともかく、メアリーは悪いやつじゃなかった。まだ知りあったばかりではあるけど、はっきりしている性格が俺としては好印象で、打ち解けながらガルド国について色んなことを教えてもらうことになる。そういった世間話などをしていると、早めの昼食をみんなでいただくことになった。
食堂らしき部屋に行くと、綺麗に皿の上に盛られた豪華な料理がテーブルを埋めるように並べられている。ヴァレンティア王家は日頃からあまり贅沢などはできないので、これにはフィーナとライラが結構喜んでいた。
それとは対照的に俺は食べ物にはあまり興味がない。とりあえず天チキを定期的に食えればいいぐらいだ。そういえばマダラシティを出た後は一枚も食ってないから、そろそろ食わないと禁断症状が出るかもな。
同じくボブも食べ物にはあまり興味がないらしく、モルグスとヒップホップについて熱く語り合っていた。この旅も終盤に来ているはずなんだけど、未だにボブのことが良くわからない。
俺はとりあえずその辺にある肉を手に取って食べながら、メアリーに七か国戦争について聞いてみることにした。
「なあメアリー、七か国戦争って具体的にはどうやって戦うんだ?」
「あら、そんなことも知らないの?」
「ヴァレンティアの国民にはこれまで全く関係のないことだったからな。特別に興味を持っているやつとかじゃないと知らないと思うぞ」
言ってしまえば、七か国戦争に興味を持つヴァレンティア国民というのは、他の国で行われているスポーツのリーグ戦を観戦するもの好きのようなものだ。いるにはいるけど、そこまで多くはない。
「そんなものかしら。まあいいわ。場所はアリアス。細かいルールは毎年連合評議会が決めているけど、基本は一対一のトーナメント形式よ。大会期間中だけ特別にアリアスへのカメラなどの撮影機器の持ち込みが許可されて盛大に行われるわ。まあ、戦争を禁止する代わりの殺し合いなのだから当然と言えば当然かしら」
アリアスってのは、マダラシティの北にある都市だ。闘技場のような多目的競技場があって、大きいものが一つと小さいものが二つ。スポーツの祭典なんかがよく催されているのが特徴となっている。
「なるほどな。去年の優勝者はどこ、というか誰だったんだ?」
「リオハルト王国の王子、レオン=リオハルトよ」
「レオン=リオハルト……そうか。他の国の代表者ってのは決まってるのか?」
「まだなとこがほとんどじゃない?でもまあ、正式に決まってないだけで、勝ち抜き戦でもやって選別していない限りは、大体は王族が選ばれるわ。国の威信をかけて戦う大会に一般市民は出しづらいし、元から各国の王族ってのは魔法の素質がある人がほとんどで強いからね」
天界の王族が強いというのは有名な話なんだけど、これには理由がある。今のメアリーの言い方は少し正確じゃなくて、実際には天界に移り住んだ人類が各国の初代王族を決める際に、要は「戦ってみて一番強いやつが王族」というやり方で決めたらしい。
つまり、王族に魔法の素質があって強いんじゃなくて、魔法の素質があって強い一族が王族になったってこと。
「なるほどな。大体わかったよ、ありがとう。いや、出発前に王家の人たちに詳しいことを聞き忘れちゃってな」
「あんたの方こそ色々教えなさいよ。あんた何者なの?いきなりヴァレンティアの代表に選ばれたにしては魔力が高いわけでもないし、あの戦い方とか技術はどこで身に付けたのよ?あんなの初めて見たわ」
そう聞かれて、俺はこれまでの経緯を話した。
生まれつき魔法が使えないこと、だから剣を使った戦闘の技術を必死に磨いたこと、そこに目を付けられてガイアにクロスを与えられてヴァレンティアの代表者にさせられたこと。でも、ガイアとの『ゲーム』をやっていることだけは、あいつとの約束だから話せなかった。
「ふ~ん、ちょうどルドラ様のところに行って来た帰りで、だから風魔法だけは使えたのね。じゃあタイミング的にはバッチリだったわ」
これは、全く魔法の使えない状態の俺と戦っても面白くなかった、という意味だろう。話していてわかったことだけど、メアリーはガイアと少し似ている。いつも刺激を欲していて、面白いもの、自分の退屈を紛らわせてくれるものが大好きみたいだ。
「まあ、がっかりはさせなかったみたいで良かったよ。俺はわかんないことも多いし、仲良くしてくれよな」
「ええ、もちろんそのつもりよ」
そういってメアリーは俺に近寄ると、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。あらまあ積極的ね。
そのとき、どこからかガシャーンと音がしたので振り向くと、こちらを見ていたフィーナが手に持っていた皿を落としたところで、驚いた表情のまま目を見開き、口を開けてこちらを見つめている。
「ヴァレンティアの代表があなたみたいな人で良かったわ。優等生で強いだけのつまらないリオハルトの王子と比べれば随分と私好みよ」
「ちょ、ちょっと……」
「あら動揺しちゃって。可愛いのね。これからはちょくちょくマダラシティに遊びに行くからよろしくね」
これはやばい。腕に何か柔らかいものが……ウホホッ。思考も何だかゴリラになりかけている気がするし……ウホッ。ウホホッ?
