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伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮
どこかで見た金髪碧眼の美少女
「すごいすごい! 今のどうやってやるんですか?」
レイナルドの技を見たティナが興奮している。ジョゼフィーヌが粉々になったことはあまり気にならないらしい。
くそっ、本当なら俺だってあれくらい余裕なのにちくしょう。
レイナルドは柔らかく微笑むと、ティナをたしなめるように口を開く。
「今のは槍専用のスキルなのでお教えすることはできませんが、剣でも使用できそうなスキルや戦闘技術を伝授いたします」
「是非お願いします!」
「ではこちらへ」
ティナはレイナルドの案内で別の人形の前へと移動する。
それから戦闘技術に関するレッスンが始まった。
最初の内は俺もこれを真面目に聞いていたんだけど、途中で眠くなって来てしまったので適当な理由をつけて離脱した。
まあ、街中だしあのおっさん強いし、ティナを一人で置いて来ても問題はないだろうという判断だ。
そんなわけで一人でフォースの街をぶらつくことにしたものの、どこにいけばいいかはてんで見当がつかない。
すぐに戻れるよう、おっさんの家からは近場がいいかな。
飯もさっき食ったばっかりだし装備屋でも回って時間をつぶすか、とか考えながら歩いていると、ある店の前を通りかかった。
エルフの里の建物はどれも似たような外観をしているのでわかりづらいけど、扉にかかっている看板からして喫茶店だ。
軽く茶でも飲んで時間を潰すかと思い立ち、すぐに店に入った。軽快なベルの音に招かれながら店内を練り歩いていく。
時間のせいもあってか、客はまばらだ。
一つ足を踏み出す度に床の軋む音が響き、香ばしい紅茶の香りが鼻腔に届く。
適当に空いているカウンター席に腰かけて飲み物を注文した。
ミツメは店ごとに趣向を凝らしていてすごく賑やかなことになっていたけど、この喫茶店のそれは至ってシンプルだ。
自然との調和を目指すのはいいけど、もうちょっと凝ってもいいんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、また一つ入り口でベルの音が鳴った。
俺は店内を見渡しつつも、耳でこちらに近付いてくるその足音をとらえている。
やがてその足音は椅子を引く音に変わった。どうやらカウンター席に座る俺の横に陣取ったらしい。
他に空いている席だってあるのに、とちらと入店したばかりの客の方を振り向くと目があってしまった。
絹糸のように流れる金の髪が店内のわずかな灯りを反射して輝き、優しそうな青の双眸はこちらを穏やかに見つめている。
口元に微笑みをたたえたそのあどけない容貌は、ティナがいなければ一目惚れしてしまいそうな程の魅力に溢れていた。
っていうかこの人って……。
目が合ったまま言葉を失っていると、その小振りな薄桃色の唇がゆっくりと開かれる。
「こんにちは。お一人ですか?」
「あ、はい……えっと、失礼ですけどお名前は」
「フィオーレと申します」
フィオーレ……ソフィア様じゃないのか。
いやでもこれどう見てもソフィア様だよな?
ソフィア様の姿には三通りある。
一つは手のひらサイズの妖精姿。
これはギルドのシンボルマークになっているくらいだから、冒険者を中心にこの世界では広く知られている。
あとは女神の姿と人間の姿。
この二つに関して、見た目に大きな違いはない。じゃあ何が違うのかというと、オーラが出ているかどうかだ。
言葉じゃうまく説明できないけど、女神、つまり本来の姿のソフィア様は一目見ただけで神とわかってしまうオーラみたいなものが出ている。
理屈じゃない。それを見ると言うか浴びる? と本能が理解するのだ。目の前にいるのが神であると。
でも今はその感覚がない。だから少なくとも女神姿じゃないんだろうけど、それにしては見た目が瓜二つだ。
こんな綺麗な人間がティナ以外にそうそういるわけがない。いや、でもティナは大天使ティナエルの下界での姿だからな。
ティナの正体が大天使なら、ティナ並みに可愛い目の前のこの人は少なくとも大天使以上じゃないといけない。
大天使以上って色々とどういうことだよ。まあ今はそれは置いておこう。
とにかく、そうでないと俺は普通にただティナ以外の女の子にうつつを抜かしていたことになる。どう考えても最低だ。
たしかに俺とティナはまだ恋人という関係には至ってないけど、近いうちに結婚はするだろう。
そうなると、他の女の子にうつつを抜かしていたという事実は夫婦喧嘩の種になってしまう恐れがある。
だからフィオーレさんの正体は絶対にソフィア様じゃないとだめだ。
そこまで考えると目の前に意識を戻した。未だにフィオーレさん(仮)はこちらを見据えて微笑んでいる。
俺は希望を胸に抱きながら問いかけてみた。
「あの~……変なこと聞きますけど。あなたはソフィア様ですよね?」
するとフィオーレ(仮)さんは一瞬きょとんとした表情をした後、口元に手を添えて上品に笑いながら言う。
「ふふっ、お上手ですね。お食事にでも誘ってくださっているのですか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんすけど」
やばい顔が熱い。これ絶対赤くなってるわ。
違う違うんだティナ……これは浮気とかじゃない、俺が好きなのはお前だけなんだ!!!! まだ付き合ってすらないけど。
さすがに女神の美貌にうろたえるのは男としてしょうがないと思うんだよ。
とにかくああいう風に返されるとこれ以上ソフィア様かどうかを確認するわけにもいかない。
まあ少ないけど周りに人間もいるし、今は気を使っているのかもしれないな。
あれこれ考えて黙り込んでいると、飲み物の注文を終えたフィオーレさんが話しかけてきた。
「ここへはどんな用事でいらっしゃったのですか?」
「伝説の武器を入手しに」
まあティナは王国から勇者として認められているわけだし、この辺は隠さなくても大丈夫だろう。
フィオーレさんは驚いたような表情をした。
「えっ、ということはあなたは勇者様のお仲間……」
「そういうことです」
するとフィオーレさんはぽんと手を合わせて花が咲くような笑顔を見せる。
「わあ、私勇者様に憧れているんです! もしよろしければお会いして握手などさせていただきたいのですが」
「えっ、それはどうだろうな」
フィオーレさんの正体がどうであろうと、ティナからしたら初対面の女性と会うことになるわけだからな。
ティナは人見知りをするタイプの子じゃないけど、いくらか気を使わせてしまうことになると思う。
どうしたものかと悩んでいるとフィオーレさんは俺の手をそっと両手で包み込むように握り、上目遣いでこちらを見ながら、
「だめ……ですか?」
そんな風に言い出した。
これを断れるやつはそうそういない。俺が女でも断れないんじゃなかろうか。
顔が燃え上がったように熱くなるのを感じながら言う。
「わ、わかりました。じゃあこれ、その、飲み終わったら案内するんで」
「ありがとうございます!」
そっと手を離されて、少しばかりの安堵のため息をついた。
それから注文した飲み物を飲みつつの雑談が続いていく。
フィオーレさんがこちらを覗き込むように、少し首を傾げて聞いてくる。
「すいません、まだあなたの名前をお伺いしていませんでしたね」
「そういえばそうですね。ジンです」
「ジンさん、ですか。いいお名前ですね」
「初めて言われました」
シンプルで覚えやすいってのは自分でもいいなとは思ってる。
おかげで天界では名前を忘れられた経験がほとんどない。
名前について掘り下げるようなことも特にないので話題を変えてみる。
「フィオーレさんはここに何をしに来たんですか?」
「観光です」
「女性一人で、ですか?」
「ええ。こう見えても結構魔法を使えるんですよ」
そう言ってにっこりと微笑むフィオーレさん。
エアみたいに設定激甘かと思って少し意地悪く聞いたつもりだったけど、やっぱりしっかりしてるな。
しっかりというか、言い訳しやすいように無難な感じに作っている。
そしてさっきから笑う仕草とか、飲み物を飲むときの一挙一動とか全てがさまになっていていちいち目を惹かれてしまう。
いかん、俺にとってティナが全てじゃなかったのか?
