女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

文字の大きさ
82 / 207
伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮

天敵との遭遇

しおりを挟む
「さすが師匠! 見事なお手並みでした!」
「恐縮です」

 すっかり俺を置いてけぼりにして前方で盛り上がる二人。
 ティナは盛り上がりが一段落すると、こちらをちらっと見て口を開いた。

「あれっ? ジン君いたんだ」
「おう」

 ティナの機嫌直らねえなぁ、どうしたらいいんだ。もうクッキー作戦は使えないみたいだし何か考えないとな。
 そう思いながら歩いていると、前方の二人が何かを発見したらしく立ち止まる。

 見れば、またも守護者が一体俺たちの行く手を阻んでいた。

「師匠! 次は私にお任せください」
「あまり無理はなさらぬよう」
「はいっ」

 レイナルドの助言を受けながら、はがねのつるぎとはがねのたてを構えてティナが守護者の前に躍り出る。
 ティナは先手を打って駆け出すと、一気に敵との距離を詰めた。

「やあっ!」

 相手からの攻撃が繰り出されるより早く、はがねのつるぎが袈裟斬りの軌道を描いて襲いかかる。
 さすがに一撃とはいかないものの守護者は怯んで一歩下がった。その隙を逃さずティナは更にまた一歩詰めて剣を振り下ろす。

「ヴオオォォ……」

 戦闘はティナの勝利に終わり、守護者は跡形もなく消え去っていく。
 くるりと俺たちの方を振り向くと感想を求めてせがむように聞いてくる。

「どうでした!?」
「素晴らしいお手並みです」「かっこよかったぜ!」
「ありがとうございます! 師匠」
「…………」

 ちょっと根に持ちすぎじゃない? もう無視じゃんこれ。
 いやいや待て待てむかついたらだめだ。そんなことじゃ仲直りできねえ。
 俺がんば! と心の中で自分に声援を送りながら再び歩き出す。

 隊列は変わらずレイナルドとティナが横並びに歩き、俺がその後ろからついていく形だ。

 事前にレイナルドから聞いていた通り、迷宮内はかなり入り組んでいる。
 十字路や丁字路を通る度に脇へと視線をやると、別の通路の先でほのかに灯る松明が不思議で尋ねてみた。

「なあレイナルド、俺たちが灯してないはずなのに勝手に火がついてる松明はなんなんだ?」
「あれは守護者がつけているものですな」
「守護者が? そんなこともあんのか」
「はい。どういう原理かはわかりませんが、そういう慣習がやつらにはあるようですな」

 そう言われてみれば最初の部屋にも始めから松明に火がついてたな。何も疑問に思わなかったけど、あれも守護者がつけたやつってことか。

 まあこのダンジョンや守護者はどう考えても作るのにゼウスが絡んでるだろうからな……。勇者がダンジョンを歩きやすいよう、守護者にそういう機能でもつけたのかもしれない。
 何にせよ俺たちには都合がいいので特に不満はなかった。

 それよりも当面の問題はティナだ。どうにかしてティナの機嫌を直さないと結婚どころじゃなくなってしまう。
 今は三人の間に会話はなく、耳には石の床を踏む硬質な足音だけが響く。

 さて、どうしたものかと考えているとまた十字路に差し掛かった。
 正しい順路は正面らしくレイナルドとティナはまっすぐに歩いている。
 ふと右側に視線をやると、少し離れたところに部屋のような空間があるのが見えた。そこであることを閃く。

 ダンジョンには宝箱というものがある。
 今回は伝説の武器入手が目的だからそんな話は出なかったけど、本来宝箱と言えば冒険者がダンジョンに潜る際の楽しみの一つになっているらしい。

 もし宝箱を発見していいアイテムを入手できたら。
 それをティナにプレゼントすれば、機嫌を直してくれるどころかまた一つ関係が進展するかもしれない。
 た、例えばだけど、発見したのがゆ、指輪だったら!

(ティナ、これ。お前のために見つけてきたんだ。結婚しよう)
(ジン君……子供は10人くらいでいいかな……)

 うん、仲直りどころか一気に家庭を築けるかもしれないな。
 まだフォースの街にソフィア様がいれば、ついでに何か間を取り持つ人みたいなのやってもらってそのまま式なんてあげれちゃう。
 あれ、でもトチュウノ町で指輪買ってあげたから何かありがたみ薄いかな?

 いやいや細かいことを気にしてる場合じゃない。ティナにばれないように宝箱探索だ。贈り物は突然した方が効果が高いって聞くしな。
 ちらと前を見ると、二人は黙々と正面方向に向かって歩いている。

 よし今の内にこそっと行ってこそっと帰ってこよう。ここから見える部屋に行って戻るくらいなら道に迷うこともないだろうしな。
 一番の心配はレイナルドの言っていた罠ってやつだけど、ダメージ系のトラップならまあ死ぬなんてことはないはず。

 身体を正面に向けたまま少しずつ脇の通路にそれて行き、二人の様子を窺う。
 すると二人が完全に前を向く。その隙を見て一気に横の通路に入った。
 案の定床や壁から槍が出て来たけど、その罠が発動するよりも俺がそこを通過する方が早い。

 ダメージすら入ることもなく、あっという間に部屋が目前に迫る。
 と、その時だった。
 右足を地につけた瞬間、足元でかちりと何かを踏んだような音がした。

 すると、ぱかりと絵に描いたように、下に向かって両開きで床が二つに割れる。
 改めて思った。
 本当に驚いた時、精霊も恐らく人間も。声なんて出ないんだなと。

 一瞬の浮遊感を味わった後、即座に重力に囚われて身体が落下していく。

「…………っ!」

 距離はそんなに長くなかった。数秒もすると下の階に到着。
 思いっきり尻を打ち付けたものの特に怪我もなく、すぐに立ち上がって周囲を見渡してみる。

 上の階と何も変わらない石造りの迷宮だ。
 さっき聞いた通り守護者が点けたのか、ところどころに火の灯った松明がぼんやりと迷宮内を照らし出していた。

 見上げれば、俺が落ちて来た穴はすでに床が閉まることによって塞がれている。
 はあ、やっちまった。まさか迷宮に地下があって、そこに通じる落とし穴も罠として存在しているなんてなあ。

 しかもこの地下は落とし穴用のおまけなんかじゃなく、かなりしっかり作られているみたいだ。
 俺が落ちた場所は部屋のような四角い空間になっていて、前後を貫くように一本の通路が通っている。
 その先もまた上の階と同じように丁字路になったり十字路になったりしているみたいで、かなり複雑になっているらしい。

 さてどうするか。
 上の階に戻ること自体はまあ出来ないこともない。俺が落ちてきた床をぶっ壊してジャンプすればいいだけの話だ。俺の足ならぎりぎり届く……か?

 でも例えば俺がいなくなったことに気付いて戻って来てくれたティナかレイナルドに、偶然俺が床をぶち破って戻った瞬間を見られると面倒だ。
 それに、このまま下の階を歩いていれば宝箱なんかもあるかもしれない。ティナやレイナルドに気を遣うことなく堂々と探索が出来る。

 よし、このまま下の階を歩いていってみよう、そう考えた時だった。
 背後で突然魔法の気配がした。……魔法の気配?
 振り返ると、そこには人が二人いた。いや、こいつらは人じゃなくまず間違いなく精霊だろう。

 一人は見たことのないやつ。そしてもう一人は。俺はそいつを見た瞬間、背中の大剣に手をかける。
 しかしその時、すでに目の前に標的はいない。

「ジイイイイイイィィィィィィィン!!!!」

 背後から抱きつかれて頬ずりをされる。
 ぶわっと鳥肌が立ち、振り向きざまに剣を振った。

「『雷刃剣』!!!!」

 大剣は空を切った。ばちばちと雷が宙で弾けて音を立てている。
 今度は先手を打って振り向きざまにスキルをかます。

「『雷刃剣』!!!!」

 だけど、またも俺の剣は空を切った。
 するとまたも背後から抱きつかれて頬ずりをされてしまう。

「会いたかったよおおおおぉぉぉぉ!!!!」
「『雷刃剣』!!!!」

 くっそ当たんねえ。気づけばやつは俺の正面、少し離れた位置にいた。
 俺はそいつを睨みつけながら声を張り上げる。

「こんなとこまで何しにきたんだよ!! キース!!」

 すらっと伸びた長い背に、髭がなければ男であることを疑う中性的な顔が乗っている。身には精霊部隊の正装であるややベージュがかったマントを纏っていた。
 キースはちっちっと人差し指を左右に振ってから口を開く。

「何って? 決まってるじゃないか、お前に会いに来たんだよ」
「こんなとこまで来んな! オブザーバーズの隊員まで引き連れて来やがって!」
「いい加減にジン成分が切れていたところだったんだ、しょうがないだろう。それといつも言っているじゃないか。キースじゃなくて、お兄ちゃんと呼びなさい」

 「試練の迷宮」地下で遭遇したのは、認めたくはないけど俺の実兄で精霊部隊ダンサーズの隊長、「嫉妬」のキースと呼ばれる男だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

処理中です...