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世界の真実編 後編 突撃!魔王城
門番兄弟、ダイダロス&バルバロス
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「ティナ、おやつ食うか?」
「こんなところで食べるわけないじゃん」
取り付く島もないティナ。でもこんなことで俺は諦めない。
再び廊下を進みながらティナのご機嫌を取ろうとしていた。
相も変わらず薄暗い廊下に四人分の硬い足音だけが反響している。さっきまでは何とも思わなかったこの不気味な静けさも、今は俺の心を不安にする一因になってしまっていた。
モンスターの下着を見ただけなのにこの仕打ち。もしティナが怒ったままで魔王を倒してしまったら告白どころじゃなくなる。何としても最後の部屋にたどり着く前に仲直りしないと……。
助けを求めて後ろを振り返るも、ラッドは静かに肩をすくめ、ロザリアは苦笑するだけだった。私たちではどうにもなりませんわ、ってところか。
でもどこかで必ず名誉挽回の機会があるはずだと、そう信じて今はその時が来るのを待つしかない。
やがて目当ての階段を見つけて降りていく。薄暗いので、ティナを先頭にしてゆっくりと慎重に。
「ティナ、足元暗いから気をつけろよ」
「…………」
返事はなかった。
三階から二階へとたどり着くと今度は魔王城の一階や二階の中央を走る一番大きな通路を目指す。これで本来、勇者パーティーが正面から乗り込んだ場合に通るはずだった一階部分を丸々短縮出来たことになる。
ていうか、本当にモンスターと全然遭遇しないんだけど大丈夫なのか? 俺たちが屋上から来ると思ってなかったから、今まで通ってきた場所には配置されてなかったとか、そういうことなんだろうか。
もしそうだとしたら大きな通路はモンスターでごった返してるだろうし、やっぱり油断は禁物だ。そう思い、その通路へと繋がる廊下に差し掛かった時にティナに声をかけた。
「モンスターが一杯いるかもしれないから警戒していこうぜ」
「わかってる」
短いながらも返事をしてくれた。よし、いいぞ俺。この調子だ。
やがて通路の向こうにある開けた空間がどんどん近付いてきた。地図通りならここには一階に繋がる階段があって、正面から大きな通路を進んできた場合のルートと合流するはずだ。俺たちはここから魔王のいる部屋へと向かう。
もう階段のある広間は目の前というところで、ティナがこちらを振り返った。
「じゃ、いくよっ」
全員でうなずいて返事の代わりにする。そして俺たちは意を決して通路に飛び出した。するとそこには絨毯が敷かれていて、その上にいくつかのテーブルと。
「もうこの仕事やってられないよ、兄ちゃん」
「言うな弟よ。時には辛抱強く待つのも仕事の内だ」
「辛抱強く待ったけど全然来ないじゃん。勇者パーティー」
「まあたしかにちょっと遅すぎるというのはあるな。おかげで魔王様に報告しに行こうとして突然どこからか沸いて出たこのテーブルとお茶のセットでくつろいでしまっている」
全身水色の肌をした一つ目の巨人が二体、お茶をたしなんでいた。
大きさが合わないおかげで椅子には座らず直接絨毯に腰をおろしていて、テーブルの上にある紅茶をカップごと指でつまんで持ち上げて飲んでいる。ていうか何でこんなところにテーブルとお茶があるんだよ。
どこから文句をつけたらいいかわからずに、俺たちは呆然としたままその巨人たちを眺めてしまっていた。
「さってと、そろそろ入り口に戻ろっか」
「そうだな。ぼちぼち来てくれればよいのだが……」
と、そう言いながら兄らしいモンスターが立ってこちらに振り向く。
「「あっ」」
全員の声がかぶった。俺たちが慌てて武器を構えなおすと兄と呼ばれていた方のモンスターも、その巨大に見合った大きさの棍棒を構えてから低く唸るような声音で口上を述べる。