もうこれは相手がどうとか言う問題じゃない。俺のティナに対する気持ちがまだまだ甘いだけなんだ。
集中しろ。集中するんだ。俺は瞑目する。
ティナが一人、ティナが二人、ティナが三人、ティナが四人、五人、六人、七人八人九人十人……。
あっ、ティナ十人との結婚ってティナは許してくれるんだろうか。
でもその場合、全部のティナに許可を貰わなくちゃだめなのか? だめだ頭がこんがらがってきた。
そこでフィオーレさんの声で意識を現実に引き戻される。
「御気分が優れないのですか?」
見れば、少し心配そうな表情でこちらを見つめていた。
「ああ、すいません。少し自分自身と戦ってて」
「自分自身と……何だかかっこいいですね。勝てそうですか?」
「余裕ですね」
「余裕ですか。ふふっ、ジンさんは楽しい方ですね」
また上品に笑うフィオーレさんを見て自分自身との戦いは佳境を迎える。
ううっ、この人本当に何が狙いなんだ。もう逃げたい。
レイナルドの技を見たティナが興奮している。ジョゼフィーヌが粉々になったことはあまり気にならないらしい。
くそっ、本当なら俺だってあれくらい余裕なのにちくしょう。
レイナルドは柔らかく微笑むと、ティナをたしなめるように口を開く。
「今のは槍専用のスキルなのでお教えすることはできませんが、剣でも使用できそうなスキルや戦闘技術を伝授いたします」
「是非お願いします!」
「ではこちらへ」
ティナはレイナルドの案内で別の人形の前へと移動する。
それから戦闘技術に関するレッスンが始まった。
最初の内は俺もこれを真面目に聞いていたんだけど、途中で眠くなって来てしまったので適当な理由をつけて離脱した。
まあ、街中だしあのおっさん強いし、ティナを一人で置いて来ても問題はないだろうという判断だ。
そんなわけで一人でフォースの街をぶらつくことにしたものの、どこにいけばいいかはてんで見当がつかない。
すぐに戻れるよう、おっさんの家からは近場がいいかな。
飯もさっき食ったばっかりだし装備屋でも回って時間をつぶすか、とか考えながら歩いていると、ある店の前を通りかかった。
エルフの里の建物はどれも似たような外観をしているのでわかりづらいけど、扉にかかっている看板からして喫茶店だ。
軽く茶でも飲んで時間を潰すかと思い立ち、すぐに店に入った。軽快なベルの音に招かれながら店内を練り歩いていく。
時間のせいもあってか、客はまばらだ。
一つ足を踏み出す度に床の軋む音が響き、香ばしい紅茶の香りが鼻腔に届く。
適当に空いているカウンター席に腰かけて飲み物を注文した。
ミツメは店ごとに趣向を凝らしていてすごく賑やかなことになっていたけど、この喫茶店のそれは至ってシンプルだ。
自然との調和を目指すのはいいけど、もうちょっと凝ってもいいんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、また一つ入り口でベルの音が鳴った。
俺は店内を見渡しつつも、耳でこちらに近付いてくるその足音をとらえている。
やがてその足音は椅子を引く音に変わった。どうやらカウンター席に座る俺の横に陣取ったらしい。
他に空いている席だってあるのに、とちらと入店したばかりの客の方を振り向くと目があってしまった。
絹糸のように流れる金の髪が店内のわずかな灯りを反射して輝き、優しそうな青の双眸はこちらを穏やかに見つめている。
口元に微笑みをたたえたそのあどけない容貌は、ティナがいなければ一目惚れしてしまいそうな程の魅力に溢れていた。
っていうかこの人って……。
目が合ったまま言葉を失っていると、その小振りな薄桃色の唇がゆっくりと開かれる。
「こんにちは。お一人ですか?」
「あ、はい……えっと、失礼ですけどお名前は」
「フィオーレと申します」
フィオーレ……ソフィア様じゃないのか。
いやでもこれどう見てもソフィア様だよな?
ソフィア様の姿には三通りある。
一つは手のひらサイズの妖精姿。
これはギルドのシンボルマークになっているくらいだから、冒険者を中心にこの世界では広く知られている。
あとは女神の姿と人間の姿。
この二つに関して、見た目に大きな違いはない。じゃあ何が違うのかというと、オーラが出ているかどうかだ。
言葉じゃうまく説明できないけど、女神、つまり本来の姿のソフィア様は一目見ただけで神とわかってしまうオーラみたいなものが出ている。
理屈じゃない。それを見ると言うか浴びる? と本能が理解するのだ。目の前にいるのが神であると。
でも今はその感覚がない。だから少なくとも女神姿じゃないんだろうけど、それにしては見た目が瓜二つだ。
こんな綺麗な人間がティナ以外にそうそういるわけがない。いや、でもティナは大天使ティナエルの下界での姿だからな。
ティナの正体が大天使なら、ティナ並みに可愛い目の前のこの人は少なくとも大天使以上じゃないといけない。
大天使以上って色々とどういうことだよ。まあ今はそれは置いておこう。
とにかく、そうでないと俺は普通にただティナ以外の女の子にうつつを抜かしていたことになる。どう考えても最低だ。
たしかに俺とティナはまだ恋人という関係には至ってないけど、近いうちに結婚はするだろう。
そうなると、他の女の子にうつつを抜かしていたという事実は夫婦喧嘩の種になってしまう恐れがある。
だからフィオーレさんの正体は絶対にソフィア様じゃないとだめだ。
そこまで考えると目の前に意識を戻した。未だにフィオーレさん(仮)はこちらを見据えて微笑んでいる。
俺は希望を胸に抱きながら問いかけてみた。
「あの~……変なこと聞きますけど。あなたはソフィア様ですよね?」
するとフィオーレ(仮)さんは一瞬きょとんとした表情をした後、口元に手を添えて上品に笑いながら言う。
「ふふっ、お上手ですね。お食事にでも誘ってくださっているのですか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんすけど」
やばい顔が熱い。これ絶対赤くなってるわ。
違う違うんだティナ……これは浮気とかじゃない、俺が好きなのはお前だけなんだ!!!! まだ付き合ってすらないけど。
さすがに女神の美貌にうろたえるのは男としてしょうがないと思うんだよ。
とにかくああいう風に返されるとこれ以上ソフィア様かどうかを確認するわけにもいかない。
まあ少ないけど周りに人間もいるし、今は気を使っているのかもしれないな。
あれこれ考えて黙り込んでいると、飲み物の注文を終えたフィオーレさんが話しかけてきた。
「ここへはどんな用事でいらっしゃったのですか?」
「伝説の武器を入手しに」
まあティナは王国から勇者として認められているわけだし、この辺は隠さなくても大丈夫だろう。
フィオーレさんは驚いたような表情をした。
「えっ、ということはあなたは勇者様のお仲間……」
「そういうことです」
するとフィオーレさんはぽんと手を合わせて花が咲くような笑顔を見せる。
「わあ、私勇者様に憧れているんです! もしよろしければお会いして握手などさせていただきたいのですが」
「えっ、それはどうだろうな」
フィオーレさんの正体がどうであろうと、ティナからしたら初対面の女性と会うことになるわけだからな。
ティナは人見知りをするタイプの子じゃないけど、いくらか気を使わせてしまうことになると思う。
どうしたものかと悩んでいるとフィオーレさんは俺の手をそっと両手で包み込むように握り、上目遣いでこちらを見ながら、
「だめ……ですか?」
そんな風に言い出した。
これを断れるやつはそうそういない。俺が女でも断れないんじゃなかろうか。
顔が燃え上がったように熱くなるのを感じながら言う。
「わ、わかりました。じゃあこれ、その、飲み終わったら案内するんで」
「ありがとうございます!」
そっと手を離されて、少しばかりの安堵のため息をついた。
それから注文した飲み物を飲みつつの雑談が続いていく。
フィオーレさんがこちらを覗き込むように、少し首を傾げて聞いてくる。
「すいません、まだあなたの名前をお伺いしていませんでしたね」
「そういえばそうですね。ジンです」
「ジンさん、ですか。いいお名前ですね」
「初めて言われました」
シンプルで覚えやすいってのは自分でもいいなとは思ってる。
おかげで天界では名前を忘れられた経験がほとんどない。
名前について掘り下げるようなことも特にないので話題を変えてみる。
「フィオーレさんはここに何をしに来たんですか?」
「観光です」
「女性一人で、ですか?」
「ええ。こう見えても結構魔法を使えるんですよ」
そう言ってにっこりと微笑むフィオーレさん。
エアみたいに設定激甘かと思って少し意地悪く聞いたつもりだったけど、やっぱりしっかりしてるな。
しっかりというか、言い訳しやすいように無難な感じに作っている。
そしてさっきから笑う仕草とか、飲み物を飲むときの一挙一動とか全てがさまになっていていちいち目を惹かれてしまう。
いかん、俺にとってティナが全てじゃなかったのか?
もうこれは相手がどうとか言う問題じゃない。俺のティナに対する気持ちがまだまだ甘いだけなんだ。
集中しろ。集中するんだ。俺は瞑目する。
ティナが一人、ティナが二人、ティナが三人、ティナが四人、五人、六人、七人八人九人十人……。
あっ、ティナ十人との結婚ってティナは許してくれるんだろうか。
でもその場合、全部のティナに許可を貰わなくちゃだめなのか? だめだ頭がこんがらがってきた。
そこでフィオーレさんの声で意識を現実に引き戻される。
「御気分が優れないのですか?」
見れば、少し心配そうな表情でこちらを見つめていた。
「ああ、すいません。少し自分自身と戦ってて」
「自分自身と……何だかかっこいいですね。勝てそうですか?」
「余裕ですね」
「余裕ですか。ふふっ、ジンさんは楽しい方ですね」
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ううっ、この人本当に何が狙いなんだ。もう逃げたい。
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