もうすぐ完全にゴリラになろうかというそのとき、俺は魔法の気配を察知した。しかし、メアリーに腕を取られて動けなかった俺はそれを避けれず、次の瞬間には身体が宙を舞っていた。
「ウホホッ!?」
後方に吹き飛ばされた俺は調度品などに激突し、大きな音が部屋に響く。メイドさんたちからも悲鳴があがった。えっ何?
辺りを見回すと、フィーナがこちらに向かって手をかざしている。どうやら俺に爆発魔法を撃ったらしい。威力は弱めてあるみたいだけど結構痛い。何してくれてんのこの子……。
「お兄ちゃんから離れてよ!お兄ちゃんにはお姉ちゃんがいるんだから!」
「へえ~あの実は人見知りの激しいフィーナちゃんがお兄ちゃん……ねえ?随分と仲良しみたいだけど」
メアリーは不敵な笑みを浮かべ、随分と挑発的な態度を取っている。いや、ていうか何で俺が吹き飛ばされたの?
「お兄ちゃんもお兄ちゃんよ。知り合ったばかりのメアリーちゃんにデレデレしちゃって……お姉ちゃんに言いつけるから!」
「あら、ラスナはスノウちゃんとお付き合いしてるの?」
「そ、それはまだだけどっ……とにかくダメはものはダメ!」
「じゃあ別にいいじゃない。何をそんなに興奮してるの?それとも、私とラスナが仲良くしたら困る理由が他にもあるのかしら?」
「うう~……」
フィーナはそう唸るだけで何も言えなくなってしまった。良くわからんけどこりゃメアリーの方が一枚上手って感じだな。
その後、フィーナはライラに宥められて何とか機嫌を直し、食事は続く。ちなみにこの一連の騒動の間、ボブとモルグスはこちらを見向きもせずにヒップホップ談議に夢中で、食事が終わった直後、メイドさんたちが食器やらを片付け終わると、食堂では二人のフリースタイルによるバトルが繰り広げられた。
それからまたメアリーの部屋で色々と話し込む。窓から差し込む光が茜色に染まりだすと、俺たちは話を切り上げて宿に戻る。城を出る際に、なぜか「親愛の証」だとか言ってマサユキから、あいつが着てるのと似たような忍び装束を渡された。本人の目の前で捨てるわけにもいかなかったので、渋々持ち帰ることにする。
翌朝になると早々に馬車に乗り込み、リオクライドを後にした俺たちはマダラシティへの帰路に就いた。
夜には中継地点であるサントの街について宿を取ったんだけど、そこで俺はまたあの声に呼ばれ、夢の中で数日ぶりに変なおっさんに会うはめになった。
0
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました
あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。
そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。
平民出身のヒロインの「善意」、
王太子の「優しさ」、
そしてそれらが生み出す無数の歪み。
感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。
やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。
それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。
なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。
これは、
「断罪される側」が最後まで正しかった物語。
そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる