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風神龍と炎の薔薇
ガイアの泣き言
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「よう、兄弟。元気にしてたか?」
ここはガイアの部屋。相変わらずお気楽そうな男が、奥で座ってゲームをしながら振り向き、片手を上げて軽快に挨拶をよこしてきた。
「そんなの、答えなくてもお前は知ってんだろ」
二度目なので特に驚くこともなく、俺は勝手知ったるガイアの部屋と言った感じですいすいと奥に進み、ゲーム機やパソコン、ディスプレイの並ぶ台の前、ガイアの隣に座る。
「そうつれない言い方をするなよ。コミュニケーションの一環だろ」
今ガイアがやっているのは、大人気のモンスター狩猟アクションゲームだ。大人気とはいっても地球での話であり、俺も含めてリアルに危険動物を狩って生活をしているやつらのいる天界ではそこまで、という感じ。
確か弟が前にやってた気がするけど、俺は何でゲームでまで動物を狩らなければいけないのか良くわからないのでプレイしたことがない。
恐らくはボスとやり合っているんだろう。ハンターたちの心を鼓舞してやまない戦闘用BGMが部屋に鳴り響いている。ときに回避し、ときに前進して攻撃しながら、ガイアは巧みにボスのHPを削っていった。うまいなこいつ。というかこれだけゲームばかりしていて、普段ちゃんと仕事はしてるんだろうか……?
しばらくの間、俺は静かにガイアのプレイを見守っていたんだけど、逃げられたのか、モンスターが生きたままどこかに飛び去ってしまったところでガイアが口を開いた。
「ミル君と戦ったよ。強いな、お前の弟は」
「何の話だよ」
ミルというのは俺の弟の名前で、今は18歳。現在は出版社の下請けで記事を作ったり自主的に新聞を発行したりしている、クソゲー調査団という会社でクソゲーをプレイしてレポートをすることが仕事だ。
色んな意味で出来損ないな俺とは違って、ミルは小さい頃から何でも一人でできた。勉強もできれば運動神経もいいし、気さくで誰とも仲良くなれる。おかげで俺に頼る必要が全くなかったので、弟に頼られたかった俺は寂しい思いをした。その反動で、俺は自分をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれるフィーナをベタベタに甘やかしたという経緯がある。
一応言っておくと、弟が俺を見下しているだとか、兄弟仲が悪いだとかそんなことはない。仲の良さとしては標準的だろうか。弟に関しては今はこんなところだろう。
「神様になろう!ってゲームを知ってるか?」
「知らん」
「VRのゲームなんだがな、リアル神の俺ならもう無双できるだろうと思って始めたのに、宇宙そのものを育てにゃならんし、対人戦は惑星をぶつけ合うとかいうわけのわからんシステムだわでクソだったから、最後に対人戦の大会にでも出てやめようとしてたところだったんだけど」
何やってんだこいつ……。リアル神の俺なら神になるゲームで無双できる、という発想はわからなくもないけど、例えばドラムを叩く音楽ゲームを本物のドラマーにやらせても初見では全然うまく出来ないって事実があるからな。
ちなみにVRのゲームというのは、この場においては専用のマシンによって仮想空間の中に直接入り込むという最先端の技術が使われているゲームのことだ。
コントローラーを使わず、仮想空間内で自分の身体、もしくはアバターを直接動かして遊ぶため、あたかももう一つの世界にいるかのような感覚を味わうことができるのが特徴。
「そこでミルと対戦したのか?」
「さすがは兄弟、察しがいい」
「よく相手がミルだってわかったな。名前はそのままじゃなかっただろ」
「そりゃいつも人間たちをその鏡で見てるからね。お前らに限った話じゃなく、俺にとって面白そうなやつらは逐一チェックしてる。お前の弟がゲームを仕事にしていて、どのゲームをどんなキャラでやってるか、予め知っていたのさ」
ガイアは、部屋の隅に置いてある、アンティークなデザインの鏡を見ながらそう言った。俺も詳しくはわからないけど、前回の様子から言って、あの鏡は天界や地球の任意の場所を映し出せるようだ。
「そうか」
「ああ。そうだ」
それからまた沈黙が続く。ゲームが映し出されているディスプレイを眺めているうちに、俺はふとあることに気が付いた。
「そういえばお前、何で俺を呼び出したんだ?」
「何か用がなきゃダメなのか?」
何でちょっとキレ気味なんだよ。お前は俺の彼女か。それか面倒くさい友達。
「いや、前回からこれまで呼び出しなんてなかったからさ。頻繁に呼び出されても困るけど、まあ何か用があるときに呼ぶんだろうなって」
「本当は用があったけど、むかついたからもう言わない」
子供か。頬を膨らませるのやめろ。
うざいのでもう放っておこうと思い俺が黙っていると、依然としてディスプレイを見つめてゲームを続けながらガイアは言った。
「あれだ、とりあえず『風神龍』との契約、そして親善試合の勝利おめでとう」
「あざっす」
ここで「それだけで呼び出したのか?」とか「親善試合って感じじゃなかっただろ」とか聞くとまた面倒くさいことになりそうなのでやめておく。それよりも、俺はここで気になることを聞いてみた。
「なあ、もしさ、俺がメアリーに負けてたらどうなってたんだ?」
「別にどうもならないよ。本番じゃない限りは他国の人間には負けてもいい。じゃないと俺に有利すぎる。それはつまらん」
元から七か国戦争で優勝する以外は俺に勝ちがない時点で有利もくそもない気がするんだけど。
「おっと、兄弟の考えてることは予想がつく。でもな、そういうことじゃない。一度戦っただけじゃ多分兄弟でも勝てない候補者が一人いるのさ」
「誰だよ」
「それは教えられない。ガイアズヒントはここまでだ」
ガイアズヒントってどこかで聞いたような響きだな。
何だか随分と俺が高く評価されている気がする。それより……。
「他国の人間に負けてもいいってことは、ヴァレンティア王国の人間には負けちゃだめなのか?」
「うむ。兄弟が負けて代表者の座を降ろされたらその時点で俺の勝ちだ」
「なるほどな」
俺が戦えなくなるわけだから、それは理解できる。
「まあ結局は俺の気分次第なんだけどね。今のところはこんなもんか?」
「ああ。色々教えてくれて助かった」
「それよりさ~兄弟」
ガイアは少し声のトーンを落としたにも関わらず、はやる気持ちを抑えられないような調子で聞いて来た。
「あの女とはどうなんだよ!」
「あの女って?」
「またまたとぼけちゃって~俺に言わせる気かよ~」
何て言うか、テンションが完全に思春期男子だな……。本当の思春期男子はこんな意味のわからん喋り方はしないけど……。むしろ多分、こういう話を仲間内でするときは、秘密話をしてる雰囲気を出しつつ、要所要所の「まじかよ!」とかは好きな子を意識して大声を出したりすると思う。
「おう。言ってみてくれよ」
「本当に~?言っちゃっていいんですか~?」
うぜえ。思わず舌打ちをしたりしないように気をつけないと……。
「それでは発表しま~~~す!!ドゥルルルルルルルル……」
これはあれだな、ドラムロールを口で真似してるやつだ。
「ダンッ!!スノウちゃんでえ~~~~~~~っす!!」
「おう」
何を発表したのかは知らんが、とにかくユキのことらしい。
「何やら旅の間、フィーナちゃんやメアリーちゃんにべたべたされて喜んでたじゃない」
「喜んでねえよ」
「ホントに~?」
「すいません喜んでました」
「この正直者ぅ!フゥ!」
何でこのおっさんはこんなにテンションが高いんだろうか。深夜に酒飲んで恋バナとかしてる大学生を彷彿とさせる。
「それでも俺はユキ一筋だから!」
「そう?あのライラとかいう子にも押されたらホイホイついて行きそうだけど」
「俺のイメージ!」
「それにさ兄弟、もしスノウちゃんに他にいい感じの相手が現れてそっちと仲良くなっちゃったら、それでもスノウちゃんのことを好きでいられるのかい?」
「うっ」
正直、今までそういった話がない方が不思議だった。ユキは忙しすぎるせいで学校とかに行く暇もなく、そのせいで浮いた話の一つもなかったけど、かわいいし性格も良くてあどけない顔立ちの割にスタイルもいいとなれば、今後いくらでもいい相手が現れる可能性は否定できない。
「単に幼馴染でいい雰囲気になっているあの子を好きだと思っているだけなんじゃないの?」
さすが腐っても神ということか。失礼だけど。中々に鋭い指摘だし、実際、ガイアの言うことを否定するのはそう簡単なことじゃないと思う。俺は、少し考えてから正直な気持ちを口にした。
「……そうかもしれない。でも、これだけは言える」
ガイアは、俺からどんな言葉が出てくるのか、見守っているような、試しているような、そんな雰囲気で俺をじっと見ている。
「もしお前の言うとおりで、あの子が別の相手とくっついて、それで俺があの子のことを好きじゃなくなったとしても……俺はあの子のために戦い続ける」
俺の言葉を聞いたガイアは、満足そうな笑みを浮かべた。仮面の下に隠れたその真意までは、読み取ることは出来なかったけど。
「合格だ。さすがだな、兄弟」
「こんなのでいいのかよ」
「ああ。人間は俺には嘘をつけないからな。綺麗ごとは言わず、正直に自分の気持ちを告白したラスナ=アレスターらしい回答だ」
良くわからないけど、どうやら満足いただけたようだ。
「それじゃ、いじめるのもこの辺までにしといてやろう。今日も楽しかったぜ、兄弟。これからもよろしくな」
「ああ。そういえば、これって帰るときはお前に飛ばしてもらうしかないのか?」
「そのままの状態ならそうだな。それか、こちらでもう一度眠りにつくか」
「そのままの状態ならってなんだよ」
「今の兄弟には関係のないことさ。それじゃ……」
ガイアがこちらに手をかざした状態で何かを思い出したように固まった。
「どうした?まだ何かあるのか?」
「次に兄弟が行くことになるのは宋華王国だろうな」
「まあな。一番近い神が『炎神』アグニらしいし」
「そういうことじゃないさ。あんまり敵に塩を送るのもなんだけど……身の回りには気を付けておけ」
「?ああ……」
何だか良くわからな過ぎて塩になってない気がするんだけど……身の回りになんて普段から気を付けてるし。まあいいか。
「それじゃあな兄弟。また会おう」
「おう」
そうして俺の意識は数分前同様に、再び闇の中に溶け込んでいく。
今回は何だか、ガイアの神らしい一面を垣間見た様な気がする。
俺は薄れていく意識の中で、もうすぐ終わる度の寂しさと、どうやらこれから起こるらしい騒動に期待と不安を膨らませることにした。
ここはガイアの部屋。相変わらずお気楽そうな男が、奥で座ってゲームをしながら振り向き、片手を上げて軽快に挨拶をよこしてきた。
「そんなの、答えなくてもお前は知ってんだろ」
二度目なので特に驚くこともなく、俺は勝手知ったるガイアの部屋と言った感じですいすいと奥に進み、ゲーム機やパソコン、ディスプレイの並ぶ台の前、ガイアの隣に座る。
「そうつれない言い方をするなよ。コミュニケーションの一環だろ」
今ガイアがやっているのは、大人気のモンスター狩猟アクションゲームだ。大人気とはいっても地球での話であり、俺も含めてリアルに危険動物を狩って生活をしているやつらのいる天界ではそこまで、という感じ。
確か弟が前にやってた気がするけど、俺は何でゲームでまで動物を狩らなければいけないのか良くわからないのでプレイしたことがない。
恐らくはボスとやり合っているんだろう。ハンターたちの心を鼓舞してやまない戦闘用BGMが部屋に鳴り響いている。ときに回避し、ときに前進して攻撃しながら、ガイアは巧みにボスのHPを削っていった。うまいなこいつ。というかこれだけゲームばかりしていて、普段ちゃんと仕事はしてるんだろうか……?
しばらくの間、俺は静かにガイアのプレイを見守っていたんだけど、逃げられたのか、モンスターが生きたままどこかに飛び去ってしまったところでガイアが口を開いた。
「ミル君と戦ったよ。強いな、お前の弟は」
「何の話だよ」
ミルというのは俺の弟の名前で、今は18歳。現在は出版社の下請けで記事を作ったり自主的に新聞を発行したりしている、クソゲー調査団という会社でクソゲーをプレイしてレポートをすることが仕事だ。
色んな意味で出来損ないな俺とは違って、ミルは小さい頃から何でも一人でできた。勉強もできれば運動神経もいいし、気さくで誰とも仲良くなれる。おかげで俺に頼る必要が全くなかったので、弟に頼られたかった俺は寂しい思いをした。その反動で、俺は自分をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれるフィーナをベタベタに甘やかしたという経緯がある。
一応言っておくと、弟が俺を見下しているだとか、兄弟仲が悪いだとかそんなことはない。仲の良さとしては標準的だろうか。弟に関しては今はこんなところだろう。
「神様になろう!ってゲームを知ってるか?」
「知らん」
「VRのゲームなんだがな、リアル神の俺ならもう無双できるだろうと思って始めたのに、宇宙そのものを育てにゃならんし、対人戦は惑星をぶつけ合うとかいうわけのわからんシステムだわでクソだったから、最後に対人戦の大会にでも出てやめようとしてたところだったんだけど」
何やってんだこいつ……。リアル神の俺なら神になるゲームで無双できる、という発想はわからなくもないけど、例えばドラムを叩く音楽ゲームを本物のドラマーにやらせても初見では全然うまく出来ないって事実があるからな。
ちなみにVRのゲームというのは、この場においては専用のマシンによって仮想空間の中に直接入り込むという最先端の技術が使われているゲームのことだ。
コントローラーを使わず、仮想空間内で自分の身体、もしくはアバターを直接動かして遊ぶため、あたかももう一つの世界にいるかのような感覚を味わうことができるのが特徴。
「そこでミルと対戦したのか?」
「さすがは兄弟、察しがいい」
「よく相手がミルだってわかったな。名前はそのままじゃなかっただろ」
「そりゃいつも人間たちをその鏡で見てるからね。お前らに限った話じゃなく、俺にとって面白そうなやつらは逐一チェックしてる。お前の弟がゲームを仕事にしていて、どのゲームをどんなキャラでやってるか、予め知っていたのさ」
ガイアは、部屋の隅に置いてある、アンティークなデザインの鏡を見ながらそう言った。俺も詳しくはわからないけど、前回の様子から言って、あの鏡は天界や地球の任意の場所を映し出せるようだ。
「そうか」
「ああ。そうだ」
それからまた沈黙が続く。ゲームが映し出されているディスプレイを眺めているうちに、俺はふとあることに気が付いた。
「そういえばお前、何で俺を呼び出したんだ?」
「何か用がなきゃダメなのか?」
何でちょっとキレ気味なんだよ。お前は俺の彼女か。それか面倒くさい友達。
「いや、前回からこれまで呼び出しなんてなかったからさ。頻繁に呼び出されても困るけど、まあ何か用があるときに呼ぶんだろうなって」
「本当は用があったけど、むかついたからもう言わない」
子供か。頬を膨らませるのやめろ。
うざいのでもう放っておこうと思い俺が黙っていると、依然としてディスプレイを見つめてゲームを続けながらガイアは言った。
「あれだ、とりあえず『風神龍』との契約、そして親善試合の勝利おめでとう」
「あざっす」
ここで「それだけで呼び出したのか?」とか「親善試合って感じじゃなかっただろ」とか聞くとまた面倒くさいことになりそうなのでやめておく。それよりも、俺はここで気になることを聞いてみた。
「なあ、もしさ、俺がメアリーに負けてたらどうなってたんだ?」
「別にどうもならないよ。本番じゃない限りは他国の人間には負けてもいい。じゃないと俺に有利すぎる。それはつまらん」
元から七か国戦争で優勝する以外は俺に勝ちがない時点で有利もくそもない気がするんだけど。
「おっと、兄弟の考えてることは予想がつく。でもな、そういうことじゃない。一度戦っただけじゃ多分兄弟でも勝てない候補者が一人いるのさ」
「誰だよ」
「それは教えられない。ガイアズヒントはここまでだ」
ガイアズヒントってどこかで聞いたような響きだな。
何だか随分と俺が高く評価されている気がする。それより……。
「他国の人間に負けてもいいってことは、ヴァレンティア王国の人間には負けちゃだめなのか?」
「うむ。兄弟が負けて代表者の座を降ろされたらその時点で俺の勝ちだ」