「くっくっく……よく来たな人間たちよ。我らこそは魔王城の門番を司るサイクロプス兄弟、ダイダロスにバルバロス……ここを通りたくば我らを倒すことだな! ワッハッハッハ!!!!」
「ダイダロス兄ちゃん急にどうしたの? それさっき考えた台詞だよね?」
後ろから出て来た弟、バルバロスがそう言いながら横に並ぶ。ちなみに当然ながらここは門じゃない。
なるほど、こいつら入り口で待ち構える役だったのか。何か悪いことしたな。
こちらを向いているダイダロスを不思議に思い、視線を追いかけて俺たちに気付いたバルバロスが意外そうな表情で声を発する。
「えっ、もしかしてこいつらが勇者パーティーなの? すごく小っちゃいじゃん」
「気持ちはわかるが、人間は大体このようなものだぞ」
「こんなの岩でも投げたら潰れちゃうよ」
「そうだな。だが油断をしてはならないぞ。弟よ」
「へーきへーき。兄ちゃん、僕に任せて!」
「おい」
兄の制止を振り切ってバルバロスが一歩前に出てきた。俺たちの先頭にいるティナと一対一で対峙するかのような格好になる。
そして、手に持った巨大な棍棒の先でティナを差しながら言った。
「やい、人間! 僕はサイクロプス一族のバルバロスだ! 今ならまだ謝れば許してやるぞ!」
そう言いながらバルバロスは棍棒を一気に振り下ろす。明らかに威嚇の為に振るわれたものなので、それはバルバロスのすぐ近くの床にめり込んだ。
強烈な振動と共に視界が一瞬だけ揺れて、天井からは石や砂が降り注ぐ。
「どうだ怖いだろ!」
得意げなバルバロスだけど、俺たちも今更こんなものでびびったりはしない。
一番震源地に近かったティナも微動だにせず、前を向いてしっかりと「しん・ゆうしゃのつるぎ」を構えたままだ。
「あーやべーめっちゃ怖い」
「ふっ、まるで揺りかごの中にでもいるようで、眠ってしまうところだったね」
俺が適当にのる一方で、ラッドが敵を煽り出した。そんな時、後ろからロザリアの声が届く。
「ラッド様は揺りかごの揺れも大層怖がられて、ベッドでないと寝付いてくださらなかったと私の母が言っていたのを記憶していますわ」
「今その話はやめてくれないかい」
どうやらラッドが小さい頃は今にも増して臆病だったらしいことが発覚したけど今はどうでもいい。
俺たちの反応が不満だったらしく、バルバロスは不機嫌になった。
「何だお前ら! もう怒ったぞ、くらえ!」
今度はしっかりとティナを捉えて、棍棒が振り下ろされた。ティナはそれを「しん・ゆうしゃのつるぎ」で受け止める。
不釣り合いな大きさの両者からして悲惨な未来を想像しがちだけど、何と棍棒はティナの頭上でしっかりと止まっていた。バルバロスの顔が驚愕の色に染まる。
間髪入れずにティナは棍棒を少しだけ上に押し返すと、そのまま武器を逆袈裟斬りの軌道で振り上げた。バルバロスの手元、柄のやや上の辺りを通過した剣は見事に棍棒を両断する。
自分の手の中に収まる大きさになってしまった棍棒を見ながら、バルバロスが悲鳴をあげた。
「うわーっ! キャサリンがくれた棍棒が! なんてことするんだーっ!」
「弟よ。お前キャサリンのことが好きだったのか」
「えっ!? い、いや別にそんなことないけど……」
問われ、目に見えてうろたえるバルバロス。どうやらキャサリンのことが好きらしい。誰だよキャサリン。
でも、次にダイダロスの口から放たれたのは衝撃的な一言だった。
「キャサリンはな、実は我と付き合っているのだ」
「えっ」
場に一瞬の静寂が訪れる。これまで通ってきた場所と同じようにこの階にも物音はほとんど存在せず、生命の息吹を感じることは難しかった。
ダイダロスは棍棒を構えていた腕をだらりと下げて肩を落とし、申し訳なさそうな表情になってその静けさを破る。
「すまなかった。そうと知っていれば早く教えていたのだが……」
「べべっ、別に何も言ってないじゃん! ていうか僕キャサリンのことなんてどうでもいいし!?」
バルバロスは改めて俺たちの方へと向き直り、誰にともなく指を差す。
「おい、お前たちのせいで恥かいただろ! もう許さないぞ! 僕の必殺技で一気に決着をつけてやる!」
そう言ってバルバロスは右足を高く上げた。
「おい待て弟よ! それは……!」
弟を止めようと右腕を伸ばしたダイダロスの言葉もあって嫌な予感がした俺は、前に出てティナを抱きかかえ、後ろに飛んで地面に転がった。
そしてバルバロスがスキルの名前を口にする。
「『サイクロプス・スタンプ』!」
轟音と共に立っていられない程の震動が辺り一帯を支配し、バルバロスが勢いよく足を踏み込んだ場所には巨大な穴が空く。
「弟よおおぉぉ~…………」
「ごめん兄ちゃああぁぁ~ん…………」
そして、門番兄弟はその穴から下に落ちていった。
「何やってんだあいつら……」
呆気に取られながらそうつぶやいたものの、フェニックスの期待の眼差しでティナを抱きかかえた状態だったことを思い出す。顔が熱くなるのを感じながら慌てて立ち上がって服の土を払い、ティナに手を差し伸べた。
「ごめんなティナ」
「あ、ありがと……」
ティナは頬を朱に染めながら俺の手を取って立ち上がった。
また変態とか死ねとか言われるかと思ってたから、これは素直に嬉しい。もう機嫌はなおったんだろうか。
でも、ティナは立ち上がるなり俺と目を合わせることもなく、すたこらと魔王のいるらしい部屋に向かって歩き出してしまった。
『ナイスイチャイチャ……』
フェニックスがそうつぶやいてティナの後を追うと、ラッドとロザリアもにやにやにこにこと俺を見ながらそれに続いた。後には俺だけが残される。
よくわからないけどティナはもう怒ってないと思っていいのだろう。
大きく地面を穿つ穴から下の階を覗き込んでみると、そこには仲良く大の字になって気絶するサイクロプス兄弟の姿がある。俺は一つため息をついてそれらから視線を外すと、のんびりと仲間たちの後を追った。
「こんなところで食べるわけないじゃん」
取り付く島もないティナ。でもこんなことで俺は諦めない。
再び廊下を進みながらティナのご機嫌を取ろうとしていた。
相も変わらず薄暗い廊下に四人分の硬い足音だけが反響している。さっきまでは何とも思わなかったこの不気味な静けさも、今は俺の心を不安にする一因になってしまっていた。
モンスターの下着を見ただけなのにこの仕打ち。もしティナが怒ったままで魔王を倒してしまったら告白どころじゃなくなる。何としても最後の部屋にたどり着く前に仲直りしないと……。
助けを求めて後ろを振り返るも、ラッドは静かに肩をすくめ、ロザリアは苦笑するだけだった。私たちではどうにもなりませんわ、ってところか。
でもどこかで必ず名誉挽回の機会があるはずだと、そう信じて今はその時が来るのを待つしかない。
やがて目当ての階段を見つけて降りていく。薄暗いので、ティナを先頭にしてゆっくりと慎重に。
「ティナ、足元暗いから気をつけろよ」
「…………」
返事はなかった。
三階から二階へとたどり着くと今度は魔王城の一階や二階の中央を走る一番大きな通路を目指す。これで本来、勇者パーティーが正面から乗り込んだ場合に通るはずだった一階部分を丸々短縮出来たことになる。
ていうか、本当にモンスターと全然遭遇しないんだけど大丈夫なのか? 俺たちが屋上から来ると思ってなかったから、今まで通ってきた場所には配置されてなかったとか、そういうことなんだろうか。
もしそうだとしたら大きな通路はモンスターでごった返してるだろうし、やっぱり油断は禁物だ。そう思い、その通路へと繋がる廊下に差し掛かった時にティナに声をかけた。
「モンスターが一杯いるかもしれないから警戒していこうぜ」
「わかってる」
短いながらも返事をしてくれた。よし、いいぞ俺。この調子だ。