「なるほどな」
俺が戦えなくなるわけだから、それは理解できる。
「まあ結局は俺の気分次第なんだけどね。今のところはこんなもんか?」
「ああ。色々教えてくれて助かった」
「それよりさ~兄弟」
ガイアは少し声のトーンを落としたにも関わらず、はやる気持ちを抑えられないような調子で聞いて来た。
「あの女とはどうなんだよ!」
「あの女って?」
「またまたとぼけちゃって~俺に言わせる気かよ~」
何て言うか、テンションが完全に思春期男子だな……。本当の思春期男子はこんな意味のわからん喋り方はしないけど……。むしろ多分、こういう話を仲間内でするときは、秘密話をしてる雰囲気を出しつつ、要所要所の「まじかよ!」とかは好きな子を意識して大声を出したりすると思う。
「おう。言ってみてくれよ」
「本当に~?言っちゃっていいんですか~?」
うぜえ。思わず舌打ちをしたりしないように気をつけないと……。
「それでは発表しま~~~す!!ドゥルルルルルルルル……」
これはあれだな、ドラムロールを口で真似してるやつだ。
「ダンッ!!スノウちゃんでえ~~~~~~~っす!!」
「おう」
何を発表したのかは知らんが、とにかくユキのことらしい。
「何やら旅の間、フィーナちゃんやメアリーちゃんにべたべたされて喜んでたじゃない」
「喜んでねえよ」
「ホントに~?」
「すいません喜んでました」
「この正直者ぅ!フゥ!」
何でこのおっさんはこんなにテンションが高いんだろうか。深夜に酒飲んで恋バナとかしてる大学生を彷彿とさせる。
「それでも俺はユキ一筋だから!」
「そう?あのライラとかいう子にも押されたらホイホイついて行きそうだけど」
「俺のイメージ!」
「それにさ兄弟、もしスノウちゃんに他にいい感じの相手が現れてそっちと仲良くなっちゃったら、それでもスノウちゃんのことを好きでいられるのかい?」
「うっ」
正直、今までそういった話がない方が不思議だった。ユキは忙しすぎるせいで学校とかに行く暇もなく、そのせいで浮いた話の一つもなかったけど、かわいいし性格も良くてあどけない顔立ちの割にスタイルもいいとなれば、今後いくらでもいい相手が現れる可能性は否定できない。
「単に幼馴染でいい雰囲気になっているあの子を好きだと思っているだけなんじゃないの?」
さすが腐っても神ということか。失礼だけど。中々に鋭い指摘だし、実際、ガイアの言うことを否定するのはそう簡単なことじゃないと思う。俺は、少し考えてから正直な気持ちを口にした。
「……そうかもしれない。でも、これだけは言える」
ガイアは、俺からどんな言葉が出てくるのか、見守っているような、試しているような、そんな雰囲気で俺をじっと見ている。
「もしお前の言うとおりで、あの子が別の相手とくっついて、それで俺があの子のことを好きじゃなくなったとしても……俺はあの子のために戦い続ける」
俺の言葉を聞いたガイアは、満足そうな笑みを浮かべた。仮面の下に隠れたその真意までは、読み取ることは出来なかったけど。
「合格だ。さすがだな、兄弟」
「こんなのでいいのかよ」
「ああ。人間は俺には嘘をつけないからな。綺麗ごとは言わず、正直に自分の気持ちを告白したラスナ=アレスターらしい回答だ」
良くわからないけど、どうやら満足いただけたようだ。
「それじゃ、いじめるのもこの辺までにしといてやろう。今日も楽しかったぜ、兄弟。これからもよろしくな」
「ああ。そういえば、これって帰るときはお前に飛ばしてもらうしかないのか?」
「そのままの状態ならそうだな。それか、こちらでもう一度眠りにつくか」
「そのままの状態ならってなんだよ」
「今の兄弟には関係のないことさ。それじゃ……」
ガイアがこちらに手をかざした状態で何かを思い出したように固まった。
「どうした?まだ何かあるのか?」
「次に兄弟が行くことになるのは宋華王国だろうな」
「まあな。一番近い神が『炎神』アグニらしいし」
「そういうことじゃないさ。あんまり敵に塩を送るのもなんだけど……身の回りには気を付けておけ」
「?ああ……」
何だか良くわからな過ぎて塩になってない気がするんだけど……身の回りになんて普段から気を付けてるし。まあいいか。
「それじゃあな兄弟。また会おう」
「おう」
そうして俺の意識は数分前同様に、再び闇の中に溶け込んでいく。
今回は何だか、ガイアの神らしい一面を垣間見た様な気がする。
俺は薄れていく意識の中で、もうすぐ終わる度の寂しさと、どうやらこれから起こるらしい騒動に期待と不安を膨らませることにした。
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