やがて通路の向こうにある開けた空間がどんどん近付いてきた。地図通りならここには一階に繋がる階段があって、正面から大きな通路を進んできた場合のルートと合流するはずだ。俺たちはここから魔王のいる部屋へと向かう。
もう階段のある広間は目の前というところで、ティナがこちらを振り返った。
「じゃ、いくよっ」
全員でうなずいて返事の代わりにする。そして俺たちは意を決して通路に飛び出した。するとそこには絨毯が敷かれていて、その上にいくつかのテーブルと。
「もうこの仕事やってられないよ、兄ちゃん」
「言うな弟よ。時には辛抱強く待つのも仕事の内だ」
「辛抱強く待ったけど全然来ないじゃん。勇者パーティー」
「まあたしかにちょっと遅すぎるというのはあるな。おかげで魔王様に報告しに行こうとして突然どこからか沸いて出たこのテーブルとお茶のセットでくつろいでしまっている」
全身水色の肌をした一つ目の巨人が二体、お茶をたしなんでいた。
大きさが合わないおかげで椅子には座らず直接絨毯に腰をおろしていて、テーブルの上にある紅茶をカップごと指でつまんで持ち上げて飲んでいる。ていうか何でこんなところにテーブルとお茶があるんだよ。
どこから文句をつけたらいいかわからずに、俺たちは呆然としたままその巨人たちを眺めてしまっていた。
「さってと、そろそろ入り口に戻ろっか」
「そうだな。ぼちぼち来てくれればよいのだが……」
と、そう言いながら兄らしいモンスターが立ってこちらに振り向く。
「「あっ」」
全員の声がかぶった。俺たちが慌てて武器を構えなおすと兄と呼ばれていた方のモンスターも、その巨大に見合った大きさの棍棒を構えてから低く唸るような声音で口上を述べる。
「くっくっく……よく来たな人間たちよ。我らこそは魔王城の門番を司るサイクロプス兄弟、ダイダロスにバルバロス……ここを通りたくば我らを倒すことだな! ワッハッハッハ!!!!」
「ダイダロス兄ちゃん急にどうしたの? それさっき考えた台詞だよね?」
後ろから出て来た弟、バルバロスがそう言いながら横に並ぶ。ちなみに当然ながらここは門じゃない。
なるほど、こいつら入り口で待ち構える役だったのか。何か悪いことしたな。
こちらを向いているダイダロスを不思議に思い、視線を追いかけて俺たちに気付いたバルバロスが意外そうな表情で声を発する。
「えっ、もしかしてこいつらが勇者パーティーなの? すごく小っちゃいじゃん」
「気持ちはわかるが、人間は大体このようなものだぞ」
「こんなの岩でも投げたら潰れちゃうよ」
「そうだな。だが油断をしてはならないぞ。弟よ」
「へーきへーき。兄ちゃん、僕に任せて!」
「おい」
兄の制止を振り切ってバルバロスが一歩前に出てきた。俺たちの先頭にいるティナと一対一で対峙するかのような格好になる。
そして、手に持った巨大な棍棒の先でティナを差しながら言った。
「やい、人間! 僕はサイクロプス一族のバルバロスだ! 今ならまだ謝れば許してやるぞ!」
そう言いながらバルバロスは棍棒を一気に振り下ろす。明らかに威嚇の為に振るわれたものなので、それはバルバロスのすぐ近くの床にめり込んだ。
強烈な振動と共に視界が一瞬だけ揺れて、天井からは石や砂が降り注ぐ。
「どうだ怖いだろ!」
得意げなバルバロスだけど、俺たちも今更こんなものでびびったりはしない。
一番震源地に近かったティナも微動だにせず、前を向いてしっかりと「しん・ゆうしゃのつるぎ」を構えたままだ。
「あーやべーめっちゃ怖い」
「ふっ、まるで揺りかごの中にでもいるようで、眠ってしまうところだったね」
俺が適当にのる一方で、ラッドが敵を煽り出した。そんな時、後ろからロザリアの声が届く。
「ラッド様は揺りかごの揺れも大層怖がられて、ベッドでないと寝付いてくださらなかったと私の母が言っていたのを記憶していますわ」
「今その話はやめてくれないかい」
どうやらラッドが小さい頃は今にも増して臆病だったらしいことが発覚したけど今はどうでもいい。
俺たちの反応が不満だったらしく、バルバロスは不機嫌になった。
「何だお前ら! もう怒ったぞ、くらえ!」
今度はしっかりとティナを捉えて、棍棒が振り下ろされた。ティナはそれを「しん・ゆうしゃのつるぎ」で受け止める。
不釣り合いな大きさの両者からして悲惨な未来を想像しがちだけど、何と棍棒はティナの頭上でしっかりと止まっていた。バルバロスの顔が驚愕の色に染まる。
間髪入れずにティナは棍棒を少しだけ上に押し返すと、そのまま武器を逆袈裟斬りの軌道で振り上げた。バルバロスの手元、柄のやや上の辺りを通過した剣は見事に棍棒を両断する。
自分の手の中に収まる大きさになってしまった棍棒を見ながら、バルバロスが悲鳴をあげた。
「うわーっ! キャサリンがくれた棍棒が! なんてことするんだーっ!」
「弟よ。お前キャサリンのことが好きだったのか」
「えっ!? い、いや別にそんなことないけど……」
問われ、目に見えてうろたえるバルバロス。どうやらキャサリンのことが好きらしい。誰だよキャサリン。
でも、次にダイダロスの口から放たれたのは衝撃的な一言だった。
「キャサリンはな、実は我と付き合っているのだ」
「えっ」
場に一瞬の静寂が訪れる。これまで通ってきた場所と同じようにこの階にも物音はほとんど存在せず、生命の息吹を感じることは難しかった。
ダイダロスは棍棒を構えていた腕をだらりと下げて肩を落とし、申し訳なさそうな表情になってその静けさを破る。
「すまなかった。そうと知っていれば早く教えていたのだが……」
「べべっ、別に何も言ってないじゃん! ていうか僕キャサリンのことなんてどうでもいいし!?」
バルバロスは改めて俺たちの方へと向き直り、誰にともなく指を差す。
「おい、お前たちのせいで恥かいただろ! もう許さないぞ! 僕の必殺技で一気に決着をつけてやる!」
そう言ってバルバロスは右足を高く上げた。
「おい待て弟よ! それは……!」
弟を止めようと右腕を伸ばしたダイダロスの言葉もあって嫌な予感がした俺は、前に出てティナを抱きかかえ、後ろに飛んで地面に転がった。
そしてバルバロスがスキルの名前を口にする。
「『サイクロプス・スタンプ』!」
轟音と共に立っていられない程の震動が辺り一帯を支配し、バルバロスが勢いよく足を踏み込んだ場所には巨大な穴が空く。
「弟よおおぉぉ~…………」
「ごめん兄ちゃああぁぁ~ん…………」
そして、門番兄弟はその穴から下に落ちていった。
「何やってんだあいつら……」
呆気に取られながらそうつぶやいたものの、フェニックスの期待の眼差しでティナを抱きかかえた状態だったことを思い出す。顔が熱くなるのを感じながら慌てて立ち上がって服の土を払い、ティナに手を差し伸べた。
「ごめんなティナ」
「あ、ありがと……」
ティナは頬を朱に染めながら俺の手を取って立ち上がった。
また変態とか死ねとか言われるかと思ってたから、これは素直に嬉しい。もう機嫌はなおったんだろうか。
でも、ティナは立ち上がるなり俺と目を合わせることもなく、すたこらと魔王のいるらしい部屋に向かって歩き出してしまった。
『ナイスイチャイチャ……』
フェニックスがそうつぶやいてティナの後を追うと、ラッドとロザリアもにやにやにこにこと俺を見ながらそれに続いた。後には俺だけが残される。
よくわからないけどティナはもう怒ってないと思っていいのだろう。
大きく地面を穿つ穴から下の階を覗き込んでみると、そこには仲良く大の字になって気絶するサイクロプス兄弟の姿がある。俺は一つため息をついてそれらから視線を外すと、のんびりと仲間たちの後を追った。
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